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*シナリオレポート-“吸血姫”来夢 楽園の休日 久方ぶりに千早俊之さんに会って、会食を楽しんでいたら、一発の銃弾が俊之さんの頭を撃ち抜きました。 私の着物に飛び散る鮮血。 床に飛び散る脳漿。 頭を失って、力無く倒れている身体。 夢を見ているみたい。 俊之さん、久しぶりに死んでしまわれたのね。 久方ぶりの血を味あわせていただきました。 お礼は…そうね、下手人を捕らえてあげる。 ただ、まずはこの場を収拾しないと。 みんな、こんなことで浮き足立っては千早が笑われてしまうわよ。 俊之さん…美味しかったけど、やっぱり、私は女の子の方が好きかな。 それに、あまり殿方の血は飲まないことにしてるのよ…。 私の名は来夢。 「無がやって来るから来無」なんて悪口を言う人もいるけど、私は夢を与えてるつもり。 代償を要求することもあるけど、そんなのは稀。 それで不幸になる人は、与えてあげた夢で自滅するだけ…なのよ。 災厄前に日本に来て、千早俊之さんとはそれ以来の友人。 今は千早グループの相談役なんて変な立場を引き受けている。 まあでも、エグゼクらしいことなんて何一つしていないけどね♪ 私のかわいい娘たちが調べてくれた所、下手人はカトリーヌ白川という千早のクグツ。 可哀想に…社の待遇が悪かったのよね、きっと。 このままだと、千早の方々に消されてしまうから、その前に私が先に助けてあげないと。 そして、雅之さんからもこの事件の処理を言い付かったので、さっそく動き出す。 変な方に横槍を入れて欲しくないもの。 カトリーヌさんは軌道のチャイローンコロニーにいるっていうことがわかったので、ちょっとしたバカンスも味わえそうだし。 みんなで行こう、楽しみね! シャトルは珍しく私だけエコノミーにしてみたの。 周りは家族連れやカップルが多くて楽しそう…、一生懸命貯金をして、一世一代の家族旅行っていう人達もいるみたいね。 うーん、貴方達のバカンスがいい旅になりますように。 私たちのトラブルはなるべく、穏便に、騒ぎにならないように解決するから! ちょっと窮屈だけど、和やかなシャトル旅行を楽しむとチャイローンに到着。 ファーストに乗ってた娘たちをさっそく集めて、調査の手筈を整える。 みんな、これが終わったら思う存分遊んでいいから頑張って! ただ、この陽の光は私達にとってはちょっと辛いね。 でも、リゾート気分が満喫できるし、とっても幸せ! 私も街中にさっそく出てみた。情報も欲しいし、何か運命的なものに出会うかもしれないし。 それに、デスクで報告を待つだけなんて性にあわないし。 すると、やっぱり運命的な人に会ったわ。私の勘が当たったわね、やった! 私はアルドラやマーリンさんのように星詠みはしないの。だって、何が起こるかのドキドキ感やこうやって当たった時の嬉しさが半減するじゃない。 星詠みは必要かもしれないけど、人生の楽しみの半分をなくしてるよね。 まあ、それはともかく、今回の運命の人はデイライト・シルバーさん。N◎VAの探偵。 正直な話、探偵の腕は確かだけど人情家だし、商才がないから、とても自分の資産でチャイローンに遊びに来れるとは思えない。 仕事だとは思うんだけど、アロハシャツを基調にした観光ルックに身を固め、いい気分でトロピカルジュースを満喫してる。 何 か あ り ま し た ? 聞くとなんでも依頼…つまり仕事でチャイローンに来ているみたい。 小早川メイという少女を探しているみたい。 私が持っている情報と総合すると、小早川メイさんは千早俊之さんの養女のハズ。しかも、今は行方不明。 彼女には重大な秘密が隠されていて(後でわかったことだけど、千早俊之さんのクローニングに必要な人格キーだったわ)、マーダーズ・インクのヒットマンがチャイローンを訪れているみたい。 それのすべてのクロマクは私が追っているカトリーヌ・白川さん。 だーかーらー、シルバーさんは依頼人に騙されたのよ、残念だけど。 ショックを受けるシルバーさん。N◎VAで探偵をやるには人情家過ぎるわよ、残念ね。 ただ、私は貴方のそういう所が大好き。 だから、千早が貴方を雇います。 請求は私でもいいけど、俊之さんあたりに恩を売るのがお薦め。 まあ、とりあえず、小早川メイさんを探さないと…と思ったら、これまた運命的な出会いね。 シロくんというナイトを連れてメイお姫様が買い物をしてたわ。 シロくんはクリルタイを起点にして活躍する術師。名カブトでもあるわね。 その実体は…彼の名誉のため、ひ・み・つ。 ただね、彼はとってもいい子。 私が一度、彼を保護した時にドッグフードをご馳走したら、それ以来、好物になったみたい。 シロくんにある程度の状況を説明して、メイさんがなんでここにいるのかを聞こうと思ったら、さっそく剣呑な連中が登場、マーダーズ・インクね。 他の旅行者~さっきシャトルでみかけた家族連れとか~に迷惑をかけないようにしないと。 仕方がないので、男性は趣味ではないけど妖気で虜にしてその場は収めたわ。 情報を集めるとやっぱり調べたとおり。彼らの他にも凄腕が二人いるみたいね。 一人はイスメト・オズディル、男性ね…パス。 もう一人はルイーサ・カルネラ、女性だって…、そんな修羅の錬獄から私が救ってあげないと…。 まあ、とりあえず、改めてひとやすみ…なーんて思ってたら、街頭スクリーンでびっくりするような事がやっていた。 千早重工所属の小早川メイさん誘拐事件の犯人として、私とシルバーさん、シロくんの3人が手配されてるじゃない。 うーん、我ながら大画面でも私は綺麗よねえ、ウットリ…。 ああ、そんなナルシス入ってる場合じゃあないわね。 周りも慌ただしいし。まあ、私たちはいいけど、周りの観光客さんたちに迷惑はかけられないから、ここは撤収ね。 裏路地に着くと突然、ダガーが飛んで来てびっくりしたけど、シロくんのおかげでみんな無事、さすがじゃない!…さっそく…ヒットマンね。 現れたのは渋顔の中年男性、イスメト・オズディルさん。 残念、ルイーサ・カルネラさんだったら食指が動くんだけど…。 彼の主張はメイさんを渡せということ、その注文はノーだし、万が一、差し出した所でやっぱり殺しにくるんでしょ? 緊迫した雰囲気はイスメト・オズディルさんの死によって破られた。首が跳び、胴も二つに裂かれる。メイさんに見せるものじゃあないわね。 ちなみに彼の血は…あまりキレイじゃないし、匂いもイマイチ。 下手人は突然現れた千早雅之さん、いや、今はメルトダウンに戻っているのかしら? そういえば、雅之さんもチャイローンにバカンスを取ったという話よね。 マーダーズ・インク相手にバカンスを楽しんでいるのかしら? その精神疾患、ちゃんと治療した方がいいわよ? でも、マーダーズ・インク相手に振るうハズの刃は意外にも私たちに向けられた。 あの大画面放送の誘拐事件なんてトンチキな話を信じているみたい。 メイさんを引き渡せなんて勝手な事を言うのね。私に全件委任だったハズじゃないの? 信用ないなあ…。 まあ、もともと貴方にとって、地上も軌道も関心のない私は目障りでしょうから仕方ないことかも…ね。 ふーん、たとえ貴方が“死の右腕”だとしても、私に刃を向けるなんて命知らず…。 私の瞳が貴方を喰らってしまう…わよ。 …あっといけない、私まで熱くなってどうするのかしら。 シルバーさんの方が大人ね、メイさんを説得して真実を語ってもらっていた。 メイさんがここに来たのは、千早重工から逃げ出したため。 何のとりえもない市井の女の子が、突然、千早俊之さんの娘になる。 シンデレラストーリーかもしれないけど、理由もない幸せは人を不安にさせるだけよね。 だから彼女は逃げ出した。 とっても同情しちゃうな。 俊之さんも酷いわよね。ただの少女をかってに自分のクローニングの人格キーにするなんて。 メルトダウンさんはこの説明で納得してくれた。 そして、彼女を連れてキャッスル・ヴェスパールという廃コロニーに来て欲しいと言葉を残して去っていった。 ふーん、そこがクローニングの施設なのね。 彼はまたバカンスに戻るのかしら? 早めにその精神疾患は治した方がいいわよ。 宇宙港では三人の人物が私たちを迎えてくれた。 すなわち、カトリーヌ・白川さんとマーダーズ・インクのお2人。 イスメト・オズディルさん、意外にね。元気そうで良かったわ。 それにルイーサ・カルネラさん、期待通りに可愛らしいお顔。可憐な小さいバラといったところかしら。 「タンゴを踊ろう」なんてつまらない。 ゆったりとワルツを踊らない? シルバーさんにはイスメトさんをお任せ。 私はルイーサさんを虜にする。 「フォックストロットのリズムがいいかもね」 だから、ワルツで十分よ………と…一発の銃声が私の胸元を撃ちぬく。 この感じ、久しぶり。 でも、私を殺すことは…残念ながらできない…わ。 私の瞳で虜にしてあげる。 カトリーヌさんとルイーサさんはあっという間に虜になった。 そして、イスメトさんはシルバーさんに瞬殺されていた。 すごい、芸術的な殺し方ね。 人の死に対しては不謹慎かもしれないけど、シルバーさん。貴方は絶対に笑いのセンスがあるわよ。 何しろ私が数十年ぶりに声を上げて笑ったんだから。 ありがとね。 カトリーヌさんは降参したので、私の部署に編入する。 また雅之さんが嫌な顔をするのでしょうね。 大丈夫、私の方が部下の管理は適切よ。 何しろ私にとっては部下ではなく、可愛い子どもたちですもの。 そして、ルイーサさんはマーダー・インクから身分を買い取らせてもらったわ。 可愛い私のカブトワリさん。これからはよろしくね。 キャッスル・ヴェスパールで無事にキーを確認して、あとはチャイローンでバカンスを満喫。 太陽はきつかったけど、とっても楽しかった。 もちろん、シルバーさんのことは俊之さんに報告。 報酬は…まあまあ出たんじゃないかしら。 あとで聞いた話によると、メイちゃんはまたまた家出をしちゃったみたい。 またシロくんを連れて行ったのね。大丈夫、シロくんが居ればN◎VAのどこに行っても安全だから。 ただ、ドッグフードは忘れないでね。 久しぶりに定命の方々と触れ合うとそれだけでとても生き生きしてくる。 アルドラ、私たちはやっぱり寄生虫みたいな存在よね。 そして、姉さん、貴方の娘、アシャンティアの救った世界はとても美しいわ。 たまにマンデインに遊びに来てね。 その時はここを、この素敵な街を案内するから。 ---- [[戻る>“吸血姫”来夢]]

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