No.015『Highway Star』
ズキン。
始めにためるは微かな痛みを自らの肘に感じた。
そして次の瞬間、あることに気づいた。
自分の右手が……放しても無いのにいつの間にかハンドルから放れていたのだ。
そして次の瞬間、あることに気づいた。
自分の右手が……放しても無いのにいつの間にかハンドルから放れていたのだ。
「な、なんだこれは!?ヤバイ!」
ためるは思わず叫ぶ。
左手も500円をキャッチしようとしていたため、ハンドルから放れている。
よって彼のハンドルを制御するものは何も無い。
「ヤバイ!このままじゃあ転んでしまう!」
ためるはあわてて右手を伸ばそうとするが、力が入らない。
何故か、感覚がマヒしている。
そこで、彼は500円をポケットに強引に押し込み、左手一本でハンドルを握ろうとする。
しかし―――
ためるは思わず叫ぶ。
左手も500円をキャッチしようとしていたため、ハンドルから放れている。
よって彼のハンドルを制御するものは何も無い。
「ヤバイ!このままじゃあ転んでしまう!」
ためるはあわてて右手を伸ばそうとするが、力が入らない。
何故か、感覚がマヒしている。
そこで、彼は500円をポケットに強引に押し込み、左手一本でハンドルを握ろうとする。
しかし―――
バシッ!
何かが勢い良く飛んできてためるの左手を弾いた。
「クソッ!何だ!」
ためるはその方向をキッと睨む。
そこにいたのはメガネとゴリラ。二人はニヤニヤとこっちを見ている。
そして、メガネの手の人差し指と親指にゴムがかけてあり、いわゆる『パチンコ』を思わせる形になっていた。さっきのは恐らく、それで飛ばした石か何かだろう。
そしてメガネは次の砲撃を加える。
それはためるの自転車のハンドルに異常なまでの正確さでヒットした。
「うおあ!」
ためるは思わずバランスを崩す。
「クソッ!何だ!」
ためるはその方向をキッと睨む。
そこにいたのはメガネとゴリラ。二人はニヤニヤとこっちを見ている。
そして、メガネの手の人差し指と親指にゴムがかけてあり、いわゆる『パチンコ』を思わせる形になっていた。さっきのは恐らく、それで飛ばした石か何かだろう。
そしてメガネは次の砲撃を加える。
それはためるの自転車のハンドルに異常なまでの正確さでヒットした。
「うおあ!」
ためるは思わずバランスを崩す。
そんな自分を見てあの忌々しい豚が何やら言っている。
「俺が500円を投げた理由――それは二つある。
一つ目はお前の注意を引きつけ、『狙撃』をするために風の影響の無い場所に行くため。
もう一つはお前の片手をハンドルから離すため。
そしてお前が手を離した理由も特別サービスで教えてやる。
人間の肘にはな、神経が集中しててそこに強い衝撃を与えると、腕がマヒするんだよ。
昔トリビアで言ってたファニーボーンってのがそれさ。
後、恨むんなら俺じゃなくてのび太を恨みな
アイツがあんなに射的が上手くなきゃあ、こんなことは出来なかったぜ
お前の肘に正確に石をぶつけるなんてな。
分かったな、逆らうものは皆死刑―――――」
そこまで聞いてためるの意識は途絶えた。
完全に操縦不能に陥った自転車は、彼をコースの外の大木に導きそれに激突させたのだ。
その衝撃で、彼は完璧に気絶し、ポケットの貯金箱、いや、ためるBANK(通称TB)をも破壊した。
TB内のためるの愛しき財産達は、あるものは草むらに消え、またあるものは斜面を転がってゆき、またあるものは風に吹かれて何処かへ飛んでいってしまった。
「俺が500円を投げた理由――それは二つある。
一つ目はお前の注意を引きつけ、『狙撃』をするために風の影響の無い場所に行くため。
もう一つはお前の片手をハンドルから離すため。
そしてお前が手を離した理由も特別サービスで教えてやる。
人間の肘にはな、神経が集中しててそこに強い衝撃を与えると、腕がマヒするんだよ。
昔トリビアで言ってたファニーボーンってのがそれさ。
後、恨むんなら俺じゃなくてのび太を恨みな
アイツがあんなに射的が上手くなきゃあ、こんなことは出来なかったぜ
お前の肘に正確に石をぶつけるなんてな。
分かったな、逆らうものは皆死刑―――――」
そこまで聞いてためるの意識は途絶えた。
完全に操縦不能に陥った自転車は、彼をコースの外の大木に導きそれに激突させたのだ。
その衝撃で、彼は完璧に気絶し、ポケットの貯金箱、いや、ためるBANK(通称TB)をも破壊した。
TB内のためるの愛しき財産達は、あるものは草むらに消え、またあるものは斜面を転がってゆき、またあるものは風に吹かれて何処かへ飛んでいってしまった。
それを見てジャイアンは言う。
「ざまあみろ馬鹿めw
そして現在一位のためるを俺達が抜いたから俺達が一位だ!」
ジャイアンが高らかに叫ぶ。
そしてのび太が言った。
「ジャイアン!池だ!池が見えてきたよ!」
「ざまあみろ馬鹿めw
そして現在一位のためるを俺達が抜いたから俺達が一位だ!」
ジャイアンが高らかに叫ぶ。
そしてのび太が言った。
「ジャイアン!池だ!池が見えてきたよ!」
「本当だ!」
池を目の当たりにし、ジャイアンのテンションも自ずと上がる。
自転車を漕ぐ力も強くなるというものだ。
「よーし、のび太、捕まってろ!」
「うん」
二人はまた風を切って走り出した。
池を目の当たりにし、ジャイアンのテンションも自ずと上がる。
自転車を漕ぐ力も強くなるというものだ。
「よーし、のび太、捕まってろ!」
「うん」
二人はまた風を切って走り出した。
――――――――
第二次試験のサイクリングロードトライアスロンの中盤には水泳という課題が課せられている。
その距離2キロの池を泳いで横断するのだ。
しかし、ただ泳いで横断するだけではただの体力比べになってしまう。
そこで、池の前のチェックポイントでは大小二つの船が貸されている。
小さい方は風呂桶程の大きさだが、大きい方は人が一人のれる位の大きさがあり、先端にワッカのついたロープがついている。
前者は泳いで渡る人が、荷物を乗せておくためのもの、後者はポケモンに船を引かせるためのものである。
故に、今回は水ポケモン、または「波乗り」が使えるポケモンを孵化させた受験者が有利になると言えよう。
その距離2キロの池を泳いで横断するのだ。
しかし、ただ泳いで横断するだけではただの体力比べになってしまう。
そこで、池の前のチェックポイントでは大小二つの船が貸されている。
小さい方は風呂桶程の大きさだが、大きい方は人が一人のれる位の大きさがあり、先端にワッカのついたロープがついている。
前者は泳いで渡る人が、荷物を乗せておくためのもの、後者はポケモンに船を引かせるためのものである。
故に、今回は水ポケモン、または「波乗り」が使えるポケモンを孵化させた受験者が有利になると言えよう。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……到着だ!」
「大丈夫?」
「大丈夫だ!
ちょっと疲れたが、なんともないぜ!」
のび太は心配そうにジャイアンの顔色を伺ったが、まだ余力はあるようだ。
のび太はほっと一息つき、辺りを見回す。周りに人はまだ居ない。のび太は首を傾げる。
「どうやら、正真正銘僕達が一位みたいだね。でも、人が居ないや
早すぎたのかな?」
「いや、多分他の連中はためるの「風」のせいで吹き飛ばされて失格したか、「風」を避ける為に迂回してるんだろ
まぁ、俺様が早すぎたのもあるけど」
「成程」
ジャイアンにしては賢明な分析である。
とりあえず、今、自分らはトップなのだ。
それは変わらない事実。しかし、油断はできない。これはただのレースでは無いのだ。孵化したポケモンで余裕の逆転も有り得る。
陸上はともかく水上ではいくら凄い水泳選手だとしても、ポケモンに勝てる気はしない。
「大丈夫?」
「大丈夫だ!
ちょっと疲れたが、なんともないぜ!」
のび太は心配そうにジャイアンの顔色を伺ったが、まだ余力はあるようだ。
のび太はほっと一息つき、辺りを見回す。周りに人はまだ居ない。のび太は首を傾げる。
「どうやら、正真正銘僕達が一位みたいだね。でも、人が居ないや
早すぎたのかな?」
「いや、多分他の連中はためるの「風」のせいで吹き飛ばされて失格したか、「風」を避ける為に迂回してるんだろ
まぁ、俺様が早すぎたのもあるけど」
「成程」
ジャイアンにしては賢明な分析である。
とりあえず、今、自分らはトップなのだ。
それは変わらない事実。しかし、油断はできない。これはただのレースでは無いのだ。孵化したポケモンで余裕の逆転も有り得る。
陸上はともかく水上ではいくら凄い水泳選手だとしても、ポケモンに勝てる気はしない。
というわけで、とにかく今は急ぐべき。二人はそう判断した。
ジャイアンは言う。
「とりあえず、今は急がねえとな。
俺がお前の分までの船を取ってきてやるから先にお前は服を脱いでおけ」
「あ、ちょっと待ってジャイアン……」
「ああん?何だぁ?」
のび太に呼び止められ、ジャイアンは歩みを止める。
のび太は続ける。
「あの……僕……ちょっと……その……」
何か言いたそうに、そして何やら申し訳なさそうにもじもじするのび太。
ただでさえ時間が無いのに、せっかちなジャイアンはその態度が我慢なら無い。
「のび太!何か言いたいなら早く言いやがれ!
時間がねえんだよ!」
と、怒鳴りつける。
そして、ジャイアンはまた忘れいた。
人並みの事が出来ないという少年、のび太のことを。
「とりあえず、今は急がねえとな。
俺がお前の分までの船を取ってきてやるから先にお前は服を脱いでおけ」
「あ、ちょっと待ってジャイアン……」
「ああん?何だぁ?」
のび太に呼び止められ、ジャイアンは歩みを止める。
のび太は続ける。
「あの……僕……ちょっと……その……」
何か言いたそうに、そして何やら申し訳なさそうにもじもじするのび太。
ただでさえ時間が無いのに、せっかちなジャイアンはその態度が我慢なら無い。
「のび太!何か言いたいなら早く言いやがれ!
時間がねえんだよ!」
と、怒鳴りつける。
そして、ジャイアンはまた忘れいた。
人並みの事が出来ないという少年、のび太のことを。
そしてのび太は言った。
「僕……泳げないんだ……」
「……………バカヤローーーッ!」
「いやなんで殴……グビッ!」
完全に忘れていた。
ジャイアンは、このどうしようもない友人をとりあえず、一発殴っておいた。
「僕……泳げないんだ……」
「……………バカヤローーーッ!」
「いやなんで殴……グビッ!」
完全に忘れていた。
ジャイアンは、このどうしようもない友人をとりあえず、一発殴っておいた。
池はそんな二人を嘲笑うかの様に揺れていた。
No.016『負けないで、もう少し、最後まで走り抜けて』
―――30分後、池の対岸にて――――――
「馬鹿じゃねえのォォォォォォ!」
岸から上がったパンツ一丁のジャイアンは開口一番にそう叫ぶ。
体からは、体についた水が次々と水蒸気となって蒸発してゆく程凄まじい熱をおびている。
多少の運動ではこうはならない。何かあったに違いない。
「大丈夫………?」
そして、今にも死にそうなジャイアンを心配し、話しかけるのび太。彼はジャイアンと対照的に疲弊もしていないし、体も水に濡れていない。
岸から上がったパンツ一丁のジャイアンは開口一番にそう叫ぶ。
体からは、体についた水が次々と水蒸気となって蒸発してゆく程凄まじい熱をおびている。
多少の運動ではこうはならない。何かあったに違いない。
「大丈夫………?」
そして、今にも死にそうなジャイアンを心配し、話しかけるのび太。彼はジャイアンと対照的に疲弊もしていないし、体も水に濡れていない。
「大丈夫な訳ねえだろォォォォーーッ!
そもそもお前が泳げればこんなことにはならなかったんだぜッ!このボゲッ!」
「………ごめん…」
悪態をつくジャイアンに素直に頭を下げるのび太。まぁそれにも正当な理由があるのだが。
そういえば、彼は泳げなかったハズ。何故ここまで来れたのだろう。
そもそもお前が泳げればこんなことにはならなかったんだぜッ!このボゲッ!」
「………ごめん…」
悪態をつくジャイアンに素直に頭を下げるのび太。まぁそれにも正当な理由があるのだが。
そういえば、彼は泳げなかったハズ。何故ここまで来れたのだろう。
答えは簡単。
彼はそもそも『泳いでなんていない』のである。
では、どんな方法で泳がずに池を渡ったのだろうか。
これの答えも簡単。
ポケモンに引かせる為の、大きな『船』に乗り、それをポケモンに引かせる代わりに、ジャイアンに引かせてここまで来たのである。
口で言うのは容易いが、人を一人乗せた船を引きながら2キロの距離を泳ぎきるのは凄まじい。そもそも素で2キロも池を泳ぐのでさえ、相当体力を消耗するにも関わらず、だ。
全く末恐ろしい少年である。
彼はそもそも『泳いでなんていない』のである。
では、どんな方法で泳がずに池を渡ったのだろうか。
これの答えも簡単。
ポケモンに引かせる為の、大きな『船』に乗り、それをポケモンに引かせる代わりに、ジャイアンに引かせてここまで来たのである。
口で言うのは容易いが、人を一人乗せた船を引きながら2キロの距離を泳ぎきるのは凄まじい。そもそも素で2キロも池を泳ぐのでさえ、相当体力を消耗するにも関わらず、だ。
全く末恐ろしい少年である。
のび太はそんなジャイアンを見て、流石に哀れだと思ったのか、こんな提案をする。
「ジャイアン、疲れてるでしょ?少し休んだら?」
のび太がそう思うのも無理もない。
二人乗り、強風下での坂登り、そして極め付けは今回の水泳。これでは流石のジャイアンも持たない。潰れてしまう。
しかしのび太の提案は、即却下されることになる。ジャイアンは言う。
「のび太……気持ちは嬉しいが、それは無理な話だ」
「なんでさ?」
「いやな、さっきの水泳でな……俺、数えてたんだよ。何人に抜かれたんだろうってな
記憶が正確じゃねえが、恐らく少なくとも60人以上には抜かれてるんだ」
「!?」
ジャイアンの言葉に、のび太は面食った様な表情を浮かべる。
そんなに抜かれてたなんて全く気付かなかった。
ジャイアンは続ける。
「この試験を突破出来るのは50人……最初あのジジイが言ってたよな
残りの距離が少ない今、そんな流暢に休んでる暇なんてねえんだよ……さあ、のび太、行くぞ。早く乗れ」
ジャイアンはそう言いつつ、自転車のサドルに手をかける。
それを見ながらのび太は無言で後ろに乗る。
今のジャイアンにはなんだか分からない威圧感があった。
日常の、暴君としての威圧感とは違うもっと高潔な何かが。
のび太はそれに圧迫され、何も言えなかった。
そして、
「よし、出すぞ、捕まってろ」
とジャイアンが自転車を出そうとした瞬間、
ペチッ
何か小気味の良い音がした。
「ジャイアン、疲れてるでしょ?少し休んだら?」
のび太がそう思うのも無理もない。
二人乗り、強風下での坂登り、そして極め付けは今回の水泳。これでは流石のジャイアンも持たない。潰れてしまう。
しかしのび太の提案は、即却下されることになる。ジャイアンは言う。
「のび太……気持ちは嬉しいが、それは無理な話だ」
「なんでさ?」
「いやな、さっきの水泳でな……俺、数えてたんだよ。何人に抜かれたんだろうってな
記憶が正確じゃねえが、恐らく少なくとも60人以上には抜かれてるんだ」
「!?」
ジャイアンの言葉に、のび太は面食った様な表情を浮かべる。
そんなに抜かれてたなんて全く気付かなかった。
ジャイアンは続ける。
「この試験を突破出来るのは50人……最初あのジジイが言ってたよな
残りの距離が少ない今、そんな流暢に休んでる暇なんてねえんだよ……さあ、のび太、行くぞ。早く乗れ」
ジャイアンはそう言いつつ、自転車のサドルに手をかける。
それを見ながらのび太は無言で後ろに乗る。
今のジャイアンにはなんだか分からない威圧感があった。
日常の、暴君としての威圧感とは違うもっと高潔な何かが。
のび太はそれに圧迫され、何も言えなかった。
そして、
「よし、出すぞ、捕まってろ」
とジャイアンが自転車を出そうとした瞬間、
ペチッ
何か小気味の良い音がした。
読者の皆さんはこの一行を見て、「ポケモンの孵化か、読めてるな。っていうか、ジャイアン良かったねw」と思った人も居るかもしれない。
しかし、残念ながら音を立てたのは、皆さんがご想像のジャイアン達の荷物の中のそれではない。得てして最悪の事は最悪のタイミングで発生するのである。
しかし、残念ながら音を立てたのは、皆さんがご想像のジャイアン達の荷物の中のそれではない。得てして最悪の事は最悪のタイミングで発生するのである。
音の発生源、それは……ジャイアンの足である。
****
「うわぁぁぁぁぁッ!」
この世の終りの様な断末魔と共に、ジャイアンは自転車からころげ落ち、その場に倒れ込む。
「ジャイアン!」
のび太はジャイアンの元へ急いで駆け寄る。
「ジャイアン、どうしたの!?」
「足が……足が……」
のび太は即座にジャイアンの足を見る。
「これは………」
ジャイアンの脚を見てのび太が苦い表情を浮かべる。
太股の肉が膝側に移動している。いわゆる肉離れって奴である。
そして、肉離れを知らないのび太でも、ジャイアンの脚にただならぬ事が起きているのは容易に理解する事が出来た。
この世の終りの様な断末魔と共に、ジャイアンは自転車からころげ落ち、その場に倒れ込む。
「ジャイアン!」
のび太はジャイアンの元へ急いで駆け寄る。
「ジャイアン、どうしたの!?」
「足が……足が……」
のび太は即座にジャイアンの足を見る。
「これは………」
ジャイアンの脚を見てのび太が苦い表情を浮かべる。
太股の肉が膝側に移動している。いわゆる肉離れって奴である。
そして、肉離れを知らないのび太でも、ジャイアンの脚にただならぬ事が起きているのは容易に理解する事が出来た。
「ジャイアン!ああ、どうしよう!」
のび太は立ちすくむ。頭が混乱して何も出来ない。
のび太は立ちすくむ。頭が混乱して何も出来ない。
そんなのび太を横目に、ジャイアンは自分の衣服を裂き始める。
そして、それを自分の脚に強く巻いた。
「…くへへ……っ……手作りのテーピングだぜ……」
ジャイアンはそう呟くと、再び立ち上がろうとする。
「つッ!」
しかし、脚は言うことを聞いてくれない。
「ジャイアン!」
のび太も再び駆け寄ってくる。
「もういいよ!ジャイアン!リタイアしよう!」
のび太が言う。
しかし、ジャイアンは聞く耳を持たない。依然として自転車にすがりついている。
「ジャイアン!」
のび太は溜らず、ジャイアンの動作を中断させる。だが、ジャイアンはそれを振りほどこうともがく。
「何……しやがる……」
痛みと疲労による虚な目でジャイアンはのび太を睨む。とても自転車なんて漕げる状態じゃない。
のび太は言う。
「ジャイアン!君は怪我をしてるんだ!
だからもういいじゃないか!僕はもういい!」
悲痛な声でのび太はそう訴える。
そして、それを自分の脚に強く巻いた。
「…くへへ……っ……手作りのテーピングだぜ……」
ジャイアンはそう呟くと、再び立ち上がろうとする。
「つッ!」
しかし、脚は言うことを聞いてくれない。
「ジャイアン!」
のび太も再び駆け寄ってくる。
「もういいよ!ジャイアン!リタイアしよう!」
のび太が言う。
しかし、ジャイアンは聞く耳を持たない。依然として自転車にすがりついている。
「ジャイアン!」
のび太は溜らず、ジャイアンの動作を中断させる。だが、ジャイアンはそれを振りほどこうともがく。
「何……しやがる……」
痛みと疲労による虚な目でジャイアンはのび太を睨む。とても自転車なんて漕げる状態じゃない。
のび太は言う。
「ジャイアン!君は怪我をしてるんだ!
だからもういいじゃないか!僕はもういい!」
悲痛な声でのび太はそう訴える。
しかし、
「どけッ!」
ジャイアンはのび太を乱暴に振り払い、再び自転車に跨る。
そしてジャイアンは小さく喋り始めた。
「俺さ……二番目にかっこ悪い奴ってのはな……借りを返せねえ奴って思ってんだよ……
俺はさ……一次試験でお前に借りが出来た……だから……俺はお前をケツに乗せたし、船にも乗せてやった……『お前に借りを返す』俺は心にそう決めたんだよ……
そんでな……やっぱ一番かっこ悪いのはな……自分が『心に決めた事を守れねえ奴』だと思うんだよなぁ……
のび太……俺は間違ったコト言ってっかなぁ」
「どけッ!」
ジャイアンはのび太を乱暴に振り払い、再び自転車に跨る。
そしてジャイアンは小さく喋り始めた。
「俺さ……二番目にかっこ悪い奴ってのはな……借りを返せねえ奴って思ってんだよ……
俺はさ……一次試験でお前に借りが出来た……だから……俺はお前をケツに乗せたし、船にも乗せてやった……『お前に借りを返す』俺は心にそう決めたんだよ……
そんでな……やっぱ一番かっこ悪いのはな……自分が『心に決めた事を守れねえ奴』だと思うんだよなぁ……
のび太……俺は間違ったコト言ってっかなぁ」
のび太は言い返せなかった。
ポリシーを持って生きる人間はカッコいい。ジャイアンがまさにそれ、自分はその逆だった。
のび太は自分の情けなさを噛み締める。
試験の合否はともかく、ジャイアンの気持ちを大切にしてやらねばならない。
のび太はそう思った。
そしてジャイアンが小さく言う。
「……よし……行くぞ……気にすんな片足でも自転車位漕げらあ。行くぜ……」
「うん……」
のび太はそう言い、再び自転車の後部座席に乗り………
ポリシーを持って生きる人間はカッコいい。ジャイアンがまさにそれ、自分はその逆だった。
のび太は自分の情けなさを噛み締める。
試験の合否はともかく、ジャイアンの気持ちを大切にしてやらねばならない。
のび太はそう思った。
そしてジャイアンが小さく言う。
「……よし……行くぞ……気にすんな片足でも自転車位漕げらあ。行くぜ……」
「うん……」
のび太はそう言い、再び自転車の後部座席に乗り………
ビュウ
突然、何処からともなく強風が吹いてきた。
「うわぁぁぁ!」
のび太とジャイアンはその風に煽られ倒れる。そしてのび太は立ち上がり様に言う。
「この風……まさか………」
「うわぁぁぁ!」
のび太とジャイアンはその風に煽られ倒れる。そしてのび太は立ち上がり様に言う。
「この風……まさか………」
「そのまさかさ」
そこには、さっき木に叩き付けられたばかりの金尾ためるが居た。
そこには、さっき木に叩き付けられたばかりの金尾ためるが居た。
「ポッポ、砂かけ!」
「うわぁぁぁ!砂が目に……」
大量の砂がのび太とジャイアンに浴びせられる。
「うわぁぁぁ!砂が目に……」
大量の砂がのび太とジャイアンに浴びせられる。
「わははははははは、こいつら砂まみれになってやがんの、わははははははは」
ためるは笑う。
そしてやっとこさ目の砂が落ちたのび太が言う。
「ためる君……なんで……」
「なんで、じゃねぇよォォォォーーッ!」
突如キレだすためる。最早正気とは思えない。
ためるは続けた。
「許さない……許さないぞお前ら……。
僕のトレーナー貯蓄計画を……そしてッ!
僕のためるBANK(通称TB)をぶち壊しやがってッ!
金の恨みは怖いんだぞッ!
許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん」
ためるの「許せん」の連呼に合わせてポッポの『翼で撃つ』がのび太とジャイアンを襲う。
「ポケモンでトレーナーを直接攻撃したら失格だけど、どうせ今からじゃあ絶対間に合わないしねー!
せっかくだから恨みを晴らさせてもらうよッ!ポッポ、翼で撃つだ!」
「うわぁぁぁ!」
ポッポの翼が二人を痛めつける。
(やっぱり異常だ、コイツ。いや、まてよ……上手くためる君を利用する事が出来れば……。運が良ければこの状況から脱却できて、二次試験も突破出きるッ!
よし、この手でいくしかないか!)
のび太の目がキラリと光った。
ためるは笑う。
そしてやっとこさ目の砂が落ちたのび太が言う。
「ためる君……なんで……」
「なんで、じゃねぇよォォォォーーッ!」
突如キレだすためる。最早正気とは思えない。
ためるは続けた。
「許さない……許さないぞお前ら……。
僕のトレーナー貯蓄計画を……そしてッ!
僕のためるBANK(通称TB)をぶち壊しやがってッ!
金の恨みは怖いんだぞッ!
許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん」
ためるの「許せん」の連呼に合わせてポッポの『翼で撃つ』がのび太とジャイアンを襲う。
「ポケモンでトレーナーを直接攻撃したら失格だけど、どうせ今からじゃあ絶対間に合わないしねー!
せっかくだから恨みを晴らさせてもらうよッ!ポッポ、翼で撃つだ!」
「うわぁぁぁ!」
ポッポの翼が二人を痛めつける。
(やっぱり異常だ、コイツ。いや、まてよ……上手くためる君を利用する事が出来れば……。運が良ければこの状況から脱却できて、二次試験も突破出きるッ!
よし、この手でいくしかないか!)
のび太の目がキラリと光った。
――――――
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……ざまあみろ……」
三分後、ためるの目の前には文字通りボロ雑巾の様になり、地面に伏すのび太とジャイアンの姿があった。
ためるはそれらを見て満足そうに笑みを浮かべる。
「ふふふふふ……復讐完了!」
そんなためるを見つめながら、ジャイアンは絞り出す様に言う。
「ためる……テメエ覚えてろよ……学校で会ったらボコボコにしてやるからな……」
ジャイアンが鬼の形相でためるを睨む。
しかし、今は、ジャイアンの怒りの声も、ためるにはとってはただのギャグにしかならない。
「ほう、そんなこと言うんだ
ポッポ、またまた翼で撃つ」
再びポッポの翼がジャイアンを襲う。
バキッ、ベキッ!
あらゆる角度から殴りつけられるジャイアン。もう、反撃する元気も無い。それを見ながらためるは言う。
「ああ、言っとくけどね、僕は来週から転校するから。……って聞いてる?悔しいよねぇ、ガキ大将気取りさん^^」
ジャイアンはズタボロになってしまい、もう反抗する気配もない。ためるは征服感に包まれていた。
「あー、スッキリした。じゃあね」
ためるはそう言い、その場を去ろうと自転車を走らせ始めた。
すると、
三分後、ためるの目の前には文字通りボロ雑巾の様になり、地面に伏すのび太とジャイアンの姿があった。
ためるはそれらを見て満足そうに笑みを浮かべる。
「ふふふふふ……復讐完了!」
そんなためるを見つめながら、ジャイアンは絞り出す様に言う。
「ためる……テメエ覚えてろよ……学校で会ったらボコボコにしてやるからな……」
ジャイアンが鬼の形相でためるを睨む。
しかし、今は、ジャイアンの怒りの声も、ためるにはとってはただのギャグにしかならない。
「ほう、そんなこと言うんだ
ポッポ、またまた翼で撃つ」
再びポッポの翼がジャイアンを襲う。
バキッ、ベキッ!
あらゆる角度から殴りつけられるジャイアン。もう、反撃する元気も無い。それを見ながらためるは言う。
「ああ、言っとくけどね、僕は来週から転校するから。……って聞いてる?悔しいよねぇ、ガキ大将気取りさん^^」
ジャイアンはズタボロになってしまい、もう反抗する気配もない。ためるは征服感に包まれていた。
「あー、スッキリした。じゃあね」
ためるはそう言い、その場を去ろうと自転車を走らせ始めた。
すると、
ガキッ。
突然自転車が進まなくなった。どうやら何者かに自転車の後部座席を捕まれたらしい。
「しつこいよ?のび太君」
ためるは後ろを向き、苛立ちながら言う。
そして、ためるの自転車を止めている者は息も絶え絶えに言った。
「待て………ためる君……」
「しつこいよ?のび太君」
ためるは後ろを向き、苛立ちながら言う。
そして、ためるの自転車を止めている者は息も絶え絶えに言った。
「待て………ためる君……」
「勘違いしてるみたいだけどね、悪いのは君達だよ
君達が僕のためるBANK(通称TB)をぶち壊したんだから。あれには15万入ってたんだよ。
っていうか、とりあえず、いい加減離しなよ」
ためるはそう言い、ペダルに力を入れる。
のび太の手は意外とあっさりとはなされた。
(ふん、やっぱり根性無いじゃないか)
ためるは心の中でほくそ笑む。しかし、その笑いはすぐにのび太の言葉によって打ち消される。
君達が僕のためるBANK(通称TB)をぶち壊したんだから。あれには15万入ってたんだよ。
っていうか、とりあえず、いい加減離しなよ」
ためるはそう言い、ペダルに力を入れる。
のび太の手は意外とあっさりとはなされた。
(ふん、やっぱり根性無いじゃないか)
ためるは心の中でほくそ笑む。しかし、その笑いはすぐにのび太の言葉によって打ち消される。
「ためる君、油断したね」
「なに?」
突然ののび太の余裕に、ためるの頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。
のび太は笑みを浮かべながら右手に握った物を見せる。
するとためるはすっとんきょうな声を上げた。
「それは僕のためるウォーレット(通称TW)ッ!
いつの間に………」
「君の後ろに回った時さ。
さて、これをどうしようかな……?」
「返せェェェェェェッ!」
自分の大切な財布、いや、ためるウォーレット(通称TW)を取り返すため、我を忘れて自転車で突進するためる。
「なに?」
突然ののび太の余裕に、ためるの頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。
のび太は笑みを浮かべながら右手に握った物を見せる。
するとためるはすっとんきょうな声を上げた。
「それは僕のためるウォーレット(通称TW)ッ!
いつの間に………」
「君の後ろに回った時さ。
さて、これをどうしようかな……?」
「返せェェェェェェッ!」
自分の大切な財布、いや、ためるウォーレット(通称TW)を取り返すため、我を忘れて自転車で突進するためる。
彼は冷静さを失っている。ポッポに財布の奪取を指示しないのがその証拠だ。
運動神経の無いのび太だが、小回りの能力なら自転車より人間に分がある。
ためるが冷静さを欠いている事もあり、のび太はあっさりとためるの突撃を避わしてゆく。
ためるが冷静さを欠いている事もあり、のび太はあっさりとためるの突撃を避わしてゆく。
「鬼さんこちら手の鳴る方へ~」
のび太はしきりにためるを挑発しながら、逃げ回る。
(後少し……もう少し……)
「待て待てェェェェッ!」
般若の如き形相で、ためるはのび太を追う。
のび太はしきりにためるを挑発しながら、逃げ回る。
(後少し……もう少し……)
「待て待てェェェェッ!」
般若の如き形相で、ためるはのび太を追う。
あのガキマジでブチ殺す。僕の命とためるBANK(通称TB)の次に大切なためるウォーレット(通称TW)を持て遊びやがって殺す殺す殺す殺すゥゥゥッ!
ためるはのび太を真一文字に睨み、突進する。
「財布返せェェェェッ!」
「財布返せェェェェッ!」
その時だった。
ビシッ、ビシシシッ――――――
ビシッ、ビシシシッ――――――
「な、なんだぁ?」
突如鳴り出した謎の音に、ためるは驚きを隠せない。
突如鳴り出した謎の音に、ためるは驚きを隠せない。
ビシッ、ビシッ、ビシッ
『音』は更に大きくなる。
そして、ここでためるはようやく気づいた。その音は自分の後ろ、つまり後部座席で鳴っているのだと。
ためるはそれを確認しようと、後ろを向く。すると、そこにはバッグが一つ。中から少し硬そうな物が顔を出している。
「ポケモンのタマゴ……何故僕の後部座席に……
まさか!」
驚くためるを尻目に、のび太はニヤニヤと笑っている。
「そう、そのまさかさ。
実はね、さっき君の財布を奪った時に置いておいたんだよ。
君の『歩行の力』を利用して、タマゴを孵化させるためにね!」
そして、ここでためるはようやく気づいた。その音は自分の後ろ、つまり後部座席で鳴っているのだと。
ためるはそれを確認しようと、後ろを向く。すると、そこにはバッグが一つ。中から少し硬そうな物が顔を出している。
「ポケモンのタマゴ……何故僕の後部座席に……
まさか!」
驚くためるを尻目に、のび太はニヤニヤと笑っている。
「そう、そのまさかさ。
実はね、さっき君の財布を奪った時に置いておいたんだよ。
君の『歩行の力』を利用して、タマゴを孵化させるためにね!」
全く気付かなかった。
財布を盗んだのは、自分の注意を引くためと、走り回らせて歩数を稼がせるため。
まんまと罠にかかってしまった。軽率だった。
財布を盗んだのは、自分の注意を引くためと、走り回らせて歩数を稼がせるため。
まんまと罠にかかってしまった。軽率だった。
まぁ、ここは反省するとしよう。
だが、これで勝ったと思って貰っては困る。
今、タマゴを持っているのは自分。故にこのままタマゴが孵れば、自分が親ということになり、自分の手駒として扱える。
のび太は多分この事を知らないのだろう。
最後の最後で詰めが甘かったね、のび太よ。ドンマイ。
今、タマゴを持っているのは自分。故にこのままタマゴが孵れば、自分が親ということになり、自分の手駒として扱える。
のび太は多分この事を知らないのだろう。
最後の最後で詰めが甘かったね、のび太よ。ドンマイ。
ピシッ、ピシッ
タマゴの孵化は更に進んでゆく。
タマゴの孵化は更に進んでゆく。
このままタマゴをキープし続ければためるの勝ちだ。
タマゴはもう孵化寸前。ためるは勝利を確信した。
「残念だったねーッ!
よく頑張ったけどここまでだよ!タマゴは『孵した人』が『親』になるんだよォーッ!
お前の負けだぁーッ!」
タマゴはもう孵化寸前。ためるは勝利を確信した。
「残念だったねーッ!
よく頑張ったけどここまでだよ!タマゴは『孵した人』が『親』になるんだよォーッ!
お前の負けだぁーッ!」
「いや、君の負けだよ」
「何?」
「これで君の負けが確定する」
そう言い、のび太は地面に何かを投げつけた。
それからはチャリンと小気味の良い音さえ聞こえる。麗しい音。自分の汗と根性の結晶の音。
ためるはそれに覚えがあった。
「僕のためるウォーレット(通称TW)ッ!うおああああああ」
ためるは自転車を急発進させる。そして自転車を止め、財布を大切そうに拾う。
「あー、良かった。戻ってきて。君すら失ったら僕は本当に生きる目的を失って……」
そこまで言ってためるは喋るのを止めた。
「何?」
「これで君の負けが確定する」
そう言い、のび太は地面に何かを投げつけた。
それからはチャリンと小気味の良い音さえ聞こえる。麗しい音。自分の汗と根性の結晶の音。
ためるはそれに覚えがあった。
「僕のためるウォーレット(通称TW)ッ!うおああああああ」
ためるは自転車を急発進させる。そして自転車を止め、財布を大切そうに拾う。
「あー、良かった。戻ってきて。君すら失ったら僕は本当に生きる目的を失って……」
そこまで言ってためるは喋るのを止めた。
何て自分は馬鹿なのだろう。
ためるウォーレット(通称TW)を拾う為、今自分はのび太の近くまで行きゎ自転車を止めている。
と、いうことは……。
「ためる君、タマゴは返して貰うよ」
「罠かあああああああッ!」
のび太がいつの間にか後ろでタマゴを手に取っている。
ミスった。落ち着いて考えれば罠と分かるものの……。完璧に気を取られて……。
ためるウォーレット(通称TW)を拾う為、今自分はのび太の近くまで行きゎ自転車を止めている。
と、いうことは……。
「ためる君、タマゴは返して貰うよ」
「罠かあああああああッ!」
のび太がいつの間にか後ろでタマゴを手に取っている。
ミスった。落ち着いて考えれば罠と分かるものの……。完璧に気を取られて……。
ビシッ、ビシッ、ビシッ。
タマゴから光が漏れる孵化の合図だ。
「産まれる……」
神秘的な光景にのび太は思わずそう呟いた。
タマゴから光が漏れる孵化の合図だ。
「産まれる……」
神秘的な光景にのび太は思わずそう呟いた。