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「うわぁ~っ、これがポケモンのいる世界かぁ~っ」  

 扉を開けた先に待っていたのは、透き通るような草原を敷き詰めた田舎町だった。
 ざっと見渡しても建物なんて3、4件しか立ってないし、サイズもいたって普通だし、
 少なくとも僕のうちに匹敵する大きさの建物はないな。

      第二話 パチモンクセェ臭いがプンップンするゼェ―――ッ!!

 ……おっと、自己紹介が遅れた。僕は「骨川 スネ夫」。
 まぁ大体のことはわかっていると思うので略するけど、一つ言いたいのは僕はジャイアンの子分じゃなくて友達。
 あくまで対等な立場であるということだけかな、グフフ。 

「この寂れ具合からいって……ここはゲームで言う『マサラタウン』ってとこかな? 
 だとするならあの大きい建物がオーキド研究所で、奥に立ってる二件がレッドとグリーンの家じゃない?」
「お~っ、あれが……ひゃっほう!! 俺たちは本当にポケモンのいる世界にいるんだな!!?」
「ちょっとスネオくん。そんなわけ無いだろう、ここは現実の世界なんだよ。ゲームのような架空の世界じゃないんだ。
 それに剛田くん……ここに来た目的は、あくまでものび太くんの捜索なんだからね」 
「わかってるって。ん? おーい皆、なんか看板があるぜ!」

 浮かれた調子で一人突っ走ってたジャイアンが僕たちを呼ぶ。
 近づいてみると、そこにはゲームそっくりの木の看板がたっていた。

「どれどれ、なにがかいてあるのか……なっ!?」 

 こ……これはっ?



「どうしたスネオ!? 何が書いてあった??」
「スネオくん?」 

 看板を読んで青ざめた僕を一応気遣い、ジャイアンと出木杉は身を乗り出して看板に目をやった。
 次の瞬間には、2人とも目が米粒みたいに点々になってたけど、まぁ無理ないね。
 看板にはこう書かれてあったんだ。

【ここは マソラ タウン マソラは まっしろ はじまりのまち】

 さすがに沈黙するでしょ、これは。
 やっと口を開いた出木杉も薄ら笑いを浮かべるのがせいぜい。おーい、顔引きつってるって。
 ジャイアンはジャイアンでなんか「期待通りだったぜ、ひゃっほーい!!」みたいなこと言いたそうな顔してるし……

「きたい通りだったぜ、ひゃっほーい!!」

 ……僕ってすごい? あ? ジャイアンが単純なだけ? そうだよね……はぁ。
 ってしずかちゃん!? 何草むらはいろうとしてるの! 危ないよ!!



「……仮にここがゲームの世界だとして、どうやって博士からポケモンをもらう気なの?」

 しずかちゃんが僕に言ったのはそれだけだったけど、僕にはそれですぐに意味が理解できた。
 それは出木杉も同じようで、わかってないのはただ一人。言うまでも無いね、となりであたふたしてるジャイアンだ。

「おい、どーうことだよ? スネオぅ?、出木杉?」

 焦りのためか、うまく言葉を言えてない。僕は一息ほどつくと、ジャイアンに言った。

「ジャイアンさ、どうやってポケモンをもらう気だったの?」
「そりゃ決まってんだろ! 研究所行って博士にもらうんだ!」 

 自信満々に鼻息を鳴らすじゃイアン。はぁ、やっぱりジャイアンはジャイアン、わかってないというかなんと言うか……

「……あのねジャイアン。常識的に考えてさ、子供とはいえ、僕らみたいな見ず知らずの人がいきなり
 「ポケモンください」なんて言って、博士は事情も聞かずに、いたって素直に「ああ、いいよ」
 なんて言ってポケモンくれると思う? 折角研究していた大事なポケモンを譲ると思う?」
「うっ……いや、それはだけど博士やさしいだろうし」
「優しいくらいで貸すと思う? 考えてよジャイアン。ジャイアンが大切にしてるカラオケマイクを
 イキナリやってきた見ず知らずの人間にゆずるかい? そんなことしないだろ、それといっしょだよ」

 ひとしきり言い終わるとジャイアンは駄々をこねるように地団太をかまし、

「じゃあ、どーすんだよ? ポケモンもらえないなら何もできねぇじゃねぇか!?」
「ジャイアン。ゲームを思い出して――と言ってもRSEや金銀のことじゃなく、初代赤緑やFRLGのことだよ!
 主人公は、まずなにをするっけ?」
「パソコンを調べ「違うよ!」母さんにはな「違うよ」研究所に行「違うって! 草むらに入るでしょ!!」……あ!!!」 

 そう、初代赤緑青黄、FRLGの主人公はまず草むらに入る。
 そしてその後に出会うんじゃないか、今後の冒険を共にする、パートナーを。



「おーい、待て。待つんじゃ! おーい!」

 声をかけられたのは草むらに入ってほんとすぐのことだった、
 四人はほぼ同時に振り向き、声の主を探す。 

「ふぅ、危ないところじゃった……」
「…………あれ?」

 姿を見て、最初に呆気の無い声を上げたのはスネオ。
 続くように全員が目を点にし、その男――――【青年】を見やる。

「はぁ、はぁ、危ないところじゃったな、草むらでは野生ポケモ……」
「いや、あんた誰?」

 スネオが疑問を声に上げた。
 目の前にいる青年が、肩で息をはきながら(どうやら、体力はなさそうだ)小さく「えっ?」と言い、続いて「知らないのかい、ワシを? ……変だなぁ」
 と付け加えた。青年は、まさに権威的な研究者……とは言いがたい、実によれよれした格好をしていた。

 はじの曲がってしわだらけのネクタイに、同じくしてクシャクシャの小豆色のシャツ、外側に来ている研究者の証――『白衣』も
 実によれよれで、なんだか錆びや煙草の吸殻みたいなもので殆ど茶色に染めあがっている。
 彼自身もくたびれたようにボロボロだった。顔にも顎のラインをなぞる様に無精ひげが立ち並び、精悍な顔立ちであるにもかかわらず、
 彼を見る人に『薄汚い』と思わせる。 

「まぁ、いいか、ワシの名はオーツド。皆――と言っても、今はこのマソラタウンだけじゃが――からはポケモン博士と言われておるよ」 

 出木杉を除く三人は一瞬、くらりと眩暈を感じかけた。

 ……今、はたしてなんて言った? この人は――――――?



「オーキド博士じゃねぇのかよ!? 何なんだ!? マソラタウンと言いよぉ、パチモンだらけじゃねぇか!?」

 研究所、という中々大きな建物に案内されて、開口一番に叫んだのはジャイアンだった。さっきまでの興奮と感動に浸っていた姿はどこへやら、
 その顔を今や「納得できねぇ!」とでも言い出しそうに真っ赤にして、八つ当たりするものを探すように腕をぶんぶん振り回している。

「あぶないよ、ジャイアン」

 それは当然周りの三人にとってはかなり邪魔になる。スネオはジャイアンの手を身を反らして避けると、ジャイアンの肩を掴んだ。
 何が屈辱的だったのか、ジャイアンは余計に暴れだしそうになり、仕方なく。といった感じで参入した出木杉の説得でようやくおとなしくなった。

「ジャイアン。気持ちはわからないでもないけどさ、とりあえずポケモンはちゃんといるみたいだし、
 それらはパチモンでもなんでもない本物だった。……確かに町の名前や人物名が偽者くさいけどさ、ちゃんと人が生きている世界で、
 現実の世界でむしろこれだけゲームの世界に似ているんだよ、そう考えたら僕ら、ゲームプレイしたことあるだけラッキーじゃない?」  

 スネオがジャイアンの耳元でぼそぼそとつぶやいた。
 ジャイアンはまだいささか不満そうな顔だったものの、邪魔くさそうに出木杉の腕を払いのけ、踵を返した。 
 そのまま悔しそうに足元の箱をけると、ボンッと音がして箱は倒れた。

 確かに、似すぎている――偶然とはいえ無いほどに、あの架空の世界にここはあまりにも似すぎている。

 スネオはすぐさま考えにふけった、そうだ、この世界はあまりにもゲームに似すぎているんだ。
 それは偶然なんて陳腐なもんじゃなく、まるで誰かが必然的にこの世界を“創った”ように、この世界はあまりにもニセモノ臭い。
 おそらくジャイアンは嗅ぎ取ったのだろう、ああ見えてやはり素直な男だ。こういう類には反応を示すし、
 この世界に来てまだ一言しかしゃべってないしずかちゃんだって、それに対してはずいぶんと驚いているようだった。
 実際、今も片腕を抑えながら、疑るような顔色で自分なりの考えにふけっている様だった。



ただ、僕には少し頭に引っかかることが一つ…………出木杉。  

 オーツドの出現に対し、こいつだけが驚きに顔を歪めなかった。一人だけ平然とした顔で事の成り行きを見守っていたのをスネオは見ていた。
 いや――それだけじゃない。こいつはこの世界に来たときも、ただ一人だけ種類の違う笑みを浮かべていたような気がする。
 でも、出木杉はこの町の名前――――マソラを知ったときの顔は本当に引きつってたし、
 そう考えると冷静な出木杉のこと、その時点ですでにオーツドのような存在を予想していたのかもしれない。

 疑りだしたらきりが無い。それでも、疑ってしまうのは僕の性だ。
 四人の立ち位置が、まるで領土を争う国同士のように均等な距離になっていたのに僕は気づかなかった。
 いや、誰も気づいてはいなかった。

「おー、すまんのぅ。ずいぶん待たせてしまったわい」

 研究所の奥から能天気なオーツドの声が聞こえたのは、それからすぐのことだった。



「げっ、俺は最初は炎タイプにするって決めてたのによぉ」
「文句言うなや、えーとジャイアンくん。それにそいつは最近発見された珍しい種類じゃぞ」
「って言われてもよぉ……」

 足元にいる(足に擦り寄ってくる)ミズゴロウをみて、ジャイアンは少し怪訝そうな顔をしていた。
 ジャイアン、残念。炎タイプのヒノアラシは今しがたしずかちゃんがもらったボールみたいだよ。
 そう思いつつ、僕は台の上で眠たそうにあくびをするフシギダネを見つめた。 
 まさか、ジャイアンがいくら我が侭でもしずかちゃん相手にそれを押し通すことはしない、こう見えて、
 ジャイアンは結構フェミニストだからな。

 ……さて、何で僕たちがポケモンを持っているのかというと、理由は簡単。
 オーツドはさっき奥にポケモンをとりに行っててくれたのだ、初心者用のポケモンたちを。
 やっとポケモンがもらえる。そう思ってさすがの僕も、出木杉も、暗い表情だったしずかちゃんも、
 顔に楽しさや嬉しさ、早い話がワクワク感が漂い、あふれた(ジャイアンは言うまでも無く狂喜乱舞した)。
 目の前に置かれた四つのボール、当然僕たちは「フシギダネ」「ヒトカゲ」「ゼニガメ」そして「ピカチュウ」が入っているものだと
 予想し、それぞれの順番を決めた。
 (モンスターボールの色が赤白じゃなくて青白で、某ポケモン漫画のとは違い中が見えなかった) 

 出木杉は最後にもらうよと言って先を譲った。しずかちゃんもほぼ同様に後でとると言ったので、残りは僕とジャイアンになる。
 ここで意外だったのが、ジャイアンが僕に先を譲ったことだった。
 理由はわからなかったが、先にとれ。とせかすジャイアンには逆らえず、僕は勢いで一番右端にあったボールをとった。



「み、見てもいいですか?」

 この手にポケモンがいる、という感動でうまくろれつが回らなかったが、僕は嬉しそうに煙草をふかすオーツドにたずねると、
 あっさりといいよと言ってくれた。 

「よーし、でてこ……」
「まぁ、待て!」

 ボールを投げようとした腕を、誰かががっちり掴んだ。
 振り向いた先にあったのは、不気味に笑うジャイアンの顔。

「どうせなら、みんなもらった後、いっせいに見てみようぜ」
「そうね。……あとで文句を言わないように、自分で選んだ子を責任持って育てれるようするためにも、そうしましょう」

 と、しずかちゃん。出木杉も言葉には出さないが小さくうなづいている。
 僕はしぶしぶ腕を下げた。

「よーし、次は俺様だぜ!」
「それじゃあ、私はこれで」
「なら、僕がこれだね」

 まさに三者三様に選ぶ。
 僕たちは円になって、向かい合った。

「よし、自分が選んだやつだ。後悔すんなよ!」

 ジャイアンの大声をスイッチに、僕たちはボールを投げた。



 ……で、最初のようになっている。
 ちなみに、出てきたポケモンたちを見て、 真っ先に不満の声を上げたのはジャアンだったりする。
 自分で言ったことを早くも自分からやぶるあたり、さすがジャイアンだ。
 しかし、ポケモンたちがそれぞれゲームで言う「カントーの草」、「ジョウトの炎」、「ホウエンの水」だったことに驚いた。
 まさか、初めに選ぶポケモンも変化球がかけてあるとは、思いも寄らなかった。ただ……

「おっと! ははっ、可愛いものだな~、こいつ」

 ダイゴさん、では無くて大誤算だったのは、出木杉の手持ちがピカチュウじゃなくてイーブイだったこと。
 たしかにピカチュウバージョンではライバルはイーブイをもらっていたけど、まさかそっちで来るとは思いも寄らないだろ? 普通。

「おい出木杉! 何でお前だけイーブイなんだよ!?」 
「さぁ、残り物には福があった、ただそれだけだと思うよ?」

 そう言ってイーブイとのじゃれ合いに戻る出木杉。こんなに嫌味なやつだったっけ? 
 ていうかそのポジションは本来僕じゃん!? 

「たけしさん落ち着いて。とにかくこれで私たちは旅に出れるの、のび太さんを……探す旅に……」

 悲観漂うしずかちゃんの声に、皆がぴたりと動きを止める。そうだった、ここに来た理由を忘れていたよ。
 たしかにいろいろあるけど確かにのび太を探すためだったな、いっけね。

「しずかちゃ「ノビータを探してるじゃと?」」 

 切なげな顔でつぶやくように言ったのは出木杉だったが、その言葉はさえぎられた。
 オーツドがなぜかのび太の名前に反応して、身を乗り出すようにして四人の輪の中に入ったのだ。

 知ってるんですかとしずかちゃんが一際大きな声で言った。本物の期待と喜びが混じったような、やや涙声に聞こえる。
 そんなしずかちゃんに押されたのか、やや後ずさり気味に、しかし、確かにオーツドは口を開いた。

「知っていて当たり前じゃ、ノビータは現トーカン・ショウト両地方の、ダブルチャンピオンじゃ」