固定指示子

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#contents ---- 固定指示子とは、ソール・クリプキが[[心脳同一説]]に対する反論として主張する概念。生じる可能性があるいかなる事態においても、つねに同一の対象を指し示す表現と定義される。人物の名前などがこれにあたる。 サマータイムの発案者であるベンジャミン・フランクリンは固定指示子である。しかし「サマータイムの発案者」という表現はベンジャミン・フランクリンを指し示すものであっても固定指示子ではない。ベンジャミン・フランクリンがサマータイムの発案者でない可能世界は容易に想像できるからだ。 固定指示子の概念からクリプキは同一性文「AはBである(AとBが同一であることを示す文)」の考察を進めた。一方の語「A」は固定されており他方の「B」が固定されてない同一性文は真であるとは限らない。例えば「ベンジャミン・フランクリンはサマータイムの発案者である」という文は真であるが、これは偶然的に真であるにすぎない。その文が偽である世界を想像できるからである。しかし同一性文の両側――AとBが固定されている場合、AとBが真であるなら、文は必然的に真である。たとえば「水とH2Oは同一のものだ」という文は、「水」と「H2O」が固定的であるゆえに必然的に真である。 同一性文は心身問題に関わってくる。心的状態が脳状態と同一であると主張できるためには、あらゆる可能世界において同一であること(論理的同一)を示す必要があるが、心的状態を指示する語(「痛み」など)と、その脳状態を指示する語(C線維の発火)は意味論的に異なるもの、異なる固定指示子であり、両者に厳密な論理的同一性は成立しない。このクリプキの考えは[[デイヴィッド・チャーマーズ]]の[[哲学的ゾンビ]]の思考実験に影響を与えている。 ---- ・参考文献・論文 ジョン・R・サール『MiND 心の哲学』山本貴光・吉川浩満 訳 朝日出版社 2006年 武田 一博「D.チャーマーズは心の唯物論を論駁したか」2003年 http://ci.nii.ac.jp/naid/110000971312 ----
#contents ---- 固定指示子(rigid designators)とは、[[ソール・クリプキ>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%97%E3%82%AD]]が主張する概念。全ての[[可能世界>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%AF%E8%83%BD%E4%B8%96%E7%95%8C%E8%AB%96]]において、つねに同一の対象を指し示す表現と定義される。人物の名前などがこれにあたる。心の哲学では[[心脳同一説]]に対する批判として用いられる。 サマータイムの発案者であるベンジャミン・フランクリンは固定指示子である。しかし「サマータイムの発案者」という表現はベンジャミン・フランクリンを指し示すものであっても固定指示子ではない。ベンジャミン・フランクリンがサマータイムの発案者でない可能世界は容易に想像できるからだ。なおこの場合、固有名の用い方は現実世界に準拠しているという点が重要である。ベンジャミン・フランクリンという名の猫がいる可能世界が仮にあったとしても、その猫は何の関係もない。 固定指示子の概念からクリプキは同一性文「AはBである(AとBが同一であることを示す文)」の考察を進めた。一方の語「A」は固定されており他方の「B」が固定されてない同一性文は真であるとは限らない。例えば「ベンジャミン・フランクリンはサマータイムの発案者である」という文は真であるが、これは偶然的に真であるにすぎない。その文が偽である世界を想像できるからである。しかし同一性文の両側――AとBが固定されている場合、AとBが真であるなら、文は必然的に真である。たとえば「水とH2Oは同一のものだ」という文は、「水」と「H2O」が固定的であるゆえに必然的に真である。 同一性文は心身問題に関わってくる。心的状態が脳状態と同一であると主張できるためには、あらゆる可能世界において同一であること(論理的同一)を示す必要があるが、心的状態を指示する語(「痛み」など)と、その脳状態を指示する語(C線維の発火)は意味論的に異なるもの、異なる固定指示子であり、両者に厳密な論理的同一性は成立しない。従って心脳同一説は論証不可能ということになる(ただし心脳同一説が間違っていることを論証するものではない)。このクリプキの考えは[[デイヴィッド・チャーマーズ]]の[[哲学的ゾンビ]]の思考実験に影響を与えている。 ---- ・参考文献・論文 ソール・クリプキ『名指しと必然性──様相の形而上学と心身問題』八木沢敬・野家啓一 訳 産業図書 1985年 ジョン・R・サール『MiND 心の哲学』山本貴光・吉川浩満 訳 朝日出版社 2006年 武田 一博「D.チャーマーズは心の唯物論を論駁したか」2003年 http://ci.nii.ac.jp/naid/110000971312 ----

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