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     #0 「始まり」

ここはトキワトレーナーズハイスクール、バトル科4組の教室だ。
「先生、これは一体なんですか?」
一枚の紙を手に取り質問する少年の名は野比のび太という。
紙には、『キングオブトーナメント 開催のお知らせ』と書かれている。

「俺も詳しいことはしらんが、今度開かれる非公式の大会のチラシのようだ
主催者も開催場所も不明、分かっているのは4人一組のチーム戦だということ、そして……
優勝賞金が“4億円”だということだけだ!」
4億円……あまりにも現実味が無い金額を聞いた生徒たちが騒ぎ始める。

「面白そうだな、のび太! 俺たちも出てみないか!」
一際声が大きいこの男は剛田武、通称ジャイアン。
「いや、いいよ。 あまり興味ないし……」
誘いを断られたジャイアンはつまらなそうな顔をした。

―――あの事件から7年が経ち、のび太は17歳となった。
自分を1人前と認めてくれたドラえもんの期待に答えるため、のび太は一生懸命勉強した。
そして見事トレーナーズスクールを卒業し、
今はトレーナーズハイスクールのバトル科の進学して勉強を続けている。

勉強して、友達と遊んで、家族と楽しく食事して……
平凡だが充実した毎日を過ごし、ポケモントレーナーになる夢を追い続けるのび太。
彼は今の生活に何の不安も抱いていない、『幸せ』だと心から感じていた。

―――だが、平凡な日常とはある日突然崩れさっていくものなのだ……



「ただいまー!」
威勢よく玄関のドアを開けたのび太。
玄関に入った瞬間、彼は一つの異変に気付いた。
いつもはまだ仕事しているはずの、父親の靴があったのだ。

「パパー、帰ってるのー?」
のび太は父親を呼びながら居間のドアを開ける。
そこには、深刻そうな表情を浮かべて向かい合っている父と母の姿があった。

そこでのび太は衝撃的な話を聞かされる。
のび太の父、のび助の勤める会社が突然倒産したこと。
歳のせいで再就職先を見つけるのも困難であること。
さらに、家のローンと借金が合計3000万もあること……

「一体、この家はどうなるの?」
「そんなの、私に聞かれ……て……も……」
突然、『バタン』という音がした。
母、玉子が倒れたのだ。

救急車が到着し、玉子は病院に運ばれる。
倒れた原因は過労とストレス、ストレスの原因は間違いなく借金だろう。

のび助を病院に残し、1人家に帰ったのび太は悩む。
これから、一体どうすればいいんだろう……
「……助けて、ドラえもん……」
いくら呟いても、もうドラえもんは戻ってこない。

苦悩するのび太の目に、一枚の紙が映った。
『キングオブトーナメント……“優勝賞金4億円”』
家庭を救うため、平凡な日常を守るために……のび太は決意を固めた。
その目はもうすぐ訪れるキングオブトーナメントを見据えていた。



       #1 「結成」

「お願いだ! 僕と一緒にあの大会に出てくれ!」

突然、のび太にそう言われたジャイアンは驚いた。
昨日彼は、この大会には興味が無いといっていたハズだ。
「のび太、何があったんだ?」
何かあったな……のび太の長年の友であるジャイアンは直感でそう感じ取った。

のび太は昨日あったことを包み隠さずジャイアンに話した。
「よし、俺様が協力してやるよ!」
ジャイアンは快く承諾してくれた。

「それじゃあ、あらためてこのチラシを見てみようか。」
2人は『キングオブトーナメント 開催のお知らせ』のチラシに目をやる。

『   キングオブトーナメント 開催のお知らせ 
このトーナメントは4人1組のチームで行います
この紙についてある応募用紙にチーム名、4人の選手名(チームリーダーは一番上に記入すること)、補欠選手(人数制限なし、無記名でも可)を記入し、下記の住所へお送りください
“○○○タウン△△番地□□□□―□”
〆切 ○○月○○日
※ 重要事項 優勝賞金は4億円!   』 

しかし、何度読み返してみても不気味な文章である。
大会の試合日や開催場所など、重要な事がほとんど書かれていないのだから。

「ま、そんなこと気にすんなよ! それより残り2人のチームメイトなんだが……どうする?」
ジャイアンがのび太に問う。
「もう目星はつけてある、ジャイアンも分かるでしょう?」
「ああ、じゃあ早速2人に連絡しとくぜ!」
ジャイアンは早速ポケッチを使って、何者かに連絡を取り始めた。



放課後、空き地には4人の人物が集まっていた。

のび太、ジャイアン、スネ夫に静香。
スネ夫は現在ハイスクールのポケモン学科に、静香は医学科にそれぞれ通っている。
この4人は7年前にある事件で共に戦って以来、切っても切れない関係で結ばれているのだ。
いわゆる、腐れ縁というやつである。

「……というわけなんだ。
お願いだ、僕と一緒にキングオブトーナメントに出てくれないか!」
のび太がスネ夫と静香に向かって頭を下げる。

それに対して、
「のび太さんの悩みは私たちの悩み……
喜んで協力させてもらうわ」
と、静香。
「仕方ない、僕も協力してやるよ」
と、スネ夫。

「よし、決まりだな! じゃあ俺たち4人で、何とかトーナメントに参加するぞ!」
ジャイアンが空き地全体に響き渡るような大声で叫ぶ。

「どうやら、決めなきゃいけないことが後3つあるね。
補欠選手、チーム名、そしてチームリーダー……」
スネ夫が言うと、ジャイアンがさっそくペンと応募用紙を取り出す。
「補欠選手はとりあえず多い方がいいだろ! スクール時代の同期生全員書いとくか!」
せまい補欠選手欄にジャイアンは無理やり多くの人物の名前を書き込んでいる。
まさかスクールの同期生は、自分が勝手に補欠選手にされているなんて夢にも思わないだろう。

「これで一つは片付いた……次はチームリーダーを決めようぜ!
……ちなみに俺はのび太が適任だと思うんだ!」



ジャイアンの言葉を聞いた3人、特にのび太は耳を疑った。
傲慢で自分勝手なジャイアンのことだ、間違いなく俺がリーダーだとわめきだすと思っていた。
しかし彼は他の人物にリーダーの座を譲ろうとしている。
……よりによって、散々馬鹿にしてきたのび太に。

「で、お前ら異論はあるか?」
突然の問いのび太は答えが浮かばず、首を横に振る。
スネ夫と静香も反論することはなかった。

「じゃあリーダーはのび太に決定! 後はチーム名だが……
俺は『ジャイアンズ』を勧めるぜ! これだけは譲れない!」
またまた3人がポカンと口をあける。
……やっぱり、ジャイアンはジャイアンだったか。

「僕はイヤだ!」
すぐさまのび太が反論した。
「じゃあ何がいい? 言ってみろ!」
ジャイアンに問われ、のび太はたじろぐ。
「えっと、うーん、そのー……」
その時ふと、ドラえもんの顔が脳裏に浮かんだ。
「そうだ、『ドラーズ』なんてのはどう?」
「うーん……まあ、『ジャイアンズ』よりはましか……」
スネ夫と静香が呟いた。
結局、多数決の結果3対1でチーム名はドラーズに決まった。

「よし、じゃあ俺たちはこれから『ドラーズ』の仲間だ
皆で協力してトーナメントへ、目指すは優勝だ!」
ジャイアンがそう言いながら右手を差し伸べる。
スネ夫、静香、のび太もその上に手を重ねる。

―――4人が始めて、『ドラーズ』という一つのチームになった瞬間だった。



       #2 「修行」

―――それは、ドラーズ結成の3日後にやってきた。

「みんな、これ見て!」
空き地に集まった他の仲間たちにのび太が茶色い封筒を見せる。
今朝、彼の家のポストに投函されていた物だ。
封筒の中には、白い紙が2枚入っていた。

1枚目を見てみる。
『キングオブトーナメント 予選について
○○月○△日、午前10時から予選を行います。
予選場所は全国に設けられており、各場所参加者は5名、内2名が本線に進むことが出来ます。
予選場所はコンピューターがランダムに決定しました、どんなに遠い地方に行くことになっても変更は認められません。
なお、予選場所はこの封筒に同封されているもう一枚の紙に記載しております。

つづいて2枚目
『あなた方の予選場所は、ニビシティです』
……2枚目はどうやらこれだけのようだ。

「とりあえず、予選場所が近くでよかったね」
のび太が呑気に言う。
「そんなことより、○△日って一週間後だよ!
この大会かなり規模が大きいから、ジムリーダーや四天王も参加するかもしれない……
今のままじゃ勝てない! もっとポケモンを鍛えないと、それに僕らももっとバトルについて学ばなきゃいけない……」
スネ夫が慌てた様子で言う。
「たしかにその通りね! となると、やっぱり指導者がいた方がいいかもしれないわ」
静香が頭を抱えながら言う。

「指導者……それなら俺、いい人を知ってるぜ!」
ジャイアンに連れられ、一同は彼の紹介する指導者の元へ向かった。



―――今4人は、シロガネ山の麓まで来ていた。
何故彼らがこんなところに着たのか……とりあえず事の経緯を説明しよう。

ジャイアンが紹介した指導者……
それは、かつてのび太がトレーナーズスクール3年生だった時の担任だった先生だ。
彼には7年前の事件の後に世話になった過去もあり、ドラーズの4人にとって特別な先生だ。
また、年に一度開かれる最大規模の公式大会『ポケモンリーグ』でベスト8にまで上り詰めた経歴を持ち、トレーナーとしての実力も申し分ない。
勿論、教師をしているだけあって指導能力はなかなかのものだ。
ジャイアンにしては、いいチョイスだといえるだろう。

4人はこの大会に出ることになった経緯を説明した上で、先生にコーチを頼んだ。
先生は友達のために大会に出るドラーズの姿に感動し、快くコーチを引き受けてくれた。
先生はコーチを引き受けるとすぐにこう言った。
「今から、シロガネ山に集合だ」

シロガネ山はトキワシティの近くにある巨大な山だ。
気温などの環境がよく、強力なポケモンが沢山生息している。
よって、ポケモントレーナーの修行スポットとして有名である。
『シロガネ山での修行なくして、名トレーナーへの道は開くことはできない』といわれるほどである。
……ここまで言えば、4人がここに召集された理由はもうお分かりだろう。

やがて、4人を追ってシロガネ山に到着した先生が言う。
「では、今から一週間ここで修行を行う!」

4人の苦しく険しい一週間の修行がこれから始まる……



修行といっても、何をすればいいのか?
そんなことを先生に尋ねたら、何時間話を聞かされるか検討がつかない……
いまの4人にはそれほどやらなければならないことがたくさんあった。

ドラーズを結成してから予選についての通知が来るまでの3日間、一応4人は何もしていなかったわけではない。
3匹くらいしかポケモンを持っていなかったスネ夫と静香は、とにかく沢山のポケモン捕獲して戦力をかき集めた。
ジャイアンとのび太は、自分たちとスネ夫たちのポケモンのレベル上げを行った。
一応4人とも手持ち6匹が全員最終進化系、というレベルまで持っていったのだ。
しかし先生いわく、『今のままでは予選敗退は確実』だそうだ。
予選敗退レベルから、大会で優勝できるレベルまで一週間で持っていく……
この一週間の修行が、どれだけキツイものになるかが安易に予測できる。

一番大切なものは、勿論ポケモンのレベル上げだ。
この一週間で20~30レベル上げる、先生に冗談の様子を言ってい様子は見られなかった。

次はトレーナー自信のレベル上げだ。
もっと戦術についての理解を深めること。
そして、決して諦めることのない強靭な精神力を養うことが大切だそうだ。

そして後は実戦になれることだ。
バトル科に進まなかったスネ夫と静香は戦闘のカンが鈍っており、このままでは使いものにならない。
のび太とジャイアンも模擬戦は何度も授業でやったが、真剣勝負の経験はまだまだ未熟だ。
なんども味方同士で戦いを繰り返し、最終的には自分を倒す程度まで成長してもらう……
先生は本気でそういっていた。

目的を確認したところで、いよいよ修行の始まりだ。



ここで、彼らの修行の様子について伝えておこう。

修行の朝は早い。
4人はシロガネ山の麓にある小屋を借り、そこを寝泊りに使っていた。(ちなみに静香だけは別室である)
朝の4時半頃には先生が小屋を訪れ、4人を叩き起こす。
4人は眠い目をこすりながら、身支度を素早くすませて外へ向かう。

早朝はまず20kmのランニングを行う。
「トレーナーの精神力が鍛えられ、眠気も覚めて一石二鳥!」
と先生は言っていた。
10km程走れば、体力のないのび太は倒れてしまう。

ランニングを終えると次はポケモンのレベル上げだ。
日にちが経つに連れて、どんどん山の奥まで進んで相手ポケモンのレベルを上げていく。

12時になると一旦レベル上げは終了、昼食を腹がいっぱいになるまで食べる。
昼食を食べ終わると再びレベル上げに戻る。

3時になると20分の休憩が入る、その後は4人でリーグ戦を行う。
このリーグ戦で順位が高い者からその日の晩飯を選ぶことが出来るので、各自気合の入り方が違う。
リーグ戦を終えた後は先生と一対一で順番に戦い、その後夕食を取る。
夕食は、リーグ戦で一位だった者と最下位だった者がハッキリ分かるほど格差が激しい。

夕食後は戦術について徹底的に学習する。
居眠りの常習犯であるのび太とジャイアンには、先生の激しい張り手が何度も炸裂している。
学習を終えると最後に先生が1人1人を呼び出して話をする、その間残りの3人は休憩だ。
全員と話を終えるとこの日の修行は終了、睡眠時間に入る。
この時の時刻はまだ10時、先生が『早寝 早起き』をモットーとしているからだ。
だが彼らに修学旅行生のように夜更かしする余裕はない、一日の疲れが押し寄せて3分もすれば眠りにつく。

こういった感じで、彼らの一週間はあっという間に過ぎて行った。



「カイリキー、戦闘不能! ……よって勝者、のび太!」
審判役のスネ夫が高らかに宣言する。
今日は修行の最終日、今ちょうどのび太が先生を破ったところだ。

「すばらしい! これで全員が私に勝利したな
じゃあ今日はここまでだ、後は家に帰って休んでくれ」
修行が終わった……そう感じると、4人はなんだか切ない気分になった。

小屋の中の荷物もまとめ、いよいよシロガネ山ともお別れだ。
先生が最後にこう締めくくった。
「お前たち、この一週間よくがんばったな!
だれも弱音を吐かなかった、決して逃げたり、諦めたりしなかった……
そして君たちは、この私を倒せるくらいまでに成長した
私は、君たちのような教え子を持てたことが本当に嬉しい!
本当にありがとう! 心から礼を言わせてもらうよ」

のび太が先生に言葉を返す。
「こちらこそ、先生のような素晴らしい人に教わることができて本当に幸せです!
先生、ありがとうございました!」
それに続き、残りの3人も頭を下げる。

先生は泣いていた、のび太たちも泣いていた

家に帰ったのび太は、父と退院した母に『一週間もどこへ行っていたのか』と問われた。
のび太は、家庭を救うために大会に出ること、そのために修行していたことを告げた。
それを聞いた父も母も、泣いてのび太に抱きついた。

今日は沢山の涙を見る日だな、のび太はそう思った。
「でも、こういうのも悪くないか……」
そう呟き、窓から空を見上げてみる。
―――今夜は、やけに星が眩しく輝いているように見えた。