第三十二章
『同じ道、同じ想い』 前編
場面は少し戻って、視点は酔逸へ…
ばたんっ!…カランカラン…
汰譜王
「酔逸!」
…
……
もう彼の声は聞こえない…
酔逸は走っていた…
ただひたすらに…現実から目を背けるように…
意識してか、してないのか…
汰譜王の通う学園から逃げていたのかもしれない…
その道は人馬学園への一本道…
酔逸
「はぁ…はぁ…」
何故ここに来たのか本人にも理解出来ないまま、酔逸は人馬学園の正門に辿り着いていた…
酔逸
「…」
綺羅祭壇には頼りたくなかったのかもしれない…
ギィィ…
門は不気味な音を立て、ひとりでに開く…
彼を誘うように…
酔逸
「(まるで黄泉の入り口だな…)」
実際そうなのかもしれない…
ここに来た瞬間、自分の運命は決まったのだと…
酔逸
「すいか…、お前を一人にはしない…もう二度と親友が犠牲になるのは後免だ!」
酔逸は門の中へ入っていく…
ギィ…ガタン…
弥
「くっ…遅かったか…」
扉は堅く閉ざされてしまった。
一足遅れて弥が駆け付ける…
が、人馬学園内は外の常識は通用しない。
弥ほどの達人でも安易に入り込むことは自殺行為なのだ…
弥
「数奇な運命ね…紅馬…。彼もすいかさんの通った道を進んでいるわ…」
弥は空を仰いだ…
弥
「けど…」
弥は門を見つめる…
弥
「何かしなければ何も変わらない!」
弥は酔逸を追いかけた…
彼を止めるため…
そして彼自身のために…
第三十二章、前編・完
最終更新:2007年01月16日 15:57