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しゃかしゃかしゃか、と感情も何も感じられない音が耳を支配する。茶道部に入ってからはもうすっかり聞き慣れた音だ。その音を自分が音に負けずと無表情のままたてているのだと思うと、悠太はなんとなくおかしく思った。少し似合いすぎているのかもしれないとか、時に自分はなんでこんなことをしているんだろう、などとどうでもいいことが頭を過ぎる。

実際そんなに似合っていると思うわけではないし、こんなこととは言うがそれをするために望んで部活に入ったのは自分なのだ、理由はそれしかないだろう。

それでも何故ここにいるのだろう、とか考えてしまうのだ。

しゃか、と泡立てる手を止めて器を前に座る人物に差し出す。

「どうぞ」

「はい、いただきます」

言って、春は畳の上に置かれたそれに手を伸ばし、くるり、くるり。回してから口をつけた。こくり、とのどが動く様を見てどことなく変な気分になって、悠太は自分の隣においてあった羊羹に手を伸ばし、爪楊枝でそれを刺す。そして口の中に放り込んだ。

「あ、悠太くん僕にも下さい」

口をつけたところをきゅ、と親指で拭き取りながら春が手を伸ばしてきたので、悠太は羊羹を一つ切り皿に乗せ渡した。今はもう正式な部活の時間も終わり片付けに入っている時間なのに加え、すでに悠太と春以外和室には残っていないため誰が何を言うこともない。

受け取った春がうれしそうに、律儀にもさらに小さく爪楊枝で切って美味しそうに食べた。

「おいしいですねー、やっぱりお茶には甘いものですよね」

「そうだね、苦い上に更に苦かったらもうダブルパンチ?ある種いじめですか、みたいな感じ」

真面目に適当に返事を返しつつ、春が本当においしそうに食べている表情を見ているとこちらの表情までゆるんでしまいそうになるのだから不思議だ、と悠太はいつも思う。彼女と一緒に帰り道に何か食べたと、自慢する男達もそんな気持ちになるから嬉しいのだろうか。

(彼女っていうかー・・・まぁ可愛いけどさ、春は)

春は何故か部活時には女物の和服を着用している。確か入部したての頃はちゃんと男物を着ていたのだが、ある日和服を陰干しにしていて女物のしか残っていなかった時、その場のノリでそれを着て以来、ちょくちょく着だした気がする。

(そういえばあの時に)

―――春可愛いよ。

悠太がそう言ったのがひょっとしたら春が今でも女物の和服を着用している原因なのかもしれない。と、うぬぼれてもいいだろうかと悠太は眉をしかめた。

「春ってさ」

「はい?」

「そうやって女物の和服着て笑ってるとホントに女の子みたいだよね」

「そうですか?あ、ひょっとして変ですか?」

「いーや、全然」

むしろすごく似合ってる、と他人が聞いたら感情がこもっていないのではないかと思う声色で付け足すと、そこは幼稚園からの付き合いだ、悠太がちゃんと本気で言っているのだとわかった春はふふと笑った。

「悠太くんも似合ってますよ」

「そう?ありがと春」