「未経験者歓迎!」
 求人票に表記された文字に視線が吸い寄せられた。
 未経験者のほうを優先的に採用すると言うことだろうか? 経験者を募集していることの多い大半の求人票中で、そんな言葉がやけに目立った。
 仕事の内容は「絶滅危惧種の飼育・繁殖の補助」とある。
 当然のことながら僕にはまったくの未経験。しかし、この求人票を信じるならそのほうが有利らしい。
「やってみるだけのやってみるか」


 面接までの日程はとんとん拍子に進んだ。
 郊外の施設を訪ね、面接に来た旨を受付に告げると応接室に案内された。
「いらっしゃい。あなたが就職希望者ね? こういった仕事は以前経験が?」
「いえ、未経験です。あ、求人票には未経験者歓迎とあったのですが……」
「ええ、そうよ。ヘタに経験者だったりすると――いえ、それについて今はいいわ。
 ところで、どんな生き物の世話をするのか、知っているかしら?」
「あ――いえ、調べようとしたのですが……」
 面接までに具体的に何をしているところなのか調べようと、資料を探したり検索してみたりしたのだが、結局たいした情報は得られずじまいだった。
「ふふ……そうでしょうね。でもそれでもまったく問題ないわ。あなたの仕事については一から教わることになるから。
 さて、あいさつはこれくらいにして、面接を開始しましょう。部屋を移動しますね」
「はい?」
 ちょっと意外なセリフに思わず疑問符が口をつく。
 これから部屋を移して面接を始めるって、じゃあ目も前のお姉さんは面接官じゃないの?
「まぁ、一応わたしも面接官のひとりだけど、どちらかと言えば仕事の説明担当よ。採用決定権はこれから会いにいくコが持ってるわ。
 彼女に気に入ってもらえれば、採用決定よ。がんばってね」
 無機質な廊下を進む。窓は少なく、それに何かの生き物を飼っているような雰囲気はあまり感じられない。
 イメージ的に近いのは、飾り気のないホテルみたいだった。
「この部屋よ」
 示されたドアも、やはり飾り気が足りないものの、人間の生活の一部となる場所――寝室じみた雰囲気を感じさせた。
 お姉さんがドアノブをひねって扉を開ける。
「え?」
 部屋で待っていた『人物』に、僕は声を漏らしたあと固まって立ち尽くしてしまった。
 裸の女性だったのだ。
 年齢は二十歳くらい。光沢のある黒髪が肩口まで流れ、細面の輪郭を縁取っている。やや切れ長で涼やかな瞳にまっすぐな鼻梁と瑞々しい唇。
 白い喉もとに華奢な肩と細い二の腕。それと対照的に巨大に実った乳房。
 国産のブラジャーではおそらく合うサイズはないであろう大きさでありながら、そもそもそんなものは必要ないとでも主張するように、前に突き出て芸術的な曲線を描いている。
 そして色白で引き締まった印象のお腹に――。
『女性』だったのは、そこまでだった。
 ヘソのあるあたり、下腹から先は女性どころか人間のモノではない。
 灰色の外骨格――といってもあまり硬さを感じさせるものではない――昆虫の腹部と人間の上半身との間あたりから、二対の脚が伸びてその異形を支えている。
 よく見れば背中に透明な羽が生えていたし、額の辺りから髪にまぎれて触覚が飛び出ていた。
 人間の女性と融合した、人間サイズの羽虫……もしくは羽虫と融合した女性。
「モスキータ。実際にこうして会うのははじめてかしら? ヒトと昆虫の両方の特徴を備えた蟲人――彼女は見ての通り、蚊の特徴を備えているわ」
 お姉さんの声に彼女を凝視していた視線を横に向けた。

「名前はアヤナ。『お仕事』のパートナー……にあなたが相応しいかどうか、彼女がこれからテストするの。さあ、服を脱ぎなさい。彼女にあなたの体を差し出すの」
 そう言って、ドアの鍵を閉めた。
「え、えぇ?」
 驚きの声を上げつつ、なんとなく彼女の言わんとするところがわかった。
 蟲人は多くの場合、同種にオスがいない。生殖には人間の男が必要になり、一部の種は近年数が減って絶滅を危惧されている。
 絶滅危惧種の飼育・繁殖の補助――つまり、僕は蚊娘・モスキータを繁殖させる種の候補者として、ここへやって来てしまったのだ。
「ちょ、ちょっとそれは……!」
 後ろを振り向いてドアノブに手を伸ばすが――
「ダメよ。逃げられないわ」
 背中に当たる柔らかな感触。羽交い絞めにするように後ろからモスキータに覆いかぶされた。
 しりもちを着いた僕を見下ろしたお姉さんは服に手を伸ばし、ネクタイを取ってボタンをはずし、ベルトとファスナーを全開にする。
 背後に張り付いたモスキータのアヤナが器用に服を剥ぎ取っていく。
 蚊娘に押し倒され、瞬く間に僕は全裸にされてしまった。
「ふふ、アヤナはかなり乗り気よ。第一印象はいいみたい。よかったわね。
 さ、アヤナ、床の上じゃダメよ。ベッドへ行かなきゃ。あなたも、床で犯されるより、ベッドで愛されたいでしょう?」
 お姉さんの言葉にアヤナは僕を引き起こし、ベッドへ連れて行く。
 仰向けに寝転がった僕の頭の両側に手を着き、覆いかぶさるようにアヤナが迫ってくる。
 黒目がちな丸い瞳に白い肌。綺麗な髪に可愛らしい唇。それに、なんと言っても目を引くのが大きな胸だ。
 きめ細かい肌が柔らかな肉を包んで美しい球体を形作り、彼女の動きに合わせてゆさゆさと揺らめいている。
 それがどんどん視界いっぱいに近づいて――。
「ぅわ、お、むぅ……!」
 顔をすっぽりと巨大なおっぱいに包まれた。すべすべした肌。優しい温もり。顔を包み込む柔らかさと豊満さ。
 目も口も鼻もふさがれて、息ができない――いや、鼻が谷間のあたりに挟まれてるみたいで、少しだけ呼吸ができた。
 甘く、蕩けそうな香りに満ちた谷間の空気を吸い込み、僕はおっぱいに圧迫されながら徐々に脱力していった。
「ふふ……アヤナちゃんのおっぱい、素敵でしょ? 蟲人はみんな乳房が大きいけど、なぜだか知っている? 大きく膨らんだ乳房は成熟した女性の象徴……人間の男性と交わって子をなす彼女たちは、大きな胸で男を誘惑する。
 ちょうど、今のあなたみたいに。蟲人の術中にはまって精を奪われる……いいわ、あなたは蟲人と交わる素質があるみたいね」
 蚊娘の乳房に埋もれる僕を見下ろして、お姉さんが解説する。
「はぶっ、そんなこと……」
 僕が反論しかけた時、アヤナが僕の顔に胸をこすりつけるみたいに、乳房を揺さぶってきた。
 豊満な両乳房が前後左右に行き来し、やがて乳房の感触が変化していることに気づいた。
 湿った感触。もっと直に感じる彼女の体温。甘い匂いと、味――。
「ふぇ? み、ミルク……?」
 モスキータの乳首から、白い液体があふれてくる。胸をこすり付けられ、それが顔全体に塗りたくられているのだ。
 ミルク、というか、なんだか粘り気があり、やたらとヌルヌルしている。それに甘く、熱い――?
「……モスキータは哺乳類と違って子供に乳をあげて育てたりはしないわ。さっき言ったとおり、彼女たちの胸は男を誘惑するためにあるの。もちろんこのミルクも、あなたのためにあるの。たっぷりと堪能なさい」
 お姉さんの言葉に半ば無意識にしたがってアヤナの乳首を唇に咥える。
 たちまち濃厚なミルクの匂いが口の中に広がる。触れた舌や口の内側に熱を感じさせるモスキータのミルクは牛乳と違って粘り気のあり、しかししみこんでいくような甘みで飲みやすい。
 彼女のおっぱいに吸いついていると、どんどん力がぬけて意識がとろんとしてくる。

「あらあら。すっかりアヤナのおっぱいが気に入ったみたいね。赤ちゃんみたい――だけど、ソコだけは、男のままねぇ?」
「むぅん……?」
 お姉さんが指摘した場所。股間を意識すると、硬くなった肉棒がぴくんと跳ねてアヤナの昆虫の腹部に当たった。
 おっぱいを吸っていたら、いつの間にかギチギチに勃起していた。一度それに気づくと股間から湧き出るもどかしい快感に身をよじってしまう。
 すでに我慢汁が垂れ、脈打っているのだ。ココにも、触って欲しい……。
 そんなことを考えた時、アヤナが僕の顔からおっぱいを離した。
「あぁ……」
 口から乳首が離れ、思わず名残惜しい声が漏れる。
「あら? おっぱいが恋しいの? そんな声まで出して、恥ずかしいわねぇ」
「うぅ……」
 お姉さんの言葉に一瞬恥ずかしさを感じて口ごもる。でも、彼女のおっぱいにもっと触れていたかったのは、おそらく僕の本心だった。
 アヤナのおっぱいが離れてしまい、ひどく不安で、寂しい――。
 でも、それはほんの少しの間だけだった。
 アヤナの桜色の乳首が、僕の先端に触れる。ぐにっ、と押し付けられ、ミルクが垂れていきり立った肉棒が数秒の内に粘り気のあるミルクにまみれてしまった。
「う、あぁ……あ、熱い……? ふぁあ、気持ち、いい……」
「あ、言い忘れてたけど、モスキータのミルクにはかなり強力な媚薬効果があるの。経口や経皮でも効果は高いけど、一番効果を発揮するのは、粘膜からの吸収よ。亀頭に直接塗りたくられたら、それこそもう……。
 あなたの意思なんて関係なく、勝手に射精してしまう、させられてしまうの。それに、彼女のミルクには、他にもおもしろい効果があってね……」
 お姉さんはそこで言葉を切り、僕を見下ろして微笑を浮かべた。
 そんなことをしている間に、アヤナは姿勢を変え、僕の下半身を抱え込む。腰に腕を回し、胸を股間に押し付けて――ミルクまみれのペニスを、豊満な乳房で呑み込んでしまった。
 張りのある肌の弾力と、巨乳の重量感に男の象徴が完全に掌握され、さらにアヤナは密着した上半身を擦り付けるように揺さぶってくる。
「うあ、あぁぁ――」
 瑞々しい肌が擦れ、ヌルヌルとミルクが滑り、分厚い女肉が男の部分を圧迫して責めなぶる。
 乳房に挟まれて十秒もしないうちに、僕は彼女に谷間に精液を放っていた。
「あ、あっあぁ――!」
 射精している間も彼女は愛撫をやめない。一滴残らず搾り出すように、最後の脈動のあとにぎゅっ、と谷間を締め付けて、尿道に残った分まで搾り出される。
 僕をあっという間に射精させたモスキータは、胸でペニスを掌握したまま、上目遣いに見つめてにっこりと笑いかけた。
 気持ちよかったですか? とでも問いかけているようだった。

「はぁ、はぁ……」
 快感の余韻で朦朧としながら彼女と見つめあい、僕はこの蚊娘――アヤナがだんだんと愛しく思えてきた。
 僕を見つめる瞳が、すごく可愛い。髪が綺麗で、手触りがよくって――無意識の内に、僕は手を伸ばしてアヤナの頭を撫でていた。
 頭を撫でられたアヤナは嬉しそうに僕の体に寄りかかり、目を細めた。
「あらあら。もう決まりね。すっかりあなたのことが気に入ったみたい。合格よ。
 これであなたは――たった今から、アヤナの生殖相手よ」
「え? 今から……?」
 お姉さんの言葉に疑問を返しかけた時、股間から立ち上ってきた感覚に言葉を飲み込んだ。
 僕の下半身に抱きついて胸に頬ずりするアヤナ。その豊満な両乳房の間にはミルクの効果か、いまだに硬い肉棒が挟まれたままで――。
 純粋な乳房の重みがペニスを圧迫し、プリプリした肌の弾力が敏感なところを刺激し続けている。
 彼女の乳房から染み込んで来る快感に、じわじわと次の射精が近づいているのだ。
 ――こんなに早く? それに、たったこれだけなのに、すごく気持ちいい……。
「あぁ……アヤナっ。イク、このままイっちゃうよぉ……」
 射精寸前の快楽に全身を震わせる僕をアヤナは微笑しながら見つめ続ける。
 その微笑に、どこかイタズラっぽい色が見えたような気がした。
「あ、アヤナ~! あ、あっ、あぁぁ――!」
 ペニスを胸に挟まれたまま、動かされもしないのに、僕は二度目を彼女の谷間に漏らしてしまった。
 どくどくと漏れ続け、快感が続く。僕は数秒して違和感に気づいた。
「射精が、止まらない……?」
 出始めのような勢いはなくなっているものの、トロトロとあふれ、漏れ出すように、射精が終わることなく続いている。
 その快感も、普通より緩くなってはいるがほとんど変わらない。
「忘れたの? 彼女はモスキータ、蚊の蟲人なのよ。蚊の唾液に血が止まらなくなる作用があるように、モスキータのミルクには射精が止まらなくなる効果があるの。粘膜吸収が一番だって、言ったでしょ?
 この垂れ流しのおちんちん、人間相手にはもう使えないわね。うふ、モスキータ専用……いえ、アヤナちゃん専用おちんちんの出来上がり」
「あ、あ、そんな、なんで……?」
 射精をとめようと下腹に力を込めても、ほんの数秒あふれ出るのが止まるだけで、すぐに耐え切れずに我慢した分が勢いよく飛び出してしまう。
 それでいてすっきりしない、射精寸前のもどかしい感覚がずっと続いているような、そんな状態だった。
「なんでと言えば、もちろんモスキータの生態に関わることよ。ほら、すぐにわかるわ……」
 お姉さんの言葉と同時に、僕の顔がアヤナのおっぱいに覆われた。反射的に乳首を咥え、ミルクが口の中に流れ込んでくる。
「もぐぅ……む、ぐぅ……う、うぐっ!」
 そして同時に、もどかしい射精を続けるペニスを、柔らかく湿った肉が包み、ずるずると奥に引き込んでいく。
 これは、アヤナの生殖孔……腹部の先にあるセックスのための孔だ。

 粘液でぬめった幾重ものヒダが絡み、快感が突き抜けて勢いよく精液を噴き上げたのがわかった。
 今までに感じたことのないほどの放出感を十数秒にわたって味わい、そしてまたじわじわと漏れ続ける感覚が戻ってくる。
「モスキータは胎内にたくさんの卵を抱えている。それをすべて受精させるには、交尾に三日三晩もかかるわ。その間安定して精液を搾り取るために、こうしてミルクの効果で垂れ流し状態にするの。
 彼女のミルクは栄養も豊富よ。射精した分はミルクで補えるけど……媚薬とかの効果も同時に発揮するから、全部出し切って射精が止まる、なんてこともないわ。
 天国でしょう? 蟲人に乗られ、精を搾り取られる快楽を感じながらたっぷりとおっぱいに甘えて、性欲と食欲と庇護欲を彼女に満たしてもらえるのよ」
 アヤナが腰を振りはじめる。細くくびれた昆虫の腹部が上下にカクカクと動き、人間では再現できないピストンで快楽を送り込む。
 当然、僕にほんの一瞬でも耐えることなどできない。最初のストロークで盛大に精液を噴き出し、全身が痙攣して口からミルクがこぼれた。
「彼女との交尾が終わっても、あなたの仕事は終わらないわ。
 モスキータは受精から産卵までの期間が長い……その間に特別に栄養を取ってお腹の卵を育てるのよ。普通の蚊は人間の血を吸うけど、モスキータは人間の精液を摂取する。それも決まって交尾した男性だけから。
 ふふ、可愛いでしょう? でも、そのせいでなかなか繁殖が上手くいかずに数を減らしてるの。一途な女は生き辛い世の中なのね……」
 もう僕はお姉さんの説明をほとんど理解できていなかった。
 ただ、これからずっとアヤナとこうしていられる、ということがわかっただけで満足だった。
 吸い付く乳房を右から左へ。内部のヒダが蠢き、また激しい射精へといざなわれる。
「うっ……むぐっ。アヤナ、アヤナ~!」
「ふふ……お互いすっかりメロメロね。それじゃ、あとはお二人でごゆっくり」
 そしてお姉さんは部屋を出て、扉に鍵がかかる。
 アヤナと二人っきりになり、僕は彼女の背中に手をまわして強く抱きしめる。
 彼女もまた、抱きしめ返し、息もできないほど顔が乳房に埋もれてしまう。
 そのままの体勢で彼女の腰が上下し、僕は何度も射精の脈動を繰り返す。
 終わらない、幸せな瞬間。
 本当に終わらずに、永遠に続いて欲しい――。
 いつしか僕はそう願い始めていた。

 おわり

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最終更新:2010年09月12日 10:32