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 企業戦士として過労死寸前まで働き詰め、限界まで追い詰められた俺は、このままでは潰れてしまうと脱サラして一念発起を決意。
 農業大学で学んだノウハウを活かして、田舎の農家として再出発を果たした。
 都会生まれ都会育ちの生粋の都会っ子であったため、最初の頃こそ田舎暮らしにはなかなか慣れなかった。
 コンビニは車で40分の距離だし、一回りも二回りも年上の農協仲間のおじさんたちとの酒盛りぐらいしか娯楽もない。
 けれど、都会の息苦しさや顧客のクレームも上司からの重圧もない。田舎ならではのんびりとしたライフスタイルを今はいたく気に入っている。
 知人に格安で譲り受けたこの古めかしい日本家屋で過ごす日々は決して華やかとは言い難いが、それなりに充実した人生を送れている。
 ……はずだった。 

「はぁーん? 旦那様ぁ? すきすきぃ?」

 飴を舐めしゃぶるような甘ったるい声を出しながら俺の肩にすり寄ってくる女性。
 否、これを女性……いやむしろ人間と呼んでよいものか。
 なぜなら、『これ』は腰から下が人ではないからだ。
 巨大なナメクジの頭から人間の上半身が生えた、見るもおぞましい異形なのである。

「いい加減その『旦那様』っていうのはやめてくれよ。あと、あちこち動き回らないでください。畳が粘液で汚れるから。
 掃除するのどんだけめんどくさいと思ってんの」

「もぉ~そんなツレないこと言わないで下さいましぃ? それにぃ、この身が這った痕跡はいわばこの『ツユ』めの愛の道標でございます♪
 掃除するだなんてとんでもない! もういっそ、家中ワタクシの愛まみれにして旦那様を優しく包みこんであげたい……。なんちゃってぇ?」

 そう言って勝手にキャピキャピと盛り上がっているナメクジ女ことツユ。話の通じない人外を前に俺は深い溜息をつく。
 素朴なスローライフを満喫していたのもつい先日までの話。現在、俺はこの半身半獣の『妖怪大蛞蝓』という疫病神に苛まれていた。
 こうなったのも一月前、無意識のうちにこのナメクジの命を救ってしまったことに端を発する。


 正確には野菜の上を這っていた小さな害虫をつまんで放り投げただけである。つまり助けたつもりは毛頭ない。
 しかしながら、本人いわく「力が弱まり小さいナメクジの姿で畑に潜んでいたが、運悪くそこに居合わせていた天敵のコウガイビルに襲われそうになったところ、
 貴方様に助けて頂いた」とのことで、不本意ながら自分は彼女の恩人になってしまったらしい。
 以来、このナメクジ女は恩返しのために嫁いできたと自負し、家に入り浸っているのだが。上半身美人が近くにいるというだけで、今の所メリットが何一つ無い。
 家事や畑仕事を手伝ってくれるわけもなく、日がな一日することと言えば粘液まみれの体で自分に引っ付くぐらい。
 一応、料理を振る舞ってくれたことはあるが、『ツユ特製・愛の鍋』と称した、雑草を湯で煮込んだ何か(しかも塩を直接触れなかったという理由で無塩)
 を作り出すため全くアテにならない。むしろ、俺が手塩を掛けて育てた野菜を夜な夜なこっそり食い荒らしたり、俺が仕事終わりの晩酌のため、
 楽しみに取っておいた冷蔵庫の中の愛しの缶ビールらを一缶残らず飲み干してしまうなど(曰くビールは人間の食べ物の中でも特に大好物らしい)、
 本当に単なる害虫でしかない。
 上半身の人の容貌だけを見れば、くびれた細い腰つきにひときわ目を引く豊かな胸という、俺のお下がりのYシャツを羽織っただけの格好では到底隠しきれない
 抜群のスタイル。長くて分厚い睫毛に憂いを帯びた垂れ気味の双眸。ウェーブのかかったベージュ色のボブカット。
 といった、まるで絵に描いたような絶世の美女なのである。
 おまけに彼女は小さい頃近所に住んでいてよく一緒に遊んでいたが、高校に上がる頃にどこかへ嫁入りしてしまった初恋のお姉さんに声と姿形がそっくりなのが
 余計に質が悪い。
 いっそ、妖怪絵巻にでも描かれる醜女だったら、なんの躊躇いもなく塩を1袋丸ごとぶっかけて退治してやるというのに。
 極めつけに、このナメクジ女は霊的な力によって鏡や写真、映像機器などに映らないオカルトチックな存在で、俺以外の人間が家に訪れるといつの間にか
 雲隠れしてしまう。そういうわけで、妖怪の実在を他人に証明することが出来ず、人を頼ることもできない。
 そうして今日も、畑仕事終わりからの風呂上がりという至福のひとときを、不快な粘液で部屋と服を滅茶苦茶にする美女の皮を被った害虫に
 ウザ絡みされるのである。


「ねぇ、旦那様聞いてますぅ? ねぇ~」

 座布団に座り地方新聞を読む俺の背中にもたれかかったツユが、額から生えた二本の触覚をニョロニョロと伸ばして頬をしきりに突いてくる。
 最初こそ彼女の奇異な造作の数々には慄いたものだが、慣れてしまった今となっては取るに足らないものである。

「ああ、もうやかましいなぁ。俺は今疲れてるの。全てに」

「でしたら、ツユ特製の料理でお疲れを癒して――」

「もう君の料理は二度と食べたくない」

「なら肩を揉んで差し上げます!」

「服が汚れるからやめて。というかくっつかないで」

「そ、それなら……」

「もう何もしないで。それが一番助かる」

 少々キツめにきっぱりと言い切ると、おちゃらけた態度を見せる彼女にしては珍しく萎れた様子を見せた。

「あの……、やっぱりこのツユめがお傍にいるのは迷惑なのでしょうか……」

「迷惑だよ。今のところはね」

「ガーン! それじゃあツユはせっかく旦那様に嫁いだというのに、何一つ旦那様の為になることをが出来なかったというのですかぁ……!ヨヨヨ……」

「今まで自覚無かったのか……」

「それなら、それなら! ワタクシが妻として旦那様にしてあげられることって一体」

「まぁ、出てってもらうことかな。強いて言えば」

「ガガーン!!」

 俺のひとことが痛恨の一撃となり、妖怪大蛞蝓はひどく打ちひしがれてしまったようだ。
 少し可愛そうな気もするが、中途半端に優しくして事態をなぁなぁにするのも好ましくないし、ここはきっぱり拒絶しておいた方がお互いのためになるだろう。

「な、なら……ならばせめて」

「?」

 塩をかけたわけでもないのに、心なしか身が縮こまったように見えるナメクジ女は、突然ゆらゆらと立ち上がり俺の背後に回る。

「せめて、最後に……い、一回だけでもぉぉお!」

「一回? 一体なんの――」

 俺が振り向いた瞬間。ナメクジ体の底面が視界一杯に広がる。
 気づいたときには、俺の身体は彼女の巨体によって床に押さえつけられてしまった。

「おえっ! い、いきなり何すんだ!?」

「せめて旦那様と袂を分かつ前に……『交尾』させてくださいっ!!」

「は、はぁ!?」

 錯乱した様子のナメクジ女を退けようにも、まるで熊にでものしかかられているかのような暴力的な質量の前に、身じろぎひとつすらできない状態だ。

「ぐふ、ぐふふふ。もう逃げられませんからねぇ」


「っ!くそぉ!なぁ、交尾って……。まさか、『セックス』ってこと……なのか?」

「人間の言葉でそうとも言いますねぇ」

「な、何を言ってるのか分からない。お前みたいな化け物とセックスなんかできるわけ――」

「そんなことありません。普通にできますよぉ? ワタクシのお腹の中にある卵に旦那様の種を注いでくだされば、子供だって作れます♪
 あっ、でも産まれるのは人間でなくワタクシの同胞になってしまいますけれども」

 このナメクジ女が語っているのは紛れもない日本語であった。だが、その語句一つ一つがまるで理解に至らなかった。
 脳の処理が追いつかずパニック寸前ななか、ただ直感的に本能に呼びかけているものがある。
 恐怖だった。
 得体の知れないものとの交合。それによって自分が自分で無くなってしまうのではないかという不安が胸にさざめいた。

「ひっ……や、やめろ……、やめろ……! 離せっ!!」

「うふふ……。旦那様ったら、怯えていらっしゃるのですね。まぁ無理もないのでしょうね。『最初』は皆そうだと聞き及んでいますし。
 ……ですが、私たちにとっての最初は最後でもありますゆえ、せめて旦那様にはワタクシとの交尾によって、
 甘美で気持ちよい心地になってもらいたいとツユは切実に願うところなのですよ♪」

 彼女の身勝手極まりない言い分は、不安定な精神に追い打ちをかけた。
 心に絡みついてゆく重暗い感情を怒りで吹き飛ばすように、俺は声を荒げる。

「くそっ! 何が俺のためだ! 勝手に上がり込んで勝手に迷惑かけて、しまいには勝手に俺を性欲の捌け口にしようとしやがってっ!
 どこまで俺を愚弄すれば……!!」

 今までの人生において自分を理不尽な目に遭わせる人間はいくらでもいたし、彼らの横暴に耐え忍ぶことも時に必要だということを知らないほど子供ではない。
 だが、この妖怪は何もかもが理不尽な存在であり、何もかもが逸脱していた。俺の怒りはそんな超常に翻弄された末の自棄に近いものだったのかもしれない。
 ところが、俺の怒号に対してナメクジ女は予想外の反応を示した。
 普段のふざけた態度からは想像もつかないような神妙な面持ちとなり、静かに喋り始めた。


「――己を旦那様の妻と称しながら、今まで何一つ妻らしいことがこなせなかった……。むしろ、旦那様に迷惑をかけてばかり。
 ですから、ワタクシが犯す過ちはこれで最後。とはいえ、この最後の過ちは旦那様を深く傷付けることになってしまうかもしれない。
 それでワタクシの胸が一生痛み続けることになるやも。それでも……、ワタクシは愛しい旦那様とワタクシがここで暮らしたという確かな証が欲しい……。
 どうか、ワタクシの我儘をお許しください。そして、どうか、ワタクシに……」

 そう彼女が言葉を切ると、人形のように整った顔立ちがゆっくりと近づいてくる。真珠色の潤んだ瞳が、じっとこちらを捉えたまま。
 身動きもろくにとれないまま、彼女は徐々に距離を詰めてゆく。
 だが、恐怖を感じるわけでもなく、俺は不思議と彼女から目が離せなかった。
 蛇に睨まれた蛙の心情なのか、あるいはその美しさに本能的に見惚れているからなのかは分からない。

「ワタクシに、旦那様との繋がりを……下さい」

 愛を囁くように紡がれる言葉。
 その次の瞬間。唇には暖かく湿っていて、柔らかい感触があった。

「んっ……ちゅっ……んちゅっ……れろ……」

 視界は彼女の艷やかな肌色に埋まり、視界が塞がれる。だからこそ、目と鼻の先から聞こえてくるツユの甘く切ない声と、
 唇を執拗に啄み唾液を混ぜる淫猥な水音に意識が集中してしまう。

「……はぁ……ぁ……んんっ……んちゅ……じゅるちゅっ!」

 口内にふてぶてしく押し入ってきた彼女の舌が、しきりに自分の舌と絡ませようとしてくる。
 俺は決してそれに応えようとはしなかったが、それでも構わず彼女は巻き取ろうとしてくる。
 このまま思い切り舌を噛み切ってやろうかとも考えたが、至らなかった。
 決して、彼女の濃密な接吻で頭がしびれるような愉悦を味わっているからではない。ただ、化け物の体液が口内一杯に溢れるなどという
 恐ろしい事態を避けたかったからなのだと。ひとまず自分に言い聞かせていた。

「ぴちゅ……んっ……んちゅっ……はぁっ!」

 ナメクジ女はひとしきり口内を蹂躙し終えると、ゆっくりと口元から離れる。俺と彼女の口の間に銀のアーチが紡がれた。
 ほどなくしてアーチが自重でちぎれる。ツユは胡乱げな表情を晴らし、一転して普段の明るくおちゃらけた調子へと戻った。


「――なーんちゃって♪ このツユ。柄にもなく『切なげに、健気に、夫を求める妖艶な妻』的なのを目指してみたのですが、どうですぅ? そそりましたぁ?」

「……ネタバラシとか正直萎える」

「ガビーン! そ、そんなぁ」

 俺はほんの一瞬でも、彼女の熱に浮かされかけてしまったことを後悔した。

「はぁ。もういいから、さっさと気が済むまでやってくれ……。そして早く俺を解放してどっか行っちまえよ。もう」

「あぁ~ん、ひどいです~。せっかく頑張って殿方との接吻の練習をしたのにぃ!」

 俺の投げやりな返しに、大げさな身振り手振りで喚いている呑気なナメクジ女を見ていうちに、何もかもがどうでもよくなってしまう。
 このバカげた妖怪の存在も、これからその妖怪と交わろうとしていることも。
 今までの出来事は全て、うたた寝の真っただ中に見てしまった気色の悪い夢物語。そう思い込むのが精神衛生上、好ましいのかもしれない。
 そんな風に逡巡しながらじっとしていると、ナメクジ女はニヤニヤしながら俺を見下ろす。

「おや~? 旦那様やけにおとなしいですが、これはワタクシの愛を受け止める気になったと考えてもよろしいのでぇ?」

「別にそういうわけじゃない。もう何もかんもどうにでもなれってなっただけだ。悟りの境地だよ」

「あらぁ、それは残念ですぅ。もしや旦那様とイチャラブ交尾成立!? ……なんて、ちょっぴり期待しちゃいましたぁ。
 でも、ワタクシは旦那様がマグロでも構いませんからねっ♪ ……ん? あれれ?」

 ツユはふと、己の巨体の下に埋もれている熱を帯びた誇張の存在に気付く。

「おやおやおやぁ? 旦那様、これはぁ……なんでしょうかぁ?」

 ナメクジ女はおもむろに押し倒していた胴体を退け、俺の下半身を晒した。
 彼女が見下ろす先にあるのは、大きく張られた股間のテント。それが何を意味するかは言うまでもなかった。
 俺はこの非現実的な現況に意識を向けるばかり、彼女が退くまで自分が勃起していることに気付かなかったのだ。

「むふふ、旦那様ってば。こんなに魔羅様を大きくなされて……。嬉しいですねぇ。ワタクシに欲情なさってくださったのですよねぇ?
 何もかもどうでもいいのではなかったのですかぁ?」


「こ、これは……! しょうがないだろっ。あんなキスされたら誰だってこうなる。ただの生理現象だ!」

「まぁ! ワタクシの接吻のおかげなんですね! ふふ、よかったです。旦那様をその気にさせられたなら、
 わざわざさくらんぼを使って練習した甲斐がありましたぁ♪」

 妖怪の癖にやけに俗っぽい、などという所感はさておき。あんな化け物に興奮させられているという事実。そして、それをうっかり認めてしまった自分が
 悔しいやら情けないやら。
 そんなこちらの心情を理解してか、この憎たらしい妖怪大蛞蝓はまるで鬼の首を取ったように勝ち誇った笑顔を浮かべているのである。

「さーて、旦那様もやる気になってくださったことですし。どうしましょうかねぇ? このまま欲望に身を任せ、ひたすら交尾交尾でもよろしいんですが……。
 ワタクシ、少しでも夫想いの良き妻として旦那様の記憶に留めておきたい気もあるので、まずは旦那様に『ご奉仕』しますっ」

 触覚をピンと立てて意気込むやいなや、ナメクジ女は唯一纏っている衣服であるYシャツのボタンに手をかけはじめる。
 何をしでかそうとしているかは分からないが、冷静に考えてみると、これは絶好の機会ではないだろうか。
 彼女は現在、服を脱ぐことに注意を向けていて、かつ俺を押し倒していたナメクジ体も退いている。
 逃げるなら今しかない。と再び奮起したのもつかの間。俺は彼女が獲物をみすみす逃がす隙を与えるほど間抜けではなかったことに気付かされる。

「ちなみに~。旦那様のお背中の粘液は既に固まっていますので、逃げようとしても無駄ですよぉ♪」

 朗らかな様子でチマチマとボタンを開けるナメクジ女の言うとおり、背中にこびりついていた粘液は時間の経った接着剤のように凝り固まっていて、
 自分の身体と畳を完全にくっつけていた。
 もはや自力で脱出できるような状態ではない。

「もぉ、これから旦那様を気持ちよくさせようとしてますのに。逃げようだなんて、むしろ勿体無いのですよ?」

 彼女が言い終えるのと同時にYシャツのボタンが外れ、開かれた胸元に扇情的な肌色の凹凸が顕わとなる。
 贅肉のない引き締まったお腹と臍、ナメクジ体との境目の鼠径部、そして頭頂部が布に隠れて見えない豊かな谷間。
 彼女はさらにシャツの前立てを掴むと、そのまま勢いよく開け放った。


「はぁい♪ ワタクシの生おっぱいでございます♥ ぶっちゃけ、ちょっとおっきくて邪魔なんですけれども、人間の殿方はこのように大きめがお好きな方が多いのですよね?」

 Yシャツから解き放たれた拍子にぷるんと弾ける白いメロン。
 手のひらでも覆いきれないほどの巨大な二つの双房の圧倒的存在感には気圧されてすらしまう。
 シャツで覆っていた普段の状態では作り物みたいな形をしていたが、布の拘束が解けた今は重力に負けて垂れ、若干型崩れしてしまっている。
 とはいえ、以前友達から借りて観た爆乳AV女優の『巨乳の現実を思い知るちょっと残念なソレ』よりも遥かに整った形を保っており、
 むしろ適度な垂れ具合は溢れる重量感を醸し出している。
 しかしながら、こうして産まれて初めてこの目で見る女性のおっぱいが、よもや人外のものであるというのは正直悔しい。だがしかし、
 その造形美すらをも感じさせるほどの『美巨乳』に素直に感嘆し、思わず生唾を飲んでしまったのがさらに悔しく、
 忸怩(しくじく)たる思いに駆られるのであった。

「むっふっふ、感じますよぉ? 旦那様のエ・ロ・い・視・線♥ やっぱりお好きなんですねぇ? もっと存分に、
 蛞蝓が這うがごとく舐めるように視姦しても……よろしいんですよぉ♪」

「……」

 ここで愚直に凝視してしまったら負けた気がするので、何とか視線を逸らそうとする。
 が、悲しい男の性なのか。例え異形の怪物のものであったとしても、確かにそこにある女の果実が放つ魅惑の色香には抗えず、ちらちらと目移りしてしまう。
 それを知ってか知らずか、ナメクジ女は清々しいぐらいのしたり顔を浮かべながら、自身の豊満な胸を底から掌で持ち上げ、
 わざとらしくぷるぷると揺らしてみせたりした。

「さて、旦那様がワタクシのおっぱいに関心があるのは充分に分かったことですしぃ。そろそろ例の『あれ』を実践してみることにしましょう」

 そう言うやいなや、ナメクジ女は隆起した股座に視線を移したかと思えば、速やかにステテコのウエスト部分に手をかける。
 風呂上がりのラフな格好が災いし、そのまま呆気なくパンツごと脱がされ、股間から堂々と生えた逞しい男性器がまたたく間に露呈してしまった。


「はぁん♥ 旦那様の……魔羅様……。なんてご立派な……♥」

 ガチガチに張りつめ、天を衝くようにそびえ立つペニス。バナナのように太く長く、バナナよりも堅牢な男の燃え滾るような肉欲が凝縮された赤黒き剛剣。
 ツユはうっとりとしながらその業物へ熱い眼差しを送っていた。
 股間をまじまじと見られる恥ずかしさ、そして飾り気のない言葉で自分のブツが認められたむず痒さに板挟みされる、なんとも形容しがたい気分を味わう。

「おっと、いけないいけない。このツユ、旦那様のえろえろな魔羅様に惑わされ、思わず我を失いかけてしまいました。
 早くあの書物に記されていた『秘術』を実践しなくては」

「……秘術?」

 降って湧いたような神秘ワードが引っかかり、反射的に聞き返す。一体これから何をしでかそうというのか。

「はい。旦那様の書斎の棚の三段目の右から二冊目にある百科事典の裏に秘匿されし書物。その名も『いっぱいおっぱい★ふぇすてぃばる』に
 記されていた『ぱいずり』という名の秘術です。ワタクシはこれから、その秘術で旦那様を骨抜きにと……」

「ばっ……! な!?」

 彼女の口から出たその固有名詞を聞いて、気が動転しかける。あのナメクジ女が勝手に住み着くようになってから急いで隠した、
 お気に入りのエロ漫画の題名と寸分違わなかったからだ。

「おまっ! なんでそれを……。つーか勝手に人の書斎漁ってんじゃねぇよ!」

「殿方を知るにはまず書物棚を見よ。とワタクシのお友達から助言を頂いたもので。おかげさまで旦那様のあーんなことやこーんなことまで知ることができました♪ ま、それはさておき。さっそく秘術を試してみることにしましょう」

 俺の義憤など露知らず。彼女は上機嫌な様子でウネウネと後退し、丁度いい位置取りを確認して止まると、ゆっくりと上半身を下ろして俺の股間に横たえる。
 そして、息子の傍らに乳房を重々しく載っけた。
 自慢の息子が霞んでしまうほどの二つの巨大な果実が、ずっしりと並んでいる様はなかなかに迫力がある。
 太ももの内股に伝わるほのかな温もり、それにふわふわとした柔らかい感触。ざっと見G以上は下らないであろう夢の爆乳が、
 たしかにそこにあるという紛れもない実感。思わず感嘆を憶えてしまう。


「たしか、胸で魔羅様を挟むにあたり『ろーしょん』なる潤滑剤が必要らしいですが、ワタクシには無用ですね。
 だってホラ、このとおり。ワタクシにはヌルヌルの粘液が好きなだけ出せますもの。しかも、ワタクシのは量と粘度の調節が自由自在。
 ふっ、どうです? 人間の雌には真似できないでしょう?」

 なぜか得意げな顔で解説しながら、おおきく円を描くように彼女は両手で自分の胸を撫ではじめる。
 手のひらの動きに合わせてムニムニと形を変える乳。すると徐々に動きが滑らかになり、ニチャニチャと粘液を擦り合わせる音が鳴りはじめる。

「――よし、ざっとこんなもんですよ。むふふ」

 気付けば彼女の乳房は透明な粘液が全体に薄くまぶされていた。
 表面がテカテカとした光沢を帯びていて、すこぶる艶めかしい。

「ではぁ…いきますねぇ。旦那様ぁ♥」 

 ツユは光る双玉をすっと持ち上げ、ビンビンにいきり勃つ肉棒を挟んだ。
 ヌルヌルの粘液にまみれた乳房が愚息を包み、先端を残してその姿を隠してしまう。

「んしょ……っと。どうですかぁ? 旦那様」

 ナメクジ女に感想を尋ねられるが、俺は無言を貫いた。
 胸に挟まれる体験は産まれて初めてだったが、むにむにとした肌に覆われているのがなんとなく分かるだけで、 
 見た目の豪快さの割に感触が希薄なのはちょっと意外だった。
 とはいえ、己の分身が巨乳に挟まれているという、視覚に強く訴えかけるエロティックさで言えば、間違いなく破壊力抜群だ。
 そんなわけで、主の興奮を実直に受け取ってしまった肉棒は、彼女の問いへのアンサーを馬鹿正直にしてしまうのである。

「あっ…今ビクってしました♥ ということは、とても良いということですね。ふふふ」

「そ、それは……」

「むっふふふ。旦那様もこの魔羅様みたいに、もっと素直になってもいいんですよ?」

「憧れの初パイズリが、まさかこんな化け物相手だなんて考えたら素直に楽しめるかよ」

「あらあら、そんなことおっしゃいまして~。いくら口では否定なさっても、魔羅様はさらーに硬く大きくなっていらっしゃいますよぉ?」

 彼女の言うとおり、俺の息子は興奮に応えるように、より充血し、熱く硬く増長していた。


「さて、魔羅様もとい旦那様も待ちわびていることですし。そろそろ本格的にぱいずりを始めるとしましょう」

 ツユは自らの豊満な胸を掌で抱えると、そのまま上下に動かしはじめた。

「んっ、んしょ……、んっ……っしょ」

 彼女の両手の動きにあわせて柔軟に形を変えるたわわが愚息を執拗に責める。
 ほんのりと暖かくてマシュマロのように柔らかい肉の壁がうねりながら分身を包みこんで擦り込み、谷間からはみ出た亀の頭が出たり引っ込んだりを繰り返す。
 ――前言撤回。なんてことだ。パイズリがここまで気持ちいいものだったなんて。
 チ○コがおっぱいに揉まれているだけでもたまらなくエロいのに、妖怪蛞蝓特性の天然ローションによって、絹のような滑らかで柔らかい乳が
 息子の表面をヌルヌルと撫でながら重く圧迫する感触は、無骨な造りの男の手でする自慰とは比べ物にならない、絶妙な刺激だった。
 視覚的にも感触的にも、男の欲情をこれほどにも掻き立てるものがあるということを、この妖怪と出会って居なければ一生知り得なかったかもしれない。

「っ……ああっ!」

 俺は不意に情けない声を漏らしてしまう。
 おそるおそるナメクジ女の顔を見る。
 当然聞き逃しているはずもない。ナメクジ女はニターっと満面の笑みを浮かべていた。
 顔から火が出ていまいそうだ。

「あはっ♪ 旦那様ったら、可愛い声を出されて……。それに、魔羅様もご満悦そうにビクンビクンと嘶いてっ……。
 大層気持ちよくなられているみたいで、ツユはとても嬉しゅうございます♥」

 俺は自分が情けなくなった。こんな美しくも醜い化け物の奉仕でも悦んでしまうほど、自分が色に正直であることに。
 心を無にして逃避しようにも、くちゅくちゅ、と巨乳にもみくちゃにされる厭らしい音が響き、耐えがたい快楽に身を震わす生々しい感覚が、
 白昼夢のような現実をまざまざと思い知らされる。

「んっ…んっ……むふふ……」

 そんな俺の葛藤を余所に、能天気な妖怪蛞蝓は喜々としながら豊満な胸でズルリズルリと男の象徴をコキ続ける。
 最初はただ単純に上下に擦るだけだったが。徐々に慣れてきたのか、二つの果実を左右交互に動かしてみたり、ストロークを深くしてみたりと、
 ときおり変化を加えながら確実に愚息を責めたて、性感を高めていく。


「んしょ……ふふっ♪」

「っ……あっ」

 ナメクジ女の執拗なパイズリの前になすすべもなく追い詰められ、ついに限界を迎えようとしていた

「ああっ…あっ!」

「あっ、もしかしてぇ。そろそろ出ちゃいそう……だったりしますぅ?」

「っ……そんな、わけ……ううっ!」

 最後まで残った一片の理性が強がりの言葉を紡ぐが、もはや焼け石に水。射精衝動は確実に腰の奥から迫っている。
 出口を求めて沸騰している欲求不満が、今にも肉棒の先から溢れ返ろうとしている。もう誰にも止められない。

「ふふ、いいですよ旦那様。我慢なんかしないで、出したいときに出してください♪ ……あ、そうだ」

 すると、ツユはなにか思い出したように頭の上に感嘆符を浮かべる。

「えーとたしか……。そう! 最後にああしてこうするんでしたっけ。では、ええ、ぎゅーっっ♥ です。ぎゅーっっ♥」

「……え」

 彼女が口にしたのは、あの『いっぱいおっぱい★ふぇすてぃばる』で俺が特に気に入っていた一幕。
 好みのキャラクターがパイズリでフィニッシュする際に放ったワンフレーズだった。
 そしてフィニッシュシーンと同様に、ツユは前のめりの姿勢になって乳房を両脇から抱えると、左右から中心に向かって力を加え、
 今にも破裂寸前な肉棒を二つの柔らかい果実で押し潰した。

「――ぎゅーーっっ♥♥」

 ツユは蠱惑的な上目遣いで俺をじっと見つめながら、とろけるような甘い声色で囁いた。
 二次元の世界の理想的なシチュエーションを、実在する『初恋の人の面影を持つ美女』によって実現されるということが、
 一人の男に一体どれほどの興奮を煽るのであろう。
 たとえ下半身が人でない、異形の者だったとしても。

「あああっ!」

 理性がみるみるうちに溶けていくのが分かった。塩を振りまかれた蛞蝓のように、小さく消えていった。

「ぐぅっ! 出るッッ!!」

 快楽が最高潮を迎えた。
 天にも昇るような絶頂感。
 刹那、視界が白い靄に包まれた。
 朧げな意識のさなか感じるのは、局部から白い欲望をビュルビュルと放出する、痺れるような甘い解放感。
 巨大な乳房に埋もれたまま、ペニスはリズミカルな脈動を繰り返していた。


「きゃっ! 旦那様の子種…いっぱい…出てるぅ……♥♥」

 谷間から僅かに顔を出した亀頭の先から断続的に精が噴出し、ツユの整った顔を雄臭い液体が汚していった。

「はああぁんっ…旦那様の子種…こんなにいっぱい……。っれろぅ…しかも…どろっどろに濃いですぅ……」

 弾けていた理性が戻り、ぼやけていた光景が鮮明になる。
 目の前にいるのは、白濁液にまみれた半身半獣の美女の恍惚とした貌。

「はぁ…はぁ……」

 射精後の心地よい余韻とひどい倦怠感とが同時に襲い来る。肺が新鮮な酸素を求め、呼吸を荒げる。
 情欲の熱が引き、次第に冷めていく頭が否が応でも理解する。
 俺は、この蛞蝓の化物によってイかされてしまったのだと。

「どうでしたか? 旦那様。ワタクシのぱ・い・ず・り♥」

「――気持ち悪い。最悪の気分だ」

「あーらあらあらぁ? あんなに気持ちよさそうにたぁっぷりと出してしまわれておいて、それは無理がありますよぉ??
 旦那様ってば意固地ですねぇ。むふふ……」

 ツユは顔に飛沫した白いベトベトを掬い落としながら微笑する。
 細い指についたそれらを余すことなく、チュパチュパと下品な音を立て、吸い尽くしていった。

「さーて、ぱいずりで旦那様を気持ちよくさせられたことですし。そろそろ……」

 ツユはそう言うと、押さえていた乳房を退ける。精液と粘液に塗れた肉棒が再び露わとなった。

「ふふ……旦那様の魔羅様。子種をあれほど出されたのに、いまだこれほどの威容を保っているだなんて…素敵です♥」

「なんで…こんな…普段はすぐ小さくなるのに……」

 俺の冷え切った頭とは裏腹に、肉棒はいまだ熱り滾っている。
 今までの経験上、一回抜いて満足すれば萎んでゆくはずなのに。こいつは『まだ足りない』『もっとよこせ』とばかりに、ビクビクのたうち回っている。

「ふふ、旦那様が絶倫なのか。それとも、ワタクシと『交尾』したいと、旦那様が心も身体も強く望んでいるから。でしょうか……?」

「何を馬鹿な……」

「ま、いずれにせよ。これからワタクシが旦那様と交尾することには変わりませんから」


 ツユは妖艶に一笑すると、ウネウネと俺の身体の上を這い、そそり勃つを男根を彼女の下腹部が見下ろすような位置で止まる。

「ちょっと…恥ずかしいですけど……。旦那様、これがツユめの…お○んこでございます♥」

 彼女は人の上半身とナメクジの下半身の境目、人間で言えばちょうど性器があるところに二本指指をあてがい、ゆっくりとひらいた。
 すると縦に裂けるがごとく、ぱっくりと割れ目が姿を現す。
 本当なら目を背けたいのに。見たくないものほど見ようとしてしまうのが人の性。自然と視界がそれを捉えてしまう。
 トロリと透明な液体を垂らした下の口の奥には、充血した色の壁が覗く。しかし、よくよく目を凝らしてみれば、
 蛞蝓のような形をした肉塊が中で無数に蠢いているのがわかった。
 人のソレと似ても似つかない醜悪な造り。
 これから俺の大事なブツは「あれ」に喰われてしまうのだろうか。
 怖気が走り、肌が粟立つ。
 それなのに。死ぬほど嫌なものだと思っているはずなのに。なぜか俺はその人外の秘部から目が離せなかった。

「むっふ、むふふふふ。これからワタクシので旦那様の魔羅様と一つになって、一緒に…気持ちよくなりましょうね」

 ツユは吐息を乱し、ひどく興奮した様子で肉棒に手を添えると、そのまま裂け目へと導き、硬い先端部をソレの口元にあてがった。
 肉棒の先にちゅく、と蜜が滴る柔肉を突き立てる生々しい感触がした。

「あ…っ、旦那様の熱いのが、ワタクシのに当たって……」

 ツユの肉欲に潤んだ双眸が、己の性器に接着した肉棒を凝視する。
 まるで餌を前にした飢えたケダモノのように。

「旦那さまの…魔羅様……、はぁはぁ……、いただき…まぁす♥」

 彼女の言葉とともに、ゆるりと妖怪蛞蝓の躰が沈んでゆく。
 入り口にあてがわれていた男根が、狭い肉洞を押し広げるようにして突き進んでゆく。

「んんっ! 旦那様の魔羅様が…ワタクシのなかに……っ」

 己の生殖器官の中に人間の雄のペニスが押し入ってくるのを、ツユは悦んで受け入れている。
 ずぷずぷと沼を掻くような湿った音を出しながら、ヌメヌメにまみれた秘肉に自身がゆっくりと呑まれてゆく。
 数十秒間ほどの時間をかけ、彼女のナメクジ体が重々しく両腿にのしかかる。凶悪な男の象徴は彼女の身体の中へ姿を消していた。


「んっ…旦那様の…全部、入ってしまいましたぁ♥ ああっ…素敵です……。旦那様とこんなに深く繋がれるなんてっ」

 彼女は今まで見たこともないような愉悦の表情を浮かべながら、愛する者と一つの肉体になれた事実に打ち震えていた。
 そんな主の歓喜に呼応してか知らずか、ペニスを覆っていた肉が一斉に動きはじめる。根本から竿から亀頭までを無数のナメクジが
 じゅるじゅると複雑に這い回りながら、竿に巻きついて締め付ける感覚が襲った。

「うあぁっ……!なんだ…これっ。気持ち…わりぃっ!」

「あらあら。旦那様ぁ? またしても強がりですかぁ? かように『気持ちよさそう』な顔をしておっしゃられても、なーんの説得力もありませんよぉ♪」

「そんな、顔…してな……っ! ううっ……ぁあ」

「ふふ…いいのです、いいのですよぉ。ワタクシの妖怪蛞蝓おま○こが人間の殿方たる旦那様のお気に召していただけたのであれば……。
 旦那様がワタクシで気持ちよくなっていただけているだけでも、ワタクシは嬉しゅうございます♥」

 幸福に満ちた面持ちで語る彼女だったが、すぐさま妖艶に目を吊り上げ、「……とはいえ」と続ける。

「今行っているのは、ともに快楽を求めあいながら子を成す儀たる『交尾』。旦那様だけ気持ちよくなっては仕方ありません。
 ですから……、ワタクシも旦那様の魔羅様をもっと堪能させて…いただきますよ♥」

 そう言うと、ツユは上半身を前のめりに倒し、肩越しに両手を畳につくと、俺の上に被さって見下ろすような姿勢となる。
 そして、そのまま前後に腰をピストンしはじめた。

「んっ…っ、あっ……♥」

 そよ風に吹かれる柳の枝のように、ゆるやかに揺れる細い腰。
 すると、肉棒にウネウネと絡みついていた無数の蛞蝓たちが、彼女のピストン運動にさらわれるようにズルズルと竿を引きずりはじめる。
 ゆったりとした抽挿と、それに付いていこうと翻弄される蛞蝓たちのざわめきがあわさり、複雑怪奇で淫猥な摩擦となって、ぐちゃぐちゃに肉棒を責める。
 こんな感触、絶対にオナニーや人間の女性では味わえない。人外が為せる冒涜的な快楽に身を焦がしてゆく。


「なんだ…これ…っ、ぁあぐっ!」

「あんっ、旦那様の…太くて硬くて……、ワタクシのお腹…ズンズンえぐれるぅっ」

 一方的な奉仕で悦楽を甘受しているのは俺だけではない。ツユは白い頬を真っ赤に染め、虚ろな眼差しで甘い息を吐きながら、
 たくましい男根に秘所を穿たれる感触に惚けていた。
 もしも相手が人間の女性ならば、こんな風に無理矢理犯されるシチュエーションも満更でもないかもしれない。
 だが、今俺を襲っているのは人の姿を騙る化物。にもかかわらず、俺は呼吸を荒げて興奮し、ソレの膣内(ナカ)でチ○コを勃起させている。
 このままでは人ならざるものに欲情する、呆けた獣に堕ちてしまう。と、今までの人生で培ってきた倫理観が訴えている。

「ぐっ! やめ、ろ……っ」

「あっ♥ あっ♥ あっ♥ あっ♥」

 だが現実は無情だった。
 身体は拘束されて身動きが取れず、雄肉を貪ることに夢中になっている彼女には拒絶の言葉も届かない。すべての抵抗が徒労に終わる。
 そうしている間にも、歪で淫猥な生殖器官は容赦なく雄を食らい続ける。心と体を、甘くて痺れるような禁忌が蝕んでゆく。

「旦那様…っ、ああっ、旦那様っ♥ もっとぉ…っ♥」

 ツユはもう堪えきれないとばかりに昂ぶり、俺を求めるように囀(さえず)る。
 すると撫でるように穏やかだったツユの腰使いが突然激しくなる。
 結合部を掻き混ぜる音はより大きくなり、パコパコとお互いの下腹部を叩きつけ合う原始的な衝突音がテンポよく響きはじめる。
 摩擦の加速にともない、生き物のように肉棒に喰らいついて離さない異形の膣が与える快感もより苛烈となった。

「あっ♥ あっ♥ ああっ…♥ んんんっ♥♥」

 ぐちょっぶぢゅっぬぢゅっ、とくぐもった水音を鳴らしながら悩ましく喘ぎ、腰をくねらせるツユ。
 さっきまで俺のチ○コを弄んでいた豊満な乳房が、まるで食べごろの葡萄のように眼前にぶら下がり、
 彼女のスピーディなピストン運動にあわせてユサユサと上下左右に揺れている。


「ひゃぅっ、旦那様…っ、もっと…もっとぉっ♥」

 快楽の貪りに耽っていた彼女は突然、下半身たるナメクジ体の先をズルズルと俺の股の下に伸ばしはじめた。
 ナメクジ体は柔軟に伸縮し、尻を跨いで背を通過する。気がつけば俺の身体は巨大な蛞蝓の上に仰向けとなっていた。
 背中に畳の感触はもう無く、ヌメヌメでぶにゅぶにゅとした心地いいようで気色悪いような生暖かい粘膜に包まれている。
 固着した粘液による拘束が解けて脱出するチャンス。……と決起する隙もなく、身体中の裏面に肉がまとわりついた。
 それらは吸いつくようにして肌に密着している。まるで巨大な肉布団に身体の半分が埋め込まれるように、四肢が拘束されてしまった。
 腕や足を振るおうにも、ぐにゅぐにゅと弾性の強い蛞蝓肉と接着剤のようにねばりつく体液に捕まり、結局動けずじまいだった。

「あっ、あっ、旦那様を、ツユめのすべてで……食べちゃい…ますねぇ♥ んふふっ♥」

 真珠色の瞳を欲望で澱ませながら含み笑うツユ。
 すると、途端に背中にあるナメクジ体の表面がざわめきはじめる。
 それらは複雑にうねり蠕動し、肩、背中、腰、尻、太ももなど全身の裏側を余すところなく愛撫しはじめる。
 奇襲のごとく迫ってきたむず痒い快感。刹那、脳天に電流が奔り、ビクンと体が波打ってしまった。

「あああっ! な、なんだこれ…っ、や、やめ…っ!」

「あはっ、旦那様のっ、魔羅様っ♥ ますます硬く、大きくなりましたぁっ♥ ワタクシのおま○こだけでなく…、
 ワタクシの、下半身の愛撫でもっ、感じて…くださっているのですねっ♥ ああんっ♥」

 下半身による愛撫の手応えに悦び、打ち震えるツユ。
 妖怪蛞蝓の異形すべてを余すことなく駆使して犯され、自分とツユが一つに混ざり合い、ドロドロに溶けてしまうような感覚を憶える。

「あっ♥ はぁはぁ…っ♥ ああっ♥ あっあっあっ♥」

 ツユは切なげな喘ぎ声をあげながら、胸元に両手を載せ、狂ったように腰を打ちつける。
 細いくびれが波打つように激しくうねり、俺の下腹部は断続的に重くて柔らかい衝撃に潰される。


 ――ばちゅんっ! ばちゅっ! ばちゅんっ! ばちゅんっ!

 彼女の肌を覆う粘液による独特の湿った衝突音がリズミカルに響き渡る。
 肉体同士がぶつかった衝撃は背後のナメクジ体がクッションとなって受け止め、そのたび尻が柔肉にグイグイと押し込まれる。

「あっ♥ あっ♥ ああっ♥ あああっ♥ ああっあああ♥♥」

 ツユは恍惚とした表情でベージュ色の髪を振り乱し、泣くように喘ぎ喚く。はしたなく口を開けて涎を垂らし、蕩けた目つきで肉欲の赴くままに踊る。

「うっ…ああ……っ」

 背中を愛撫し続ける肉布団。胎内の蛞蝓たちがペニスを複雑に締め上げながら掻き回す甘美な感触。美しい女の上半身が覆い被さり、
 たわわに実った果実を揺らしながら妖艶に腰をくねらせている扇情的な光景。
 八方塞がりの快楽地獄に飲み込まれ、食いしばっていた理性が次第に煩悩の沼へ引きずり降ろされてゆく。
 再び射精感が迫りくるのも時間の問題だった。

「ああっ、も、もう……!」

「ああんっ♥ 旦那…様ぁ♥ 出るん、ですねっ! 旦那様のぉ…いっぱい下さいっ! ワタクシの胎内(ナカ)にある卵たちにぃ…♥
 いっぱい注ぎこんでぇっ♥ いっぱい種付けしてくださいぃっっ♥♥」

 ――パちゅっパちゅっパちゅっパちゅっパちゅっ! 

 最後の〆とばかりにツユは腰を深々と落とし、そのまま小刻みに高速ピストンしはじめた。
 すると、肉壁に蠢く蛞蝓たちが密集する膣内の奥を剛直が突くたび、亀頭が狭い孔をぐにぐにと拡げるように貫通する不思議な感触に気づく。
 俺は直感的に理解した。
 この奥にある孔の『ナカ』に『出す』ことが、彼女の言う『交尾』の最終目標なのだと。
 ――絶対に出してはいけない。
 かろうじて残った理性が警鐘を鳴らす。
 しかし、理性を食い破ろうとしている本能は『ナカ』に己の欲望の全てを放つを良しとする。
 ――彼女のナカにザーメンをぶちまけたら、どれだけ気持ちいいのだろう。
 原始的な肉欲がささやく。
 理性と本能がせめぎ合う葛藤のさなか。襲いくる快感に耐えるように、すがるように、彼女の上半身が崩れ落ちてきた。

「だんな…さまあっっ♥♥」

 ツユは柔らかい乳房を俺の胸元に押さえつけたまま、それでもなおカクカクと腰を振りたくる。
 ふと、彼女の両手が俺の掌へと伸びる。


「――っ!」

 ヌメヌメとした粘液に覆われた異様な手の感触。
 けれど、不思議と不快感はなかった。
 漠然とした話だが、その小さくて細い手の仄かな暖かさと握りしめる強さから、彼女の健気で純真で愛おしい気持ちが直に伝わってくる気がした。
 俺は、それを強く握り返した。
 指と指が絡み合い、結ばれる。
 心が篤く繋がり、愛おしいという情感が湧いてくる。
 俺はいつの間にか絶頂へと昇りつめようとしていた。

「あぁっ!で、出るうぅっ!!」

「ッ♥♥♥ 出してっ♥ 出してっ♥ 出してぇっ♥ 出してぇッ♥♥」

 ――ドビュルッ!!!

 理性が弾けた。
 身震いするような解放感。
 下半身の局部から生殖欲求が熱く迸った。

 ――ドクンッ ドクンッ ドクンッ

 胎内の最奥部の孔に先端が突き刺さったまま、ペニスが力強い脈動を繰り返す。

 ――びゅーーーっ びゅーーっ びゅーーーーっ

 おびただしい数の無精卵がぎっしり敷き詰められた小部屋に、濃厚な雄の精がありったけ注ぎ込まれる。
 卵同士の隙間を余すことなく、白い欲望で満たされてゆく。

「~~~っ♥♥♥ 旦那様の…種…。ワタクシ…、いやワタクシたちの子どもたちに…たっぷりと……、届いてますぅ…♥♥」

 愛する雄からの受精に、ツユは至福の表情で惚けていた。

 ――びゅっ びゅくっ びゅくっ

 子種を噴き出す動きが鎮まる頃には、彼女の胎内はドロドロのザーメンで氾濫していた。もはや肉棒で栓をしていなければ、流出してしまいそうである。

「旦那様の…子種……。たしかに……はぁはぁ…受け取り…ました……ふふ」

 そう言って彼女は満足そうに微笑んでいる。
 しかしながら、どこか悲しげにも見えたのは、きっと気のせいではなかったのだろう


 一日の農作業を終え、クタクタに疲れきった俺を迎えるのは古めかしい日本家屋。すりガラスの格子戸を開けると、すっかり慣れ親しんだ我が家の玄関。

「ただいま」

 帰宅の挨拶をすると必ず返ってくるあの甘ったるい声はもう聞こえない。
 奇妙な押しかけ女房の妖怪ナメクジ女こと『ツユ』と交わったあの夜から一週間ほど経った。
 ツユは俺との行為を終えると、すぐさま拘束を解いた。そして、「今までお世話になりました。さようなら、旦那様」と言い残し、山の中へ去っていった。
 それ以来、俺は彼女の姿を見かけていない。
 こうして家から厄介者を追い出したことで、無事平穏を取り戻したのである。

「……はぁ」

 深いため息をつく。
 あれほど煩わしかった害獣はいなくなり、清々しい日々を過ごしていたはずだったのに。実際のところ、
 心にぽっかりと虫食い穴が空いたような感傷に浸るばかりだった。
 玄関を上がり、農作業服のまま居間に入る。
 帰宅すると決まってヌメヌメの粘液で汚れていた居間の畳も、いまや微細な埃を積もらせるだけ。
 何の痕跡もない、まるで『はじめからそこに居なかった』かのようだ。
 ツユと決別してからの約一週間、気づけば俺は彼女のことばかりを考えるようになっていた。
 あまりにもショッキング過ぎた初対面、ねばっこく鬱陶しい絡み方、夜な夜な畑の野菜を食い荒らす所業、
 楽しみに取っておいたビールを全部飲まれた悔しさ悲しさ。
 ……よくよく考えてみれば碌な思い出はほとんど無いのだが、失って初めて気づいた魅力もあった。
 一見してウザいその無邪気な性格は仕事疲れの癒やしになっていたこと。そして、異形ながらも…いや異形だからこその人間離れした美しさは、
 素朴で穏やかだが、どこか色の欠けていた俺の日常に輝きと彩りを与えてくれていたこと。
 頭の中のくだらない常識が頑なに認めようとしなかっただけで、俺はずっとツユという存在に惹かれていたのだ。
 彼女とのまぐわいも、今にして思えばそれほど心底嫌悪するものでもなかったし、むしろ満更でもなかったかもしれない。
 ツユに押し倒された畳の上を見るたび、背徳的で耽美なあのひとときを鮮明に想起し、欲情に駆られるのがなによりの証左だった。


 たとえ、人外に欲情する変態だとレッテルを張られてもかまわない。ツユをもっと知りたかった。艷やかなベージュの髪を、真珠色の瞳をもっと見つめたかった。もっと身体を重ねたかった。
 熱い感情がこみ上げる。
 ……だが、もう全てが遅い。
 発端は俺にある。俺はツユを冷たく突き放し、彼女はそれに実直に従っただけのこと。

「過ぎたことをくよくよ考えてもしょうがない、か」

 たとえどんなに挫けても時の流れは決して止まらない。明日は否応なく訪れる。
 だからこそ、人は振り返らず、前に進むしかないのだ。
 明日への英気を養うべく、俺は熱いシャワーを浴びたあとにラフな恰好に着替え、冷蔵庫に保管してあるビール缶を取りにいかねばならないのだ




「ぷっはーーっ! やはりこの『びーる』というのは、人間の食べ物の中でも格別美味しいですねぇ。むふふ」

「……は?」

 冷蔵庫に向かった矢先、信じがたい光景が広がっていた。
 巨大なナメクジの下半身に、美しい女の上半身。聞き覚えのある声。
 そして、床に散乱する空のビール缶たち。

「お、おま……、どうしてここに」

「――あ、旦那様ぁ♥♥ お久しぶりでございますぅ♪」

 もう居ないはずのない異形は、俺の姿を見るやいなや顔をぱあっと輝かせながら、べっとりと抱きついてくる。

「いや、だから、なんでいるの。お前山に帰ったんじゃ」

「あ~……ええっと、それはですねぇ。まぁ、たしかにその、旦那様とお別れはしましたけれどもぉ。『二度と戻ってこない』とは一言もいってませんし……?」

 身体中の力が抜ける。
 ――嗚呼、俺はこんなテキトーな奴に焦がれていたのか。
 ここ一週間の切ない想いを返してほしい。


「あっ、でもでもぉ。ただ意味もなく出ていったわけじゃないんですよぉ? この一週間、一つ向こうの山まで出向いて旦那様と
 ワタクシで作った愛の結晶たちを産み落としていたのです♪」

「愛の結晶……。まさか、ナメクジの子? 俺との??」

「はぁい、だいたい100匹ほど? 全員無事孵ったのを見届けてからこちらに舞い戻ったのです。みーんな、元気な子ばかりでしたよ♪」

 彼女の言葉に俺は絶句する。
 まさか初孫がナメクジ100匹だなんて、とてもじゃないが両親に紹介できるはずもない。
 この秘密は墓場まで持っていくことにしよう……。

「それで、あのぉ。旦那様……。ワタクシ…その」

 ツユは俺の胸元に手をおいて、もじもじと身じろぎながら俯く。
 彼女が言わんとすることは手に取るように分かる。きっと、俺と同じことを考えているだろうから。

「――教えるよ」

「え?」

「教えてやるよ! 飯の作り方とか、掃除の仕方とか。あ、あと人間界の作法とか常識とか、他にも色々」

「あ、あの。旦那様。それって」

「だから。俺が教えたことちゃんとできるようになるなら、そばにいても、いいよ」

 なんとか絞り出すように言い終える。
 恥ずかしさで顔から火を吹いてしまいそうだ。
 一方、彼女は俺の言葉を聞いて一瞬固まるが、やがてぷるぷると震えだし、溜まった感情を爆発させるように両手を上げて叫んだ。

「キターーー! 『デレ』キターーー!! 旦那様愛してるーーー!!」

 興奮したツユに思いっきり抱きとめられ、バランスを崩してふたり揃って床に倒れ込んでしまう。
 それでもツユは構うことなく、執拗に頬ずりしてくる。洗いたての白いTシャツが粘液でべちょべちょに汚れたが、「まぁ、いいか」と大目に見ることにした。
 ねっとり絡みついてきて鬱陶しい。けれど、とても愛おしい彼女のヌメヌメとした背中を、俺は強く抱きしめた。



 ――ちなみに。押し倒した勢いで発情してしまったツユは、そのまま俺を無理矢理犯し、気づけば夜が明けていたというのは、また別の話である