カテゴリー錯誤


カテゴリー錯誤(カテゴリー・ミステイク,英:category mistake, category error)とは、ある対象に固有の属性を、その属性を持つことのできないものに帰すという誤りである。ギルバート・ライルが著書『心の概念』(1949年)で、心身問題解決の鍵として提起したものである。

例えばケンブリッジ市のハーバードを訪れ、さまざまな学部や実験室などの各施設、そして教員や生徒を見たある人物が、最後に「それで、肝心のハーバード大学はどこなんです?」と聞くとする。その人は自分が見てきたものの他に「大学」そのものがあると思い込んでいる。しかしその人は実感していないものの、既にハーバード大学を見知っていることになる。大学という用語はそれぞれの学部や各施設、構成員を指示する言葉だからである。その人の思い込みこそがカテゴリー錯誤である。大学という言葉は学部や教員という言葉とは同じカテゴリーに属さないのである。

ライルはデカルトを批判し、実体二元論を日常言語の誤用によって生み出された幻想だとする。カテゴリー錯誤という概念は、デカルト主義的な形而上学によって生まれた心の本質についての混乱を取り除くために用いられる。心身を分離し、身体を機械的なものとみなし、その身体に魂が宿るとするデカルト的な実体二元論を、ライルは「機械の中の幽霊」のドグマと批判した。

心の働きは身体の動きと切り離せず、心身は不可分であり、実体という術語で心身を定義しようとするのは、ライルにとってはカテゴリー錯誤なのである。

あらゆる論述の誤りは、ある文をそれが属していないクラスに帰属させることであるから、すべての誤りはカテゴリー錯誤であると言える。しかし哲学的な意味でのカテゴリー錯誤は、最も厳密な形態の帰属の誤り、すなわち論理的に不可能なものを是認することである。例えば「海のビジネスは黄色い」という文章は統語論的に正しいが、意味論的に間違っている。この文では「ビジネス」や「黄色い」という語の帰属先を間違えているから意味を成さないのである。

  • 参考文献
ジョン・R・サール『ディスカバー・マインド!』宮原勇 訳 2008年