54 :ちょっと続くよ :2007/02/11(日) 05:26:00.68 ID:kWrp84320
夏の終わり。

―――夕方から、雨が降っていた。
次第に雨は、ひどくなる一方だった。
雷が鳴る。光が一人の男を照らしている。
フラッシュが何度も男の姿を一瞬だけ映す。
男は何度も何度も斧を振り下ろす。

また遠くで雷が落ちる。

「はぁ・・・はぁ・・・、これで、これでこれでこれで」

ばぁらばらになった体を見下ろして、男は叫んだ。

「解放される」

山の奥で一人の男が地面に穴を掘っていた。
一緒に連れてきた女を埋めるための穴。
ざぁざぁと雨が降る。男は泥だらけになった体を、汚れるのも厭わずに土の上に横たえた。
まるで、今殺したばかりの女と添い寝するように。


数年後、男は無事に志望大学に合格を果たした。

男「やったよ母さん、受かったよ!」
男母「おめでとう、よかったわね」

母は何度も男を抱きしめると、本当によかった、と繰り返した。
男の母は知らなかった。男が急に生き生きとし始め、男の成績が伸びた理由が何であったのかを。
ただ、あの女が自分が仕事で留守にする間に息子にちょっかいをかけているのは知っていた。(続)



57 :ちょっと続くよ :2007/02/11(日) 05:37:13.49 ID:kWrp84320
四月も近づいた頃、男は実家から引越し、都内の下宿にやってきていた。
男「よっこいせ、と」
運ばれてくる荷物を解いて、それをしっかりと棚に入れる。
引越し業者が全てのダンボールを運び込み、それを母と男で開けてしまう間に日はとっぷり暮れていた。

男「ふー、ありがとう母さん」
母「ん、男もがんばったから、母さんももっとがんばろうってね。」
二人で乾杯する。母は明日実家に戻る。男は新しい生活に不安と期待が入り混じっている。
母「そういえば、男」
男「ん?」
母「あのコ、どうしたの?ほら、ずっと男に付きまとってたコよ」
男「・・・さぁ?知らないよ」
母「そう?母さんちょっと心配してたのよね。あのコ結構しつこかったでしょ」
男「そ、そんなことより、テレビでも見ようよ」

母親がすっかりと酔いつぶれたのを見て、布団をかけてあげたころだった。
もう9時は過ぎているだろう頃に、チャイムが鳴った。

男は訳もなくドキっとした。いや、違う。たぶん何か宅急便だろう。

ドアホン付きでオートロックの学生マンションに部屋を借りていたので、まずは男はドアホンの画面を見た。
立っていたのはどこにでもいるような女性だった。たぶん、自分と同じくらいの年だと男は思った。
とりあえず男はドアホン越しに話しかけた。いつもの癖になっていた。
男「どちら様ですか?」
女「あ、隣に引っ越してきたものです」
そういうと女は持参してきたらしいものをカメラのほうに持ち上げた。
女「あの、今お忙しいですか?」
カメラ越しに見る女は上目遣いでおびえたような子犬の瞳をしていた。
男は、そういうものか、と納得した。都会ではあまりそういったあいさつ回りをしないものだと思っていたのだが。
カギをはずし、チェーンをしたまま男はドアを開いた。



61 :ちょっと続くよ :2007/02/11(日) 05:47:57.47 ID:kWrp84320
カメラで見たままの女性がそこに立っていた。
おびえた風の女性はにっこりと笑った。
女「あの、こんばんは」
男「あ、はい。どうもこんばんは」
女はどう見ても田舎から出てきた風で、都内に住むのを緊張しているようだった。
男「うん、なんかわかんないことあったら相談に乗るよ」
女「助かります。あのー、これ、自分で作ったものもので、つまらないものですが」
男はチェーンをはずしてそれを受け取る。
女「お口に合えば、ってことですけど、気持ち悪かったら捨てちゃってください」

パックにつめられたのはおいしそうな肉じゃがだった。
男は、初対面の人に肉じゃがをいきなりもってくる女への疑問が浮かんだが、
それはこれから楽しい生活が始まるかもしれないという自分の妄想にかき消された。

女「それじゃあ」
女は最初尋ねてきたときよりは若干打ち解けた表情で男に微笑みかけると、帰っていった。
女の部屋は角部屋で、隣は男の部屋だったから、挨拶はもう一軒先までやったら帰る、と言っていた。
男「ふぅむ…」
手渡されたパックの中の肉じゃがはまだ作りたての暖かさだった。
男「食べるか」
戸締りをきちんとした部屋で男はそれを食べ始めた。

次の日、入学式だった。母はいつも以上におめかしして入学式に参加していた。
学校の講堂で開かれる入学式は、入学する生徒の熱気にあふれていた。

緊張した男は母と別れた後に案内された席に座る。
と、後ろから肩を叩く人がいた。
?「あの」
男が振り返った先には、昨日見た女が座っていた。
女「一緒の大学だったんですね」女はにっこりと笑っていた。緊張した様子はなかった。



63 :ちょっと続くよ :2007/02/11(日) 05:58:52.33 ID:kWrp84320
その日母を送った後に男は一人で下宿に戻っていた。
すっかり夜になっていた。まだ緊張するばかりの男は、晩御飯の材料を買出しするのを忘れていた。
男は最寄の駅近くにあるコンビニで晩御飯を調達して部屋に帰った。

男「ふーむ」
静まり返った部屋の中で男はさて弁当を食べるかと思っていた。
チャイムが鳴る。
男「はい」
女「あの、その、すいませんっ!」
男「は?」
女「お醤油貸してくださいませんか?」
男「いいですよ」
昨日のパックも返す都合もあった。
女「あら、どうも。洗ってくれたんですね」
男「ご馳走になりました。とてもおいしかったです」
女「そうですか…、あの、もしよかったら召し上がっていかれませんか?」
男「え?」
女「いや、作りすぎちゃって」
男「はぁ、いや、その、弁当買ってきちゃったし…」
女「そうだ、あれもこれもあったわ、うん、そうだ。どうぞ召し上がっていってください」
女は半ば強引に男を自分の部屋に引き入れた。
女「汚いところですけど、どうぞ」
女の部屋はとても清潔に整えられていた。潔癖すぎるほどに。
男は女の作った料理を食べ、それを褒める。女は喜んだ。
女「もしよかったら、明日から、うちで召し上がっていかれませんか?」
女の言葉に男はちょっと警戒心を抱いた。あの時と同じような気分になったからだ…。
男「え、その・・・ご迷惑になるでしょうし」
女「いえいえ、迷惑じゃないですよ。むしろ食べて喜んでくださる方がいるとうれしいですし。
それに、尋ねてくれる人ももういませんから…」
女は悲しそうにそういったかと思うと、次から次へとおいしそうな料理を運んできた。男はこれを平らげるのにかなりの時間を要した。



66 :ちょっと続くよ :2007/02/11(日) 06:06:48.78 ID:kWrp84320
4月はあっという間に過ぎた。大学のサークル活動は男にとって一番楽しみだった。
どのサークルにしようか迷っているうちに、入学後出来た友達や、一緒の高校から進学してきた幼馴染も次々にそれぞれのサークルに入っていた。
幼馴染は、親戚の家に下宿しているらしい。男の隣の部屋の人はなぜか5月のはじめに出て行って、それっきり空いたままだった。

男「うーん」
5月の半ばごろになっても男はまだ悩んでいた。
女「どうされたんですか?」
艶やかな白米をたんまりと男によそいながら女は言った。
男「いや、まだサークルどこにしようか迷っちゃってて」
女「あらぁ…もうどこも新勧終わっちゃってるんじゃないですか?」
男「そうなんだよねえ…、結構悩みどころでさ」

6月が過ぎる頃にはすっかりと女と打ち解けていた。
幼馴染もよく男の部屋を訪れるようになっていた。
そして、7月になる頃に、幼馴染は男の隣の部屋に引っ越してきた。
梱包された荷物を解きながら男と幼馴染は忙しそうに動いていた。
幼「やっぱりさ、男の隣にいたくて」
男「ヨセヤイ、テレルジャナイカ」
幼「あ、今ウソ付いたろ」
男「バレたか・・・!」
幼「何年幼馴染やってると思ってんだ!…それに、なんだか取られるのが惜しく成っちゃって」
男「ん?どういうこと?」
幼「あれ、女の子と一緒に食べてるでしょ。ご飯」
男「うん。お隣のコがね、料理上手でさ。いつも作ってくれるんだ」
幼「ふうん…、そうなの」
幼馴染はじっとりと男を見つめた。
男「なな、なんだよ。別に何もやましいことは無いよ」

そういった会話をしているうちに、女が幼馴染の部屋に、そばを湯がいて持ってきた。3人で食べた。とてもおいしかった。



68 :ちょっと続くよ :2007/02/11(日) 06:14:53.76 ID:kWrp84320
盆の暮れ。
幼馴染が引っ越してきてからと言うものの、女は男の部屋に頻繁に現れるようになっていた。

女「あの、お弁当です」
女「あの、お夜食です」
女「あの、お昼です」
女「あの、服にアイロンかけときました」
女「あの、お洗濯して干しておきました」

男は自分の生活に介入されるのを楽しんでいた。
今度は違う、そうだ。あのときとは―――。

男「なんでそこまでしてくれるの?」
女「いや、その、えへへ。ご、ごめんなさい」
幼「かーッ、あんたらおアツいねえ。あ、女ちゃんおかわり」
男「おい、お前、三杯目の御代わりくらいはそっと出さないか」
女「いいんですよ。私も幼馴染さんにはたくさん食べてくれる方がうれしいですし」
幼「いい子だねえ。まったく」
男「お前も女さんを見習って料理くらい作れるようになれよ!」

幼馴染は壊滅的に料理がへたくそだった。
一度高校のときに弁当を作ってもらったことがあるが、どうしようもなくマズかった。

夜。
布団を引いて網戸にして窓を開けて寝ていた。
冷房を使うまでもないくらいの冷夏だった。

男「Zzz…」
女「うふふふふふふ」
隣のベランダからすっと飛び移ってきた女は男の寝顔をみて妖しい笑顔を浮かべていた。



70 :ちょっと続くよ :2007/02/11(日) 06:23:17.43 ID:kWrp84320
ある夜、男は悪夢を見た。

ストーカーまがいの追っかけをされていた頃の夢だった。

何度も切ったあとのある手首を見せびらかしながら「死ぬよ」と脅してくる女がいた。
その女は同級生にいたのだが、彼女は塾で理系クラスの男の後を追って理系転向したり、
下駄箱に好きと一杯かかれた手紙をぶちこんだり、部屋に忍び込んできたり、玄関前で何度もチャイムを鳴らしたり、
携帯電話を盗み見たりしたり、パソコンの中に監視ソフトを突っ込んできて男が何を見たか知っていたり…。
あげくのはてには男の母に『男君のオンナです』と明言したりする女だった。

彼女のひどい嫌がらせでも去らなかった友達から聞いたところ、
彼女は、父親が何度も代わったりすることから異常な性格を呈するようになってきたらしい。

でも、それは彼女の家庭のことで、だからこそ男は自分のところに持ってきてほしくなかった。非常に迷惑だった。

だから、



朝になった。

お隣の女が男をゆすっていた。
女「かぜ、ひきますよ?」
そういう女はくちゅんとくしゃみをしている。
男「ん゛ー・・・」
女「ん゛ーじゃないです。早く起きないと遅刻しちゃいますよ?♪」
男「て、俺カギかけてなかった?」
女「くすくす、それはお隣の幼馴染さんに聞いたほうが早いんじゃないかしら?」
男「どわー!」
幼馴染はサークル飲みの帰りに寝ぼけて男の部屋のカギ(渡してある)で入ってきたようだった。でも、チェーンはどうやってはずしたのか、男にはわからなかった。



71 :ちょっと続くよ :2007/02/11(日) 06:32:09.52 ID:kWrp84320
10月が過ぎた。後期が始まるや否や、男は盆栽サークルに入った。
盆栽サークルは異常なほど人数が多かった。興味はあったものの高校時代にいじれなかった人が多かったらしい。
男はすぐに打ち解けた。

幼馴染はバンドをやっていた。だから、よくライブもあったし、ファンも多かった。
ファンは時としてストーカーチックになることがある、と幼馴染は言っていた。
男「で、今度はどうした」
幼「いやな、その…、とても悪質な奴が粘着してきているんだよ」
男「ふむ、してどんな奴なんだ?」
幼「うん…、洗濯物は何を干してるか、とか、パンツは何色だとか、今日は何をゴミにすてたかとかな」
   男「うわっ、キモッ」そういいながら男は、ぞくりと背筋に寒気が通るのを感じていた。
幼「うーん、完全にキモイオタクなんじゃないかと思うんだけど」
男「たしか、ヘビメタで売れなくなったからオタク系の曲に変えたんだっけ?メイド服着てさ」
幼「それがまずかったのかもしれないな」
苦笑すると、幼馴染は持ってきた酒を開け始めた。男にも勧めたが、男はいらんと断った。
幼馴染は2歳年上で、今20歳だった。空白の2年は、男と同じようにストーカーに悩まされた二年だった。

幼「ま、ひとまずバンド活動休止ってところかな」
と幼馴染がしゃべっていると、男の部屋に女がやってきた。
女「幼馴染さん、お洗濯とお掃除済みましたよ~」
幼「お、あんがとさん。お前さんも一杯やるか?」
女「あら、うれしいお誘いですね…」

三人はとても打ちとけ合っていた。
あの日が来るまでは。



74 :ちょっと続くよ :2007/02/11(日) 06:54:28.02 ID:kWrp84320
幼馴染が自殺した。

飯時になっても女の部屋に現れない幼馴染を男が心配して見に来たら、首を吊っていたのだった。

まだ体は温かかったので、急いで救急車を呼んで人工呼吸をしたり応急処置をした。
一瞬は息を吹き返したようだったが、幼馴染は、何かをつぶやいた後に、息を引き取った。
ちょうどこの時間帯は渋滞だったので、救急車が到着するのは幼馴染が死んでしまってから相当経っていた。

警察も呼んで現場検証をしてもらったが、結局は自殺と言う形で幕を閉じたようだった。

遺体は彼女の両親が引き取っていった。両親は男を「あなたのせいではない」と、とても慰めたが、
男の心は、幼馴染の苦悩に気づけなかった悔しさと、後悔でごちゃまぜになっていた。

そんな男を献身的に慰めてくれたのが、女だった。
体の底から暖めてくれた女は、生きる気力を失った男をよりいっそう世話するようになった。
掃除から洗濯から、かなりこなしてくれるので男は悲しみにふけるだけでよかった。

ある日、男が一人で幼馴染の部屋を整理していると、警察から男の携帯に一本の電話が入った。
警「あのですねー、男さん。あなた宛に彼女が遺した文書があるんですわ」
男は取るものも取らずにすぐに警察署まで飛んで行った。
その遺書は男がバイトしてプレゼントしたギターの内側に隠すように貼り付けてあったようだった。
手書きで、少し汚れたり途中が少し破られたりしていたが、曰く、「生きているのがつらくなった」という意味だった。
男は疲れた頭で、何度も書かれた言葉を何度も読み返した。
ちょっと違和感を得たのだが、何が変なのかわからなかった。
少し妙だ、と警察に感想を述べると、警察は黙ってうなずいた。遺書の話は黙っておくように釘を刺された。

帰ったら、男は一人になるようにきちんと戸締りをして、隣の女には「今日は飯はいらない」と言って部屋にこもった。
男は泣いた。声を出さないでずっと泣いた。

チャイムが鳴った。何度も何度も。それでも男は出ようとしなかった。



75 :ちょっと続くよ :2007/02/11(日) 07:08:55.32 ID:kWrp84320
あくる日、女がご飯を持ってきた。
女「泣いてばかりだとお腹が好くでしょう。うふふ」
男は黙って食べた。女は一方的に男に今日は天気が良いですね、だとかサークル活動はどうですか?と話しかけた。
女は、幼馴染が死んだ日からニコニコが止まらないようだった。

男「何がおかしい?」
女「え?」
男は箸を置いた。
男「何がおかしいんだ?」
女「何もおかしいことはないですよ?」
男「じゃあ何でそんなに笑うんだ?」
女「笑って無いですよ。うふふふ」
男「出て行け」
女「えっ?」
男「出て行けって言ったんだよ!今すぐッ!出て行けッ!ここからッ!」

男は怒鳴った。
女は一瞬はびっくりしておびえた。でも、調子はすぐに元に戻った。
女「うふふふふふふふあはははははははは。」
男「・・・?!」
女「あはッ、あはは、きゅ、急に何を言い出すんですか?」

男は急に眠気を感じた。

女「大好きだって、昨日の夜はとて愛してくれたじゃないですか」
女「うれしかったです・・・とても・・・うふふふ」

男はゆっくりと女の声がフェードアウトしていくのを感じていた。



76 :ちょっと続くよ :2007/02/11(日) 07:21:07.00 ID:kWrp84320
女「どこに埋めたどこに埋めたどこに埋めたどこに埋めたどこに埋めたどこに埋めたどこに埋めたどこに埋めたどこに埋めた
どこに埋めたどこに埋めたどこに埋めたどこに埋めたどこに埋めたどこに埋めたどこに埋めたどこに埋めたどこに埋めた」

呪詛のような声で男が目を覚ますと、女の部屋にいた。仰向けに拘束されて転がされていた。
男が目を開けると、本当に目の前、あごを少し近づければ男と女の唇が触れ合う位置に女は居た。

男「・・・」
女「目を覚ましましたか?」
女は、最初男ににくじゃがを渡しにに来たときみたいに、にこにこと無邪気に笑っている。
男「・・・」
女「・・・聞こえてました?」
男「体が、動かん」
女「そりゃあそうです、うふ、あは。怪我しないようにいろいろさせてもらってますので」
男「何したんだ?俺に」
女「うっふふふふあっはははは、愛してますからね。あなたを」
男「?!」
女「ゆっくりと今後のことを話しましょう。大丈夫、時間はお互いにありますから」
男「どういうつもりだ?俺に何をしてほしいんだ?」
女「大丈夫、大丈夫。おちついてよ。そんなにわめかないで。驚いてクビを締めちゃうかもしれないじゃない」
男「・・・わかった」男は、ゆっくりと鮮明になる頭が同時に、鈍かった恐怖が本当の恐ろしさになりかけているのを知った。
女「愛してます。心の底からずっと、最初から、出会う前から愛してます」
男「・・・」
女「いたよね?私みたいなコが。高校のときの同級生に。」
男「・・・」
女「返事くらいしなさいよ」
女は男の腹を目一杯殴った。
男「うっ・・・何なんだあんた・・・」
女「居たのよね?いや、居たわ。私の代わりに居なくなっちゃったけど」
男「何を・・・言っている?」
女「うふふふふふふあはははははははは大好き大好き大好き大好き大好き」



78 :終:2007/02/11(日) 07:32:46.85 ID:kWrp84320
女「こんなカタチになっちゃったけど、ずっとずっと愛してたのよね」
男「・・・」
女「で、そのコはどこにしまっちゃったのかな?」
男「・・・何のことだ?」
女「んん・・・知らないのか?それともお得意の知らない振りかしら?」
男「話が・・・見えない」
女「あの頃の私は、ずっとあなたに盲目だった…。でも、あなたは私に気づかなかった。だから、妹に、頼んだのよ。あなたが振り向くように」
女は語った。
自分には腹違いの妹が居ることを。そして、それが男の同級生だったことを。
女「あの子の母親はね、どうしようもないロクデナシだった。けど、あの子はいいコだった。あの子もあなたが好きだったのよね…」
男「・・・」
女「でも、急にいなくなっちゃった。どうしてなの。男に呼び出されてそれっきり帰ってこない」
男「・・・」
女「殺しちゃったの?殺したいほど愛してたのよね、そうなのよね?あたしもよ」
男「・・・は?」
女「大丈夫、一緒になろう。そうすれば、全て話しが終わる・・・。妹も待ってるから。もういまさら彼女がどこに埋まってるかなんて、覚えて無いでしょうし」
男「・・・」
女「ゆっくりと向こう側に一緒に行きましょう・・・うふふふ、あははははは」
女は男の口にガムテープをびったりと貼り付けると、作業を開始した。

男が、昔別の女にしたように、女は男を斧で何度も切りつけた。

ダルマみたいになった男を見て、女はつぶやいた。
女「なんで愛してるって言ってくれないのよ・・・」

数日後、男と連絡の取れない警察が不審に思って男の部屋をたずねたらもぬけのからになっていた。
代わりに、点々と男の部屋から女の部屋へと血のあとが続いていた。
その日のうちに、女の部屋が暴かれた。最初のような白く清潔すぎる部屋ではなく、赤黒く、また腐ったにおいのする部屋がそこにあった。
女はダルマのような男のなきがらを抱いて、ずっと愛の言葉をささやいていた。
そして、警察が踏み込んでくるや否や、女は男を追って自殺したのだった。(完)




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最終更新:2007年02月11日 16:21