クリスマスプレゼント

「はぁ。今年も一人でクリスマス、か」
誰に言うともなく、部屋の中でひとりごちる。
街は一色お祭りムード、イルミネーションが通りを照らし、カップルが連れ立って歩くこの日に、自分は一度もドアから出なかった。
何が悲しくて、こんな日に自分だけで過ごさなければならないのか。友達を誘って飲みにでも行こうとしたが、みんなことごとく予定が入っていた。デートだったり、待ち合わせだったり、お食事だったり。今年に限って。
自分はと言えば、彼女どころか、好きな人すらいない。けれど持ち前の寂しがり屋な性格のおかげで、無性に温もりが恋しくなっていた。
「もう誰でもいい、誰か彼女になってくれないかなー」
窓を開けて、空を見上げて言ってみた。何か起こらないかなと期待しつつ、何も起こるわけがないと思いながら。
「はいはーい、それが願いですねー?」
そのとき、空から声がした。何事かと思い、声のしたほうを見ると、赤い服を着たトナカイが、そりを引いて。そりにはだれも乗っておらず、代わりに大きな白い袋が。そして一番おかしいのは・・・空に、浮いてる。
「メリークリスマース。どうも、サンタクロースの使いでーす」
トナカイが、喋った!?


驚いて何も言えないでいると、
「あー、やっぱりこの格好で喋るのはダメだったみたいですねー。じゃあ、こうしましょう」
ワインやシャンパンを開けたような、ぽん、という音がしたかと思うと、サンタ服を着て角を生やした女の人が。
「クリスマスプレゼントです。あなたの願いを叶えに来ましたー」
そう言うと、窓から中に、袋を持ってあがりこんできた。
「あなたの願いは、誰でもいいから彼女がほしい、でしたよね?」
とりあえず、うなずいてしまう俺。
「じゃあ、私が彼女になりますねー」
立て続けに起こったことに思考がついていけず、唖然としていたが、やっと頭の調子が戻ってきた。
これは夢か?何故こうなったんだ?今はそれを確かめなければ。
まず自分の頬をひっぱたいてみた。ちゃんと痛い、これは現実のようだ。
「急にどうしたんですかー?夢なんかじゃありませんよー?」
よし、次だ。
「夢じゃないということはわかりました。すみません、今の状況がどうしてこうなっているか、教えてくださいませんか?」
すると、ニコニコ顔で、
「だから、クリスマスプレゼントを届けに来たんですよー。あなたの所から、悲しいオーラがにじみ出ていたので。」
ああそうですか。傍から見ても悲しそうでしたか。そりゃ御苦労なこった。
「でも、これは持ってきた意味なかったですねー」
そう言って彼女は袋を下ろした。

その袋が何なのか想像はついたが、少し気になった。
「いったいその袋はなんなんです?やけに膨らんでますけど」
すると
「膨らんでるのは見せかけだけですねー。ほんとはゲートのようなものなんですけどー。いつもは、これをサンタの国につないで、欲しい物を取り出すんですー。あなたの願いが『誰でもいいから彼女欲しい』なので、今回は使いませんねー」
サンタの国とか、つなぐとか、突っ込みどころ満載だが、嘘をついてるようには見えない。
「というわけでー、今日から私があなたの彼女になりまーす」
「ちょっと待った!彼女とかそんなのの前に、恋愛とかそういう大事なものがあるんじゃ…」
それに対して、帰ってきたのはこんな答え。
「大丈夫ですよー。さっき惚れ薬飲んできましたから」
「んな無茶な。」
なんですか、魔法とかファンタジーとかの類ですか。
「じゃあー、これならどうです?・・・好きなんです、私と付き合ってください」
いつもなら狂喜して喜ぶんだけどね、とナメてかかっていた。
顔をほんのり赤らめて、瞳を潤ませ上目使いにこっちを見つめて・・・こいつ、できる。
ついつい、つられて頷いてしまった。
「こちらこそ…よろしくお願いします」
あれ、何で俺こんなにドキドキしてるんだ?
…いや、今のにやられてしまったんだ。ただでさえよく見なくても美人なのに、あんな表情して迫られたら、断ることなんてできないじゃないか。

そう自問自答していると、唇に何か柔らかい感触が
「ん、んんー?」
我に返ると、すぐ近くに顔があった。
慌てて離そうとしたけど、思い直してそのまま続けた。
ついばむように何度かキスした後口をぴったりつけて歯をなぞって、舌を絡めあって・・・
たっぷり一分くらいそうしてから、どちらともなく口を離した。
彼女の眼を見ると、すっかりとろんとしていた。
「もう、我慢できませんー。ヤりませんか?」
はい?今何をおっしゃいました?とか考えているうちに、彼女は服を脱がしにかかる。
パニックになっている間に、もう上半身裸だ!
身の危険を感じた俺は、とっさにズボンのベルトをつかみ、寝室へと逃げだした!
「あーん、待ってくださいよー」
寝室に入りドアを閉め、つっかえ棒をする。これでよし!と思ったのもつかの間、
さっきと同じポンという音がして、自分のすぐ横にいた!

「ムダですよー?」
彼女より先にズボンをつかむ。今下ろされるわけには!
息子が必要以上に自己主張しているから、今見せるわけにはいかない。
「あー、あなただけ脱ぐんじゃ、フェアじゃありませんねー」
そう言うと、パチンと指を鳴らした。
瞬間、一糸まとわぬ姿の彼女が。すげえ、ほんとにボンキュッボンだよ。着やせするんですね・・・。
またパチンと音がして、下半身が解放された。
「うわあ、もう元気なんですねー」
しまった。だが最後の抵抗を試みる。説得だ。
「ちょっ待て。俺たちはさっき会ったばかりだ。まだ早い。もっと手順を踏んでだな、まだ君の名前も知らないし」
「クリスティーナです。これでいいですか?それに私たち、もう付き合ってるんですよー?」
駄目だ、効果がない。
「それでもだな、いr」
「問答無用、ですよー」
彼女はひょいと俺を持ちあげると、ベッドの上に横たえた。その細腕のどこにそんな力が。
それでも抵抗を続けようとすると突然、
「私じゃイヤですかー?」
あ、やばい、目が潤んできた。ここで泣かせてはいけない。
「そんなことないって、むしろ嬉しいよ、だから泣くな。」
確かに嬉しいのは本心だ。だけどここで手を出したら男としてどうなの?というプライドが俺を阻んでいた。
「なら、いいってことですよねー」
彼女はにぱっと笑うと、俺の上に乗ってきた。ちくしょう、嘘泣きだったのか。
肩を掴んで、最後の抵抗をしてみる。
「けど、それでいいのか?女なんだし、もっと体を大事にしないと」
彼女は、ニヤリと笑って。こいつ、今のも効かなかったのか。

「心配してくれるんですねー。大事にしてますよ。あなたじゃないと、こんなことしませんよー?」
と言って、体を密着させてくる。彼女のそこはもう、びっしょりになっていた。
そのまま、大事な部分を、愚息にあてがって、
「じゃあ、いれますよー?」
ゆっくりと、埋まっていくのが伝わってくる。俺の意見は無視かよ・・・。
だけど、犯されているにもかかわらず、不思議と悪い気はしなかった。
それが顔に出ていたのだろう、
「本当に嫌がられると思っていました。だけど、もう抑えられなかったんですー。でも、良かったみたいで、嬉しいですー」
俺もその時にはもう、仕方がないと思っていた。
「本当にごめんなさい、お詫びに、精一杯、気持ち良くしてあげますー」
そう言ってからが、すごかった。俺の敏感なところに肉の襞が絡みつき、蹂躙する。強弱をつけて、搾るように。それだけじゃない。上の口でも自分の同じ部分を好き勝手にされた。舌を引っ張ったり、粘膜をぐりぐり押されたり。
その相乗効果で、どんどん上り詰めて行ってもう爆発しそうになったとき、
不意に彼女が口を離して言った。
「ぷは、どうですかっ、気持ちいいですかー?遠慮せずにイっていいですからねー。あなたが気持ち良ければ、私も気持ちいいんですから」
それを聞くのとほぼ同時に、もう我慢の限界が来るのを悟った。
「だ、出すぞっ」
「どうぞ、いっぱい中に出してくださーいっ」
その直後、また空気の出入り口をふさがれ、
「んんんんんんーーーーーーっ」
俺たちはキスしたままで絶頂に達した。
口を離してから、
「はぁん、あついですー。びくびくって、まだ私の中で震えてますよー」
幸せそうに言った。
一息ついてから、もう一度聞いた。
「ほんとに良かったのか?こんなんで、ましてや俺なんかで」
彼女は俺にデコピンを一発お見舞いして言った。
「もう、愚問です。あなただから、って言ったじゃないですかー。」
でも、とまだ煮えきらない俺を制止して続ける。
「でも、じゃないですよー。私は、   さんのことが大好きなんですから」
そして、俺をじっと見つめて、
「惚れ薬を飲んできたってのは、実は嘘です。でも、この気持ちは、本物です」
それから、彼女は俺を好きになった経緯を語り始めた。
それによると、こういうことらしい。
毎年サンタたちが全世界にクリスマスにプレゼントを届けているが、この頃は人が多すぎて全世界をサンタたちだけで回るのは大変なので、トナカイも合わせて地域ごとに分担を決め、プレゼントを配っているんだとか。
今年決まった地区に、クリスマス前に下見に来ていた時、道路でひかれそうになっていたところを助けてもらったのだという。確か自分は猫を助けたはずだが、その猫は彼女が変身したものだったそうだ。街中でいろんな人を観察するには、猫の姿だと都合がいいらしい。
俺の家に押し掛けてきたのも、犯罪まがいのことをしようとしたのも、既成事実から作っちゃおう、ということだったらしい。それを考える際に俺の事も調べたから、名前も知っていた、と。
結果的に、その目論見は成功したわけだが。
その後、子供たちに届けるプレゼントは配り終わったのかと聞いたら、もう配達は終わっているのだそうだ。一人暮らしとか、親がいないとかでプレゼントのない子供たちだけに配るので、日本などの国はわりと楽なのだとか。

次の日。
「お前はサンタの国のトナカイなんだよな。帰らなくても大丈夫なのか?というかそもそもサンタの国ってどこだ?」
「んー、地理的にはノルウェーのあたりでしょうか。入口がそこにあるだけで実質的には異世界ですけどー。帰りますよちゃんとー。こっちに住みますけどー。」
「そーなのか。でも帰るのに住むってどういうことだ?」
「言いませんでしたっけー。この袋がゲートになってるって」
「それってあのネコ型ロボットとかの、あのドアみたいに?」
「そんな感じですねー。あのドアと違って、出口と入口の二つが要りますけど。」
「仕事場が向こうにあるって感じですかねー。これ経由で一瞬で着けますけどねー。」
「ふーん。・・・ところで、そりは?」
「あーん、忘れてましたー」
こんな感じで、新しい生活が始まった。
とんだクリスマスプレゼントだな。まあ、でも、悪くないか。