山奥の山奥、くぅの祠からかなり離れた場所に『神』と呼ばれる者達が集う露天風呂があった。
そこはかなりの面積がある大浴場。
そこに集まる神もつい最近、生み出されたばかりの神から日本誕生以来の古代神まで大小様々だ。
獣はもちろんのこと、昆虫に鳥類、はては神獣まで。
近頃ではPCやらケータイ、I・padなどのモバイルな神々が目立つ。
それらは総じてメカチックな身体の構造をしており、実に可愛らしい外見をしており
身体を覆っているアーマーパーツを外せば、真っ白な素肌をもっているのだ。
しかし、今回の話はそれらの神ではなく、日本に古来より神として生み出された獣娘達の物語である。

「くぅが山を降りて伴侶と暮らし始めたらしいな」
供物として捧げられた今年の新酒をとっくりから盃に注ぎ、くぃと煽りながら女性が言った。
灰色の耳とピンっと女性だ。その女性は名を『虎杖(こづえ)』と言った。
虎とは言うが、この女性はオオカミの化身である。
本人いわく、大昔に大陸を渡ってきた虎と大喧嘩をして打ち負かした事からそう呼ばれるようになったらしい。
「ま、あのコは好き嫌い無く何でもたくさん食べるからおっぱいもおっきいし、
性格も天然系だし……たぶん食糧をもらう対価として人間と交尾したんでしょ?
山神は生み出されてから一人でも認識してくれる人間がいればいいわけだし」
冷ややかなに答える黒猫。こちらの名前は『月影(つきかげ)』何とも時代劇な名前だが
皆からは『ツキ』とか『ツッキー』と呼ばれており、100年生きた末二つの尾をもつようになった猫股娘である。
「いいなぁ~ボクも大きいおっぱい欲しいなぁ…魅力的なお尻も羨ましいよ」
こっちのボーイッシュな少女は猿の化身だ。生み出されて数十年しかたたない新しい神であり、『エン』と呼ばれている。
そのエンの言葉に虎杖が吼えた。
「エン、そういえば駿河にいるお前の眷属が人間の雌に発情して噛みついたと聞いているぞ。
しかも老若男女構わず噛みついたらしい、お前の眷属は皆、そうなのか?」

「うーん…そんな事言われても…ボクにはわからないよ」
「うふふ……愛よ、愛ゆえの行為よ。オナニーを教えたら死ぬまで扱く猿にはお似合いの末路ね」
大きな欠伸をして尻尾で鼻をくすぐりながら月影が冷ややかに笑った。
「何だよ、その言い方!ツッキーなんか一日中、炬燵でゴロゴロしてるだけじゃないか!自分の力だけで生きてみろ!」
「私はこの破格的な可愛さと可憐な仕草で人間の心を射止めているのよ」
「まぁまぁ、ツキちゃんもエンちゃんもそれくらいに……あ、そうだわ、くぅちゃんたらね…
実は裸で人里に行こうとしていたの。寝起きで寝ぼけていたからかもしれないけど、
ちょっとドジなところもあるのよ。だから私がバイトしている神社の巫女装束をあげたの」
最後に皆をなだめたのは白い九本の尾をもった狐の女性だった。名前は無いが皆のまとめ役だ。
九尾の狐。つまるところ妖弧なので、皆からは『ヨーコさん』とか『姉御』と呼ばれている。
「姉御、それは致命的な間違いよ。獣耳に巫女服なんていったら、大部分の人間には変態扱いされるわ。
例外的に一部の人間には神として崇められるけど」
「そ、そうなの?変ねぇ…神社に来る男性は皆、私を巫女として敬ってくれるから笑顔で応対しているわ」
「ヨーコさん、その人間ってヨーコさんに『写真を撮っていいですか?できれば一緒に』とか『巫女服萌え』とか言ってこない?」
「ええ、そうだけど…エンちゃん、どうして知ってるの?」
気まずそうなエンに代わって月影が答えた。
「姉御……そいつらは脳が腐る不治の病に侵されているの。むしろ哀れみの眼で見てあげることが肝要よ」
「まぁ…そうなの?かわいそうな人達だったのね、悪い事してしまったわ」
頬に手をあてて、困惑するヨーコ。そんな妖狐の思いを余所に
動くたびに波が発生するヨーコの豊満な胸をじーとみながらエンは言った。

「ヨーコさん、どうしたらそんなにおっぱいが大きくなるんですか?」
「え、どうしてっていわれても……え、えっとね、私がエンちゃんぐらいの時には同じぐらいだったのよ」
「ホントですか?やっぱり長く生きれば自然とおっぱいは脹らんでくるんですね♪」
エンが眼を輝かせながら言った。
「ウソはよくないぞ、ヨーコ。お前は生まれた時分から乳が大きかったからなぁ」
ぐびっと酒をあおり、明後日の方をみながらの虎杖にエンの希望は一刀両断された。
「え……ウソなんですか?」
「当たり前じゃない。優しい姉御だからエテ公に気をつかったのよ。おっぱいは人間からどれだけ
信仰されて、どれだけ供物を捧げられるかで決まってくるわ。姉御の一族は古くから人間の信仰があるし
姉御の神社には毎日、たくさんの供物が献上されるのよ」
「だ、だまされないぞ!ツッキーはさっき『くぅちゃんは何でも食べるから』って言ってたじゃないか!」
「猿と熊の食べる量を比べてから言う事ね。くぅが1日に食べる量は猿の半年分ぐらいなのよ。
あなたはホントに無知ね。オナニーのしすぎでバカになったんじゃないかしら?」

「まぁまぁ…ツキちゃん、そのくらいに…ね、エンちゃん、大きいおっぱいが嫌いな人もいるから」
必死にエンを慰めるヨーコだが意地悪猫の辛辣な言葉がさらに飛ぶ。
「姉御、それは無乳幼女共が言うくだらない願望だわ。姉御にその豊満なおっぱいで迫られて
パイズリされた男は間違いなく絶頂射精し、メロメロになるわ。
姉御には九本のふもふも尻尾でしごいてあげる超必殺技があるし、
九人同時に絶頂射精させることも可能なんて、とっても素敵だわ。
名づけてナインテール・オナニーね」
「な、ないんてぃるおなにぃ?」
エンが眼を丸くした。横文字が苦手なのかよく意味がわからないらしい。
「それに希にホントに小さいおっぱいが好きな男もいるけど、それは私くらいに
慎ましいおっぱいの持ち主に流れてくるから洗濯板みたいなおっぱいが好きな男はいないのよ」
勝ち誇ったように胸を張る月影。そのおっぱいは確かに淡く脹らんでいる。
「………洗濯板もまな板も大して変わらんぞ」
ボソッと虎杖が言った。グサと楔がハートに打ち込まれたように月影が呻きながら言う。
「どういう意味かしら…虎杖さん」
「言った通りだ。私からみればお前もエンも大して変わらん。
どんぐりの背比べもいいところだな。乳で篭絡することができるのはせいぜい私ぐらいまでだ」
ザパッと湯から上がった虎杖はその豊かな膨らみをぐいっと抱えた。
ヨーコこそ及ばないが、それなりの質量がある。引き締まった胸筋に支えられて
ツンと上を向いている乳首は実に官能的だ。
「わ、私は……妊娠すれば……おっぱいは2倍くらいにはなるし…ハリとツヤだって」
「そんなのボクだってなるよ!ハリやツヤはツッキーよりあるもん!ねぇ、そうでしょ虎杖さん」
「だからくだらんどんぐりの背比べだと言っているんだ。それにさっきから乳だ、乳だとうるさいぞ。
乳の大小などで言い争いなど、どうかしている」
シッシと手を振る虎杖によって第一次おっぱい大戦は終戦した。
「よくみれば…虎杖さんのおっぱい、左と右でちょっと大きさ違いませんか?」
月影がボソっと呟いた。
「…………何ィ?」
第二次おっぱい大戦、勃発。
「そういえばブラジャーなんてない時代に生まれたんですもんね」
チラっとエンにアイコンタクトをとる月影は実にしたたかだった。
(今は一時、休戦よ。アンタも何か言ってやりなさい)
(ああ、わかってるよ)
猫と猿の無乳同盟が締結された。
「虎杖さんのおっぱいって左と右で全然違うし、形が最悪だよ!しかも垂れてだらしないし、下品だし、乳首だって黒いもん!
ヨーコさんと違って尻尾の毛だって針金みたいに固くて痛いからナインテール・オナニーもできないんでしょ。
それにお酒を飲んでいるみたいだけど、それって実はアクエリアスなんでしょ?ボク、知ってるもんね!」
ふふんと薄胸を張って得意気なエン。それとは対照的に真っ青な顔をしている月影。
(この超弩級バカ…あーあ、私のせいじゃないからね)
したたかな月影もエンがここまで遠慮のない挑発的な発言をする事は計算外だった。
虎杖は酒の入った盃をその手で粉砕し、尻尾を逆立てて立ち上がった。
「エン…お前…そこまで啖呵を切ったんだ。それなりの覚悟はできているんだろうなぁ?」
「あ、あの~…ね、虎杖、ね、お、落ち着いて……」
もはやヨーコの仲裁は何の役にも立たない。虎杖は立ち上がってビシィと西に指を指した。
「ここから西に行った所に小さな町につい最近、越してきた一家がいる。
その一家には少年がいる。思春期真っ盛りだ。その少年をエン……お前が篭絡したら許してやろう…
ただし、私が篭絡した場合は………」
ギロリと鋭い牙を見せて、虎杖はエンを睨みつけた。
「エン…お前の骨と皮だけの身体……喰らいつくしてやる」

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最終更新:2011年01月25日 13:08