「 糖尿病薬 新薬開発とClinical Resrarch Question の解決 」日本臨床薬理学会2009

「第6回日本臨床薬理学会/日本薬理学会共催シンポジウム:
 糖尿病薬新薬開発とClinical/Research Question の解決」
     座長:亀井淳三先生(星薬科大学薬物治療学教室)
    植田真一郎先生(琉球大学大学院医学研究科臨床薬理学分野)

S10-1 糖尿病治療薬と心血管アウトカム―チアゾリジンジオン誘導体とDPP4 阻害薬を中心に―
景山茂先生 (東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター薬物治療学研究室)

○ TZDのおさらい
  • チアゾリジン(TZD)誘導体は核内受容体型転写因子であるPPARγ (peroxisome proliferator activated receptor γ)の活性化を介して強力なインスリン抵抗性改善作用を示す.
  • 作用機序には不明な面もあるが,脂肪組織あるいは骨格筋におけるTNF-α産生の抑制や脂肪組織におけるアディポネクチン産生亢進が関連.
  • インスリン抵抗性に認められるインスリン受容体以降の細胞内インスリンシグナル不全を改善させる.

○ TZDと心血管アウトカム

  • 対象は42件の臨床試験(time-to-eventでない)で、1)投与期間が24週間以上、2)RCT、3)対象群はロシグリタゾンを服用していないこと、4)MIとCVDをoutcomeにしている。
  • ロシグリタゾン群では対照群と比較して、心筋梗塞の OR 1.43 95%CI 1.03-1.98、心血管死亡の OR 1.64 95%CI 0.98-2.74。
  • 著者らは「早急に大規模無作為化試験で確認する必要がある」とし、「2型糖尿病に対するロシグリタゾン投与は、心血管系への重篤な有害作用を伴う可能性があることを考慮すべき」と結論付けている。

また、別のメタ解析の結果、上記メタ解析の概要は以下。JAMA.2007;298:1180-88
  • 対象は4件の臨床試験で、1)投与期間が12ヶ月以上、2)RCT、3)MIとHFをoutcomeにしている。
  • ロシグリタゾン群では対照群と比較して、心筋梗塞の RR 1.42 95%CI 1.06-1.91、HFの RR 2.09 95%CI 1.52-2.88 に増加、CVD 有意差無し。
  • 新規 DM(ACSリスク低くHF無し)では、MI の NNH は822人年、HF は383人年。



  • 対象は19件の臨床試験(time-to-event)で、1)RCTかつ2重盲検、2)プラセボ or 実薬対象 3)複合エンドポイント(全死亡+非致死性MI+非致死性stroke)。
  • ピオグリタゾン群では対照群と比較して、複合エンドポイントの RR 0.82 95%CI 0.72-0.94 かつ各疾患とも RR は減少
  • HFの RR 1.41 95%CI 1.14-1.76 に増加。

○ まとめ
  • PPARγ 作動薬であるTZDのインスリン抵抗性改善薬の安全性は、Class effect(薬物の基本骨格から作用・副作用を共有している)でない。
  • 各化合物の個別の有効性と安全性の評価が必要であり、臨床試験データは重要であり、医薬品の安全性と有効性の評価の確認に警笛を鳴らすこととなった。
  • 心不全はTZDの水・Na貯留作用と考えられ、TZDを処方した場合は、心不全の兆候や、体重の増加、胸部X 線による心拡大について、定期的に調べた方がよい。
  • DPPⅣ阻害薬など新規DM薬が使用できるようになるが、有効性と安全性の評価に、注意が必要である。

副作用情報の収集は、薬剤師のお仕事。
とはいえ、その評価はとても難しいことを改めて感じさせられた。

S10-2 インクレチン関連薬の何が期待されるのか
仁木一郎先生(大分大学医学部薬理学)

取り立てて、新しい情報もなく・・・インクレチンとは?をご参照くださいませ。

S10-3 中枢神経系を介した血糖調節機構と糖尿病治療への可能性
大澤匡弘先生(星薬科大学薬物治療学教室)

○ 中枢におけるインスリンの作用とシグナル伝達系
インスリン受容体や,インスリン受容体の主要基質であるIRSが脳に存在することはすでに確認されている.脳におけるインスリン作用についての解析でも,摂食調節作用,神経細胞の分化や増殖作用,神経伝達物質の放出やシナプスの可塑性への関与などが報告されている.
インスリンシグナリングの調節とその障害より


S10-4 抗動脈硬化治療薬としてのチアゾリジン誘導体
光山勝慶先生(熊本大学大学院医学薬学研究部生体機能薬理学)

景山先生のお話と重複!

S10-5 糖尿病とレニン・アンジオテンシン系抑制薬―レニン阻害薬を含めて―
大蔵隆文先生(愛媛大学大学院病態情報内科学)

第45回欧州糖尿病学会(EASD)で、AVOID(Aliskiren in the eValuation of PrOteinuria In Diabetis)試験結果が発表された。
  • ロサルタン100mgへのアリスキレン150mg→300mgの追加投与は、糖尿病性腎症のアルブミン尿を減少させる。
  • エプレレノは、糖尿病性腎症の蛋白尿を低下させるが、高K血症に対する危惧から禁忌。
  • ARBやACEIへのアリスキレンの併用効果が期待されているらしいが、こちらも高K血症に注意が必要らしい。

アイスキレンについて、お勉強しないと・・。
NIKKEI Medical アリスキレン
慢性腎臓病(CKD)治療薬の現状と新たな可能性

糖尿病患者へ使用される新薬がたくさん市場されます。
薬剤師も副作用のモニターをしっかりしないといけませんね。

ヾ(*'-'*)
最終更新:2009年12月10日 22:17