トゥモロー・ワールド(原題:Children of Men)

▼昔から言われている事なのだが、イギリスSF小説は暗く絶望的と定評がある。本作に覆うイメージも暗い。
▼人類女性全員が不妊におちいり、次世代を担う若者が誕生しない絶望的世界。まさしくイギリスSFの世界。ミステリ畑の女王P・D・ジェイムズの原作が生きている。その悪夢の世界をメキシコ出身のキュアロン監督が見事に映像化してくれたと思う。
▼人類滅亡の危機に、今まであった社会不満が吹き出た灰色の社会。その中で主人公セオが妊娠した少女にすべてを託すために徐々に動き出す物語は何を暗示しているか。また親友の老人がヒッピー憧れはなぜか。ちょっと考えさせられるシーンが散りばめられ印象的だ。
▼もしかしたら60年代から何も変わっていない現実を描写しているのかもしれない。
▼しかしながら、この映画のラストシーンへの流れは、戦闘とか以外の人類の本質的根本的な感情に最後の希望を託している深い余韻があるラストだった。
▼本作のほとんどは手持ちカメラによって作成されているらしく、人間の目線で捉えた臨場感ある映像が続く。しかもワンショット・ワンショットが長い。平和なドライブ→敵の強襲→車内パニック→敵の迎撃→新たな危機などのシーンはドンドン引き込まれていく。
▼また、後半の救助劇はなんと6分以上のワンショットで圧倒的な迫力がある。これだけのシーンを撮りなおさずできるものだろうか?
▼蛇足的だが、いまどきのSFの割には特撮は低レベル。最後の希望の船「トゥモロー・ワールド」が登場するところなどはパーズすらあっていない(w

2006年11月23日、ワーナー・マイカル市川妙典にて鑑賞

作成日 2007年12月17日/最終更新日2007年01月28日01時26分34秒/管理人に連絡.

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最終更新:2007年01月28日 01:26