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7月6日 放課後 プロローグ

  SOS団部室に、見事な笹の木が運ばれてきていた。
  今年も七夕には願い事をとハルヒが古泉に用意させたものである。
  「さあ、今年はアスカと翠も書きなさい!特に翠!原作移籍続行って必ず書きなさい!
   きっと講○社か○川あたりがやってくれるわよ!」
  など相変わらずハルヒが大声でわめいている。
  「もう!うるさいわよハル姉!」
  アスカもいつもどおりの調子でハルヒに負けない大声でやりあっている。
  それはいつもどうりの365日のうちの1日だと、アスカは思っていた。

  しかし、全員が短冊に願い事を書き終わってひと段落したところで、 
  アスカはハルヒが妙におとなしいことに気がついた。
  一人で雨の降り続く窓を眺め続けている。常のハルヒなら
  「なんでこんな日に雨が降るのよ!願いが届かないじゃない!」
  などとわめき散らしているだろうに・・・。
  そこでアスカはハルヒに話しかけてみた。
  「どうしたのハル姉?なんか静かじゃない」
  「んー、別に。考え事よ」
  やっぱりおかしい気がする・・・。
  そこでアスカ、最大の理解者(というとお互い認めないだろうが)、キョンに聞いてみた。
  「キョンさん、ハル姉、少しおかしくないですか?」
  キョンは、表情を変えずにこう言った。
  「大丈夫だよ、アスカちゃん。七夕が終われば、すぐにいつものハルヒに逆戻りだ」

  姉が絶大なる信頼をおくこの人の言葉で、アスカはひとまず安心することにした。
  そして、その日の夜もなにごともない普通の夕食の時間が訪れ、翠が騒ぎ、ハルヒが
  怒り、アスカがとばっちりを喰らった。
  アスカはやっぱりいつもどおりのハル姉だった、と安心し、ほんの少し残念がって、
  なにごともない365分の1日、7月7日を迎える為に眠りについた。



7月6日、夜

  トイレに起きたアスカはリビングで夜空を見上げるハルヒを見つけた。
  「どうしたの、ハル姉?」
  「ん・・・。別になんでもないわ。天の川見えないかなあ、って思ってさ」
  「今年は難しいんじゃない?九州は大雨らしいし、梅雨前線がちょうど停滞しちゃってるからねえ」
  「そう・・・」
  ハルヒは顔を沈ませた。
  「どうしたのハル姉?今日、元気ないわよ」
  アスカの問いかけにハルヒは笑顔を作って答えた。
  「そんなこと無いわよ!うん、今も少し考え事してただけなんだから」
  「そ~お?」
  「あ、もうこんな時間、アタシはもう寝るわ。アスカ、アンタも早く寝なさいよ!」
  「ちょ、ちょっと、ハル姉!?」
  アスカが止めるのも聞かずにハルヒは部屋に戻ってしまった。
  「・・・どうしたのかしら?」
  
  アスカはその後気になって眠れなかった。
  そして悪い気がしつつ、ハルヒの寝室をのぞいてみることにした。
  「ごめん、ハル姉」
  そっとドアを開けると、スヤスヤ眠る姉がいた。
  「・・・取り越し苦労っだったかな。」
  アスカはそう思い、寝顔を見て部屋に戻ろうとした。しかし、その寝顔には・・・
  一粒の涙が流れていた。


  「翠、翠、起きなさい!」
  ガンガン、とアスカは翠の鞄を叩いた。
  「ふぁぁぁ~、なんですかこんな夜中にぃ~」
  「ハル姉の夢の中へ行くわよ!」
  「えぇ~、何でですかぁ。翠星石は眠たいからまたにするですよぅ~」
  「アンタ、今日ハル姉が元気なかったの気づかなかったの!?」
  「そうですか?いつもどおり騒がしかったですよ?」
  「アンタバカァ?そう振舞ってただけに決まってるでしょ!?きっとそうよ!
   そうじゃなきゃあのハル姉が寝ながらとはいえ泣くわけがないわよ!」
  翠はびっくりして顔を上げた。
  「ハル姉が泣いたですって!?あの笑うか怒るかしかしないハル姉がですか?
   ・・・えーい、もうわかったですぅ!しょうがないから連れて行ってやるですぅ!」
  「よし、さすがアタシの妹!じゃあさっそく行くわよ!」


7月7日、未明 ハルヒの夢1

  ヒューーーー、ドスン!

  「いたたた・・・土のグランド?」
  「ここは、どこですか?」
  夢の中は4年前の東中の校庭だった。
  
  敷地の周りは野球場帰りの人が列を作っていた。
  校庭では小学校6年生の時のハルヒのクラスメートたちが(もちろん2人にはわからないが)
  ドッジボールをして遊んでいる。
  中学生の同級生たちは帰宅するために校門へ向かって歩いていた。
  「翠、なんなのココは?」
  「わからんですが、状況からすると多分ハル姉の過去の記憶がごっちゃになって
   出てきてる世界だと思うですぅ」
  「ハル姉の過去、か・・・。ってことはハル姉はどこかにいるはずよね!探すわよ翠!」
  二人は校庭を見渡した。すると、中学校にはまずあるはずがないブランコに寂しそうに乗った、
  一人の少女を発見した。
  「いたわ翠!ちっちゃいけどあれハル姉よね!」
  それは中一のハルヒだった。  2人はハルヒに向かって走り出した。
  しかし、  

   ガシーーーーーーーーーーン

  あと30mに迫ったところで急に光の壁にはじかれた。
  「うわぁ!な、なんですかコレはぁ!?」
  「これは・・・ATフィールド!?ハル姉が、なんで・・・?」
  アスカたちが呆然としているその横を、ドッジボールがてん、てん、とハルヒに向かって
  転がっていった。ボールは光の壁にはじかれることなくハルヒの近くまで転がっていった。

  「涼宮ぁ、ボール取ってくれー」
  ドッジボールをしていた少年が叫んだ。
  しかし、ハルヒはうつむき加減のままブランコを小さく、ゆっくりこぐだけで全く反応しない。
  結局自分で拾いに行った少年少女達の会話が聞こえる。
  「やっぱり最近の涼宮変だよなぁ」
  「そうだね、あの野球場に行くって言ってた次の日から急に喋らなくなっちゃったし」
  「また一緒に遊びたいのね」
  しかしハルヒはやはり反応しなかった。

  少年達がいなくなると下校途中の中学生が近くを通った。
  しかし今度は双方がまるで反応しない。
  ハルヒは変わらずうつむき加減のままブランコを小さく、ゆっくりこぐだけ。
  中学生たちは触らぬ神に祟り無し、と言いたげな感じでチラチラ見るだけで通りすぎていく。


7月7日、未明 ハルヒの夢2

 「・・・こんな元気のないハル姉、初めて見るですぅ」
  「ハル姉、昔はこんなに独りぼっちのだったの・・・」
  
  しばらく無言で立ち尽くしていた2人。しかし、意を決したように翠が光の壁に両手を貼り付けた。
  「翠!?どうする気!?」
  「・・・アス姉、翠星石は、こんなハル姉、見たくないですぅ!
   やいハル姉!いじけてないでこれをどけるですう!!」
  翠は、光の壁に体を押し当てて、叫んだ。
  するとハルヒがこちらを向いた。
  「翠・・・?なんでここに・・・?」
  「気づいた!アス姉!おまえも一緒に叫ぶですぅ!!」
  「そ、そうね!ハル姉!そっちに行きたいの!ATフィールド消して!!」
  「アスカまで・・・」
  「ほら、早くするですぅ!」  
  「ありがと、翠、アスカ」
  ハルヒの顔に微笑みが浮かんだ
  「ハル姉!よかった」
  「笑ったですぅ!」
  しかし、その笑顔はすぐに消えてしまい、ハルヒはまたうつむいてしまった。
  「でも、ゴメンアスカ、翠。今日は違う、違うの・・・」
  「「ハル姉!!」」  
  「今日は七夕なの・・・、会いたい、会いたいよ・・・・・、―ョン」
  ハルヒの、途切れそうな声が聞こえた。


7月7日、未明 ハルヒの夢3

  (なに言ってんの?キョンさんには今日も会ったじゃない!)
  とアスカは思った。そしてハルヒの名をもう一度叫ぼうとしたそのとき。
  急に、天の川きらめく夜空に、光が満ちた。

  光の中には一人の男の影が浮いていた

  「ジョン!」
  ハルヒは叫んだ。
  ジョンと呼ばれた人影はキョンにそっくりだった
  「ジョン、会いたかった・・・」
  「ハルヒ、おまえがそんなこと言うとは思わなかったぞ。元気にしていたか?」
  その声もまるでキョンそのものだ。だが、光にさえぎられて顔だけは見えない。
  「ジョン、あのね、アタシ北高に行ったんだよ。ジョンを探しに。」
  「ああ、よく知ってるさ」
  「それでね、不思議なことをいっぱいみつけてやろうと思って、頑張ったんだよ」
  「周りは大変だったんだろうな」
  「そんなことないわ!あのね、アタシSOS団っていうの作ったの!ジョンに言われた言葉の
   頭をとったのよ。でね、団員も4人いてね、みんな楽しみながら協力してくれてるのよ!」
  「――本当にそうか?」
  「ホントよ!
   有希はあいかわらず無口でおとなしいけど最近は自分から手伝ってくれたり
   やりたいことはどんどん自分から興味を示すようになったわ!
   みくるちゃんもどんどんドジッ娘メイドに磨きがかかってきたし、有希や古泉くんとも
   打ち解けてきたわ!
   古泉くんは相変わらず本心を全部見せてくれてない気がするけど、でもなんか前より団員を
   信頼してくれて本当にみんなのために行動してくれるようになったわ!
   キョンは、相変わらずだけどね」


7月7日、未明 ハルヒの夢4

  ハルヒのATフィールドらしきものがやさしく消え始めた。
  「な、何者ですかあの浮遊しているキョン人間にそっくりなヤツはぁ・・・」
  「ア、アタシだってわからないわよ!」

  「そうか。・・・なあハルヒ、今、楽しいか?」
  「もちろん!SOS団は本当の仲間って感じだし、妹達も手はかかるけど一緒に居ると
   SOS団にいるときと同じくらい楽しいわ!
   でもね、ジョン・・・」
  「なんだ?」
  「宇宙人、未来人、超能力者、それに異世界人・・・、アタシはまだ見つけられてないの。
   なのに、なんか今の日常に満足しちゃってる自分がいるの。
   そんなアタシをジョンが見たら、なんて言われるのか、怖かったんだ・・・」
  「――バカだなあ、おまえは」
  「!?な、なによその言い方!」
  「俺はおまえが楽しくなさそうだったからヒントをあげただけなんだ。そのヒントをもとに
   どういう楽しい日々を見つけるかはおまえ次第じゃないか。そして、今おまえは楽しい日々を
   送ってるんだろ?どこに問題があるんだよ」
  「・・・ジョン」
  「それに――」
  「それに?」
  「おまえ、実はもう、会ってるんじゃないか?宇宙人未来人異世界人超能力者たちに」
  「・・・・・・うん、でも、そうなんじゃないかな、そうだったらいいな、って思ってるだけ。
   ひょっとしたら、ジョンに会いたかったから、そう思い込んでるだけなのかなって・・・
   そう思うと、自分で確証が持てなくて・・・」
  「いいじゃないか」
  「え?」
  「確証なんていいじゃないか。宇宙人その他と楽しく遊ぶのがおまえの目的だろ?
   楽しかったら本物でも偽者でもいいじゃないか。
   それにな、ハルヒ―――
  「ジョン?」
  ジョンは手を差し伸べながら、言った。
  「俺とはもう、北高で会ってるぞ」
  「―――・・ョン!!」
  ハルヒは満面の笑みを浮かべ、彼の手をとった。
  そして、近くまで来ていた2人に、一瞬、顔が見えた
  「あれはやっぱり!」
  「キョン人間!?」


7月7日、未明 ハルヒの夢5

  ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


  ハルヒが手をとられ空へ舞い上がった瞬間、世界が揺れ始めた
  「な、何が起こったの!?」
  「ゆ、夢から醒めはじめたですぅ!早く帰らないと閉じ込められちゃうです、急ぐですアス姉!」
  アスカが翠にしがみつき、翠は全力で出口に向かって飛んだ。


  アスカが気がつくとそこはハルヒの部屋だった。周りはもう明るい。どうやら徹夜してしまったようだ。
  「う~~ん・・・」
  ハルヒが起きたようだ。
  (マ、マズイ!!)
  アスカは思うが時すでに遅し。
  「・・・って、チョットアンタたち人の部屋で何やってるのよ!」
  ハルヒは目覚めるなり自分の部屋に転がる妹たちの姿に叱責を加える。
  「あ、あははですぅ・・・」
  「ちょ、ちょっとね・・・」
  2人は笑ってごまかすしかなかった。


7月7日、朝 食卓

  「ふんふんふーん」
  鼻歌を歌いながら朝食を作るハルヒ。
  「どうしたのハル姉、めずらしくご機嫌じゃない」
  「チョットね、いい夢見たんだ」 
  「ふーん」
  ご機嫌なハルヒを久々に見る気がする、とアスカは思い珍しく詮索はしなかった。
  まあその「夢」を知っているから、が主な原因だが。
  「ちょっとアス姉!」
  翠が話しかけてきた。
  「ハル姉やたら機嫌いいですけど、あの夢っていったいなんだったですか?」
  「・・・アタシだってよくわからないわよ。まあハル姉が元気になったんだしいいじゃないの!」
  そうアスカは答えた。

  そしてアスカは考えてみた。
  姉妹が出会う前、平凡な日々にいたハルヒになにかしらのきっかけを与えたのが、あの男ジョン。
  それがたまたま七夕だったから、七夕にまた、会いたくなったのだろう。
  ハルヒはジョンをしたっていたが彼女の前から姿を消す。彼を探す為に言動から関連のありそうな
  北高へ入学したハルヒは、そこで彼に生き写しのキョンに出会い、彼の残した言葉を使った
  SOS団を設立、彼への思いは彼にそっくりなキョンへと受け継がれ・・・
  「う~ん、なんてロマンチック!!」
  「ひゃあ!急に大声あげるなですぅ!」
  「な、急にどうしたのアスカ!?」
  「え、いや、別に、ハハハ・・・」
  ちょっと少女趣味すぎるし、ありえないかと思いながらアスカは苦笑を浮かべた。
  不思議そうな顔をしながら食卓に朝食を並べるハルヒ。
  
  「そうですぅ!」
  今度は急に翠が声を上げる。
  「ハル姉、ジョンって誰ですか?」
  「な!?」
  顔を真っ赤にして皿を落としそうになるハルヒ。
  「ちょ、翠!バカ!」
  あわてて翠の口をふさぐアスカ。
  「ちょ、ちょっと、何でジョンのこと知ってるのよ!まさか、アレ、アンタたち夢の中に来て・・・」
  「ち、ちがうわハル姉!えーと、そう、寝言!寝言で聞いたのよ!」
  「問答無用だわ!どっちにしろ勝手にヒトの部屋に入って、許さないわよーーーーー!!」
  「きゃーーーー、ハル姉が怒ったですぅ~~!!」
  「翠!アンタなにヘンなこと聞いてんのよーーー!!!」
  「まーーーちーーーなーーーさーーーーーーーーーーい!!!!!!!!」


7月7日 昼前 エピローグ

  騒がしすぎる朝食を終え、アスカは徹夜で眠い頭に眠気覚ましのシャワーを浴びせた。
  そして昨夜からの夢についてもう一度考えてみる。
  「・・・ハル姉にとって7月7日は特別な日なのかな、いい意味で」
  つい、「いいなぁ」と、口に出かかって止めた。

  リビングに戻ると、いつもと髪型の違う姉の姿があった。
  「どうしたのハル姉?髪なんてむすんじゃって」
  「別に、なんとなくよ。それよりアスカ、今日も不思議探索に行ってくるから留守番お願いね!」
  「あれ?今日は休みにするんじゃなかったの?」
  「気が変わったの!せっかくの七夕なんだし出かけないと損だわ!じゃ、よろしくね!」
  「はーいはい、いってらっしゃい。まったく元気な姉ねー」
  玄関まで見送って手を振るアスカの先には、昨日とは違う本当の満面の笑みを浮かべて
  走るハルヒの姿があった。

  そのいつもとちがう特別な日の髪型は、ポニーテールだった。