心身問題


心身問題とは、哲学において歴史的に最も重要な課題の一つで、人間の心と体がどう関係し合っているのかという問題である。現代の哲学では心の哲学における中心的なテーマであり、科学の領域では心脳問題として研究の対象となっている。

哲学における心身問題の議論は紀元前に遡る。西洋哲学ではプラトンが「霊肉二元論」を主張し、それに対しアリストテレスは、心とは身体の特別な性質であるという一元論的な主張をした。そして17世紀の哲学者ルネ・デカルトが、『情念論』(1649年)にて実体二元論を主張したことが大きな転換点となり、デカルトの二元論に対する応答として、心身問題についての様々な立場の原型が近代においてほぼ案出されることになる。

その後19世紀末から後20世紀前半は、科学技術と神経生理学の発展によって、心と身体の関係は科学によって解明されるという物理主義の立場が支配的となり、心身問題についての哲学的議論は停滞することになる。しかし20世紀後半から英語圏諸国の分析哲学において、「可能世界論」や「思考可能性論法」など、さまざまな概念や思考実験が登場したことによって、心の哲学の議論は劇的に変貌し、進展することになる。現代における心の哲学は、その英語圏の哲学を中心に議論されている。

現代の心身問題は、認知科学・神経科学・理論物理学・コンピューターサイエンスといった科学的な知識を前提とした形で語られることが多い。英語圏の大半の学者は「自然主義」を前提として心身問題を論じている。

ちなみに、E・タイラーやB・アンカーマンなどによる文化人類学的な研究調査では、ほとんどの人種・民族が霊魂的なものと肉体的なものを区別する二元論的な人間観を持っているという。