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※この物語はフィクションであり、実在する人物団体事件その他の固有名詞や現象などとは何の関係もありません。うそっぱちです。閉鎖空間~人工精霊~の勝手な設定も出てきますが他人の空似です。


「さあ…今からあなたに真紅がジャンクになるところを見せてあげる…
 いつ来ても陰気な家ねぇ、なんだか今日は特に暗いわぁ…?…あれはホーリエ?あぁっ!!」
パリ、パリパリパリパリ…パリーン!!

「…なに…何だったの今の…!!あれ?くんくん?ワタシのくんくんはどこ?くんくん…
 まさかさっきの……真紅が…真紅ぅ…しんくううぅぅぅぅっ!!」

 

             4月13日 午前9時45分
               ネルフ被告人控室(仮) 

うぅ、キンチョーするです…
「何ビビってのよ、あんたはわたしの隣で活躍を見てればいいのよ!」
そうのたまうのは、今日のためにわざわざ作ったらしい超弁護士と書かれた腕章をつけたハル姉です。
全く、ハル姉はいつも自信満々ですね。
「当たり前じゃない、わたしにかかればこんな事件、朝飯前のお茶の子さいさいよ!
 あんたは知らないでしょうけど、前の夏休みに偽装殺人を見破ったんだから」
ま~たいつもの自慢話ですぅ。でも、今回ばかりはそれにすがるしかないのです。

「翠星石。あなた達が今回私の弁護をしてくれるのね」
真紅!…あ、さすがに元気はなさそうですね…
「ま、翠はおまけよ。真紅ちゃん、わたしが全ての謎を解き明かしてあげるわ!まっかせなさい!」
真紅、本当に真紅はやってないですね?
「ええ、私は水銀燈のくんくんを盗んだりはしていないわ…あなた達にならわかるでしょう?」
真紅の言うとおり、翠星石には心当たりがあるです。
つい最近、急にくんくんを忘れたいと言いだした真紅からもらった、大量のくんくん探偵DVD全集…
チビチビにはあのくんくん探偵変装セットまであげたっていうんですから、突然の心変わりにみんな驚いたです。
でも、だからこそ、今更真紅がくんくんを盗むはずがない…


事件が起きたのは昨日の事…
『ワタシのくんくんが真紅に盗まれたのよぉ!』
とでも言ったんでしょうか、そこから水銀燈のマスターが警察に知らせ、その後何故かここネルフで裁判が行われる事になり…
そしてこれまた何故か、ハル姉が弁護人を務める事になったです。
翠星石はハル姉に言われて助手として法廷に入る事に。翠星石は法律のホの字も知らねえのに。

「それにしてもなんでネルフでやんのかしら。アスカの顔見たくないのに」
アヒル口でのたまうハル姉。
そう、この前エイプリルフール明けでアス姉の書いた台本をけちょんけちょんにけなして以来、
2人の中はしっくりいってないのです。言うなれば冷戦状態と言ったところです。
こんなんなら、いっそ激しくつかみ合いをしてくれた方がマシです。
唯我独尊のハル姉が翠星石を助手に呼んだのも、翠星石がアス姉側に行かないようにするためかもしれません。
そんなこんなで翠星石は、2人に挟まれて心労がかさんでいました。そこへ来てこの裁判沙汰。
運命はなぜこうも翠星石をもてあそぶのでしょう、ふざけんなです。こっちが訴えてやりたいです。
翠星石が嘆いている間にも無情に時間は進み、真紅からはろくに話もきけないまま、不安一杯の法廷が始まりました。

               同日 午前10時
               ネルフ内法廷(仮)      

ざわ…
   ざわ…
法廷とされた広い部屋には結構な数の傍聴人とかいうのが入っていて、翠星石達以外はすでに所定の位置についていました。
翠星石達が入ってきたのを認めると、少し高い場所に座っていたオジジが手にしているハンマーで机を叩きました。

カン!
ざわついていた法廷が、一瞬にして静まり返ります。
「それでは、くんくん探偵盗難事件の裁判を始めよう。 判決はここの副司令、冬月コウゾウが下させてもらう」
お代官様は渋いオジジです。翠星石の前のマスターとは一味違うですね。フサフサです。
「検察側、準備完了しています」
翠星石の反対側に立っているのは、だらしない恰好で無精ひげを生やした、いけすかねー野郎です。
「加持リョウジ検事だ。韻を踏んでるってだけでこの役を押し付けれらたのさ。
 検事のバッジはもちろんないが、それはお互い様だな?」
そう言って薄く笑いました。これがアス姉がいつも言ってる加持人間…はっきり言ってアス姉は趣味が悪いですね。
「こっちだって司法試験なんて受けてないし、受けようとも思わないわ。
 でも弁護側も準備は完璧よ、いつでもどこからでもかかってらっしゃい!」
もはや自信過剰を通り越して意味不明です。
しかしハル姉、本当に完璧なんですか?
「ええ、今まで口げんかでわたしに勝てた奴はいないわ」
…頭が痛くなってきたです。
「はっはっは、まあ元気がないよりはいいじゃないか。では裁判長、早速事件を手短に説明させてもらいます」
「ああ、頼むよ」
「ちょっと翠、なんかわたし子供扱いされてない?」
されてもしょうがないです。黙って聞いとくです、こっちはろくな情報持ってないんですから。

「事件が起きたのは昨日の昼過ぎ。内容は単純明快。
 被害者の水銀燈は被告人、真紅に戦いをを仕掛けるために桜田家を訪れた。
 その際に被害者が共に連れてきていた、くんくん探偵のぬいぐるみを真紅に盗まれた…
 盗まれたくんくん人形の写真があるので、提出します。水銀燈のマスターが撮ったものらしい」
「受理しよう…ほう、わたしもくんくんは知らぬわけではないが、こんな派手だったかな?」
「ふーん、インディアンみたいになってるわ」
確かに写真のくんくんには羽根が数本付いています。翠星石はその羽に見覚えがありました。
「それは水銀燈が自身の羽を飾りとして付けたもの。世界で1つしかないくんくん探偵、と言ってもいいでしょう」
「なるほどな」

「それでは、検察側は被害者自身に事件の証言をしてもらいたいと思います。それが被害者の意志でもあるのでね」
「よかろう。弁護側もよろしいかな?」
「いいわ。望むところよ」
「それでは水銀燈を証言台へ。踏み台は用意してあるはずだ」

水銀燈が立ち上がり、証言台に上ります。
「フフフ…裁判、いいじゃなぁい。この大勢の前で大恥をかかせてあげるわぁ」
「真紅ちゃんが無実なら、どこかに穴があるはずよね」
そうです。この裁判もどきが水銀燈の悪だくみなら、おかしい所があるはずです。

「では水銀燈、仮とはいえここは法廷だ。くれぐれも嘘はつかないように」
「人間が偉そうに指図しないでちょうだぁい?誇り高きローゼンメイデンの第1ドール水銀燈、
 お父様にローザミスティカをいただいてから嘘なんてついた事ないわ」
「…それは悪かった。とにかく証言を頼むよ」
へっ、嘘ついた事ない事自体が嘘だって事を思い知らせてやるです。


                証言開始 ~事件の概要~

「昨日のお昼頃、真紅のローザミスティカをいただくために、真紅のミーディアムの家へ行ったのぉ。
 いつものようにぃ、鏡を通ったわ。もちろんくんくんも連れて行ってあげたのよぉ。
 お父様の言いつけを守らない真紅が、ワタシの手でジャンクになるのを見せてあげるためにね。
 そしたらちょぉっと目を離した隙に、真紅ったらワタシのくんくんを…許さなぁい…」

「ふむ、恨み節が加わってはいるが、検察が言った事とそう変わりはなさそうだな。それでは弁護人、尋問を頼むよ」
うぅ、なんもおかしい所は見つからなかった気がするです…
「バカね、間違い探しじゃないんだから。いい?おかしな所がないんなら、つくればいいのよ」
いやいや、それは流石にダメなんじゃないですか?
「…つくるってのは言いすぎたけど、ガンガン揺さぶって口を滑らせるのよ。まあ見てなさい」
なんでハル姉にはここまで自信があるんでしょう。
それなりに長い付き合いですが、ここまで自信過剰なハル姉は見た事がないです。

「弁護人、尋問はしないのかね?」
「もちろんやるわよ。ふふん、思わぬところで予習が役に立ったわ」
予習がどうたら言いながら、ハル姉は台から身を乗り出しました。なんか嫌な予感がするです…
 

                尋問開始 ~事件の概要~
         
「水銀燈、あなたは真紅がくんくんを盗んだと思っているようだけど、
 それは何故かしら?盗られるところを見たわけじゃないんでしょう?」
「見てはいないわ、でも真紅に決まってるのよぉ。真紅が身の程知らずにもくんくんに熱を上げている事は知っているもの。
 だからワタシの特製くんくんに目をつけた真紅は」
「異議あり!」
「…な、なによぉ人が喋ってるのに」
ハル姉は人差し指をつきつけてにやりと笑っていたです。それはそれはユカイそうに。
「水銀燈、ローゼンメイデンっていうのは本当によくできているわ。そう、見た目も中身も人間そのものよ。
 恋心だって、冷めてしまうんですからね!」
そう言ってハル姉は、懐から写真を取り出してお代官様に渡しました。
「その写真は数日前、真紅ちゃんからうちの妹の翠星石に渡った、大量のDVDよ」
「…ほう、かなりの量だな」
「確かに彼女は、以前くんくんにどっぷりハマっていたわ。家のテレビが壊れてくんくんを見れないからって、
 うちのテレビを占領しに来たくらい。でもその恋心も冷めてしまった…そうなると邪魔になったんでしょうね、
 大量のDVDやくんくん探偵変身セットを、他のドール達に譲っているのよ。
 そうまでしたのに、なんでまた水銀燈のくんくんを盗む必要があるのかしら!さあ答えて!」
「なるほどな」
「そ、そんな…真紅よ、真紅に決まってるわぁ…だって」
お代官様が頷き、水銀燈が見事にうろたえているです!ハル姉見直したです、これで真紅は無実に
「異議あり」
その声は向こう側から聞こえてきました。今まで黙っていた検事です。
サボって寝てやがるのかと思ってたら起きてたんですね。大人しく寝てれば勝負は決まっていたのに…
「大人をなめてもらっちゃ困るな、弁護人。こっちだってバッジはないが検事役なんだ、簡単な家宅捜索みたいなものはするさ」
そう言って検事は、ぬいぐるみを取り出しました。あっ、と真紅からかすかに悲鳴が聞こえます。
「被告人はもう気付いたようだね。これは被告人真紅の鞄に隠されていた、くんくん探偵のぬいぐるみだ」
「な、なんですってっ!」
ハル姉は豆鉄砲を食らったような顔で固まっちまいました。
みっともねえ顔です、でも多分翠星石も同じ顔をしているでしょうから、ハル姉の事は言えません。

こっちの反応を確かめてから検事は続けます。
「ずっと鞄に入っていたらしい、紅茶の香りが染みついているよ。恋愛感情はそう単純なものじゃあない。
 どうやら真紅は完全に諦める事が出来なかったようだ。しかし一旦あげたDVDや変身セットを今更返してくれとは言えない…
 真紅はプライドが高いみたいだからね。そこへ水銀燈がやってきて、そばにあったくんくんに目がとまり、つい…
 今見つかっているのはこのくんくんだけだが、もっと細かく探せば水銀燈のくんくんも出てくるはずです。
 どうです裁判長、筋は通っているでしょう」
「…うむ、無理はないようだな」
なんてこったです、さっきはハル姉の尋問に頷いてたってのに、お代官様はちょっと足軽が過ぎるです!
「翠、落ち着きなさい、それを言うなら尻軽よ。どちらにしても使い方は間違ってるけど」
でも、でも、何か手があるんですかっ!
「…ないわ。さすが加持さん、こっちが先に手を出すのを待ってたのかもね」
さっきまでの自信はどこへやら、台に両手をついて俯くハル姉。
このままじゃ真紅が有罪になっちまうです、せっかくローゼンメイデンみんなで復活するって時期に!
「復活…?そうよ、そうよね、異議あり!」
そう叫んだハル姉はまた人差し指をつきつけて復活しました。おぉ、訳はわからんがとにかくすごい自信です!
「なんだい弁護人」
「真紅ちゃん達は今すごく重要な時期なの、尻切れトンボで終わりかけていたところで我慢に我慢を重ねて…
 やっと復活できるっていうこの時期に、こんな事件を起こすはずがないわ!」
「…おいおい、そんな事を言いだしたらきりがないじゃないか。
 そりゃ弁護人の言う通りかもしれない。が、現に事件は起きているんだ」
「弁護人の異議を却下する。異議を申し立てる時は確固たる証拠を用いるように」
箸にも棒にもかからないとはこの事です。ハル姉の異議はオジジ達に一蹴されてしまいました。
「く…真紅ちゃん、アリバイとかないの?あるわよね?あるって言いなさい」
「アスカの姉さんだけあって、かなり往生際が悪いな。取り調べでアリバイは真っ先に聞いているはずだ。
 そして俺はアリバイなんて報告は受けてない。さあ裁判長、判決を」
そんな…いきなり絶望です、真紅がとっつかまっちまったら、主役は翠星石になるでしょうが、やっぱりそんなの嫌です。
全員の意識がお代官様に向いたその時、小さいながらもハッキリとした声が聞こえました。

「待って。アリバイなら、あるわ」
真紅!真紅が立ち上がり、声を上げたのです。
「真紅ちゃん!」
「まさか、なんで今更!」
検事が台を叩きました。物にあたるなんて、大の大人がみっともねえですね。
「真紅、君は嘘をついていたって事か」
「いいえ、それは違うわ検事。話していないだけ。言うと不利になると思ったから」
真紅は悠然と証言台に上がりました。
「待ちなさぁい、そんなもの聞く必要はないわ、絶対真紅が盗んだんだからぁ!」
水銀燈が真紅を押しのけて証言台に上ると、叫びました。
「もうあれを言うわぁ。決定的なものを、ワタシ見ちゃってるんだからぁ」
「決定的なものとは何かね」
水銀燈は検事を指さしながら言います。
「この人間がそれは最後までとっておけって。それまでに決めてやるってカッコつけるもんだから、
 黙っておいてあげたのに。この役立たず!もう言っちゃうんだからぁ」
「本当かね加持君」
お代官様に睨まれて、検事は頭をかいてます。
「まあ、ね」
「君は真実を追うのが性分ではなかったのかね」
検事はしばらく考え込んでいましたが、
「…仕方がない、水銀燈頼む」
「だから指図しないでちょうだい。フフフ、これで真紅はジャンクよぉ、覚悟なさぁい」
決定的なもの…一体何なんでしょう…ますます嫌な予感がしてきたです。


               証言開始 ~決定的なモノ~

「鏡を通ってあの汚い家に着いた時、ワタシは見たの!
 赤く光るまぁるいモノ…そこの真紅の人工精霊、ホーリエよ!そうに決まってるわ!
 そしてホーリエが消えたと思ったら、ワタシのくんくんも消えてたの…
 人工精霊はドールと離れる事はないはずよ、きっと近くに真紅もいたはず。
 だからアリバイがあるなんてのも、ぜえぇったい嘘っぱちなのよぉ。
 きっとホーリエに気を引かせてその隙に盗んだんだわ、そこのジャンクが!」

「なるほど人工精霊ね…」
「まずいわね…赤い人工精霊って真紅ちゃんだけでしょ?」
そのはずです…でもそれを認めちゃうと真紅が、ですぅ。
「わかってるわよ…ゆさぶりまくってみるしかないわね」
「では弁護人、尋問を」


               尋問開始 ~決定的なモノ~  

「そのホーリエらしきものの他には、何も見なかった?」
「あの時はいつにも増して暗かったから、余計にホーリエに気を取られたのよぉ。他には何も見てないわぁ。」
「暗かった?時間はお昼でしょ?」
「そんなの知らないわよぉ、本当にホーリエの色以外はわからなかったくらいだったんだからぁ。
 もしかしたら暗くしといてぇ、ワタシが来るのを待ち伏せしていたのかもしれないわぁ」 
「他には?誰かいる気配とかは感じなかった?」
「わからないわぁ、暗いなぁって思って…そうそう、そしたら何かが割れるようなすごい音がしてぇ…
 明るくなって、そしたらくんくんが消えてたのぉ」
「…なによそれ。電球が割れたんなら暗くなるはずでしょう?なんで明るくなんのよ」
「知らないわよぉ、ワタシは見たままを言ってるだけよぉ」
「ワケわかんない事言わないでよ、いらつくわね!」
「なによぉさっきから!人間のくせに偉そうにぃ、つまんなぁい!」
「つまんないのはワケわかんない事言ってるそっちよ!」
「あんたの頭が悪いだけでしょう?乳酸菌摂りなさぁい」
さっきから両方とも台をバンバン叩きまくってうるせーです。
「なんですってえぇ~!」
「なによぉ~」

カンカンカン!
ハル姉の尋問が低レベルに落ちたところでハンマーの音が鳴り響きました。流石お代官様、いい判断です。
「すまんが休憩をとらせてくれ。座りっぱなしには慣れていなくてな、腰が痛い。年には勝てんよ」
…翠星石の早とちりだったようです。ただのオジジだったです。
こうして20分ほどの休憩が取られる事になり、翠星石達は一時的に法廷から解放されました。
しかし真紅が無罪になる見通しは全くなく、休憩の気分になどなれなかったのです…

                同日 午前11時57分
                 ネルフ被告人控室(仮)

「あーもうワケわかんない!」
重い空気が控室全体をおおっています。ハル姉はさっきからイライラしっぱなし。
翠星石も困惑しっぱなしです。翠星石が何とかしなければいけないのに、何も浮かばない…
くんくんに頼るドラネコ警部の気持ちがちょっぴりわかりかけた、その時

バァン!
突如として控室のドアがかなり乱暴に開けられました。
「情けないわね、いつも自慢してた推理はどこに行ったのよ!アタシにはくんくんがどこにあるかわかるわよ?」
仁王立ちでハル姉に指を突き付けているのは、アス姉です!ハル姉はアス姉に詰め寄ります。
「あ、あんた何しに来たのよ、これはわたしの事件よ、余計なマネしないで!
 それともあんたくんくんのある場所を知ってるって事は、犯人なんじゃないでしょうね?」
「もしかしなくても犯人じゃないわよ、ハル姉がフン詰まりになってるから助けに来てあげたんじゃない!」
あーうるせーうるせー。でも翠星石は少しホッとしていたです。
今朝まで冷戦だった2人よりは、口汚く罵りあうこのザマがこいつららしいです。
「頼んでないわよ!」
「フン、まあ聞いて。アタシは真紅の弁護を引き継ぐわ。だからハル姉は消えたくんくんを見つけてきて」
「あんたが行けばいいじゃない、どこにあるか知ってるんでしょ」
「くんくんが見つかれば、全ての謎が解き明かされるわ。それを譲ってあげるって言ってんのよ?
 ハル姉はそれを自分で確かめたくないの?SOS団団長として」
「う…」
「アタシも行きたいけど、裁判はハル姉が帰ってくるまでアタシがもたせといてあげるわ。伊達に大学出てないんだから」
そう言うとアス姉は、腕に団長補佐と書かれた腕章をつけました。
「たまにはアタシにも出番をちょうだいよ、ただでさえ出番ないのに」
ハル姉はしばらく眉間のあたりを押さえていましたが、やがて自分の超弁護士の腕章を外しました。
「これ、貸したげる。法廷で団長補佐も何もあったもんじゃないから」
アス姉は素直に腕章を受け取りました。ひとまず冷戦状態は解消したみたいです。
「まかせて。外にSOS団のみんながいるわ、説明は副団長に聞いて」
「…そう、じゃあ行ってくる。それ、貸すだけだからね、後で返しなさいよ!」
ハル姉は控室を飛び出して行きました。その後複数の足音が遠ざかっていきました。
それにしてもアス姉、よく来てくれたです!義を感じて馳せ参じてくれるとは、見直したです!
「フッフッフ、名探偵エヴァンゲリオン…」
ハァ?
「今度こそアタシが主役よ!」
…見損なったです。


                 同日 午後0時20分
                  ネルフ内法廷(仮)    

ざわ…
   ざわ…
カン!
おや?お代官様の様子が…
「うわ、副司令が司令に進化してるじゃない」
「冬月は腰の具合がよくならんようだ。続きは私が取り仕切る」
ラッキーと言うべきでしょうか。ハル姉がアス姉に変わってる事も気にしてないようです。
検事もその事に触れるつもりはないようです。
「経緯を説明しましょうか?」
「資料に目は通してある、必要ない」
「…それじゃあ尋問の続きを頼むよ、弁護人」
「わかりました」
果たしてアス姉は解決に導いてくれるのでしょうか…


                尋問開始 ~決定的なモノ~

「水銀燈、見たっていうその赤い光の大きさは?」
「…わかんなぁい、憶えてないわぁ」
「じゃあ、その赤い光は家の中にいたか外にいたか、わかる?」
「…窓越しだったから外かしら、でもそれは外に注意を向けさせるためよぉ」
「フン、やっぱり」
アス姉の目が光りました。
「裁判長、弁護側には被告人の無実を説明できる仮説があります。よろしいでしょうか」
「…構わん」
咳払いをしてから、アス姉は話し始めました。
「水銀燈は桜田家に行くためにNのフィールドと呼ばれる空間を通りました。いわゆる異次元空間です。
 そして昨日のその時間、ハル姉はイライラしていた!アタシに謝る勇気がなかったから」
最後の部分が引っ掛かりますが、アス姉とぎくしゃくしていたハル姉は確かにイライラしていました。
「桜田家には閉鎖空間も誕生していた。これは機関に確認が取れるはずです。
 そしてネルフの皆さんなら知ってるでしょう、閉鎖空間も異次元空間。
 水銀燈はNのフィールドを通った事により、偶然閉鎖空間に入りこんでしまった!」
そ、そんなアホなです!
「ちょっと黙ってて。閉鎖空間の中は聞いた話によると、色が極端に薄いのよ。
 暗いと感じても無理はないわ。そして空間が破壊される時に割れるような音もする。
 水銀燈がホーリエだと思った赤い光、それはきっと機関の人でしょう。戦う時にそうなると聞いてます」
アス姉はお代官様をチラと窺いました。
「ああ、私もそう聞いている。続けたまえ」
「このように、水銀燈の証言と閉鎖空間の状況がすべて重なる事から、くんくんが消えたのは偶然の一致であり、
 真紅の無実を主張します!以上!」
片手を台について周りを見回すアス姉。口には出しませんが、かっこいいです。
ハル姉を追い出したのもこの事を説明するために、でしょうか。

ざわ…
   ざわ…
カンカンカン!
「静かにしろ…反論はないか」
お代官様は検事に顔を向けました。
「水銀燈が閉鎖空間に迷い込んだ偶然、その途端に空間がくんくんごと消えた偶然…かなり確率は低いですが、
 0とは言えない…だが、それだけだ」
「わかってるわ。証拠はないわよ、今のところはね」
まさか証拠って、ハル姉に取りに行かせたくんくんそのものですか?
「そうよ。機関の人には悪いけど、ハル姉はただでさえイライラしてるはずよ。
 さらになかなか見つからないハル姉はイライラして桜田家に閉鎖空間を作る、そこを副団長に取りに行ってもらうのよ。
 水銀燈の羽がくっついた、世界で1つのくんくんをね」
でも、閉鎖空間の発生はランダムなはずです、チビ人間の家にできるとは限らんです。
「…それまでもたせるしかないわ」
むちゃくちゃです。

「アスカ、君の主張だとくんくんが消えたのは偶然が重なった結果であって、事件ではないという事かな?」
「ええ、そういう事よ。加持さん」
「じゃあさっき聞けずじまいだった真紅のアリバイを証言してもらいたいんだが、いいね?」
「…どうぞ」

真紅が証言台に上りました。
「アリバイがあると言ったらしいが」
「ええ裁判長。取り調べの時は言わなかったけれど、鞄のくんくんが見つかった以上隠す事はもうないわ」
「ならば…君のアリバイとやらを聞こう」
「寛大なご判断、痛み入りますわ。ローゼンメイデン第5ドールの名にかけて、それに答えましょう」
一礼をして顔を上げた真紅の目は、翠星石には何故か悲しげに思えたのです。


             証言開始 ~真紅のアリバイ~

「昨日のお昼は、くんくん探偵を見ていたわ。1人で見ていたから…証人はいないけれど。
 取り調べの時に言わなかったのは、くんくんに未練があるように勘ぐられると思ったから…ごめんなさい。
 内容はよく覚えているわ。くんくんの推理がいつものように冴えに冴えて、
 アダムの碑石を盗み出したペロリーナ男爵をひょうたん湖に追い詰めた。
 けれどドラネコ警部はどんくさくって、またまた男爵を取り逃がしてしまうの。
 あの警部よりも私の方がよっぽどくんくんのお役に立てるのに」

「…放送の内容は今調べさせてある。尋問を」
「待った!残念ながら、そのアリバイは通らない」
検事が煙草を挟んだ2本の指を真紅に突き付けていました。
「どういう事だ」
お代官様に問われた検事は不敵にに笑いました。忌々しい奴です。
「真紅、君が見ていたのはDVDではないね?」
「ええ、DVDは全てあげてしまったから」
「君がくんくんを見たのは事実かもしれない。嘘をついても仕方がないからな。しかしそれは再放送だ」
「…」
真紅は黙ってしまいました。
「あの局はその日の朝に流した番組を、昼にまた再放送する。くんくんは人気番組、再放送もされている。
 君が朝に番組を見ていれば、事件の時間に番組を見ていなくても今の証言をする事が出来る。
 つまりくんくんを見ていたからアリバイがあるという君の証言には意味がない!」
「異議あり!真紅は寝坊でもしたのよ、きっと」
「異議あり、桜田家の証言もとってある。真紅はその日の朝起きてみんなと朝食もとっている。
 そして桜田家のリビングのテレビは、確かにくんくん探偵が流れていた。複数の証言がある」
「そ、それを真紅が見たっていう証拠がないわ!」
「確かに以前のようにテレビに食い付いてはいなかったようだ。だがそれでも見ていないという事にはならない」
「みんなで口裏を合わせて真紅をはめようとしているのよ!」
「おいおい冗談はよしてくれ、これは善意の証言だ」
ざわ…
   ざわ…
なかなか白熱してるです…アス姉の言ってる事が無茶なのが残念ですが。
大体、のりやチビ人間が真紅をはめようとするはずがないんです…

カンカンカン!
お代官様のハンマーが立て続けに響き、時間をかけてようやく法廷内は静まりました。
「静かにしろ…証人は朝、放送を見たのか」
お代官様の顔はかなり厳しいものでしたが、真紅は動じる事なく答えました。
「いいえ、私は朝の放送は見てない。理由もあるわ」
「何故だ」
「先ほど検事が言ったとおり、私は誇り高きローゼンメイデン。1度別れを決心した相手ですもの、
 おめおめと人前で応援する事なんて、できなかった…だからみんながいる朝にくんくんを見る事は出来なかった」
真紅の目が、さっき一瞬見せたものに戻っていました。とてもとても、悲しそうな目。
「それで、みんなのいないお昼に1人で見る事にしたのね?」
「ええ、のりが部活、ジュンが図書館、雛苺はお昼寝で誰もいない時、人目を忍んで…
 そんな情けない事をしていたの…私はダメなお人形…こんなのだからくんくんにも逃げられたのだわ」
?くんくんに逃げられた?アス姉も引っかかったようです。
「待った!真紅、くんくんに逃げられたって?」
すかさず検事も突っ込んできます。
「異議あり、その事はこの事件とは無関係だ」
「異議あり!無関係じゃないわ、真紅のくんくんも消えたって事じゃない!
 水銀燈のくんくんが消えた事と関係があるかもしれないわ!」
「いやしかし」
「弁護人の異議を認める。被告人には改めて証言をしてもらおう」
検事が何か言いかけましたが、お代官様がかぶせてくれたです。なんとかつながったです…


              証言開始 ~消えた真紅のくんくん~

「3日ほど前だわ。私は2階でくんくんと一緒に本を読んでいた。
 他のみんなは下にいて、私は紅茶をいれさせるために下に降りたの。
 戻ってくるとくんくんがいなくなっていた。それだけよ。きっと私に愛想が尽きたのだわ。
 きっと私があまりにもそばに居過ぎたせい…もう少し距離を置くべきだったのかもしれない…
 だから私は想いを断ち切るためにDVDや変身セットを…
 でもどうしても諦めきれなくて、また新しいくんくんをジュンのパソコンで…」

「真紅、君は言葉では反省しているようだが、新しいくんくんにも紅茶の香りがばっちり移っているよ?」
「そ、それは…ひ、人は同じ過ちを繰り返すものなのだわ」
「…問題ない」
ありゃ?今まで無表情だったお代官様の顔がなんか少し赤いような…
「ダメよ翠、司令はちょっと変わってるから」
はあ、そうですか。
「ゴホン、では弁護側は尋問を」


              尋問開始 ~消えた真紅のくんくん~

「くんくんとは常に一緒にいたワケなのね?」
「ええ、あの時ほど後悔したことはないわ」
「という事は、真紅を知ってる人は当然、真紅のくんくんも知っていた」
「!!もしかして、私とくんくんの仲を引き裂こうとした誰かに盗まれたのかも知れないわ」
まあ見てて気持ちのいいもんじゃなかったですね、あの一方的ないちゃつきっぷりは。
「す、翠星石!あなたなんて事を…あなたね、あなたが私のくんくんを」
ひ、ひえぇ、やぶ蛇だったです。
「落ち着いて。真紅、あなたはくんくんが消えた後、マスターのパソコンで新しいくんくんを手に入れたのね?」
「ええ…世間の人は私を笑うでしょうね、節操のない女だと」
「いやいや…とにかく!また1つ真紅の動機が弱まったわ。真紅はジュンのパソコンで新しいくんくんを
 手に入れる事が出来る。わざわざ危険を冒して盗む必要なんてないのよ」
なるほど、確かにそうです!チビ人間のパソコンは何でも届く魔法の箱ですからね。

「異議あり!」
台を叩いて検事が声をあげました。またしても不敵な雰囲気です。
「この真紅の鞄から出てきたくんくん、これは通販で売られている量産品だ。どこにでもあるシロモノだ。
 だが水銀燈のくんくんには冒頭でも言ったように羽がくっついていて、希少価値は高い。のかもしれない。
 くんくん好きならば、手に入れたいと魔が差してしまう可能性もある。さらにだ」
検事は持っていた煙草を口の端にくわえて続けます。
「さっきは突っ込み損ねたが、どうも弁護側は水銀燈のくんくんが消えた事と関連付けようとしているようだ。
 だが、水銀燈のくんくんが消えた件のそっちの主張は、偶然が重なった結果、だろう?」
「ム…」
「真紅はNのフィールドも使っちゃいないし、閉鎖空間は普通なら機関の連中にしか入れないんだ。
 なのに真紅のくんくんが消えた事と関連付けようとするのは、ムジュンしていないか?」
明らかにがっくりするアス姉、しっかりしろです。
「…くっ、やられたわ…ハル姉はまだなの」
え…ひょっとして時間稼ぎだったんですか?
「もうちょっといけるかなって思ったんだけど…急ぎ過ぎちゃったみたい」

「弁護人は結局何が言いたい」
さっき無意味にホンワカしていたはずのお代官様の目がまた怖くなってるです。
「えーと、この2つの事件の共通点、それは…水銀燈よ!」
うわー思いつきでしゃべってるです…急に名指しされた水銀燈はきっと烈火のごとく怒って…あれ?俯いちまったです。
「アタシの主張は変わらないわ、水銀燈のくんくんが消えたのは偶然。でも真紅のくんくんは、盗まれたのよ!
 ……そう、そこの水銀燈にね!」
「な、何をバカな」
検事は気付いてないようですが、水銀燈の様子が明らかにおかしいです。まさか本当に…
「時系列では正しいはずよ」
「おいおいアスカ、いくら正式な裁判じゃないからって、それじゃただの言いがかりだ」
「そうだわ、水銀燈に証言してもらえばいいのよ、くんくんをどこで手に入れたか」
あ、水銀燈の肩がピクってなったです!これはやってるですね!
「それも言いがかりだ」
むむむ、せっかく翠星石が見抜いたのに…
「裁判長、もう弁護側の言う事は滅茶苦茶です。弁護する気もないらしい」
検事はゆっくりと両手を机に置き、お代官様を見上げました。
「そろそろ、判決を」
「ま、まずいわ、異議あり!」
「…今度は何だ」
冷ややかな目です。絶対零度です極寒地獄です~
「えー…その、真紅は赤で同じ赤が好きなアタシとしては真紅が盗みなんてするはずが…」
「…もういい」
お代官様がハンマーを手に取ったその時、法廷の扉が静かに開かれました。

「お待たせしてすみません」
そこにいたのはハル姉の太鼓持ち、ニヤニヤ人間(大)でした。
「涼宮さん達が来る前に簡単に説明しておきましょう。もうすぐ盗まれたとされるくんくんを涼宮さんが持って来てくれるはずです。
 そしてそのくんくんは、間違いなく桜田家の閉鎖空間に転がっていました。これは僕が保証します」
聞いた瞬間、ガッツポーズするアス姉。
「よっしゃあ!これでアタシの推理が証明されたわ」
まもなくハル姉達も駆け込んできました。
「アスカ!あんたの言うとおりだったみたい。見つけたのは古泉君だったけど。これ」
その手には、黒い羽根のついたくんくんがありました。
「あぁっ!ワタシのくんくん…返してぇ!」
叫ぶ水銀燈。検事は言葉もないのか、黙っています。ざまあみろです、大逆転です!
「翠、これ持ってて。裁判長、これでこちらが主張したとおり、
 やはりくんくんは盗まれたのではなく、事故だった事が証明された!以上です」
くんくんを翠星石に渡して、アス姉はビシッと決めました。人差し指が輝いてるです。
ざわ…
  ざわ…
「アスカ、古泉君から聞いたんだけど、そのくんくん他のぬいぐるみに紛れてたんだって。
 確かに人形用の服がいっぱいあったり、大量の通販用品とかがあって変わった家だったわ。
 それで水銀燈は慌ててたから見つけられなかったんだろうって。本当かしら?」
「え?ま、まあ見つけた本人がそう言ってるんだからそうなんじゃない?それよりさ、もう終わるから。
 控室で待っててよ」
「なんでよ、あんた代わりなさいよ」
つめよるハル姉に、アス姉は頭をかきむしって答えます。その姿はまさしく猿そのものです。
「あーもうめんどくさい。ほらほら、誰か連れてって」
「ちょ、何よ!あんた達離しなさいよ!団長をなんだと思って…」
ハル姉はキョン人間達に連れていかれました。法廷内は未だ騒然としています。

カンカンカン!
「静かにしろ。検察側の反論は」
検事はじっと腕を組んでいます。諦めてくれたんでしょうか。
「確かに水銀燈のくんくんは桜田家の閉鎖空間にあったらしい。機関の人間が嘘をつく理由はないからな」
「そんな!じゃあ真紅の仕業じゃないっていうのぉ?」
叫ぶ水銀燈を制して、検事は続けます。
「こっちもおいそれと負けを認めるわけにはいかない。水銀燈は閉鎖空間に迷い込んだ、これはどうやら事実。
 だが証明されたのはそれだけだ。水銀燈の見た赤い光、機関のエスパーの可能性もあるが、ホーリエの可能性だって
 まだ消えちゃいないんだ」
「な!何を今更!さっき普通は機関の人間以外は入れないって言ったの、加持さんじゃない!」
おもっきり台を叩くアス姉。何度も叩かれて、ちょっぴり台が気の毒です。
「普通はな。だがこの事態は異常だ。それに真紅のアリバイは証明されていない。弁護側が話を逸らせたからな」
「そんな…」
でもこれ以上長くなるとハル姉が黙って待ってるはずがないです。そうなると裁判どころじゃなくなるです。
「もう裁判長に今までの審理を総括してもらって、判断を任せるしかないさ」
こ、ここまできて…あの変態のお代官様に?
「まずいわ、白い肌に赤い瞳。水銀燈のルックスってファーストに似てるのよね…」
アス姉が呟きます。確かに髪の色も薄くて似てる部分は多いです。だからって…
「裁判長さぁん…」
「うむ…」
うわぁ…お代官様のあの目、不安になってきたです…
「決定的なものを出せなかった、負けちゃう…イヤ、負けるのはイヤ」
アス姉…こんな時、くんくんならどうやって事件を解決するんでしょう。
くんくんをぐっと抱きしめたその時、翠星石はある事に気付きました。

「異議ありぃですぅ!」

翠星石は台に上って叫んでいました。法廷中の視線が集まってきます。人見知りの翠星石はちょっと恥ずかしいです。
「なんだ」
気を取り直して、翠星石はくんくんをお代官様に渡しました。
そのくんくんは世界に1つしかない水銀燈オリジナルのくんくんです。そうですね?検事。
検事はうなずきました。
さあ!そのくんくんの匂いを嗅いでみるです!そりゃもうくんくんと!
お代官様が答えた時、翠星石は勝ちを確信しました。
「む、これは…紅茶か」
「な!まさか!」
検事がめちゃめちゃ驚いてるです。これは気持ちいいです、クセになりそうです。
さあ次は検事が押収してきたくんくんの匂いを嗅ぐです。真紅の匂いがたっぷりしみ込んでるはずです。
「同じだ…真紅…」
お代官様の鼻息が荒くなってきたので、アス姉と検事が取り返しました。
コホン、いいですか?
「…問題ない」
弁護側は改めて主張するです。盗まれたとされているくんくんも真紅のくんくんです。
従って、真紅はもともと盗む必要なんてなかったのです!そして、盗んだのは…水銀燈の方だったんです!
「きゃあああぁぁぁ!」
水銀燈の叫び声が法廷に響き、ドサリと倒れる音がしました。

「水銀燈は?」
お代官様の声が低く響きます。
「気絶しただけのようで、控室に休ませています」
検事も静かに答えます。
「そうか。最後のあれがなければ、どうなっていたかはわからんが、判決を下す。
 被告人、真紅は…無罪だ」
とうとうやったです!
「やったわね!大手柄よ翠」
あ、当たり前だのクラッカーです…あれ?真紅はあんまり嬉しそうじゃないですね?
「あ…いえ、あなた達にはとても感謝しているわ」
その顔はどう見ても嬉しそうじゃないです。
「真紅、君は水銀燈を訴える事も出来るが、どうする?今度こそ決定的だ、裁判もすぐ終わる」
検事が真紅に言いました。でも真紅は、即座に答えます。
「訴える必要なんてあるのかしら?水銀燈は貸したくんくんを返しに来てくれただけなのだから」
「…そうかい、やれやれ今日は完全に悪役だ」
検事は初めて優しそうに笑いました。なるほどこう笑えばなかなか見れる男です。
「さ、ハル姉に報告に行かなきゃ。めんどくさいけど」
アス姉の笑顔も久しぶりに見た気がするです。
「以上で審理を終了する。閉廷」
最後のハンマーの音が、法廷に鳴り響きました。

              同日 午後3時32分
              ネルフ被告人控室(仮)

「あ!本当にもう終わっちゃったの?」
そんなチワワみたいな目で見られても困るです。
控室にはハル姉の舎弟達やアス姉のクラスメイト達もいて、朝とはうって変わって賑やかです。
「アスカ、あれからどう打開したのよ、古泉君の言ってた通りなの?」
「う、うん。そうそう」
ニヤニヤ人間(大)がどんな説明をしたのかは知らねえですが、奴ならうまくぼやかしてるんでしょう。
「なーんだ、壮大なトリックがあったわけじゃないのね。せっかく台本の参考にしようとしてたのに」
「台本?ハル姉台本書いてたの?」
「そうよ。世間じゃ裁判員制度とか騒がれてるし、いっちょ裁判モノを書こうと…何よキョン、文句あんの!」
ハル姉がキョン人間に突っかかり始め、呆れている翠星石達の所にニヤニヤ人間(大)が近づいてきて、
翠星石達は控室の隅に引っ張り込まれました。
「お疲れ様でした」
「今ハル姉から聞いたんだけど、もしかして今回の件は…」
アス姉が聞いた事は、翠星石も聞きたい事です。ニヤニヤ人間(大)はニヤニヤしたまま答えます。
「お察しの通りでしょう。しかし涼宮さんの目的は裁判そのものではなかったのかもしれません」
どういう事ですか?
「推測ですが、キーワードは仲直り、でしょうか。裁判が始まる前と終わった後、
 あなた達姉妹と真紅と水銀燈の仲は、明らかにいい方向に向かっているかと」
「あ…」
確かに冷戦状態だったハル姉とアス姉の氷はすっかり融けて、極めて自然に会話をしてるです。
「真紅と水銀燈を巻き込んだのは、涼宮さんらしいというかなんというか…
 復活に際してのお祝いみたいなものじゃあないでしょうか?推測の域を出ませんが」
なんてお節介です!やり方がひねくれすぎです!
その時控室に真紅と水銀燈が入ってきました。こいつらもちゃっかり手なんかつないじゃってるです。

「翠星石、お姉さま、改めてお礼を言わせてもらうわ。ありがとう」
「本当にごめんなさぁい…」
最敬礼する水銀燈に、翠星石は驚きを隠せないです。おめー変わりすぎです!
「大丈夫よ翠星石。私と水銀燈はこれからもくんくんをめぐるライバルなんだから」
「そうよぉ。真紅にはともかく、アンタにはぜぇったい負けないんだからぁ」
…なんか色々と気持ちが悪いです。これでよかったんでしょうかハル姉は。
「でも、なんだかんだで最終的に解決したのはくんくんだったわね。さすがだわ、ああ…くんくん」
「本当。くんくんには敵わないわぁ」
もう突っ込む気も失せるです…

「あ!真紅ちゃん達仲直りできたんだ、よかったわね~」
またややこしいのが来たです。
「お姉さま、この度は本当にお礼のしようもないわ」
「ごめんなさぁい」
「いいのよ、あんた達の事気になってたのよ。それよりも頑張りなさいよ」
2人の肩をぽんぽん叩くハル姉。翠星石達にもしてくれたっていいのに。
「当然だわ。私はお姉さまの妹も同然なのだから」
「ワタシもよぉ」
「あらあら素直でかわいい妹達じゃない、もうウチに住んじゃっていいわよ!意地っ張りのこの2人は追い出すから」
ななななーんてこと言いやがるですかこのバカ姉は!
「ちょっといつからあの家はハル姉の家になったのよ!アタシの家よ!出てくんならそっち!」
「あんたの言ってる事はおかしいわ!」
「ハル姉こそ!」
おめーらが2人ともおかしいんです!
そして姉2人と翠星石は、全く同じタイミングで指をつきつけあって叫んだのでした。
認めたくはないですがやっぱり姉妹なのでしょう。

「「「異議あり!!」」です!」


おわり