突然だが質問させてくれ。みんな、猫は好きか?
俺はもちろん大好きだ。そりゃもう、住んでるアパートがペット禁止じゃなくなってくれればダッシュでその辺に捨てられてる野良猫の1匹でも拾って(貧乏学生の俺には買うなんてとてもとても)
何か可愛い名前をつけてやってミルクでもやりながら頭をナデナデして気持ち良さそうに鳴くのを心地よく聞いて、そんな事がしてみたいさ。
だが、そんな事は――少なくとも今ここに住んでる限りは――できない。
全く、いつになったらそんな幸せな暮らしができるんだか。
そんな事を考えながら1人淋しく床につく。
そんなマンネリ生活に突然トドメを刺されるなんざ、この真中慎太郎(まなか・しんたろう)の目をもってしても見抜けなんだわ!



「ちょっとー、慎、起きなさいよ!」
ああ、あげはの声が聞こえる。どうやら俺を起こしたいらしい。
だが今日は日曜だ。もう少し眠らしてくれよ……
「あ~、後4時間、後4時間・・・」
「むー……そっちがその気なら実力行使でいくんだから!痛い目に合いたくなければとっとと起きなさい!」
「そんなこと聞ける状態じゃないですよーだ……12時になったら起こしてくれってかりんに頼んどいてくれ、お休み……」

あーもー、うるさいうるさいうるさい。
こんなうるさい奴はほっといて、とっとと2度寝しよ(がつっ)


あれ なにか さむけが もしや あげはが おれの こかんに いちげき……


「…………のォOOOOOOOOOOO!!!!!!」
「ふふん、起きられた?あたしの言うことを聞かないからこうなるのよ、わかった?」
「がが、が……あ、ああ、充分、わか、った、ぜ……」
「そう、それでいいわ。下僕は主人の言うことをよく聞くものよ?聞かないのならお仕置きは当然よね……」
な、言わせて置けば好き勝手な事を。だが、ここで反論すれば、たぶん俺は2撃目を食らって再起不能になってしまう。
ここは素直に従っておくか……痛い痛い痛い痛い。
「分かった、いや分かりましたです。だから、どうか2撃目だけは勘弁してください」
「仕方ないわね……わかったわ。その代わり、今夜は1晩中付き合うのよ?途中で気絶なんかしたら、また痛い目にあわせるんだからねっ」
そういってあげはは俺の部屋を出て行った。ふー。まったく、嫌な目覚め方だぜ。

もちろん、モニターの前のみんなはとっくのとうに気付いてるだろうが、彼女―――あげはは人間じゃない。
少しくせの入ったセミロングの銀髪、蒼い瞳、そしてなによりその頭に生えている猫耳と尻の方でくねくね動いてる尻尾。彼女は、いわゆる「猫人間」って奴だ。
数週間前、俺は色々と会って子猫を3匹拾った。それで、部屋に連れ帰ってみたらいつの間にかこんな姿になってやがった。
かといって追い返すわけにもいかず、結局3匹とも住み着いてる。
ああ、黙ってれば本当に可愛いんだがなぁ。
まあいいや、今の俺にはかりんがいる。とりあえず、朝飯にでも食いにいくか。
何やかんやで、俺の慌ただしい1日が始まる―――
台所に行くと、キッチンに向かってトントンというリズミカルな音を響かせている茶髪をショートカットにした少女と、
机に座って黙々と朝食を食っている腰まで届く金髪縦ロールの二人の少女がいた。
……って何他人行儀になってるんだろうな俺。
しかし、この時間帯にこよりんが家にいるのも珍しいな。
「あ、おはようございます、ご主人様♪」
「……………」
俺の方に振り返り、茶髪の少女は天使のような笑顔で(この言葉に嘘偽りはない。ああ、デジカメがあれば画像を取って証拠をうpするんだがなぁ……)挨拶をする。
一方金髪の方は、振り返りもせず飯を食い続けている。まったく、無愛想な奴め。
「おはようかりん、こよりん。今日も本当に可愛いなぁ」
「みぃ……もう、可愛いだなんて。恥ずかしいですよ~」
「……………」
ああ、照れているその顔も本当に可愛いぜ。神様、俺の下にこんないい子を遣わしてくださって本当にありがとうございます。
「可愛い物は可愛いんだから仕方ないだろう。こんなに可愛いく育ったお前が悪い(もみもみ)」
「きゃっ!……だ、だめですよ、今日はあげはちゃんの日……」
「いーじゃねーか、俺はおっぱいを揉んでるだけだぜ。このくらい、あげはも多めに見てくれ「セクハラですわーーーーっ!!」ぶべらぁ!」
「だ、大丈夫ですか、ご主人様!?」
「さっきから黙って見てればセクハラまがいの変態行為の数々……慎太郎、あなたには節度という物は無いんですの!?」
「……ああ大丈夫だかりん。お前への愛に比べれば、この程度蚊が刺したようなものだぜ」
「人の話を聞きなさい!」
「ご主人様……ぽっ」
「キィーーーーーーッ!!なんであなたたちばかりがわたくしを放っておいてそのようにラブラブできるんですの!腹立たしい……」
「おいおい、こよりん。俺はかりんと朝のスキンシップを取ってただけだ。急に飛び蹴りを入れるなんてひど過ぎるぜ」
「その、こよりんって呼ぶのをやめなさい!」
「こよりちゃん……」
あー、やれやれ。ようやく反応したと思ったらいきなり飛び蹴りかよ。もっとよく躾けないといかんな……


あ、二人の紹介がまだだったな。悪い悪い。
まず、今俺に飛び蹴りを入れたのがこより。
背中まで届く縦ロールの髪、いつも不機嫌そうな深緑の瞳、3桁はいっているだろうけしからんおっぱい。
そして、実に見た目通りのお嬢様な性格。
ああ、黙ってれば(ちょっと背は高いが)お人形みたいで可愛いんだがなぁ……
俺は親しみをこめて「こよりん」と呼んでるんだが、本人はどうも気に入らないらしい。
自分では結構気に入ってるんだがなぁ、何が悪いんだろうか。
で、俺がおっぱいを揉んだりした茶髪がかりん。
ショートカットにした栗色の髪、引き込まれそうな黒い瞳、もちろん耳と尻尾も完備。
3人の中でただ1人、俺のことを「ご主人様」と慕ってくれている、本当に可愛い子だ。
ああかりん、お前のためならこの命、微塵も惜しくないぜ……
「あー、なんだ、こよりん。そんなに気になるんだったら、お前のおっぱいも揉んでやろうか?」
「結構ですわ。まったく、何でわたくしはよりにもよってこんな変態に拾われたのかしら……かりん、昼御飯と晩御飯はいりませんわ!」
そう言うと、こよりんは窓から飛び降りていった。おいおい、ここは3階だぜ。誰かに見られたらどうするんだよ……。
あ、もちろん心配は要らない。こよりんは猫。少々高いところから降りても大丈夫らしい。そう本人が言ってたんだから間違いない。
あいつ、どうも放浪癖があるらしくてな。いつも朝早くから家を出て夜にふらっと帰ってくるんだ。
何をしているのかは俺には教えてくれない。けちー。
「こよりちゃん、いつも元気でいいな……あ、そうだ。朝ごはん、出来上がってますよ」
「おおそうか。じゃ、頂こうか。今日のメニューはなんだい?」
「はい、今日の朝ごはん簡単に、ご飯と卵焼きです」
そういいながらかりんはご飯とおかずを俺の前に置いてくれた。
「んじゃ、いただくとしますか。いただきまーす!……ンマーイ!いやぁ、本当にお前の飯は最高だな」
「ふふっ、ありがとうございます。いつもご飯を作るときは、ご主人様のことを思いながら作るんですよ」
こいつ、嬉しいこと言ってくれるじゃないの。ああ、俺は幸せ者だな……
「……ばーか……」
「ん?かりん、俺に何か言ったか?」
「え?私は何も言ってませんよ?」
そうか、じゃあ気のせいだろうな……

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最終更新:2007年06月17日 18:31