ドラえもん・のび太のポケモンストーリー@wiki

サバイバルゲーム その4

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akakami

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ドラーモンは高速で突き進む。
動きを止め、体を強張らせる新カントーたち。
そして、三人を掠め、ドラーモンはフェンスに激突した。
「「くそ、まだ体がなれていないな」」
ノートの呟きが聞こえてくる。
「ししし新カントー、今のうちに逃げよ!」
ミュウが震えながら、学校西側の倉庫を指す。
「何だミュウ、倉庫になにが」
「いいから来て!ぼぼ僕ら知ってるんだ」
挑戦者が必死で伝えてきた。
新カントーは疑問を感じたが、ドラーモンのことを思い出して頷いた。
「よし、行くぞ!」

ドラーモンがフェンスに突っ込んだ体を揺さぶる。
その唸りが力を増幅させ、筋肉を膨張させた。
粉々に吹き飛ぶフェンス。
ドラーモンの獣のような吼え声が響き渡った。
「「ふふ、さあ行くのだドラーモン先生!」」
ノートが遠くからはやしたてた。



――DP3の実験小屋――
扉の裏にはそう書かれていた。
「僕ら偶然見つけたんだ。
 DP3は毎晩ここで何かの研究をしていたんだよ」
ミュウが倉庫内の電気をつけた。
そこら中に様々な物が散乱している。
ややこしそうな紙、異様な雰囲気を放つ実験器具、おどろおどろしい色の液体――
どれもこれも妖しいものばかりだ。
「こんなとこがあったなんてなぁ」
新カントーはこの倉庫を知らなかった。
というのも、いつもサボるときには南の公孫樹林のところへ行っていたから。
入学した時から教室も東側で、西側には来たことがなかったのだ。
「あった、これだよ」
挑戦者が実験器具の奥から、一つのビンを取り出した。
「一度見たから覚えていたんだ」
挑戦者が持つビンには、カプセルが入っていた。
それは睡眠薬の弾丸と酷似している。
「ま、まさかこれが弾?」
新カントーは目を見開いた。
「そうだよ」
ミュウが頷いた。
「そしてこれを見て」
そういうと、ミュウは一枚の設計図を取り出した。
まず大きなカプセルの絵、それから出る矢印の先に、小さなカプセルが数個。
「これはつまり――」
ミュウが一呼吸入れて話し出す。
「睡眠薬入りの弾が、もともと一つのカプセルだったってことだと思うんだ」



「そうか、そのカプセルをドラーモン作大長編に撃ちこめばいいんだな」
新カントーが聞くと、ミュウは頷いた。
「うん、あのドラーモン作大長編にはもう、普通の弾は効かないと思うからね」
「それに、睡眠薬の威力も上がると思うんだ」
挑戦者がつけ加える。
「多分DP3はゲーム用に睡眠薬入り弾を開発したんだ。
 ゲーム用の睡眠薬は威力が弱まっているはずだよ」
「……ん、まてよ。
 それじゃゲームは元々計画されていたのか?
 だってゲームをするって言い出したのは」
新カントーはミュウを見据えた。
ミュウは多少俯いて答える。
「うん、実はこのゲームね……書こうかに言えって言われたんだ。
 きっと楽しくなるからって」
「でもミュウは悪くないよ!」
挑戦者は首を横に振る。
「俺もその話聞いていて、何も言わなかったんだ。
 俺の方も悪いし、あの時話に加わってきたドラAAモンも悪い」
その時、新カントーは合点がついた。
(ノート先生の計画も、DP3の開発した銃もゲーム用のもの。
 ゲームはもともと計画されていたこと。
 恐らく考えたのはノート先生だろう。
 それからDP3先生と書こうかに話したってとこか……)



紙の山から、大きなカプセルが見つかった。
赤と白の二色からなる、よくみる楕円形のカプセルだ。
「きっとこれが元の形なんだよ」
ミュウが言った。
「でもどうしよう。こんな大きなの撃てないし。
 それに弾と同じなら、刺激を感じただけで爆発してしまう」
「……ミュウ、挑戦者。それなら大丈夫」
新カントーがきっぱりと言う。
「俺がこれから言う話を聞いてくれ」
そして、新カントーが計画を話す。
ミュウと挑戦者の顔が、驚きから焦りへ変わっていく。
「じゃあ新カントーは」
「俺のことは気にするな!」
新カントーが怒鳴った。
「このゲームを最善のラストへもって行くにはこれしかないんだ」
その声は冷静で、頼りがいのある声だった。
ミュウと挑戦者は動揺しながら、頷く。
「わかった。やってみる」

倉庫前――
「おーい、ドラーモン作大長編!!ここだぁ」
挑戦者が大声を出す。
校庭の真ん中にいたドラーモンとノートは振り向いた。
「「なんのつもりだ?挑戦者君?」」
「けけ、そんなことどうだっていいだろ。
 そんなことよりドラーモン作大長編、新カントーはこの中だぁ!!」
ドラーモンがピクッと反応する。



「「お、おい待てドラーモン作だ――くそ!」」
ノートの制止も聞かず、ドラーモンは一気に倉庫へ駆けて来た。
挑戦者は急いで倉庫から離れていく。
ドラーモンは挑戦者に目もくれず、扉へ突っ込んだ。
粉々に吹き飛ぶ扉。
ドラーモンにとって障害となるものなどもう無かったのだ。

挑戦者は倉庫から校舎へと向かう。
「おーい、挑戦者ぁ」
後ろから誰かが呼ぶ。
倉庫の裏口から出てきたその人物は、声を震わせる。
「あれでよかったのかなぁ」
「それしか無かったんだ」
挑戦者が首を横に振る。
「もう俺らに出来ることはただ一つ。
 DP3を呼ぶことだ。
 そうだろう?ミュウ」



倉庫、もといDP3の実験小屋――
「ようこそ、ドラーモン作大長編」
新カントーは来訪者を歓迎した。
ドラーモン作大長編は首を傾げる。
もう言葉は届いていないのだろう。
それでも、新カントーは話を続けた。
「一緒に脱落しようぜ!」
恐らく危険を察知したのだろう、ドラーモンが殴りかかってくる。
その速さは素早く、そして威圧的だ。
だが、新カントーの方が先に、カプセルを蹴った。
光に満たされる実験小屋。
カプセルからの閃光は、隙間から外に漏れ、そして――

爆音が響き渡る。
崩れ飛んだ倉庫の破片が、空高く舞い上げられた。
それに混じって二つの姿。
新カントーとドラーモン作大長編だ。
二人とも、意識は無い。
怒涛の如く降り注ぐ瓦礫と共に、二人は地面に叩きつけられた。



「……まさか同時に眠るとは」
ノートは瓦礫の残骸を掻き分け、新カントーとドラーモンを確認する。
ドラーモンの体は既に元に戻っていた。
「ホッホッホ、ノート先生。
 何をしておられるのです?」
突然声を掛けられ、ノートは振り向いた。
DP3だ。
「ああ、そのDP3先生。
 ただのゲームの結果ですよ。ふふ、こいつらが勝手に暴れて」
「ホッホ、それで私の大事な実験小屋が吹き飛ぶのですか?」
DP3は和やかに話した。
「先程、少しばかり見ていましたよ。
 ドラーモン先生に投与した増強剤は私が『禁薬』として封印したものに似ていましたが」
「……似ているだけです。
 実際は別の科学者に作ってもらって」
「ほう、是非ともお会いしたいですなぁ。
 そんな危険な科学者に。
 ところで右ポケットから出ている鍵は、私の実験室のでは――」
すると、ノートはサッと腰に手を回す。
だが、目当てのものは無く、焦りが生じた。
「ホッホ、狡猾な貴方が鍵をそんなところにしまうはずありません」
DP3は愉快そうに告げた。
「それでも鍵を探したということは、心当たりがあるということ。
 私が禁薬を隠した実験室の扉の鍵を――」

「ま、待ってくださいDP3先生。私は何も取っては」
「ホッホ、私の発言だけでは貴方が持っている鍵がどの部屋のか特定できませんよ。
 それでもそのような反応をしたということは――
 禁薬を封じた実験室の扉の鍵だったということですな」



逃げ出そうとするノートに、DP3が銃弾を浴びせた。
薬が拡散し、ノートを包み込む。
「くそぉぉ、DP3、裏切ったな……」
ノートはそういうと、地に伏した。
その時、放送がかかる。
ゲーム終了を意味する、零時のサイレンが。

「やったよ、終わったんだ!」
ミュウと挑戦者が物陰から現れた。
「これでサバゲーが終わった。
 もうみんなを傷つけるものは無いね!」
ミュウが嬉しそうに話し出す。
そこへDP3が近づいてきた。
「二人とも、一つ話がある。
 このままみんなを起こしていいのかい?」
「どういうことです?」
挑戦者が首を傾げた。
「このままだと、みんなのサバゲーをした記憶が残る。
 なんにもなかったにしろ、みんなの心はかなり荒んでしまった。
 このままだといつか、心を乱す生徒が必ず現れる」
DP3が説明を終える。
「……DP3先生、何とかならないの?」
ミュウが質問すると、DP3はにっこりと笑った。
「なる。ホッホ、みんなを元に戻してやろう。
 心も体もな」



新カントーは目が覚めた。
自分の家のベッドで寝ていた。
陽光がカーテン越しに差し込んでいる。
(……あれ?)
新カントーは首を傾げた。
(俺、どうしてここに……
 いや、俺は今まで何をしていたんだ?
 何かあったような気がするんだが)

その現象は新カントーだけでは無かった。
ほとんどの生徒が同じ気持ち。
全員、昨晩のゲームを忘れているのだ。
正確に言えば、消されたのだが――

「おはよっ!新カントー!」
ミュウが教室で声を掛けてきた。
隣には挑戦者がついている。
「ああ、ミュウと挑戦者。
 あのさ、昨日なんかなかったっけ?」
すると、ミュウと挑戦者は顔を見合わせる。
「ぁ、ああ文化祭があったじゃんか!」
挑戦者がどこか焦った表情で答えた。
(文化祭……そういえばあったなぁ。
 でもそんなに面白くなかったような……)
新カントーは疑問が解決して微笑んだ。



午前零時の時――
ミュウと挑戦者はDP3の薬を脱落者に撃ち込んだ。
記憶を消し去る薬だ。
忘却するのはサバゲーだけにしておいた。
これで、誰もサバゲーを思い出すはずは無い。
傷つけあったことも、憎みあったことも、みんな忘れる。
そうすれば、学校は全て元に戻る。

新カントーは屋上に登った。
そこでは赤髪が不貞寝していた。
新カントーの記憶では、赤髪とは知り合い程度の関係だった。
赤髪側も同じ。
それでも、二人は目を合わせた。
「……よぉ、新カントー。
 またサボりか?」
赤髪が上半身を起こす。
「あぁ、そうだな。
 退屈してるよりはこっちのほうがいい」
新カントーは微笑んでいる。
そのうち携帯獣やルビーが集まってきた。
いつも通り。

(……おかしいなぁ、みんな知らないなんて)
首を傾げる少年が一人。
彼の名前はDPその2.
忘れ去られたサバゲーの優勝者である。
因みに忘却の薬も撃たれそびれたらしい。


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