『はるひけ』第六話・点で勝負

アスカ、恐る恐る目を開ける。すると、暗闇の中から65という文字が浮かび上がる。
「お」と声を上げるアスカ。見ていたのは国語のテスト。
点を確認したアスカはほっと息をつく。
アスカ「なんだ、意外に大丈夫じゃない」
アスカ、予想よりもよかったテストを片手に、意気揚々とヒカリの席へ。
アスカ「ねえ、ヒカリ。国語のテストどうだった?」
ヒカリ「アスカは?」
アスカ「65点!」
アスカは自信満々に答える。
アスカ「赤点覚悟だったけど、まあまあね」
ヒカリ「そうだね」
しかし嬉しそうなアスカと正反対に、ヒカリは苦笑いを浮かべている。
アスカ「で、ヒカリは?」
ヒカリ、答えにくそうに。
ヒカリ「100点…」
アスカ、ヒカリの答えに一瞬固まる。
アスカ「ああ?100点中100点?百発百中ってこと?」
ヒカリは苦笑いを浮かべながら頷く。
アスカ「ノーミスってこと?パーフェクトってこと?」
ヒカリは苦笑いを浮かべながら頷く。
アスカ「つまんない!なんて面白くない点数よ!」
ヒカリ「ひっ!」
ヒカリは急に怒鳴られ、ビクッと身を竦ませる。
アスカ「そんなに国語が得意なら、国語辞典にでもなればいいのよ。この国語辞典!」
ヒカリ、アスカの言い草に涙を浮かべる。
ヒカリ「そこまで言わなくても………」
アスカ「それに比べて65点……なんて人間らしい数字かしら」
アスカ、自分の得点にうっとりする。
アスカ「国語辞典にケンカうってもつまんないわね。誰か勝負になりそうなヤツ…」
教室を見回すアスカに、ジンジが近付く。
シンジ「アスカー。国語のテストどうだった?」
アスカ「来たわね、サード!また私に勝負を挑む気ね!」
シンジ「え?サード…」
いきなり勝負と言われ、シンジは戸惑う。
アスカ「さあ、何点で勝負するの?言ってみなさい」
アスカ、そんなシンジのことは気にせず、話を勝手に進める。
シンジ「えっいや、勝負とかじゃなくて…66点…だったけど?」
勝負に負けたアスカはヒカリにうなだれかかる。
ヒカリ「碇くん…そこまで言わなくても…」
シンジ「え?僕何か悪いこと言った?」
わけの分からないシンジは困るばかり。
しかし、すぐにアスカは復活する。
アスカ「いや……まだ……まだ負けてないッ!」

ただいまの戦績1勝1敗。

アスカ「まだアンタとは一勝一敗……勝った気になるなよ!」
シンジ「え?僕いつ負けたの?」
アスカ「日本史のテストの結果で勝負よ!」
シンジ「まあいいけど……」
勢いに押され、シンジはその勝負を受ける。
アスカ「じゃあペナルティを決めましょ!負け犬は犬の真似をするっていうのはどうよ?」
ヒカリ、さすがにこれには止めに入る。
ヒカリ「ちょっとアスカ!大丈夫?そんなこと言って」
シンジ「うん。じゃあそれで」
アスカ「逃げないようにね。お手とかさせてあげるから」
しかしヒカリの心配をよそに、勝負することに決まった。

そして、テスト返却。
アスカ「61点。まあこんなもんか。ちなみにヒカリは?」
ヒカリ「え?」
隣にいるヒカリに点を聞く。
ヒカリ「ひゃくてん……」
アスカ「戦国時代にでも行けばいいよ」
ヒカリ、アスカの心無い言葉に傷つく。アスカはしかしそんなことは気にしない。
アスカ「61点…人間味溢れる素晴らしい点数なんだけど……」
しばし考える。
アスカ「さっきは65点だったし…」
アスカ、赤いペンを手に取る。

改竄

61点の1の部分の下に丸をつけ、66点に改竄をする。
アスカ「そういやシンジはさっき66点だったわね」
アスカ、6に改竄した1の上部分にも丸をつけ、68点に改竄する。
シンジ「アスカ、どうだった?」
改竄を終えたところで、シンジがテスト用紙を持ってやって来る。
アスカ「来たわね、シンジ。まずアンタはどうだったのよ」
シンジ、テスト用紙を見せる。
シンジ「69点」
アスカ「ま…負けた」
ヒカリ「二回も改竄したのに」
ヒカリ、ちょっと哀れそう。
シンジ「え?僕の勝ち?」
シンジ、ちょっと嬉しそう。
シンジ「じゃあ、お手」
シンジは嬉しそうに手を差し出す。
ゴッ!
しかしアスカはその手を思いっきり蹴りあげる。
シンジ、痛そうに手を押さえる。
シンジ「アスカ…それは足…」
アスカ「前足っていうぐらいだから、手だって足よ!足だって足よ!」
シンジ「え?ええ?」
シンジもヒカリもアスカの屁理屈の前で、言葉をなくしたのであった。


後日談
ヒカリ「…国語辞典になって、戦国時代に行けばいいのかな…」

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最終更新:2007年03月05日 19:07