特に都会でも田舎でもないA市。
駅の近くはそこそこ栄えているが、ちょっと離れると田んぼや畑が見えてくる。
そんなA市にある、変哲も無い寂れた神社でのお話。

ある秋の昼下がり――
一人の少年が、その神社に入っていった。
人っ子一人いない、社務所でさえ雨戸が閉められているその神社に、彼はさほど用があるわけではない。
部活が早く終わった日などにふらっと寄って、なんとなく夕方までライトノベルを読むのだ。
小さい頃に祖母に連れられてお参りに来て以来、なんとなくお気に入りの場所なのだ。
色々な昆虫が捕れるし、うっそうと茂った木々のお陰で夏でもひんやりとしている。セミはうるさいが、都会的な騒音がしないのも良い。
人並みに社交的な彼だが、今まで一度も友人を連れてきたことの無い、ちょっとした隠れ家なのである。


少年は見慣れた朱色の鳥居をくぐり、くたびれた社殿の脇にあるベンチに座った。赤い樹脂製で清涼飲料水のロゴが入っているが、相当に年季の入ったもので、少なくとも彼が始めてきたときから設置してあるものだ。
ジャージの入ったザックをおろし、学校指定の革製鞄から文庫本を取り出す。あまり知られていない作家の作品だが、彼のお気に入りシリーズの最新刊である。
さて読もうか、と腰を下ろそうとして――
「あれ、お守りが」
鞄にぶら下げていたお守りがなくなっている。どうやら紐が切れてしまったらしい。どこかに引っ掛けたのだろうか。
「まあ古いやつだし、そういや、いつからつけてたっけか」
確かあのお守りは、祖母から貰ったものだ。
それを思い出したとたん、幼い日の思い出がふわりと浮かび出てきた。
そう、あれはまだ小学生の頃。夏休みに毎日のように虫取り網を持ってここに来ていたときにへんてこな生き物を見つけた。他の動物には無い独特の動きが面白くて、日が暮れるまで網でつついて遊んだのだ。その日の夕食で家族にその話をしたのだが、祖母だけが酷く彼を叱った。
その後良くわからないままお守りを渡され、常に持ち歩くように言われたのだが、温厚な祖母に叱られたのが酷くショックで、ずっと持ち歩いてきたのだ。
「そんなこともあったなあ。まだばあちゃん生きてた頃だから、小学生だっけ」
懐かしい祖母の記憶に、しんみりする少年。しかし、何で叱られたのかだけが思い出せない。民間信仰を大切にする女性だったので、そっち方面だった気はするのだが。
「ええと、なんか神様の使いとか言ってたっけ。恨まれたらしつこいからってお守り貰って、なんかこう、なんともいえない感じの……」
「へび」
「そう蛇! しかも真っ白い奴! どうして思い出せなかったんだっけ。何か面白くて、つついたり棒切れに巻きつけたり――」
そこで言葉が切れた、というより、続けることができなかった。何かいる。すぐ後ろに。
「真っ白な、へび。貴方は大喜びで、たもで小突きまわしてくれましたわね。しまいには尻尾を掴んで振り回して」
ゆっくり振り返ると、社殿の手すりに腰掛ける少女。白の小袖に、緋色の袴、長い髪を一つに束ねて――典型的な、しかも相当美人な巫女装束の少女。
「白いへびは、神の使い。雨や稲妻を呼び、田畑に実りをもたらす。それを、随分ともてあそんでくれましたわね」
詠うように言の葉をつづり、手すりから降りて少年に近づく。どこから見ても巫女だが、明らかに際立った特徴――つやのある銀色の髪、小袖より白い肌、真紅の虹彩。それらが妖術のように少年を硬直させる。
少女は少年のすぐ前まで来ると、そっと彼の手を取り、
「この恨み、晴らさでおくものですか」
手首に、深々と牙を立てた。


「――んぁ、」
少年は何が起きたのかわからなかったが、自分が気を失っていたのだけはわかった。
ぼんやりとした意識ながら立ち上がろうとするが、体が動かない。
「おきました?」
声のした方を見ると、先ほどの少女が正座していた。
どうやら社殿の中らしい。薄暗い板張りの部屋を、燭台に立てられた蝋燭がゆらゆらと照らしている。
「ちょっとした神経毒、まあ麻酔みたいなものです。安心してください」
少しも安心できない。彼はどうやら、両手首を荒縄で縛られているらしい。
少女は立ち上がって彼の脇まで近寄る。
「生まれて100も生きていない若輩者とはいえ、貴方にあそこまでもてあそばれるいわれはありません。現代人とはいえ、目に余る行為」
少年は何とか声を出そうとするが、口というより喉のあたりの筋肉がまだ弛緩していて上手く喋れない。
「まだ幼い頃のことなので命は赦しますが、人としてこの上ない辱めを受けていただきます」
そう言って彼女が伸ばした手の先には――少年の下腹部。ぶっちゃけ、彼のナニ。少女の白くほっそりとした指が、制服ズボンの前をまさぐる。
「ちょ、おま、やめ」
と、静止しようと声を出したつもりだったが、喉からは「ひょ、ふあ、らめ」などと酷く情けない音しか出てこなかった。
「ふふ、哀れな声を出して。でも、止めてあげない」
少年のうめきを勘違いする少女。逃げようにも、残った麻酔と身体を戒める荒縄がそれを阻む。
「そんなに逃げたい? そうよね、身体を犯されるのは、人にとってこの上ない辱めらしいものね」
そりゃ、女の人はそうだろうけど、と心の中で呟く。そんなうちに少年のモノはすっかりいきり立っていた。まあ若い少年だし、しょうがない。それを確認した少女は、ベルトをはずして制服を脱がしに掛かる。
「随分と正直者の肉へび君ですね、もうこんなになって」
チャックを下ろして、下着越しに2・3度さする。その感触にたまらず脈動する。
「さあ、わたくしに見せて御覧なさい。意地汚くて、粗末な、貴方の肉へびく、ん……を……」
下着の下から、勢いよく飛び出す少年の肉へび君。修学旅行の風呂場でクラスチャンピオン決定戦まで残った彼のモノは、大のオトナのモノに比べても遜色ない。
「なに、こんなの、雑誌のと全然違う……」
呟く少女の声は、飛び出したときにモノとこすれた手のひらの感触に夢中だった少年の耳には届かなかった。
暴発するのを我慢する彼を見、少女は一つ息を吐いて気を取り直す。
「粗末、ではありませんが、この貪欲さは何なのですか?」
少女は右手で肉へびの胴体を握り、左手で頭をこすってやった。モノを握る右手は力が入りすぎて痛いほどだったが、そのお陰で発射を免れた。
少女の圧迫をくぐり抜け、先端まで染み出た透明液が彼女の手のひらを汚し始めた。
「本当に正直者。でもわたくし、フェラチオという技術も会得していますのよ」
フェラチオ――巫女装束の少女の口から発せられるその単語の、何と卑猥なことか。
「秘所を他人の口で嬲られる、その屈辱に震えなさい」
少女の色素の薄い唇が頭部に触れ、ゆっくりと沈み込んで行き――モノ全体が、少女の口の粘膜で包まれた。
その感覚に堪らず震える少年。勿論屈辱ではなく快感の為だが、彼の反応を勘違いした少女はゆっくりと上下運動を始めた。
(これは拷問だっ)
眉をひそめて上下する彼女の表情。口腔内の感触とうごめく舌。こういう経験の無い彼にはすぐにでも発射してしまいたい程の快楽だが――彼女の右手が、白い体液が尿道を駆け上がるのを許さない。まさに蛇の生殺し状態。
上下運動をやめ、口を離して一息つく少女――唇から垂れた銀色の一筋、その光景だけでもイきたくなるが、イけない。
「まだまだ、こんなものではありませんよ」
右手を上下にしごきながら言う少女。親指がきっちり尿道を押さえながら上下している。少年は気が狂いそうな快感を耐える。
「随分と辛そうですが、これからが本番です。貴方の操、わたくしが」
そこまで言ったところで、ふと右手の力が緩められた。今か今かと待ちわびていた奔流が勢い良く虚空に飛び出し、少女の顔まで飛んで透き通った頬を汚す。
やっと許された放出に、荒い息をつく少年。少女はいきなりのことに絶句し、頬を垂れる粘液を指にとってまじまじと見る。
「これが、……」
何かを呟き、白濁液を確かめるようにほっそりとした指でもてあそぶ少女の姿に、少年はすみやかに勃起した。
「ほんとうに、はしたない肉へび君」
袴の小物入れから取り出した手ぬぐいで手のひらをぬぐい、何かスイッチの入ったかのような爛々とした瞳を少年に向ける。
「では、貴方の操、わたくしが奪います」


立ち上がって袴をゆるめ、下半身をあらわにする。髪と同じ、銀色の淡い茂み。
そのあまりにも官能的な姿――頬はまだ白く汚れている――に、少年は目を離せない。
「そんな目をしても駄目。もうあなたは汚されるわ」
彼の腰にまたがり、モノを茂みの奥に定める。ゆっくりと腰を沈め、肉の杭が少女の身体に突き入っていく。
「んんぅっ」
先端と奥底が接触。
「痛いのは初めだけ、その通りでしたわ」
その呟きも、少年の耳には届いていなかった。2人のつなぎ目から赤い雫が垂れていることも。
少女の中は彼自身を強く締め上げ、かつ襞がゆっくりとうごめいていた。その動きはまるで――小さな蛇が巻き付いて、玉袋の中身を残さず搾り取ろうとするかのようだ。その刺激に耐えるのに、少年はいっぱいいっぱいだ。
「さて、そろそろ動きますわ。どうしようもないきかん棒を恨みながら、せいぜい後悔しなさい。わたくしをもてあそんだことを」
少年の腹に手を突き、腰を上下させ始める少女。襞の蠕動に加わる上下運動。少年が搾り取られるのも時間の問題だ。
「ふぁっ、なに、これ、すごい」
粘膜同士の摩擦は、同時に少女にも快感を送り込んでいた。
「んん、これが、快感なの、んあっ」
我慢しきれず放出する少年。びくんと身体を震わせて静止する少女。
「あ……でてる。お腹にたまって、ぬるぬる」
少年の放出が終わり――更に強く、腰を振る少女。
「まだ、かたい、もっと、もっと」
直後の敏感な表面がこすられ、硬さを取り戻す少年。
「ひあ、貴方もうごいて、ひんっ」
半ばやけくそで腰を突き上げるが、快楽と残った麻酔のため思うように動けない。
「ほら、うごいて、んふ、うごきなさいよ」
少女は刺激に耐えられず、前のめりになって少年の胸に手をつく。整った顔を快楽にとろけさせ、少年に更なる快感を求めるその姿に、少年は3度めを放出した。
「まだまだ、もっと」
白濁液を注がれながら、腰を振り続ける少女。少年には既に痛覚を伴う刺激だが、腰の動きは更に強くなっていく。
「んはっ、ほら、昔のことは、ゆるすから、もっと、つよくっ」
ぐちぐちと水音を立てながら、少女は休むことなく行為を続けていった。


少年が気がついたのは、社殿の入り口であった。
日は沈みかけ、木々に覆われた境内はずいぶん暗くなっている。
結局、少女の中で何回果てたかわからない。
むしろ後半は記憶があやふやになっている。
あまりにも回数を要求してくる少女に、泣いて懇願していた気もする。
ぐるりと見回してみても、人影は無い。見えていないだけなのだろうか。
脇にかためておいてあったザックと鞄を掴み、痛む腰をいたわりながら少年は帰路についた。



後日談

少年は、また例の神社を訪れた。
社殿の前の石段に座り、暫くぼぉっとしていると――

「また来たのですね」
あの日と同じ声。鈴を転がすような、しっとりとした心地良い声音。
振り向くと、社殿の扉の前に真っ白い蛇がとぐろを巻いていた。
体長は少年を上回っているかいないか、といったところか。幼い日のように、尻尾を掴んで振り回すなんてできる大きさではない。
「あー、うん。やっぱり、ちゃんと謝っておこうと思って。あと聞きたいこともあったし」
下げていた袋から720mlサイズの瓶を取り出す。
「これ、お詫びのしるしに。お神酒って言うぐらいだから、神様には日本酒かなって」
「あの時、昔のことは赦すと言いました。改めて謝罪の貢物を持ってくる必要は――」
そこで言葉を切り、身を乗り出してラベルを見る彼女。
「久保田の萬寿」
新潟の銘酒、久保田の最高級品。
「う、うん。高くて一升瓶は買えなかったんだけど、お店の人が美味しいって言うから」
彼女は食い入るように瓶を見つめ、一つ咳払いをして続ける。
「――必要はありませんが、当神社への進物ということで、わたくしが頂くことにしましょう」
するりと瓶に巻きつき、器用にもそのまま社殿へ入っていく彼女。暫くして出てくるときはぐい飲みが2つ加わっていた。本当に器用なものだ。
ふたを加え、かきりと栓をあける。ぐい飲み2つを酒で満たし、片方を少年の方に勧める。
「あ、いや、俺、酒はちょっと」
「構いません。残ったら私がいただきます」
戸惑う少年に構わず、ぐい飲みに口をつける彼女。ちろちろと見える真っ赤な舌に、少年は思わず見入ってしまった。
(ナニ考えてるんだ俺、あの時の女の子とはいえ蛇だぞ!
いや、蛇とはいえ彼女な訳だし、蛇の姿だからって別に否定することは……)
「聞きたいことが、あるそうですね」
瞑想する少年の心中はいざ知らず、早くも2杯目をつぐ彼女。
彼女の言葉にぎくりとするが、少年は動揺を何とか隠して問いかける。
「まず、何で今になってなのかなって。ここにはちょくちょく来てたのにさ。やっぱりお守りが絡んでる?」
「ええ。あれにはわたくし達にとってとても嫌な香が焚き込められていました。それをぶら下げて何度もここに来て。嫌がらせでしたわ」
「ご、ごめん。2つめなんだけど、その、神様と人間だとどうなるのかわからないんだけど」
言いにくそうにする少年に、3杯目をつぎながら紅い瞳を向ける彼女。
「ごほん、あの、中に出しちゃっても良かったのかな、って」
あまりの恥ずかしさに明後日の方を向く少年。
「わたくし達と人との間で子をなすのは、良くあることです」
彼女の言葉にぎくりとして振り向く少年。
「でも、心配無用です。ちゃんとコーラで洗いました」
しばしの沈黙。
「……コーラ?」
「はい、コーラ。行為のあとにコーラで洗い流すと、子を孕むのを防げるのです。知らないのですか?」
呆然とする少年に、むっとして社殿に引っ込む彼女。今度は一冊の本をくわえて戻ってきた。
「これに書いてありました」
本のタイトル:“れっつ逆レイプ”(成人向け図書)
どうやら境内で拾ったこの本を復讐の参考にしたようだ。
得意げに酒をすすりだす彼女に、何をどう伝えようか頭を抱えながら悩む少年。
「あのですねえ、……」
とりあえず、簡単な保健体育の講義をした。


「なんてこと――人間は、平気で嘘を書物に載せるのですねっ?!」
「いや、こういう本はそういうのを知ってる人向けの本だし……」
嗚呼どうしましょう、と嘆きながらぐい飲みをあおる少女。空になったそれを見て、何かに気付きはっとする。
「さては、この酒にも一服盛りましたね」
「盛ってない! 盛ってないから巻きつかないで!」
「では酔い潰して退治しようと。古来から人間の常套手段ですわ」
少年は反論しようとしたが、できなかった。
彼女はいつの間にか人の姿に戻っていたのだ。もちろん身体を少年に絡ませたままで。
ほんのりと紅く染まった腕を伸ばし、瓶から直接酒を飲む。喉が艶かしく上下する。
「でもわたくし、これくらいのお酒で潰れるほどやわじゃありません」
耳まで真っ赤に染め、座った紅い目で少年を見据える。いつの間にか瓶は空に近い。
「ちょ、呑みすぎですって!」
「そうですわ、またここで行為に及んでしまえば、あの時孕んだかなんてどうでも良くなくなりますわね。われながら良案」
「全然良案じゃないしっ、何この怒涛の流れ! あっちょっやめ」
「うるさいお口はこうしてあげます」
瓶を少年の口に突っ込む。残った酒は余さず少年の喉を下っていった」
「さあさ、邪悪な肉へび退治のはじまりはじまり」
彼女は少年を引きずり、社殿の奥へと消えていった。


翌日、少年は所属するバスケ部に休部届を提出した。
腰を痛めたらしく、整体院に通って治療に専念するのだそうだ。
何故痛めたかという問いかけに、少年は頑なに口を閉ざしたそうな。