ドラえもん・のび太のポケモンストーリー@wiki

コゴミ

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akakami

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ダン!ダン!スッ…

音も無くボールはゴールに吸い込まれていった。
観客の歓声が体育館に響き渡る。
疲れた体に……力が戻っていくのを俺は感じた。
『やっぱり……バスケはこれがあるから辞められねぇなぁ……』
バシッ!
誰かが俺の頭を叩いた。
高校に入ってから出会った友達、ジャイアンこと剛田武だ。
「ナイシュッ、次も頼むぜ。>>865」

俺の名前は>>865。高校2年生で趣味はバスケ。
俺は、バスケを初めてから今まで、必死で練習を続けてきた。
そのおかげだろうか。
今ではこの「ドラポケ私立婆盆学園」バスケ部のエース選手になっている。
部活では昨年、全国大会一歩手前までチームを導き、
クラス内では、みんなからの信頼、女子生徒からの好意を得ることが出来た。
『一生この幸せが続けば良い』
いつもそう考えていた俺は、この時まだ知らなかったんだ。
人気者になるってことは、人の嫉妬を買うのと比例するってことを……

婆盆学院、別館裏。
ここは日が当たらず、いつも暗い場所。
ジメジメしたこの場所には人が寄りつかず、
いつからか不良の溜まり場と呼ばれる様になっていた。
「おい、スネ夫。お前何する気何だよ」
「簡単なことさ。>>865の足を……動かなくするんだよ」



「>>865、起きなさーい!」
うるさい。
家の中から聞こえる訳じゃない。
いつも通り、家の外からあいつが叫んでいるんだ。
隣の家に住む幼なじみの女、コゴミが……
「早く起きないと、
 クラスの女の子に小さい頃>>865が、オシッコ漏らしたこと言っちゃうぞぉ!」
プチン!
俺の中の何かが切れた。
「うっさいぞ、コラ!お前は近所迷惑ってのを知らねーのか!」
窓を勢い良く開け、俺は叫んだ。
ちょうどゴミ出しに来ていたおばちゃん達が一斉に俺の方を向く。
「えっ?…いやあのこれは…コゴミが…」
そう言おうとしたら、もうコゴミは居なくなっていた。
遠くに必死で走る金髪の少女が見える……

その後、俺は親父に近所の家全てに謝罪に行かされ学校に遅刻した。
った。



「まだ怒ってる?」
何事も無かったかの様にコゴミが俺の顔を覗く。
「当たり前だろ!
 遅刻はするし、親父に殴られるし、先生はキレるし……良いこと無い……」
「まぁ、運命じゃない?諦めれば?」
コゴミはそう言うと、同じクラスのしずかと言う少女を連れ昼食を買いに行った。
やべ……俺泣いてるかも……
「>>865、俺たちもメシ買いに行こうぜ」
俺はジャイアンと共に、あふかけた涙を拭き、売店へ向かった。

「やっぱここからの眺めは最高だよな!」
屋上の床に座り込み、ジャイアンがそう叫ぶ。
昼食の時間。
屋上でメシを食べながら、いろんな話をすることが、
俺とジャイアンの密かな日課となっていた。
バスケのことや将来のこと。
たくさん話をしてきた俺たちの今日の話題は、中学生の頃についてに決まった。
まずは俺から。
っと言ってもバスケのことしか記憶に無い。
今思い返せばつまらない青春を送ってしまったなと、少し後悔してしまった。
俺の約3分間の話が終わり、次はジャイアンの番。
「じゃあ話すぜ。俺は……

ジャイアンの話は思いの他長いものになった。
しかも、凄く濃い内容の話に……



ジャイアンの話は驚きの連続だった。
今、校内でも有名な不良のあの骨川スネ夫が裕福な家庭の子だったこと。
昔いじめられっ子だった野比のび太と言う少年が、
中学で急に成績を上げ、この辺りでも有名な進学校に入学したこと。
特に驚いたのは、骨川スネ夫のことだ。
あいつは今、髪をリーゼントにし、恐喝や暴行を働き、
学校にも余り来ないこの学校で皆に恐れられている存在になっている。
そんな骨川が……昔はジャイアンの友達?
俺は、そんなこととても信じることは出来なかった。
「なぁ、>>865……」
ジャイアンが寂しげな言葉で言った。
「俺……スネ夫を助けること出来ないのかな?」

その日、それ以上俺はジャイアンと何も話さなかった。
ジャイアンの骨川を思う気持ちは分かる……
だけど、今の骨川は……気持ちだけじゃ救えないのだ。
『PM:700体育館』
この日、俺は他の皆が帰った後も、一人練習を続けていた。

ダン!ダン! ガコッ!
ボールはゴールの縁に当たった。
入らない。何故だろう?
嫌な予感がした俺は、急いで帰りの支度をし、体育館の出口に急いだ。

ガチャ!
『扉が……開かない?何でだ?』
そう思った瞬間、俺の頭に激痛が走った。
意識が薄れ、頭を温かい液体が伝う。
そして、俺は見た。鉄の棒を持った骨川スネ夫の姿を……



「ほ、骨川!てめぇっ!」
俺は殴りかかろうと拳を上げようとしたが、体が言うことを聞かなかった。
自然と足がフラつく。気づけば俺は、顔が床に着いていた。
「>>865、お前……バスケ部のエース何だって?」
それがどうした!と言う言葉が頭に浮かぶが、口に出ない。
「で、今は 2月だろ?今から夏の大会まで……半年か。
 さて、ここで問題だ。足の骨折は半年で治るか治らないか?」
『まさか、こいつら!』
「止めろ!」
やっと声が出た。だが、奴らは笑うだけで止めようとしない。
「おい、神成。バットを俺に貸せ」
ドクン 『止めろ』ドクン! 『止めろ!』
「止めろぉ!」
「さよなら、エースさんw」 シュッ バキッ…

『PM8時体育館』
「>>865?居るなら返事しなさいよぉ!」
暗い体育館内。
コゴミは、懐中電灯を持ってくれば良かったと後悔しながらも照明のスイッチを探した。
パチッ!
照明の明かりが灯る。
そしてコゴミは>>865の姿を見つけた。
体中にケガを負った血だらけの姿で……

「嘘…でしょ?」



6月
夏が近づくにつれ、俺の気分は重くなっていった。
足のギブスはまだ外れず、学校に行くのも一苦労だ。
今、最初の頃の骨川への恨みもほとんど薄れ、
周りの時間はただ呆然と過ぎていった。俺を置き去りにして……

昼飯の時間。
俺はあれからジャイアンと食事を採ることは無かった。
きっと、ジャイアンはまだ信じられないのだろう。
昔の親友、骨川スネ夫が俺の骨を砕いたことを……

「>>865……隣でご飯食べて良い?」
コゴミの問いかけに俺は無言でうなずいた。
あれから、コゴミは毎日俺の隣に来てたくさん話をする。
コゴミは絶対に俺が笑わないことを知っているくせに、
いつも楽しそうに今日の出来事を話すのだ。
「でねぇマイッペがさぁ!…」「笑っちゃうよねぇ?」
コゴミはいつもの様に話すだけ話すと、席に戻っていった。
何故か……俺にはその顔が泣いてる様に見えた。
「コゴミ…ごめんな」

俺は、自分でも聞こえないほど小さな声でそう言った。



「コゴミちゃん、起きて…」
帰りのホームルームが終わって10分。
まだコゴミはヨダレを垂らし、机の上で熟睡していた。
「コゴミちゃんってば!」
「ふぁ?…授業終わったの?」
コゴミはうんと体を伸ばし、周りを見た。
「>>865が居ない…」
コゴミは直ぐ様カバンを掴むと、走って外に出ていった。

「へい、パス!」「ナイシュゥッ!」
公園で子供達がバスケをやっている。
懐かしい……俺も昔はこの公園で……
「>>865!」
向こうから金髪のショートヘアの少女が走ってくる。
「コ、コゴミ!どうしてここが…」
「何言ってんのよ!
 私がこの公園であんたにバスケを教えてあげたんでしょーが!」
コゴミは呆れた様に俺を見る。
「そういや…俺がバスケの練習頑張ったのも……お前に追いつくためだったよな」
俺は久しぶりに笑い、言葉を続けた。
「あの時は凄い楽しかったよな……
 毎日二人でバスケやって、泥だらけになって……」
俺の頬を涙が伝う。
俺は必死で止めようとするが、どんなに頑張っても涙は止まらい。
「コゴミ、俺……あの頃に戻りてぇよ…またあの頃みたいに笑いてぇよ!」
「>>865…」
気づけばコゴミも涙を流していた。
初めて見たコゴミの泣き顔。
その顔はとてもいとおしく、今まで見たどんな女の子よりも可愛かった。



その日の夜。
865の家に近づく影が2つあった。
「行くよ、ドラえもん」
二人は静かに家の中に入っていった……

次の日の朝。
俺は足に違和感があるのを感じ、ベッドから体を起こした。
足が軽い? いやこの感じは……
「ギブスが外れてる!」
俺はベッドが飛び起き、ステップを踏んでみる。
だが、足に痛みは無く、足は昔の様にスムーズに動いていた。
「…………やった。やったぞ!」
俺は直ぐ様机の上のケータイを取った。

「>>865……何のつもりだろ?」
この日、コゴミは昨日の公園に呼び出されていた。
久しぶりの待ち合わせ。
目的はまだ分からないが、心が踊るのをコゴミは感じていた。
「>>865?…」
向こうからドリブルの音が聞こえた。
懐かしい音。でも良く考えれば>>865の訳が無い……
865の足は……
ダン!ダン!ダン!
コゴミの横を男が駆け抜けていった。
『今のは……』ダン! スッ…
この、音がほとんど無いシュート、閃光の様に早いドリブル。
コゴミは良く知ってる。この男は…

「ただいま、コゴミ」「おかえり…>>865」



8月
全国大会まであと一勝。
だが、1点負けていて試合終了まであと10秒。
このチャンスを逃せば……負ける。

「>>865!」
ジャイアンのパスを俺は受け取った。
みんな俺の為に相手を止めて、小さな隙間を作ってくれた。
「突っ込め、>>865!」
俺はその小さな隙間に突っ込んだ。
ダン!ダン!ダン! スパン…
会場が静まりかえる。
俺は思いっきり手を振り上げ、大声で叫んだ。
「シャァッ!」
会場が一気に沸き上がる。
そんな中、俺の瞳に映っていたのは観客席の金髪の少女だけだった。

「これで良かったんだよね?、しずかちゃん」
「うん……ありがとう、のび太さん」
二人は>>865には、足が治った理由を秘密にすることにした。
その方が……彼も幸せだと思ったから……
『その日の夜:焼き肉屋内』
「おい、>>865どこ行くんだよ!」
「悪い、ジャイアン!俺会いたい奴が居るんだ!」
俺は走って、あの日の公園に向かった。
一番……大切な人に会うために……



「コゴミ!待った?」
コゴミは一人でブランコに乗っていた。
だが、すぐ俺に気づき、近くまで近よって言った。
「おめでと!」
思いがけない一言。俺の心臓が高速で波打つ…
「あ、ああ…それでよぉ……お前に頼みがあるんだよ」
コゴミが不思議そうに俺の顔を見つめる。
「……目つぶってくれ」
コゴミを顔を赤くし、目をつぶる。
俺は自分の唇を近づけ…
ゴン!
俺は一瞬何が起こったか分からなかった。
ただオデコに軽い痛みが残ってるのが分かる。
どうやらコゴミは 俺のでこに頭突きを食らわした様だ。
呆然とする俺。
そんな俺を見て、コゴミは笑顔で言った。
「私があんた何かとキスする訳ないじゃん!
 全国大会行ったくらいで威張らないでよね!
 でも……」
「でも?」
「もしも、あんたが全国大会で優勝したら……考えてあげても良いかなぁ…何てさ」

俺の名前は>>865。
まだ俺の人生は始まったばっかりだ。


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