第一中学、2年A組、この日はいつもより少し静かだった。

「碇くん、アスカが来てないけどどうしたの?」
「センセ、嫁はんが来とらんがどないしたんや?」
原因は、女子の中心でいつも元気いっぱいの女生徒が休みだからだ。

「なんでみんな僕に聞くんだよ・・・知らないよ」
(今朝は起こしに来なくて、遅刻しちゃったんだ。僕が知りたいよ。アスカ、どうしたんだろ?)
朝から何度も同じ質問を受けた碇シンジが、ぼんやりと考え事をしていると、教室のドアが盛大な音を立てて開いた。クラス中の視線がそこに集まる。

そこには高等部の制服を着た、少しきつめだが掛け値なしの美少女が立っていた。
少女はぐるりと教室を見渡し、目当てのモノを見つけると、がしっと捕まえて問答無用で引きずっていった。
「センセ・・・。何で碇ばっかり!!」
「いや~んな感じ。」
「碇くん・・・」
「今のは、アスカのお姉さん?」
それはクラス中があっけに取られ、見守るだけの早業だった。



「こ、ここ、何処ですか?僕なんでこんなとこに連れてこられたんですか?」
「黙りなさい!」
「ひゃ、ひゃい!・・・って、アスカのお姉ちゃんじゃないですか。ここ、アスカの家だし」
シンジが首根っこを掴まれ連れてこられたのはアスカの部屋の前。
連れて来たのは、アスカの姉のハルヒ。

何かあったんですか?と問うシンジにハルヒが説明、と言うよりも命令する。
「アスカが風邪を引いたの。わたしはSOS団があるから、あんたが看病しなさい」と。
否が応もなく、それだけ言いつけると、『翠行くわよ』と妹を連れて出かけてしまった。


「ハル姉、あんな駄目っぽいチビ人間にアス姉を任せて大丈夫ですか?」
「仕方ないじゃないの。アスカが寝言まで言うんだから!」
「心配ですぅ。アス姉の趣味も分からんです」
「ほんとね。あんな優柔不断っぽいのの何処が良いのかしら?」
「まあいいわ、わたしはSOS団に行ってくるから」
「翠はジュ・・・、真紅のとこに遊びに行ってくるです」

ぶつくさと自覚の無い文句を言うと、姉妹は揃って出かけて行った。

処戻って、アスカの部屋の前。
(に、逃げちゃ駄目だ・・・逃げちゃ駄目だ・・・逃げちゃ駄目だ)
右手を開いたり閉じたりしながら、シンジはまだ迷っていた。
(アスカが病気、居るのは僕だけ。・・・勝手に部屋に入って殺されないかな?
 けど、ハルヒさんが連れて来たんだし。何処か行っちゃったけど・・・・・・!?
 じゃあ弱ったアスカと二人っきり!?・・・・あんなことやこんな事・・・・最低だ俺って・・・)

十ヵ月後、アスカは珠のような赤ちゃんを産んだ。おわり。

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最終更新:2006年12月11日 23:37