ドラえもん・のび太のポケモンストーリー@wiki

ギンガ その15

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akakami

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―――バトルゾーン

昨日のうちにバトルゾーンに辿り着いたが、既に夜だったので修行は明日、つまり今日からとなった。
朝食を食べた俺たちは、各自シロナの出したメニューをこなすことにした。

まずスネオは手持ちの増強、及び強化。
ジャイアンはバトルタワーを登り、知識をつけること。
のび太も実戦を積むこと。ただしバトルタワーではない。
この島に居る協力なトレーナーと勝負をして、ポケモンとのび太自身のレベルを上げることだ。
そして俺は、山登り。
ハードマウンテンの奥まで行って、帰ってくること。
さらにポケモンは持って行くのは禁止。レベル上げはシロナがやっておいてくれるようだ。
最後に全員正午までには帰ってくること、と言いシロナは去っていった。
ポケモンの修行なのに、何故山登りなのだろうか。
まぁ荷物は万全だ。こちらから手を出さない限りは襲われたりしないだろう。
疑問は浮かんだが、それを押し潰して山へ登ることにした。


―――数時間後、ハードマウンテン内部

暑い、痛い、気持ち悪い。
胃液が逆流して、その場で吐き出してしまいそうな感覚に襲われる。
ハードマウンテンは火山であるため、内部がかなり暑い。
ポケッチを巻いている部分が痒くなってくる。
外そうと時計を見た時、もう九時半を過ぎようとしていた。

……迷った。どうしよう。
一応穴抜けの紐を一本貰っているが、これは本当に最後の手段として使いたい。
それにあいつらだって頑張ってるのだから、俺だけ諦めるわけには行かない。
自身の気持ちを奮い立たせて、前へと進んだ。

―――そして一時間後、俺は火山の置石を手に取る事が出来た。



既に体が悲鳴を上げている。まるで心臓を素手で掴まれているような感じだ。
現在の時間は十時三十分、残り一時間半で、リゾートエリアのポケモンセンターの戻らねばならない。
服が汗で湿り、生地が貼り付いて気持ち悪い。
だがここで止まるわけにはいかない。ここで休んでいる暇は無いのだ。
痛む脚を動かし、俺は出口へと向かった。

―――

「ゼェ……ゼェ……」
現在の時間は十一時十分、何とかハードマウンテンを抜けることが出来た。
思ったよりも、早く脱出することが出来た。
道を覚えていたことに加え、下り坂だったからだろう。
このペースなら、なんとか正午までに辿り着くことが出来るかもしれない。
俺は僅かな希望を胸に秘め、再び走り出した。

だがそんな希望を、一瞬で打ち砕く出来事が起こったのだ。

もうすぐ山を出ることが出来ると思った矢先、突然地面が振動し始めた。
やがて背後からドシン、ドシン、巨大な足音が迫ってくる。
その足跡の正体は、硬い装甲に包まれたドサイドンであった。

「うわぁ!!」
反射的に近くの岩場へと飛び移る。
ドサイドンのその目は、明らかにこちらを狙ってきていたのだ。
汗に濡れていた背中に寒気が走り、身震いをする。

「頼むぞ、グレイ――」
モンスターボールに手を掛けようとするが、空しく宙を切る。
すぐに思い出した。全てのポケモンをシロナに預けていたことを。
顔が引き攣る。声に反応したドサイドンが再びこちらに迫ってきたのだ。



必死で逃げる。今までの疲れが嘘のようなスピードが出た。
だが痛みや吐き気は続く。もういっそ死んだ方がマシというくらいに。
それでも逃げ続けるのは、やはり死ぬ方がつらいというのが分かっているからだろう。
なんとか逃げ延びるしかない。こんな所で死んでられない。

「痛ッ!」
石に足を引っ掛けて転倒してしまい、右脚から鮮血が流れ落ちる。
だがドサイドンは待ってくれない。地響きを立てて俺の方に迫ってくる。

『う、うわぁぁああぁぁあああぁああぁあぁああ!!』

立ち上がり必死に足を動かすが、無情にも一定間隔でドサイドンは走り続ける。
この足で、ドサイドンから逃げ切る自信は無い。
こうなったら、ドサイドンを俺自身の手で倒すしかない。

何とか体を動かして岩陰へと隠れる。靴の一部が血で赤黒く染まっていた。。
ドサイドンは人間の腕力で敵う相手ではない、所持品や地形を利用して何とか撃退するしかない。
持っているのは命の珠、カゴの実、火傷治し、ヒメリの実、金の珠、火山の置石。後は飲み掛けのおいしい水だ。
直接武器になりそうなものは、飲み掛けのおいしい水だけ。
しかも一撃で戦闘不能にするには、量が足りなさ過ぎる。
ここは周辺の地形を利用して……そうだ。
適当な場所から突き落としてやればいい。ここは山、斜面など何処にでもある。

問題はどう突き落とすか、俺が上手く誘き寄せて隙を突いて突き落とすくらいしか方法が無い。
だが今の俺の状態では、成功する可能性は低く感じる。
今もドサイドンは雄叫びを上げて、俺を探し続けている。
ここは所持品を使うしかない、周辺にある物を何でもいいから利用するんだ。

必死に周囲を見渡し、やがて手頃な大きさの石を手に取る。
幸い俺が隠れている岩陰は斜面に近い位置にある。これを投げてなるべく俺と遠い位置に誘導。
その後おいしい水を目にかけて、バランスを崩したところで突き落とす。これで行こう。



まずは手順通り、なるべく遠い位置に石を投げる。乾いた音と砂埃が舞った。
するとその音に気づいたドサイドンが、石が落ちた地点に迫る。
やがて勢いよく石を踏みつけて破壊した。今だ。

「これでもくらえッ!」
ペッドボトルに入った水を、ドサイドンの目に目掛けてぶちまける。
それが目に入ったドサイドンは、目を押さえて暴れだす。
チャンスは、今しか無い。

『うぉおぉおおおおおぉぉぉぉおおおおぉおおお!!』
ドサイドンを背中から思いっきり押す。するとドサイドンは大きな音を立てて斜面を落下していった。

「ククク……ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」
自分一人でポケモンを撃退できたという事実に、込上げてくる笑みを抑えることが出来ない。
勝利の余韻に浸ろうと、落下していったドサイドンを見下ろす。

その瞬間、全身が凍りついた。

ドサイドンは何事も無かったかのように起き上がり、こちらを睨みつけてきたのであった。

叫び声を上げようとするが、喉につっかえ言葉が出てこない。
ドサイドンは斜面を物ともしない速度で駆け上がってくる。その瞳はもう俺しか見ていない。
その姿を見た俺は、ただただひたすら走った。



殺される、ころされる、コロサレル、逃げろ、にげろ、ニゲロ―――

考えてみたら当たり前だった。
ドサイドンの防御の前には一回突き落としただけでは、その強固な皮膚に傷一つつける程度が限界なことに。
所詮、人間が抵抗したところで勝利など出来ない。
もうひたすら逃げるしかない。さすがにリゾートエリアまでは追って来ないだろう。

「ぐぁ……」
不意に両脚が、強烈な痛みに襲われる。
それでも辛うじて、走り続けることが出来た。
これで気づく、もう長くは走ることができないことに。

それでも走り続けた。
生へ対する執念、ギンガ団を潰したいという欲望、仲間達と一緒に居たいという意志。
何が俺を駆り立てるのか分からないが、俺はただ足を動かしていた。

ふと横を見る。そこは先ほどドサイドンを突き落とした斜面。
地面に巨大な窪みが出来ている。しかし、ドサイドンにはダメージを与えれたかすら分からない。
自分の必死の抵抗が、あまりに浅はかだったことを改めて実感した。

もう―――あれは? 
不意に目に付く、光景。
これを見た瞬間、俺の中でパズルを完成させるかのように作戦が組み立てられる。
たった一つの希望、まだ俺には一つだけ、この状況から脱出する手段が残されていたのだ。
こんなところで諦めたら駄目だ。
俺は大事な目的があるんだ。それをやり遂げるまでは―――

―――死ぬわけにはいかない



俺は既に限界を迎えている脚で、走り回る。
残り僅かしか走れないだろうが、これで十分。あの位置まで誘導するのには十分なのだ。
ドサイドンは俺を追い掛け回す。誘導されているとも知らずに。
やがて目的地へと辿り着き、俺は走るのをやめる。
そして反転し、ドサイドンに対峙した。
俺は急いでリュックの中から『ある物』を取り出す。

『くらえぇッ!!』
俺は『ある物』を、ドサイドンに向けて投げつける。
それはドサイドンの腹に命中した直後、跳ね返って地面へと落下した。
するとドサイドンは、その『ある物』を勢い良く踏みつける。

―――計画通り、やはりドサイドンは『ある物』を踏み潰そうとした。
唖然としたような表情を見せ、再びバランスを崩すドサイドン。
その隙を狙い、ドサイドンの目に目掛けて砂を掻きあげる
そして俺は、再びドサイドンを斜面から突き落とした。

ドサイドンは轟音を立て落下する。だが先ほどと違い、そのまま上がってくることは無い。
倒した、今度こそ倒した。
達成感に包まれ、脱力し、その場に座り込む俺。
ドサイドンが起き上がってこない理由、それは落下地点が小さな池だからだ。
いくら頑丈なドサイドンだろうと、弱点の水に浸かってしまえば瀕死になる。

そして俺が投げた『ある物』それは『カゴの実』だ。
あれはとてつもなく硬い木の実で、中々破壊することが出来ない。
それを踏んだドサイドンは当然バランスを崩す。後はこちらから手を加えて突き落とせばいい。
まるで綱渡りのような作戦だったが、結果的に上手く行った。
その事実に安堵し、残ったヒメリの実を食べようとリュックに手を掛けた時だった。
一人の男が、俺のところに来たのは。

「まさかドサイドンを瀕死にするとはな……」



反射的に振り向く。
そこには大きな緑色のコートを羽織っていて、金髪の目立つ男が居た。
「安心したまえ、私は君の敵ではない」
そうは言うものの、俺は警戒を解くことはしない。
「ふぅ……私はシロナの友人でクロツグと言うんだ。名前くらいは聞いたことあるだろう?」
クロツグと言えば、バトルタワーのトップを長年勤めていて、トレーナーの中には知らない人は居ないくらいの男。

「……なぜ俺を襲った?」
余計に妙な話だ。なぜシロナの友人が俺を襲うのだろうか。
「フフ……シロナに任されたのだよ。君を鍛えて欲しいとね
 大体本気で君を襲うつもりなら、岩石砲でも使えば一発だろう?」
そういえばそうだ。冷静に考えると、野生でドサイドンが居るのもおかしい。

「シロナは君に、何事にも諦めない強靭な精神力を身につけて欲しかったようだ
 聞くところによると、君はトレーナーとしての能力は高いが、若干意思が弱い所があるようだね」
気にしていた事を指摘され、奥歯を噛み締める。
確かに強靭な精神力は身に付いた気がするが、修行方法が荒すぎる。

「ハハハ、他にやり方があったんじゃないのか?という顔をしてるね
 ポケモンバトルはポケモンだけじゃなく、トレーナーも動いてこそ真の勝利が見えるのだよ」
一理あるような気がしないことも無い。
トレーナーはフィールド全体を把握して、指示を出さなければならない。
そのためには、自らも動くことが必要なのだろう。

「さぁ、そろそろ帰ろうか。正午まであと三十分も無いぞ?」
クロツグの言葉を聞き、唖然としてしまう俺。
とてもじゃないが、リゾートエリアまで走りきる気力は無い。
「走って帰るぞ! 私も付き合うから、さあ!」

こうして修行の一日目は終わったのであった。


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