ドラえもん・のび太のポケモンストーリー@wiki

シンオウ冒険譚 その3

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akakami

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          現在の状況

  • のび太 203番道路
手持ち  ヒコザル ♂ LV13
     モモン(コリンク) ♂ LV9

  • 静香  203番道路
手持ち  ペンちゃん(ポッチャマ) ♂ LV15
     ムーちゃん(ムウマ) ♀ LV15

  • スネ夫 ???
手持ち  エル(ナエトル) ♂ LV12

  • 出木杉 ???
手持ち  ミニリュウ ♂ LV16
     ユンゲラー ♂ LV17
     他不明



  ――クロガネジム――

「ペンちゃん、泡」
の攻撃に、ジムリーダー・ヒョウタのズガイトスが怯む。
この攻撃で、静香は既にイワークを撃破していた。
静香の戦い方は見事だった。
相性で有利とはいえ、敵を寄せつけずに完封している。
それにくらべて、僕は……

――ルーキー狩りとの勝負、勝ったのは僕だった。
衝突の瞬間、エレキッドの攻撃は成功しなかった。
幸運なことに、連発していた雷パンチのPPが切れていたのだ。
でも、所詮それは運に助けられただけの結果。
PP切れがなければ、きっと僕は負けていた。
安易な挑発にのって、何レベルも上の敵に突っ込んで行って……
ホント、馬鹿みたいだ。

「もう一度泡!」
ダメ押しといわんばかりの泡攻撃で、ズガイトスが崩れ落ちた。
敵の残りポケモンはもういない、ということは……
「やった! 静香ちゃんの勝ちだ!」
思わず、観客席のベンチから飛び上がってしまった。
フィールドでは、静香がペンちゃんを笑顔で抱きかかえている。
と、その時。
突然、ペンちゃんの体が眩い光に包まれた。
「まさか……」
話は何度も聞いているが、生で見るのは初めてだ。

ポケモンの、進化を見るのは……



光が消えた時、そこにいたのは今までのペンちゃんではなかった。
体は倍以上大きくなり、つぶらな瞳は小さく鋭くなり、何よりいままでより逞しく見えた。

「し、しんかした……ペンちゃんが……」
静香も僕と同じく、しばらく呆然としていた。
おそらく彼女も、進化を生で見るのは初めてだったのだろう。
それが自分の腕の中で起こったのだから、尚更のことだ。

「進化したか……おめでとう、静香さん」
歩み寄ってきてヒョウタの一言で、静香はようやくその事実に気付いたようだ。
先程よりもよりも何倍も眩しい笑顔で、ポッタイシになったペンちゃんを抱きかかえている。

しばらくして、バッジを受け取った静香が僕のところへ戻って来た。
「バッジゲットとペンちゃんの進化、おめでとう」
僕がそう言うと、静香は照れくさそうに笑みを浮かべた。
そしてその後、やや真剣な顔に戻って言う。
「次はのび太さんの番ね、がんばって」

そう、続いては僕がヒョウタに挑む番だ。
僕は意を決して、フィールドへと近づいて行く。
一歩、また一歩と近づいて行く。
ヒョウタが戦いに備えてポケモンを回復させているのが見えた。
胸の鼓動が激しさを増して行く。
今までにないくらい、緊張しているのだ。

ようやくフィールドに辿り着いた僕は、大声でヒョウタに呼びかけた。
「よ、よ、よろちっ……よろしくおねがいします!」



正面にいるヒョウタが、苦笑いを浮かべてボールを構える。
いきなり噛んでしまったが、バトルではこうはいかせない。
覚悟を決め、ヒコザルのモンスターボールを放り投げた。

敵はイワーク、ヒコザルの苦手な岩タイプだ。
こちらの手持ちのタイプは炎・雷……敵の使う岩タイプには不利だ。
しかも、モモンには多くを期待できない。
最低でも、ヒコザルだけでイワークは倒さなければ……

「イワーク、体当たりだ!」
ヒョウタの命令を聞き、迫り来るイワーク。
ヒコザルは、ジャンプしてあっさりとそれをかわす。
そして、上空から火の粉を放って攻撃する。
「よし、いいぞヒコザル! その調子だ!」
思い描いていた通りの展開に、ニンマリと笑みを浮かべる。

先の静香のバトルで、イワークのスピードを観察させてもらった。
巨体にしては意外と素早い動きだった。
だがヒコザルなら、あの程度はなんなく避けられる。
そういう確信があったから、“敵の攻撃を避けつつひたすら火の粉を撃つ”という作戦に出たのだ。
……そして、どうやらその作戦は的中のようだ。

イワークの体当たりを、ヒコザルはまたも難なくかわす。
その姿を見て、自信が生まれてくる。

この勝負、勝てるかもしれない。



「凄いね、君のヒコザル。
体当たりを当てられる気が、全くしないや」
ふと、ヒョウタがそんなことを言って苦笑いする。
僕は嬉しそうに、「ありがとうございます」と返す。
それを聞いたヒョウタは、またも笑みを浮かべて言う。
「だから、もう直接攻撃はしないことにするよ」
こんどは苦笑いではなく、楽しそうに笑っていた。

「イワーク、岩落としだ!」
ヒョウタの命令と共に、イワークがいくつもの岩を宙から降らせる。
「まずい、あれに当たったらかなりのダメージが!」
ヒコザルは、フィールドを縦横無尽に駆け回る。
そして、岩の一つ一つを丁寧にかわして行く。
「へえ……この技も見事に避けるとはね。 でも――」
彼が言おうとしたその続きは、なんとなく予想できた。
『このままでは、ヒコザルは攻撃に転じることができない』
そう言いたかったのだろう。

このままいくと、いずれ岩が命中してやられてしまう。
そうなる前に、どうにかしなくてはならない。
なら――
「ヒコザル、岩を避けながら火の粉!」
僕が命令すると、ヒコザルは一瞬躊躇いを見せながらも、それを実行する。
効果はいま一つとはいえ、何度も火の粉を浴びたイワークはだいぶ弱っている。
「よし、いけるぞヒコザ…… 「甘いよ、のび太君」
僕の嬉しそうな声を、ヒョウタが遮る。
その時だった。
ヒコザルの頭上に、巨大な岩が迫っていたのは。



フィールドに響き渡る、鈍い音。
次いで目に入ってきた、うずくまるヒコザル。
その姿を見て、ヒョウタが声を上げる。
「よし、この隙に体当たり!」
イワークが、その重い体をヒコザルへと近づけて行く。

「まずい! ヒコザル、立って!」
とっさに、そう叫んでいた。
だが、ヒコザルは動けない。
岩落としのダメージは、相当なものだったようだ。

次の瞬間。 
ヒコザルはイワークと衝突し、吹っ飛ばされた。

「ヒコザル、戦闘不能!」
審判員であるジムの門下生の声が響き渡った。

「ヒ、ヒコザル! 大丈夫か!」
慌てて、ヒコザルに駆け寄る。
ヒコザルは笑みをつくり小さく頷いた。
「お疲れ様、休んでいいよ」
僕はそう言って、ヒコザルをモンスターボールに戻した。

これで残りは一体、後がなくなってしまった。



「慌てて、無理やり攻撃に転じようとしたのが失敗だったね。
火の粉のほうに気が向いて、守りが疎かになってしまったみたいだ」
ヒョウタのアドバイスが、痛いほど身にしみた。

こちらは残り1体、しかもレベルでも相性でも不利なモモンだ。
おまけにモモンは、これが始めての戦闘である。
不安要素を挙げ始めたら、キリがない。
これじゃあ、九分九厘負けは決まったようなものだ。

でも、もしかしたら勝てるかもしれない……

心の底で、そんな淡い希望を抱いていた。
敵は2体といっても、1体目のイワークはもう倒れかけだ。
うまくイワークを切り抜けて、相性で互角なズガイトスと一対一に持ち込む。
後は……なるようになるさ、きっと。
もしかしたら、モモンが物凄く強い可能性だってあるんだし。

そんなふうに考えて、必死に希望を見いだす。
そしてその希望に縋りながら、モモンのボールを投げた。



          現在の状況

  • のび太 クロガネジム
手持ち  ヒコザル ♂ LV13
     モモン(コリンク) ♂ LV9

  • 静香  クロガネジム
手持ち  ペンちゃん(ポッタイシ) ♂ LV16
     ムーちゃん(ムウマ) ♀ LV15

  • スネ夫 ???
手持ち  エル(ナエトル) ♂ LV12

  • 出木杉 ???
手持ち  ミニリュウ ♂ LV16
     ユンゲラー ♂ LV17
     他不明



ボールから出てきたモモンは、キョロキョロと辺りを見回す。
どうやら、初めてのバトルに戸惑っているようだ。
ふと顔を見上げると、そこにいるのは自分の何十倍も大きなイワーク。
そして、そのイワークと目が合う。
瞬間、イワークは激しい雄叫びを上げる。
モモンの体が、硬直した。

思えばこの時、すでに勝負はついていたのかもしれない。

「イワーク、体当たり!」
ヒョウタの命令で、イワークが迫ってくる。
「モモン、避けて体当たり!」
それくらいしか戦略を思いつかなかった僕は、慌てて命令する。
だが、モモンは動かない。
……いや、動けないというべきか。
そして、イワークの体当たりが直撃した。

「モ、モモン! だ、大丈夫か?」
慌てて叫ぶと、モモンはなんとか立ち上がった。
だが、そのダメージはかなり深刻そうだ。
よく見ると、その目は完全に怯えきっていた。

「もう一度、体当たり!」
再び、イワークが迫り来る。
モモンは、必死に走ってその攻撃から逃れようとする。
「いいぞモモン、体当たりで反撃するんだ!」
僕は、ガッツポーズを取りながら命令する。
だが、モモンはその言葉の通りには行動してくれない。

モモンは、ただひたすらに逃げ回っていた。



それから2分ほどたったが、依然状況は変わらない。
モモンは、一心不乱にイワークから逃げ続けている。

「どうしたモモン、なんで反撃しないんだ!」
僕が、怒りの篭った声で言う。
だが、その言葉はモモンに届かない。
「のび太さん、もう無理よ!」
静香の声が聞こえてくる。
たぶん、もうバトルを止めろと言いたいのだろう。
でも、でも……
バトルはまだ、終わったわけじゃないんだ。
ここで止めるなんて、ただの“逃げ”じゃないか。

そんな時突然、イワークの姿が消えた。
ヒョウタが、ボールの中に戻したのだ。

「審判、もうバトルは終わりだ」

彼は冷ややかに、そう宣言した。
「え……あ、はい!
以上でこの試合を終了とする!」
審判は戸惑い、慌てて試合終了の宣言をする。



「どういうことですか、ヒョウタさん!
まだ、バトルは終わってなかったじゃないですか!」
勝負を終わらせたヒョウタに、僕は食って掛かる。
納得がいかなかった。
こんなふうに挑戦を退けられるなんて、あんまりだ。

「どういうことと言われても……
見ての通り、もうこれ以上戦う必要はないと判断したからさ」
当然のように言い放つヒョウタに、僕はますます怒りを覚える。
「そんなの……やってみなきゃ分からないじゃないですか!」
僕がそう言った、ヒョウタは少々語気を強めて言い返した。

「いい加減にするんだ、のび太君。
……先程のバトル、君のコリンクがどれだけ苦しんでいたか気付かなかったのかい?
あんな怯えきったポケモンに、バトルを強制するなんて……
あんなのは……ただの“虐待”だよ」

その言葉を聞いた瞬間、目の前が真っ白になった気がした。

“虐待”だって?
僕が、モモンを?

そんなわけがない、モモンは僕の大切な仲間だ。

――でも、でも何故だろうか。

ヒョウタに、反論するための言葉が見つからないのは……



それから、何分ほどの時間が経ったのだろうか?

僕はずっと、顔を俯けたまま立ち尽くしていた。

近くで、ヒョウタが門下生に何か話しているのが見えた。
『あの挑戦者のようなバトルは、してはいけないよ』
そんな風な、アドバイスをしているのかもしれない。
悔しかった。
悔しかったが、やはり否定することはできない。

「のび太さん……」
静香が、心配そうに近づいてきた。
僕は、まだ顔を上げることができない。

「初めてのジム戦で、いろいろ戸惑っていたのはわかる。
……でも、私もヒョウタさんと同じ意見なの」
「えっ?」
静香の目にも、映ったのだろうか。
僕が、モモンを虐待しているように……

「のび太さんの目には、バトルに勝つことしか映ってないみたいだった。
正直、モモンがかわいそうだったわ……」
静香はそう言ったあと、黙り込んでしまった。

しばらく気まずい沈黙が続く……



それからはジムを出て、ポケモンセンターまで無言で歩いていった。

ポケモンを回復させるため、二つのモンスターボールを取り出す。
その時ふと、モモンの様子が気にかかった。
ボールから、モモンを出してみる。

その時、愕然とした。

モモンの目は、態度は、明らかに僕を避けていたのだ。
一度目があったが、またすぐに目をそらされる。
こんな姿、全く想像がつかない。
仲間になった時は、あんなに幸せそうだったモモンからは……

「のび太さん……」
傍らにいる静香が、何か言おうとして止めた。
僕はそんな彼女の目を見て問う。
「ねえ、静香ちゃん。
……やっぱり、僕は間違っていたのかな?」
彼女は少し躊躇ったあと、小さく「おそらく」と呟いた。

「そっか、そうだよね……」
僕も同じように小さく呟き、モモンをボールにしまった。



自分自身を戒めるように、頬を強くつねってみた。

自分が、歯がゆくて仕方がなかった。
ポケモンの気持ちなど全く考えず、ただ勝つためだけにバトルをしていた自分が。
今のモモンに、僕の姿はどう映っているのだろうか?
おそらく、もうパートナーとしては見てくれていないんじゃないのか?
そんな疑問が頭の中を駆け巡り、自分がますます嫌になった。

――そして僕は決意したんだ。
不甲斐ない、自分に別れを告げようと。
少しでも、ポケモンたちのパートナーに近づこうと。

「ねえ、静香ちゃん。」
静香に向き合って、自分の真剣な気持ちを告げる。
「僕は、もう一度モモンのパートナーに戻りたい。
そして、再びジム戦に挑んで勝ちたい。
今日みたいな、独りよがりな戦いじゃなく……
今度は、今度はヒコザルやモモンと一緒に!」

「のび太さん、私……」
静香はしばらく呆然とした後、僕に微笑みかけた。
「そう言ってくれて、嬉しいわ」

その言葉につられ、僕の顔にも自然と笑みが浮かんだ。



それからしばらく、静香とこれからのことを話して合った。

「とりあえず、もっとレベルを上げなきゃきついわね……
思い切って、新しいポケモンを捕獲するって手もあるけど?」
「悪くないけど……僕はいまの2匹でもう一度戦おうって決めてるんだ。」
静香の提案に、そう答える。
今度も、ヒコザルとモモンとともに戦って勝とう。
その決意を、曲げるつもりはなかった。
「そう。 だったら、問題はレベル上げをする場所だけど……」
「うーん、どこにするべきかな……」

そうやって僕らが悩んでいるところに、誰かが歩み寄ってきた。
灰色の作業服に、黒縁の眼鏡……
つい先程バトルをしたジムリーダー、ヒョウタだった。
どうやら、彼もポケモンを回復させに来たみたいだ

「レベル上げなら、クロガネ炭鉱をおすすめするよ。
あそこの野性ポケモンはそこそこレベルが高いし、何より岩ポケモンが多いからジム戦の対策もできる」
「でも、あそこって許可がないと入れないんでしょう……」
ヒョウタの提案を聞いた静香が、残念そうに呟く。
「大丈夫。 僕は、あの炭鉱の責任者でもあるんだ。
僕が許可するから、遠慮なく使うといい」
彼がそう言うと、静香は嬉しそうに微笑んだ。

そんな様子を見ていた僕は、怪訝そうに問う。
「ありがたいんですけど……なんで僕にそこまでしてくれるんですか?」



ヒョウタはつい先程、僕を非難したばかりだ。
それなのに、今度は僕の力になろうとしている。
そのことが不思議でたまらなかったのだ。

そんな僕の問いに、ヒョウタは恥ずかしそうに頭を掻きながら答える。
「いやあ、さっきのあれはちょっといいすぎちゃったよ。
つい熱くなっちゃって……やっぱり僕はジムリーダーとしてはまだまだみたいだよ。
それに……」
「それに?」
「全ての挑戦者たちの、可能性を伸ばしてあげる……
それが、ジムリーダーたる者の使命なんだよ。
君の再挑戦を、楽しみにしているよ」
ヒョウタはそう言うと、僕たちに背を向けて去って行った。
僕はその背中に小さく「ありがとう」と呟いた。

その後回復したポケモンを受け取った僕は、静香に告げる。
「行こう、クロガネ炭鉱へ!
そしてそこで腕を磨いて、もう一度ヒョウタさんに挑むんだ!」

――たぶん、僕は今やっとスタート地点に着いたんだ。
ポケモンマスターになるための、長く険しい道のりの。
そして、今から始まるんだ。
ジム戦という、最初の壁を越えるための挑戦が。


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