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僕の御主人様の名前は出木杉って言って凄く優しいんだ。
いつも撫でてくれたり、一緒に眠ってくれたりして僕は毎日が楽しかったんだ。
でもある日御主人様は急にいなくなっちゃったんだ。
何でだろう?
他のポケモンが言うには御主人様は元の世界に帰っちゃったんだって。
元の世界って何なんだろ?
よく僕には分かんないけどきっとすぐ帰ってきてくれよね
うん……きっと

そう思い続けてもう十年が過ぎた。
御主人様……いや出木杉は俺のことなどもう忘れているだろう。
憎い憎い憎い憎い………
憎しみしか俺を動かす物は無かった。
「うわー、バンギラスだ!」
「来ないで、化け物!」
俺はこの十年でもう心が寂れていた。
人を殺すことなど俺にとってはコイキングを踏み殺すことと変わりはない。
俺はまたひとつの町を壊し、先に進んだ。
俺が道を歩いているとゲンガーが寄って来てこう言った。
「お前は俺達と変わらない……」
俺はそのゲンガーは殺そうとしたが、もう居なくなっていた。
「ゲンガーと俺は……変わらない」



俺は赤く染まった左手を見た。
ほんわりと温かい感触が残っている。
「この温かさ……御主人様の手……」
俺はこの手を見るたび思いだす。
他のポケモンに負けた俺に
「よく頑張ったね」
と言って手を握ってくれた御主人様のことを……
バァン!!!
俺の体を激痛が走った。
「ついに見つけたぞ。この化け物め!」
手に武器を持った人間が大量にいた。
明らかにその大量の人間の目には殺意が込められていた。
俺は必死で逃げた。
だがその巨体のせいで飛んでくる銃弾の的となり気付けば血だらけとなっていた。
「糞っ!あの化け物どこ行った!」
「まだそんなに遠くに行って無いはずだ!」
俺は洞窟の中に隠れて、何とか生き延びた。
だが体中から流れる血の量を見れば、死期が近いのは明らかだった。
俺はその場に倒れ込んだ。



「俺は……ここで死ぬんだな」
何故か嬉しかった。
とても痛くて苦しくて……涙が出ているのにとても嬉しかったのだ。
ふと横を見ると……そこには錆びたモンスターボールがあった。
「ここは……」
そう。ここは御主人様と俺が出会った場所だった。
親に見捨てられて一人だった俺を……御主人様が救ってくれた場所だったのだ。
「ここで死ねるなら……もう……悔いは……な」

御主人様
今あなたは笑っていますか?
俺はもう笑えません。
だから……俺のぶんまで笑っていて下さい。
もうあなたに会うことはありません。
でも……でも出来れば俺のことを忘れないで欲しい。
きっと……もう忘れているかも知れないけど……
俺はあなたのそばに居たいんです。

その日洞窟で大きなバンギラスの死体が見つかった。
傷だらけで見るも無惨な姿だったが……
幸せそうに笑って死んでいたそうだ。



現実世界

ポケモンの世界では十年だがこっちの世界ではたったの1年ちょいだ。
この出木杉少年も中学生になろうとしていた。
「出木杉、学校行こうよ」
「やぁ、のび太君。ちょっと待ってて」
「何やってるの?」
「僕の友達に挨拶してるんだ。ほら、見てよ」
「これ……ぬいぐるみじゃん。
しかもバンギラスって……あれ?」
「どうしたの?」
「いや気のせいだよ。たぶん」

のび太には一瞬バンギラスの顔が笑ったよう見えた。