夕暮れ前の、ひと時(前編)

「今度さ、またみんなでお台場行こうよ」
 それまで未来の太ももを枕に寝ていた悠貴が、身体を起こすと未来に笑顔を向けて言った。
もう、先ほどまでの体調不調はすっかり良くなったようだ。その様子に、未来の胸の内の不安も
晴れていき、今までの不安交じりの笑みとは違う、安堵の笑みを浮かべた。
「そうだね、橋、無くなっちゃったけど」
「また新しいのできるよ」
「うん…」
 そして二人は肩を寄せ合うと、揃って無言のまま、すっかり雨の上がった窓の外へとぼんやりと
視線を移した。
(元気になってよかった…)
 肩に悠貴の頭の重みを感じながら未来は思った。ついこの前まではウザいだけの弟だったのに、
今では愛おしくてしかたない。加えて、悠貴がすっかり元気になった安堵から、未来は我知らず
弟の肩に手を回すと、頭を胸元にぐっと引き寄せた。
「よかった…」
「お、お姉ちゃん?」
 姉に抱きしめられるなど、ここ最近ほとんど記憶にない悠貴は、この突然のハグに未来の胸の中で
戸惑いの表情を浮かべ、もがくような仕草を見せた。しかし、自分を包む姉の身体の温もりに、
悠貴は身体の力を抜くと、姉に身体を預けた。胸に押しつけた耳に、トクン、トクンという姉の鼓動が
伝わって来る。それを聞いていると、なんだか妙に心安らぐ気持ちだ。それに、顔の横に当たる
柔らかな感触…「おねえちゃんのおっぱい、柔らかいや…」

「……」
 思わず口をついてでた悠貴の言葉に、未来は彫刻になったように固まった。その顔がみるみる
真っ赤に染まっていき、心臓が数拍した後、彼女は弾かれたように悠貴から身体を離した。
両腕を胸の前でクロスして悠貴から身体を背け、真っ赤な顔で口をわなわなさせながら、
首だけを巡らして弟を見る。
「な、な、な……」
「えへへ~…」
 慌てる姉に、悠貴がいたずらっぽい笑いを浮かべる。そんな弟に、瞬時に恥ずかしさが怒りに
取って代わり、未来は胸を隠していた腕をさっと伸ばすと、弟の耳をぎゅっと摘まんだ。
「悠貴のエッチ!」
「痛い痛い痛い痛い痛い!!」
 耳を引っ張り上げられ、悠貴が悲鳴をあげる。その声に、未来ははっと我に返って耳を離した。
元気になったとはいえ、まだ治ったばかりなのだ。怒るにしても、もう少し優しくしないと…。
「酷いよお姉ちゃん…」
 心の中ではそう反省した未来だったが、恨みがましい目で自分を見る悠貴に、素直に謝ることが
できない。
「悠貴がエッチなこと言うのが悪いんだからね?」
「お姉ちゃんがおっぱいを押し付けたんじゃない」
 怒る姉に、悠貴は痛む耳を押さえながら、半べそで抗議する。
「そ、それは、その…」
 確かにその通りだが、別に胸を押し付けるつもりで悠貴を抱きしめたわけじゃない。未来は
一瞬怯んだ様子を見せたものの、すぐに怒った顔をして見せた。「もう、本当にエッチなんだから」

「ひくっ…」
 と、悠貴がしゃくりあげた。実を言えば、あんなことを言えば姉が怒るのは予想していたし、
叩かれるなりするかもしれないとも覚悟していた。そうしたら、笑って「ごめんなさぁい」と
言って、それで終わりにするつもりであった。
 まさに悠貴の思った通りの成り行きとなったわけたが、一つだけ誤算があった。未来が思った
以上に怒り、強く耳を引っ張った、というわけではない。平時であればこれくらいで泣いたりは
しない。普段はもっと酷い扱いを受けているのだから。
 誤算は、悠貴の心が自分で思っていた以上に弱くなっていたことであった。元気になったように
振舞ってはいたものの、実際はまだまだ頭は痛み、軽い吐き気も続いていた。それに、ついさっき
までは今とは比べ物にならないくらい具合が悪かったのだ。こういう時は、ちょっとしたことでも
辛く感じてしまうものである。
 こんなことで泣いちゃダメだ。そうは思うものの、どうしても涙が込み上げてきてしまう。
そして遂に一粒の涙が目からこぼれ落ちると、後から後から涙があふれ出していくのを、悠貴は
もう止められなかった。

「ひくっ、うっ、うぅっ…」
「え? ちょ、ちょっと悠貴」
 ぽろぽろと涙をこぼし始めた悠貴に、未来は慌てふためいた。
(わたし、そんなに強く引っ張ったっけ?)
 カッとなってやってしまったとはいえ、それなりに自制は効いていたつもりだった。なのに
泣くなんて…。それとも、エッチって言ったのがそんなに堪えたんだろうか?
「ちょっと、泣くことないでしょ?」
「だって、だって…ひくっ…うぅっ」
 ぽろぽろ涙をこぼしながらしゃくりあげる悠貴に、未来がおろおろとする。放っておけば
大声で泣き出しそうな勢いだ。
「ほら、真理さんが起きちゃうよ?」
「うっ、うぅっ、うっ……」
 未来は、すぐ横の椅子に座って眠りこんでいる真理を横目で見た。起こすと気の毒だ、という
のもあるが、さっきまで具合の悪かった弟を叱って泣かせたなんて知られたらバツが悪い。
 ぐずりながらしきりに袖で涙をぬぐう弟に、未来はどうなだめていいかわからず、おたおた
おろおろと手を上げ下げするだけだった。そしていよいよ悠貴が大泣きを始めようかという
瞬間、未来は天を仰いでやけっぱち気味に叫んだ。
「あ~~もう、おっぱいでもなんでも触らせてあげるから泣かないで悠貴っ!」

「ふへっ?」
 未来の言葉に、悠貴の涙がピタリと止まった。涙に濡れる目をパチクリさせ、口は泣き声を
あげていた形のままでポカンと開け、姉を見る。が、未来は意地悪そうなにやにや笑いを浮かべ、
彼を見つめ返している。
「あー、泣きやんだ。やっぱり悠貴はエッチだ」
「え、あ…?」
 からかわれた…。そうわかった時には既に手遅れだった。未来の手がさっと悠貴のほっぺに伸び、
ぐにゅっと摘まむ。ただし、耳を引っ張った時よりもはるかに優しく、痛くないようにちゃんと
手加減はしている。
「いつからそんなにエッチになったの悠貴?」
「ちっ、違うよ! 僕、そんなんじゃ…」
「悠貴のエッチ~」
 畳みかけるようにからかう姉に、悠貴は再度泣きそうな表情になるが、それよりも怒りの感情の
ほうが強く、悠貴はほっぺを引っ張る姉の手を振りほどき、ぷくーっと頬を膨らませると、
くるっと姉に背を向けた。「もう知らない!」

「そんなに怒んないでよ、冗談だって」
「……」
 今度は怒りだした悠貴に、未来は苦笑を浮かべ、無言のまま背を向ける彼の肩にぽんっと手を置き、
こちらを向かそうとした。しかし悠貴はぶんぶんと肩をゆすり、姉の手を振り払う。
(ちょっとからかいすぎたかな?)
 悠貴に拒絶され、未来は苦笑いに愛想笑いの入り混じった薄ら笑いを浮かべ、猫撫で声を出す。
「ほら、悪かったってば。謝るから機嫌直して」
「……」
 だが、悠貴は姉に背を向けたまま一言もしゃべらない。
「もう…」
 未来は腕組みをしながら弟の背中を見つめ、はぁっと溜息を洩らした。(しょうがないなぁ…)
未来は頬を赤らめ、しばし考えあぐねる様子を見せていたが、やがて小さく肯くと肩にかけていた
バッグを外した。

「……?」
 後ろで未来が何かごそごそやっている物音がしてきて、悠貴の耳がぴくっと動いた。
(お姉ちゃん、何してんだろう?)
 ことりと、何かをテーブルに載せる音。どうやら、肩にかけていたバッグを置いたらしいと
悠貴には見当がついた。それに続いて、今度は衣擦れの音。
「ほら悠貴、こっち向いてよ」
「ん~…?」
 姉の猫撫で声に、悠貴は面倒くさそうな声を出しつつ、姉の方を向き直った。もうお姉ちゃんとは
二度と口を聞くもんかというほどむくれていた悠貴だったが、今の物音に対する好奇心が怒りを
上回ったのだ。

 未来は悠貴が見当をつけた通り、バッグをテーブルに置き、さらに羽織っていた薄手の
カーディガンを脱いで、水色のキャミソールだけの姿になってソファーに座っていた。 後から
聞こえたのは、やはりカーディガンを脱ぐ音だったようだ。
「なに、お姉ちゃん?」
 悠貴がぶすっとした声で聞く。未来に向ける目も、声と同様不機嫌そうだ。何をするつもりかは
分からなかったが、ちょっと謝ったくらいで機嫌を直すつもりはなかった。そんな弟の姿に未来は
苦笑を浮かべると、両手でキャミソールの裾を掴んだ。
「ほら、ちゃんと触らせてあげるから許して。ね?」
 姉が何の話をしているのか悠貴が飲み込む間もなく、未来はさっと服を胸元まで引き上げた。
なだらかな二つの小さな膨らみが、薄暗い室内で揺れるロウソクの灯りに照らし出されると、
悠貴の目が真ん丸に見開かれた。
「お、お姉ちゃん?」
「約束だもんね。泣きやんだら触らせてあげる、って」
 声をひっくり返している悠貴に、未来は少し照れた様子で言う。しかしそんな姉の表情は、
弟の目にはまるで入っていない。彼の目は姉の乳房に吸い寄せられ、他の事など何も映って
いなかった。

 姉の胸を見つめる悠貴の喉がごくっと動いた。一緒にお風呂に入ることもなくなり、着替えの時は
部屋を追い出されるようにもなって、姉の裸を最後に見たのはもう一年以上前になる(わずか一年
とはいえ、まだ8歳の彼にとっては遥か昔の出来事に等しい)。久しぶりに見た姉の胸は、まだ全然
小さなものではあったが、彼が最後に見た微かな記憶の、真っ平に近かった頃と比べれば格段に
膨らみんでいた。
 悠貴はソファーの上でお尻をいざらせ、姉の方へと近寄っていった。その間も、視線は未来の胸に
釘付けになったままだ。めくり上げられた水色のキャミソールの下からのぞく、真っ白でなだらかで、
いかにも柔らかそうな小さな膨らみ。その頂点には、大きさといい色といい、ちょうど10円玉
くらいの薄茶色の乳輪があり、中央に小さな出っ張りがぽつんとついている。乳房と同じで、まだ
発達が始まったばかりのそれは、見慣れた悠貴自身の乳首とほとんど違いはなかったが、姉に…
姉の乳丘にあるというだけで、悠貴にはなにか特別な感じがしていた。

 触ってみたい…どんな感じなんだろう…。好奇心に突き動かされ、悠貴はソファーの上に正坐を
すると右手を上げ、姉の胸へと伸ばしかけた。が、彼はそこではっとしたように手をおろし、未来の
乳果から視線を外すと彼女の顔へと移した。もしかしてまたからかってるんじゃないだろうか?
「どうしたの、触らないの?」
 だが未来は、はにかんだ笑みを悠貴に向けたままだった。「いいよ、ほら」と、未来は警戒する弟を
促すように、ぐっと胸を突き出した。たいして大きくもない乳丘だ、突き出したところでたかがしれて
いたが、悠貴は気圧されたようにわずかに頭をのけぞらせた。しかしそれでようやく、悠貴は姉が
本気で触らせてくれようとしているのだと得心し、すぐに姿勢を戻すと再び右手をあげ、そっと
姉の小さな膨らみに掌を押しあてた。

 ぷにゅ。(わぁ…)
 掌に暖かく柔らかな感触を感じ、悠貴の顔に感激の表情が広がる。未来の胸の膨らみは、幼い悠貴の
手にもすっぽり収まってしまいそうなほどに小さかったが、姉の柔らかさと温かさ、そして心臓の
鼓動を、悠貴は掌全体に感じていた。さっき抱かれた時に感じたものよりも、何倍も何倍もはっきりと。
 悠貴はその感触を推し量るように、しばらくじっと掌を押しあてていたが、膝についていた左手も
持ちあげると、もう一方の膨らみにそっと触れてみた。両方の掌全体に、姉の柔らかな肉果の感触が
伝わってくる。丘の中ごろにある、少し硬くて小さな突起の存在まではっきりと悠貴にはわかった。
掌の中央をこつんと突き上げて、なんだかくすぐったく、それでいて心地よい、ちょっと不思議な感じだ。
 悠貴は両手を姉の微乳に当てたまま、いましばらくその艶めかしい感触をじっと噛みしめていたが、
やがてゆっくりと手を動かし始めた。ちょっと力を入れただけで潰れてしまいそうな気がして、
そっと優しく、慈しむように、きゅむっ、きゅむっと…。

「ん…」
 悠貴に乳房を揉まれながら、未来が悩ましげな吐息を漏らした。ほんの軽い気持ちで始めたものの、
悠貴の小さな指が乳肉に食い込むたび、恥ずかしい気持ちが身内に募っていき、頬が、いや身体が
かぁっと熱くなる。だが、無心に乳房と戯れる弟に、もうやめろと言えず、未来は恥ずかしさを堪えて
じっと弟のなすがままにされていた。
「あ…」
 悠貴が右手の人差し指の腹で、乳肌をつつっとなぞっていき、頂点にある突起を捉えるとそこを
きゅっと押さえた。未来は小さな声を漏らし、思わずぴくっと震える。
「あ…ん…」
 悠貴は指の先でその小さな突起をこねまわし、押さえ、弾くように転がした。そうしながら
もう一方の手も乳首を捉え、きゅっと軽く摘まみ、扱き、そして軽く引っ張る。

「はぁ、はぁ…あはっ…はぁっ…」
 弟に乳首を弄られながら、未来の息は荒くなっていった。悠貴が触れる胸の奥では心臓が激しく
脈打ち、未来は恥ずかしさからとは別の熱さを下腹部に感じ始めていた。こみ上げる熱さを抑えようと
するかのように、未来は無意識のうちに太ももをぎゅっと閉じ合せた。それでも足らず、オシッコを
我慢でもしているみたいに、もじもじとすり合わせる。ハァハァと息が荒くなり、肩が大きく
上下している。
「あんっ…」
 乳首をきゅっと摘ままれ、未来はまたもや小さな悲鳴を漏らし、肩をピクっと震わせた。
弟の指の中で、乳首が固くなっていく。悠貴の指がそれをこりこりと扱き、掌で押さえて乳房ごと
転がすように撫でまわす。(あ…気持ちい……)「ねぇお姉ちゃん」
「なっ、なに?」
 未来が自分が感じ始めていることを認めてしまいそうになった寸前、悠貴が乳房をまさぐる
手を離し、彼女ははっと我に返ると慌てて返事をした。トロンとなった目を瞬かせ、自分を
見つめる悠貴に目の焦点を合わせる。

「お姉ちゃん、あのね…」
 悠貴は何かを言いかけたが、姉に見つめられて気恥ずかしそうに視線を逸らし口ごもった。
「なに? 言ってみなさいよ」
 弟に胸を弄られて感じそうになっていた照れ隠しもあり、はっきりしない態度の弟に、
未来はちょっときつめに問い質した。悠貴はそれで踏ん切りがついたのか、視線を姉に戻すと、
思い切ったように口を開いた。
「あのね……おっぱい…吸ってもいい?」
「へ?」

 未来の目が点になった。そして一瞬の間を置いて、彼女は首まで引き上げたままだった服を
バッと下ろして胸を隠し、ぶんぶんと首を横に振る。
「だ、ダメダメ。赤ちゃんじゃないんだから」
 触らせるだけならともかく、おっぱいを吸わせるなんてとんでもない! 未来は顔を真っ赤にして
慌てふためくが、悠貴はそんな姉を面白がるふうでもなく、寂しそうな表情で顔を落とした。
「うん…」
「う…」
 そんな顔を見せられ、強く拒絶しすぎたかなと未来の罪悪感が疼いた。思えば、あの日から
今日で3日。体調を崩して心細さが増し、母恋しさが募っているのかもしれない。さっき悠貴に
膝枕をしていた時、両親の話をしたのもいけなかったかもと、未来は悠貴の心情を思い、少し
顔を暗くする。そして未来は目を閉じ、ふぅっと小さな溜息を一つつくと、半ば諦めたように
悠貴に言った。
「わかったわよ、吸ってもいいよ」
「えっ?」
 とたんに悠貴は顔を輝かして姉を見た。現金なもんだと未来は微苦笑を浮かべつつ、もう一度
服の裾を持つとたくし上げた。「ほら、特別だからね?」

「ありがとうお姉ちゃん」
 悠貴はそっと未来の左側の乳首に唇を寄せた。まさに口づけする寸前、彼に弄られて、全体が
ぷっくりと膨らみかけているそこを、悠貴は少し躊躇うかのように一度動きをとめ、それから
おもむろに、薄茶色の乳輪もろともその小さな突起を口に含んだ。

「ふくっ…」
 弟に弄られている間に勃起し、敏感になった乳首に、暖かくぬめっとした柔らかな唇が触れた瞬間、
未来はくすぐったさを覚えて含み笑いを漏らしてぴくっと身じろぎした。次いで、悠貴がちゅくっ、
ちゅくっとそこを吸い始めると、胸の蕾に血が集まり、じんじんと疼きだす。その肉蕾を悠貴は
時折唇で軽く挟み、時折もごもごと動かしては擦りたて、ぬめっとした舌先がまるでくすぐるように
乳輪や乳首を舐め上げ、未来の中にむず痒さが募っていく。
「んっ…んくっ…ふふっ…くっ…」
 未来の唇が歪み、笑い声が漏れた。ダメ、くすぐったい…! 赤ちゃんにおっぱいを吸われるって
こんな感じなの…? あまりのくすぐったさに、未来の服を捲りあげている手がぷるぷると震え、
ビクッビクッとひきつったように身体を左右にくねらせる。
「動かないでよお姉ちゃん、うまく吸えないよ」
 未来があまりにもぞもぞ動くせいで、乳首から唇が離れてしまい、悠貴が胸元から姉を見上げて
抗議の声をあげる。
「ごめんごめん、だってくすぐったいんだもん」
「もぉ…」
 笑いながら謝る未来に、悠貴は少し憤った様子を見せたが、自分があれこれ注文できる立場では
ないのはわきまえていて、それ以上は文句は言わずに、顔を落とすと再度姉の乳首に口をつけた。

「んふ、ふ…」
 再び乳首を吸われ、またも未来の口から忍び笑いが漏れ始めた。しかし、やや慣れてきたことも
あってか、身悶えするほどのくすぐったさはなくなってきた。はぁ、はぁ、と大きく口を開けて
深く息をし、呼吸を整えていくと、やがて気持ちに余裕が出てくるようになり、未来は黙々と
胸を吸う弟へと視線を定めた。

(悠貴ってば赤ちゃんみたい)
 無心におっぱいを吸う弟に、未来はぼんやりとそんなことを思った。やはり母親が恋しかった
のだろうか。そう思うと弟が不憫で、そして可愛くて、未来は胸の奥からなにか暖かな感情が
湧き起こるのを感じた。悠貴を見つめる未来の眼差しは優しく細められ、いつしか乳首に感じていた
くすぐったさが、不思議な心地よさへと転じていく。

(あん…)
 未来がぴくんと身体を震わせた。悠貴が未来の横腹にかけていた右手が、その滑らかな肌を
滑るように徐々に上に移動していき、空いている右の乳房に触れたのだ。無意識なのか意図的なのか、
悠貴はちゅくちゅくと小さな音をたてて乳頭を吸いながら、乳肉に手を押し付けてゆっくり回す
ように動かし始める。
「ふぅ……ん…」
 唇と手、左右の胸に加えられるまったく違った刺激に、背筋をざわざわと快感の波が駆け上がり、
未来は甘やかな吐息を漏らした。身体がかっと熱くなって、呼吸がだんだん荒いでいく。
(やだ…またわたし…)
 再び自分が感じ始めているのを知り、未来は目を潤ませながら唇を噛みしめ、こみ上げてくる
愉悦と戦った。弟におっぱいを吸われて気持ちよくなるなんて、こんなの…「あっ…!」
 胸を弄っていた悠貴の指が、固くなった乳首をきゅうっと摘まみ、未来は思わず声をあげて
首をのけ反らせた。「あっ、あ、ふぁ…」そのまま、固くなった胸の蕾を揉みほぐすかのように
悠貴にそこをこね回され、未来の口から次々に喘ぎ声が漏れる。(ダメ…悠貴…)
 未来の内心の懇願も虚しく、弟の指はせわしなく彼女の乳蕾を弄り回した。切なく疼くその
小さな突起を、指や唇が時に強く、時にほとんど触れる程度に心地よく刺激し、手で触られていた
だけの時より数段苛烈な官能を生み出していく。

 服を引き下ろして胸を隠し、「はい、そこまで」と言えばいつでもやめさせられるはずだったが、
未来はそれをやめさせようとはしなかった。理性はイケナイと訴えていたが、胸先から全身に広がる
快美感に、未来はどうしても抗う事が出来なかった。もっと触ってほしい、もっと吸ってほしい、
もっと気持ち良くしてほしい…「あはっ……!」
 乳蕾を弄る悠貴の指が、きゅむっとそこを摘まみあげた瞬間、未来はがくんと首をのけ反らせ、
ひときわ大きな歓喜の喘ぎを漏らした。(あ…気持ちいいよぉ…)
 服をたくしあげていた手は、いつしか悠貴の首にまわされ、彼を胸元に引き寄せていた。支えを
失った服は悠貴の頭に被さっているが、悠貴はまったく気にもとめず、ちゅくちゅくと一心に姉の
乳首を吸い、その手で乳房を撫で、指先で先端の蕾を転がす。
「あ…くぅん…ん、あ…あっ…」
 悠貴の愛撫にあわせ、未来の押し殺した喘ぎが静かな室内に広がっていった。

イラスト:メンクイさん

「あ…は…ん………あ…?」
 やがて、悠貴がようやく乳首から口を離し、苛烈な快感から解放された未来は、ぼんやりとした
表情で弟を見た。弟は未来の胸元で、どこかぽぉっとした顔で彼女の胸を見つめている。
「…悠貴、もうおっぱいいいの?」
 はぁはぁと肩で息をしながら、未来は弟に訊ねた。悠貴は顔を上げると、不思議そうに姉に言った。
「おっぱい、出ないね」
「…いっ?」

 弟の言葉に、未来は驚きと苦笑いの入り混じった表情を浮かべた。どうやら悠貴は、母の
おっぱいを吸う真似ごとではなく、本当に母乳が出るのだと思って、自分の乳首をしゃぶっていた
ようだ。母乳というのは、おっぱいが膨らめばみんな出るようになるとでも思っているのだろう。
「もっと大きくないとダメなのかなぁ?」
「ち・が・い・ま・す」
 未来はこめかみにびきっと青筋を浮かべ、不機嫌そうに服を直しながら悠貴に言う。「あのね悠貴、
おっぱいは赤ちゃんができないと出ないの」
「えー、そうなの?」
 指をくわえて悠貴は姉の胸を見つめた。彼が初めて知った意外な真実だった。
(赤ちゃんができないとおっぱいって出ないんだ……)
 悠貴は再び顔をあげて姉を見つめ、聞いた。「赤ちゃんって、どうやったらできるの?」
「……!?」

 弟のいきなりの質問に、未来は頬を赤くし、視線を逸らしながらつっかえつっかえ答える。
「えーっと、あのね…その……せ、セックスすると出来るんだよ」
「せっくす?」
「う…」
 真面目な顔で聞き返され、未来は返事に詰まった。赤ちゃんの作り方も知らないのに、セックス
という言葉を教えても意味がわからなくて当然だ。
「あ、あのね、セックスっていうのは……男の子の…お、オチンチンをね、その、女の子のあそこに
入れて……」
「あそこ?」
 再び悠貴が訊ねる。「あそこってどこ?」
 次々に恥ずかしい質問をされ、未来のほっぺが赤くなる。
「あ、あそこっていうのはね、えーと…“性器”よ」
「せいき?」
 またもや聞き返され、未来は頭を抱えた。(性器なんて言ってもわかんないか…)
 かと言って、他になんと呼べばいいのか未来にもわからない。思い余った彼女は、スカートの
上からぺしぺしと自分の股間をはたいて、それがどこなのかを指し示した。
「ここよここ。お股のとこにあるここ」
「あ…」
 ようやく“あそこ”がどこのことなのか気付いた悠貴が、目を丸くして姉が叩いている部分を
見つめる。未来はそんな悠貴にさらに説明を続けた。
「ここにオチンチンを入れる穴があってね…」
 それを聞いて、悠貴がますます目を丸くする。凄いや、女の子ってそんな穴があるんだ!
「そこにオチンチンを入れると、男の人は気持ちよくなって赤ちゃんの素が出るの。そしたら
赤ちゃんができるんだよ、わかった?」

「へぇ~」
 気持ちよくなる…赤ちゃんの素…。姉の説明に激しく興味をかき立てられた悠貴は、未来の股間を
見つめ、感心したように肯いた。女のコのアソコって、そんな場所があるんだ…。
 その部分がどうなっていたか悠貴は記憶を手繰ったが、そんなにじっくりと観察したこともなく、
自分とは違っておちんちんはついておらず、一本の割れ目がお尻まで続いていた、というくらいしか
覚えがない。おちんちんを入れる穴ってどんなのだろう、どのあたりにあるんだろう…? と、
悠貴はそこを見ながら想像を巡らせる。

「ちょっと、なに見てんのよ悠貴」
 弟に好奇心丸出しの目でじろじろと股間を見つめられ、未来が脚をぴたりと閉じた。
「あ、ご、ごめんなさい…」
 姉に叱られ、悠貴は口ごもりながら謝った。特段エッチな気持ちでそこを見ていたわけではないが、
女の子のアソコを見たりするのはエッチなこと、イケナイことという認識は悠貴にも既にある。
が、それでも胸の内に湧き起こった、女性の身体に対する好奇心が抑えきれずに、悠貴はどうしても
視線を姉の股間に向けてしまう。

 女のコの秘密の場所に興味津々といった弟の姿に、未来は恥ずかしさを忘れ、思わずくすりと
笑いをこぼした。(もう、悠貴ったら…)
 見せてあげちゃおうかな…。ふとそんな考えが頭をよぎり、未来は頬を染めた。胸ならまだしも、
そんなとこを見せるなんてありえない。ありえないが…
(……)
 しかし、未だ好奇の視線を股間に向けている弟を見ているうち、未来の心が揺らぐ。こんなに
見たがってるんだったら、ちょっとくらい…。いや、そんな。でも少しくらいなら…。つい一年ほど
前まで一緒にお風呂に入ってたんだから、別に見せたって…。
 未来の中で、徐々にサービスしてあげようというほうに気持ちが傾いていく。まだ小さいのに、
この二日間頑張ってきた弟への、それが今の自分にできる精一杯のご褒美だ。

「ねえ、悠貴…」
「なに、お姉ちゃん?」
 姉に呼ばれ、悠貴が顔をあげた。屈託のない笑顔だ。そんな顔を見せられ、未来にわずかに残って
いた躊躇いの気持ちも消え去った。未来はごくりと唾を飲み込むと、続きを口にした。
「お姉ちゃんのあそこ、見たいの?」
「えっ…」
 悠貴がさっと頬を赤らめ、未来を注視した。「いいの、お姉ちゃん?」
 見てはイケナイ場所、秘密の部分。そこを見られるという期待と、見てもいいんだろうかという
不安がない交ぜとなった面持ちで、悠貴は姉を見つめた。未来ははにかんだ笑みを浮かべながら、
弟に肯いてみせる。
「うん。悠貴、ずっと頑張って歩いてたもんね。ご褒美だよ」
「わぁ…」



最終更新:2010年03月14日 23:21
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。
添付ファイル