スワンプマン



スワンプマン(英:Swampman、「沼男」の意味)とは、1987年にアメリカの哲学者ドナルド・デイヴィッドソンが考案した、人格の同一性問題を考えるための思考実験。

ある男が沼にハイキングに出かける。この男は不運にも沼の傍で突然雷に打たれて死んでしまう。その時、もうひとつ別の雷がすぐ傍に落ち、沼の汚泥に不思議な化学反応を引き起こし、死んだ男と全く同一形状の人物を生み出してしまう。

この落雷によって生まれた新しい存在のことを、スワンプマン(沼男)と言う。スワンプマンは原子レベルまで死んだ瞬間の男と同一の構造をしており、見かけも全く同一である。もちろん脳の状態も完全なるコピーであることから、記憶も知識も全く同一である。沼を後にしたスワンプマンは死んだ男が住んでいた家に帰り、死んだ男の家族と話をし、死んだ男が読んでいた本の続きを読みながら眠りにつく。そして翌朝、死んだ男が通っていた職場へと出勤していく。

同様の思考実験は1976年、Boorseが目的論的機能主義を批判する文脈で行っており、またパピノー(Papineau 1984)やミリカン(Mllikan 1984)が「perfect double」や「accidental replica」という名で行っている。

物理主義の立場では、思考実験として同時に複数の「自分」を作れば、彼らは皆自分とみなすのでスワンプマンは死んだ男と同一人物である。逆に観念論の立場では、私とは私の「心」であるとするのでスワンプマンは別人である。ただしスワンプマンの思考実験を行ったドナルド・デイヴィッドソンは唯物論者であるものの、外的な事物と志向的な関係をもつためには、その事物との因果的な繋がりが過去になければならないとする「歴史主義」の立場を取り、スワンプマンを自分と同一とは認めていない。

※同一性の問題を考える同様の思考実験にテセウスの船がある。


  • 参考文献
柴田正良『ロボットの心・7つの哲学物語』 2001 講談社現代新書
  • 参考サイト