概説
一元論(英: monism)とは形而上学において、世界には唯一の、または一種類の
実体だけが存在するという考え方である。
一元論という語は、心身問題において主張されていた様々な説を分類するため十八世紀にヴォルフ(Wolff)によって作られた。その後適用範囲が拡大され、形而上学だけでなく認識論や倫理学の分野でも用いられている。
現代の心の哲学においては、心的なものだけが実在であるとする
観念論的な一元論、物理的なものだけが実在であるとする
物理主義的な一元論、そして心的なものと物理的なものはある種の実体の属性であるとする
中立一元論の、三つの立場がある。いずれも心と体が存在論的に異なるものだという主張を認めない考え方であり、物理的なものと心的なものという二種類の実体があると説く
実体二元論や、たくさんの実体があると説く
多元論(pluralism)と区別されるが、これらの入り混じった思想も存在している。
一元論の種類
一元論には様々なタイプがあるが、それぞれの理論において究極とされている存在は、"Monad"(モナド)という言葉で表される。モナドという言葉は「単一の、単独の」といった意味を持つギリシャ語「モノス」に由来し、古代ギリシアのエピクロスやピタゴラスによって最初に用いられた。
一元論は以下のように二つの基本的なタイプに区分される。
1、「一種類」のものだけがあるとする考え
属性一元論とも呼ばれる。一種類のカテゴリーの中にたくさんの個物があるとする。デモクリトスやレウキッボスの原子論では、一種類のアトムが無数に存在しているとされた。現代の物理主義もこの思想の系列上に属している。またある種の
観念論(
唯心論)では、精神的なものだけが実体として多数存在していると考える。
ライプニッツや
デイヴィッド・ヒュームがこの立場である。
2、「唯一」のものだけがあるとする考え
数的一元論(numerical monism)または絶対一元論とも呼ばれる。世界には多様なものが存在しているように見えるが、実はそれは唯一の存在者の属性であると考える。インド哲学における
梵我一如がその立場である。西洋では
パルメニデスが最初に主張し、パルメニデスの思想は
スピノザの
汎神論や、ヘーゲルの形而上学に継承されている。
三浦要『パルメニデスにおける真理の探究』京都大学出版会 2011年
最終更新:2014年07月03日 19:34