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――地獄の炎の部屋

窓の外の空間は薄暗く、今にも雨が降り出しそうであった。
今、ここにはノート警部を含む、事件の関係者が全員集合していた。
「もしかして……分かったのかL?」
ワタリが、Lを見詰めている。
「もちろん、二人を殺害したトリックも……そして犯人もね」
Lの言葉で、皆が戦慄を覚える。
「やっぱり……この中に犯人が居るのか……?」
書こうかが、震えながらLに話しかける。

「……残念ながらね、この中に犯人が居るわ」



「くそっ……なんでこの中に犯人が居るんだ!」
書こうかは、とても悔しそうな顔でしゃがみこむ。
「まず、この事件の起こる原因となったある事件について説明するわ…」
「ある事件…?」
「一年前のキョーコ先輩の失踪事件よ」
"キョーコ"この単語が出てくることによって部員全員が動揺したような表情を見せる。
とくにワタリが……

「な、なんのことだよ……?お、俺は知らねぇぞ!!」
ワタリの目は再び見開き、冷や汗が浮き出てくる。

「とぼけるな!!」

Lの腹の底からの大声で、ワタリだけでは無くその場に居た全員が怯んでしまった。
「もう調べはついてるのよ、ワタリ、ルビー、赤髪……
 あなた達三人がキョーコ先輩の女優生命を絶ったという噂……
 あれが本当だってことをね!」
この言葉を聞き、ワタリは頭を抱え込んだ。
「わざとじゃないんだ……わざとじゃないんだ……うわぁあああああああああああああ」
ワタリの悲鳴、それが狭い空間に響き渡った。



「じゃあ犯人はまさか…キョーコ先輩!?」
「違うわ……犯人は別の人間よ」
「一体、誰なんだ!?」
「落ち着いて……順を追って説明するわ
 まずはルビー殺しのトリックから説明するわよ、これを見てちょうだい」
Lはどこからか袋を取り出す。
その袋は曇っていて、中身を確認することができない。
「中には何が入っているんだい!?」
「いま見せるわよ部長さん……これがルビー殺害の凶器よ!」
Lが持っていた袋を逆さにする、それによって中身が零れ落ちてきた。



「そ、それは……」
「触らないで!!」
Lの大声でドラAAモンは手を退けた。
「それはドライアイス……こんなものでルビーが殺害されたのか?」
「こんなもの……そういう言い方は相応しくないわ
 ドライアイスは二酸化炭素が固体化したものよ
 これで実際に事故が何件か起きているみたいだしね……」
「そもそもそんな物がどこにあったんですか」
「演劇で使ったスモークよ。そのくらい覚えておきなさい、常識よ」
「はい、すいません。でも……どうやって?」
「簡単よ。皆が寝静まった後に、地獄の炎の部屋に居た人間を睡眠薬で眠らせ
 この部屋にドライアイスを設置するだけ
 これだけでドライアイスが溶けていって部屋に二酸化炭素が充満するわ
 睡眠薬は万が一のための保険よ、自動殺人トリック、と言ったところかしら」
「だからワタリ達は今日の騒ぎでも起きなかったのか!」
「そうか、部屋の中央の湿った床は…」

「あそこにドライアイスが置かれていたのよ
 そこで一つ、犯人は致命的なミスを犯したわ」
「致命的なミス?」
「ドライアイスの置かれた位置よ
 鍵の掛かっていて、窓も閉まっていた部屋の中央にドライアイスは置かれていた
 これがなにを意味するか……分かるわよね?」
「密室の部屋の中央に置かれていたドライアイス……なるほど…」
「気づいたみたいね、ノート警部…
 密室の部屋の中央にドライアイスを置くことの出来た人物…それは3人しか居ない
 ルビー、ワタリ、挑戦者の3人
 殺害されたルビー、キョーコ先輩を追いやった張本人のワタリの二人を消去すると……
 残る人物は一人しか居ない……」






「挑戦者……あなたがこの殺人事件の犯人よ…」



【次回予告】
暴かれた罪人の正体――

仮面を取られた罪人は、光を再び闇で覆い尽くそうとする。

散らばった証拠品という光は、剣となり闇を断ち切る。

次回、解決編2に続く



「嘘だろ…?」「でも、副部長の挑戦者ならドライアイスを簡単に……」

「ククク……俺が犯人だと…?笑わせるなよ
 消去法で犯人を編み出しただけじゃねぇーか
 だいたい、なんでルビー一人だけを殺害することができたんだよ?
 ひょっとしたら同じ部屋に居た俺だって危なかったんじゃないのか?」
挑戦者は涼しい顔で反論をする、その顔には一切の焦りが見えない。
「フン…その程度のことトリックでもなんでもない、ただの理科の問題よ
 酸素より重い二酸化炭素はどんどんと下に溜まっていく
 だから、二段ベッドの下のほうで眠っていたルビーだけが死亡したのよ」

「そうか、じゃあもう一つ聞かせてもらうぜ
 ルビーが二段ベッドの下のほうで眠ったのは偶然だ
 偶然に頼って人を殺すほど俺は愚かじゃない」
「確かに……それは偶然に過ぎない」
「偶然なんかじゃない……あれは必然だったのよ」
「なんだとっ!?」
「みんな昨日の昼食の時の事を思い出してみて……」
「えーと……確か昼食の時は僕らが一緒にバナナを食べてたり
 活劇がLのパシリをしてたり、ワタリ達が屋上に飯を食いに……あっ!」
「そう……ルビーは高所恐怖症だったのよ
 高所恐怖症の人間が、進んで上のベッドを使用するはずが無い
 だからこそ、このトリックは使うことができた……
 どう、これであなたの疑問は晴れたかしら?」



「残念ながらまだ矛盾があるぜ……それも大きなな
 この扉の下には隙間がある、部屋を覗けるぐらいにな
 ミュウ、お前も知っているだろ!?」
「ああ、確かに隙間がある……」
ミュウの指差す先の扉には、下の方に5cmほどの隙間があった。
「これだけ大きな隙間があれば、
 お前の言ったドライアイストリックなんて成立しねーよな?どうだL?反論はあるか?」
「当然あるわよ」
「なんだとっ!?」
挑戦者の顔にも微かに焦りが見え始めた。
「これを使ってあなたは扉の隙間を塞いだのよ」
Lはポケットからガムテープの塊を取り出した。

「これはこの部屋のゴミ箱で見つかったわ
 これだけの量のガムテープなら、5cmの隙間なんて簡単に塞げるわ
 テープの粘着面に埃や糸くずなどの、室内でしか見つからないゴミが付着していたしね」
「じゃあ何でそんなものをここの部屋のゴミ箱に捨てたんだ?
 もっと適当な場所があっただろ」
「あなたはこれを外に捨てに行くことができなかった……
 集合時間になる前に挑戦者は起床し、隙間を塞いだガムテープを剥がし取った
 でも部屋を出ることができなかった…マリカ四天王が予定よりも随分と早起きをしてしまったから」
 挑戦者がガムテープを捨てに行こうとしたら、既に4人が起きてしまっていたのよ
 だから仕方なく自分の部屋のゴミ箱に捨てた……」
「グッ……だ、だいたい……」
「そもそも挑戦者…なんでミュウが部屋の隙間を覗いたことを知っているのかしら?
 あの時はまだ寝ていたんじゃなかったの?」
「!?」
挑戦者は、あからさまに動揺した動きを見せた。

「これでどうかしら挑戦者?もう罪を認める気になった?」



「あ、赤髪が殺害された時間には俺は皆と一緒に居たんだぜ
 これが同一犯の仕業になるなら俺は犯人から外れるはずだ!」
「た、確かに……」
赤髪が失踪したと思われる薪拾い大会中は、ほとんど皆と一緒に居た挑戦者。
そこで赤髪を殺害するのは物理的に不可能である。
「じゃあ聞くけど…カレー作り中の最中に赤髪を見た人はこの中で居るかしら?」
「俺は見なかったな……」「僕も……」「俺も見てない…」

………………

「あれ?誰も居ないのかww」
「でも見たって言った奴居たよな?」
「そう、一人だけ見たと言った人間が居た……挑戦者、あなたよ」

《ああ、赤髪ね。赤髪ならとっくに薪を拾いに樹海に行っちゃったよ》

「そうだ、確かに俺らは挑戦者の言葉を聞いて赤髪が居ると判断したんだ!」
「ああ、ギンガの言うとおりだ。僕も自分の目で見たわけじゃない」
「これは簡単な心理トリックよ……何気ない一言…
 それはカレー作りの忙しい最中で、赤髪を居たと錯覚させるのには十分だったってこと」
「そんな簡単な手に引っ掛かるなんて……」
「赤髪は昼食後に屋上で殺害され、ロッカーに押し詰められた。
 かなり拭き取られていたけど、ロッカーから赤髪の血液が検出されたわ」
ノートが写真を見せた。
「その後、赤髪はずっと放置されていたわ……ちょうど12時前までね」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
DPその2が唐突に叫んだ。



「いくら何でも、都合が良すぎなんじゃないか?
 5時間近くも人が失踪したのに、気づかないなんて」
「そう……確かに普通の人間なら
 5時間も失踪したら誰かがおかしいと気づく。しかし、赤髪は例外だったのよ」
「例外……?」

「皆も知っている通り、赤髪は練習をよくサボったせいでモブの役すら与えてもらってない
 そのせいで5時間失踪しても、誰も気づかない…というよりは誰も気に留めないのよ」
「なるほど……サボるのが当たり前だった
 赤髪だからこそ、できたトリックってわけか……」

「そして、12時になった時に挑戦者は屋上に行き
 ロッカーから赤髪の死体を引きずりだして、川へ落とした」
「俺が夜に聞いた音はこの音だったのか……」
携帯獣が頷いた動作をする。
「ここの川は流れがとてもゆるやかで、死体が流れていく心配も無いからね」

「……証拠を出せよ…俺がやったという決定的な証拠をさ!」
「分かったわ、これがあなたにとどめを刺す、最後の証拠よ!」
Lが差し出したもの、それは真紅の靴。
「これは赤髪の靴よ…玄関の下駄箱で見つけたわ」
「それがなんなん……しまっ……」
「気づいたかしら?あなたが言うには赤髪は薪を拾いに行くために樹海に行ったのよね?
 でも、それはおかしいのよ。靴も履かずに樹海に行くはずが無い!
 屋上に居た時のままの格好だったから、外靴までは頭に無かったのね……」
挑戦者は、脱力し、座り込んだ。

「もう一度言うわよ、この殺人事件の犯人は挑戦者……あなたよ!」



【次回予告】
照らされた闇は、憎悪と共に消えていく。

しかし、それは完全ではない――

僅かに残った闇は集結し、再び牙を向く。

次回、完結



「挑戦者、てめぇぇ」
ワタリが挑戦者の元へと駆けてゆく。
そして、鬼のような形相で挑戦者を睨み、胸倉を掴んだ。
「よくも俺の仲間を殺しやがったなぁ!」
「ちょ……きみ!!?」
ノートがワタリを止めようと動いたが、それよりも早く挑戦者が動いた。
「なに勘違いしてるんだ?」
生気の無い顔で、挑戦者は呟く。
「俺の復讐はまだ終わっちゃいないぜ」
この瞬間、挑戦者は狂気を取り戻す。
そして、挑戦者の拳がワタリの頬を直撃した。



「グァアア」
ワタリは数メートル吹っ飛び、転倒した。
「お前ら言ってたよなぁ?キョーコを潰したのは俺らだってさぁ……」
挑戦者は、ポケットの中から小さな何かを取り出す。
それは、光が反射してキラキラと輝いている。
――ナイフだ。
「なんなんだよ、お前……?キョーコのなんだったんだよお前!?」
「弟だよ……俺はキョーコの弟なんだよ
 俺の目から見ても自分の姉は凄いと思ったぜ……
 性格は明るくて、成績優秀、スポーツ万能、皆からの人気者で」
挑戦者の顔は、憎しみによって歪み、ワタリをこの世のものと思わないような視線でみつめている。
「そんな人が突然、失踪するわけ無いだろ?俺はそんなこと分かってた……
 だからお前らに近づいたんだ…噂の真相を確かめるためにな」
「わわわるかった………許してくれよぉ……」

「お前の殺し方も考えてあったんだぜ? 
 手下が次々と死んでいく恐怖に追われて、そして死ぬ
 実行できなくなったけどさ、ここまでバレちゃ仕方ないか……」
挑戦者は、ナイフの刃をワタリに向ける。

「じゃあ死ね」

――挑戦者は鋭い刃物を手に持ち、ワタリ目掛け突進した。



「やめろぉぉぉおおお」

挑戦者が動くのと同時に、ノートも走り出す。
ノートは、挑戦者のナイフを払いのけ、押し倒した。
「………」
この瞬間の出来事を、誰もが圧倒して見ていた。
マリカ四天王も、ワタリも、Lも、そして挑戦者もだ。
挑戦者は必死にもがいたが、ノートの腕力の方が強く、拘束を解くのは不可能だった。
「あと…あと少しで俺の復讐は完了したのに……畜生…畜生ぉぉぉおぉぉおお」
挑戦者はノートを睨みつけながら、再び暴れだす。
「復讐は……なにも生まないんだ……」
ノートは唐突に喋りだした。

「俺が学生時代の頃にもな…殺人事件があったんだ
 その時の犯人が俺の同級生でさ、親友を殺しちまったんだ、勘違いで……
 そいつは今、凄い後悔してるんだ……
 お前も人を殺して何かを得たか?姉さんはこんなことして喜ぶと思ってるのか!?」
ノートは涙を流しながら、挑戦者に語る。
それにつられてか、挑戦者の瞳も湿り始めた。
「俺は……俺は………うわあああああああああああああああああああ」

挑戦者の悲しい叫び声、共感するかのように外では雨が降り始めた。



「挑戦者……」
今、挑戦者は手錠をかけられ、両脇には二人の刑事が付いている。
「最後の聞かせてくれL……いつ頃から俺が犯人だと気づいた?」
「…赤髪の靴を発見した時よ、赤髪のサボリ癖、ルビーの高所恐怖症
 それぞれの特徴を掴んだトリックだと気づいたときに
 ひょっとして犯人は被害者たちと仲がいいんじゃなかって思ってね……」
「そうか……」
その場には、再び沈黙が訪れる。
「さあ、行くぞ」
その沈黙は、脇に居る刑事によって破られる。

「ありがとう」

挑戦者は、最後にそう言いパトカーに乗車した。
「では、失礼します…」
ノートが頭を下げると同時に、パトカーは去って行った――


嫉妬から増幅していった憎悪は、二人の人間の命と代償に沈んでいった。



カタカタカタ………

「……すごい……学生とは思えない演技だ」
ドラーモンが、口をぽかーんと開け驚いている。

「やったね、皆!!」
出木杉未来が叫ぶと同時に、皆が叫び出した。
その中には、赤髪やルビー、挑戦者も居る。

そう、もうお気づきだとは思うが、今までのは全て演劇。
ドラポケ学校演劇部のお芝居だったのだ。

「俺らは演劇の世界でもマリカか……」
「俺ら=マリカのイメージでもついてるんじゃないか?」
「「かもなwwwwwwwwwww」」
マリカ四天王が、笑いながら談話をしている。
「俺の設定酷くね?」
「俺もちょっと設定が……」
ワタリと挑戦者が不満を言う。
「悪い、本当にスマン……お前らだったんだよ、この役を任せられたのは……」
それに対し、赤髪が侘びを入れた。

「皆、お久しぶり」

突如、その場に現れたのはキョーコ。
去年この学校を卒業し、今は有名な劇団の一員として活躍している。
「皆の創作映画を見てみたけど、すごい出来ね。
 これなら、コンクールで優勝できるかもよ」
「キョーコ先輩にそう言われると嬉しいです」
Lがキョーコに対し、礼を言った。
「挑戦者、あなたの演技も凄かったわよ
 本当に私の弟かと思っちゃうくらいに」
「すげぇ恥ずかしかった……」
挑戦者の顔は羞恥心で紅潮している。



「あれ、なんだか皆勢ぞろいみたいだな……」
ノートが奥からやってきた。
「ようノート。今回の映画に出演してくれて本当にありがとう」
ドラーモンが、ノートに頭を下げる。
ノートはドラーモンの昔の教え子でありであり、今回の映画には特別出演だったのだ。
「それにしても、ノート警部の学生時代の思い出話って本当の話なんですか?」
Lがノートに尋ねる。

「こら、L!!」
「別にいいですよよドラーモン先生、あれは本当だよ
 あの時の事件は一番印象に残ってるよ……
 なにせ、同級生が一気に3人も居なくなったからね……」
ノートの顔が一瞬だけ曇る、しかしすぐに直った。

「赤髪、悪いと思っているなら態度で示せ!ということでなんか奢れ」
ワタリと挑戦者が赤髪の肩に手を置く。
「じゃあ私もなにか……」「完結記念に俺も……」
キョーコとノートが、赤髪を笑顔で見る
それに合わせて、どんどんと赤髪の周りに人が集まってくる。
「ちょ、俺は今サイフの中身がアッー」

……ドラポケ学校演劇部。
そのメンバーは全員仲が良く、団結力が強い。


この演劇は、県で大きく評価され
コンクールで一位を取ることができた。