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「うぅ、新カントー……」
赤髪はまだ意識があった。
眠らされてはいないようだ。
「急に君が来ると連絡があったのでね。
 先に話していた彼は拘束しておいたんだ。
 邪魔されるのは癪なのでね」
ノートはそう言うと新カントーに顔を向ける。
「いいかい、新カントー。
 もし断れば、この場でゲームオーバーになってもらおう」
 そうすればどうなるか……ふふふ。
 当然別の勢力に君は弱者とみなされる。
 君はもうこの学校で我が物顔で歩けなくなるのさ。いいのかい?」
すると、新カントーはキッとノートを睨みつける。
「違うな」
「?何がだね?新カントー」
ノートが嘲り気味に言う。
「始めからそれが狙いだな。
 俺のこの学校での肩身を狭くすること、それが本当の目的なんだろ!」
「ふふふ!なるほど、読み取ったか!」
ノートは見開いた目を新カントーに向ける。
「だが、決してそれがすべてではない。
 いいかね、もちろん私は先に述べたことも願っている。
 いいかい、新カントー。頭が回るならどっちに転んでも自分の得になる道をとるべきなのだよ!」
その言葉で、新カントーは歯噛みする。
その手には拳をつくり、膝を曲げたその時。
何かが新カントーの前に飛び出してきた。



新カントーの前に飛び出した人物。
縛られた体で、荒く息をするが、それでもなお立っている。
「あ、赤髪……」
新カントーは驚いた。
赤髪はそうとうダメージを受けているはず。
とうてい動ける状態では無いはずなのに――
「新カントー……まだ手ぇだすんじゃ……ねぇよ」
途切れ途切れに、赤髪が喋る。
「ふふふ、いったい何のつもりだい?死に損ないの赤髪君」
ノートが嘲るが、赤髪は「くく」と笑ってみせた。
「くくく、お前の思い通りにさせるもんか、ノート先生ぇ!
 新カントー、速く部屋をでろぉ!」
ハッと、新カントーは気づいた。
赤髪は自分を助けようとしている。

奥で、ノートが銃を取り出していた。
「ふふ、せっかく生かしておいたのに馬鹿な奴め!」
新カントーは踵を返し、手を伸ばす。
赤髪の体へ。
「!!?し、新カントー何――」「いくぞ!」
新カントーは赤髪をがっしりと掴み、校長室を駆け出た。
後方の壁で弾丸が破裂する。
ノートの発射したものだ。
「チッ!おい待て君たちぃぃ!!」
ノートが叫ぶが、新カントーは止まらない。
赤髪を連れて階段を駆け上った。



二階、被服室――
「はぁ、はぁあ、これでよし」
新カントーは鋏で、赤髪のロープを切断した。
赤髪は暫し呆然としていた。
「新カントー、お前」
「な~に、いいんだ。これくらいして当然だろ。
 助けてもらったんだからな」
それでも不可解そうな顔をする赤髪に、新カントーは溜め息をつく。
「お前がいなければ俺はノート先生にやられていた。
 ノートの提案に乗るつもりは無いし、逃げ出すのが一番いい方法だった」
「……いいのかよ」
赤髪の言葉に、新カントーは首を傾げる。
「俺を撃たないでいいのかよ!」
じれったそうに、赤髪は叫んだ。
「な、何言ってんだ赤髪?どうしてお前を」
「俺はお前を撃とうとしたんだぞ!
 そんな相手を無罪放免にしちまってそれでいいのかよ!?
 どんだけ甘っちょろいんだてめえは!!あぁ!?」
そう言い終えると、赤髪は一呼吸入れて鋭く新カントーを睨む。
「ほら、早く撃てよ。
 もう覚悟は出来てたんだ。お前が助けなきゃ俺はノート先生にやられていたからな」
しーんと静まり返る被服室。
その沈黙を破ったのは――新カントーの笑い声だった。
「な、何笑ってんだ新カントー!」
赤髪が怒鳴った。
「はは、お前の真剣そうな顔つきに、つい。
 何も難しいことじゃない。こんな状況なんだ。俺たち、もう仲間だろ?」



昇った血が、サーッと引いていく赤髪。
そこへ、新カントーは手を伸ばす。
「な?争う意味はねぇんだ。
 こうなっちまったら、何が何でも優勝してやるんだ。
 ノート先生の思う壺にならねぇように、俺らがこの学校を支配してやるのさ」
しばらく、赤髪は動かなかった。
乱れた髪の向こうで、怪訝そうな目を覗かせている。
やがてゆっくりと、赤髪は手を伸ばしていく。
新カントーの差し伸べた手へと。

赤髪はずっと孤独だった。
小学校も、中学校も、教師に反発してそのせいで、みんなから煙たがられていた。
別に、赤髪にとってはどうでもよかった。
自分は弱くないから。仲間なんかいなくても大丈夫だから。
だからどうでもよかった――つもりだった。
その自信が崩れたのは、ルビーと出会った時だ。
初めて仲間が出来た。
どんなことだろうと、一緒に行動してくれる仲間が。
赤髪はクールに、ルビーを従わせていた。
思えばその顔は――笑っていた。
高校生になって、新カントーや携帯獣や、自分と同じ不良たちにも会って。
その世界を捨てる意味が在っただろうか。
自分が笑っていられる世界を捨てる意味は、どこにも無い。

もう少しで、手と手が触れ合う。
もう少しで握られる。仲間と共に力強く。
その時だった。



「「ヒッヒッヒ~、ゲームを楽しんでいるかね、諸君?」」
新カントーと赤髪はスピーカーを見上げる。
「い、今のは……」
「書こうかだ」
二人は顔を見合わせる。
「「さ~て、残りの人数を紹介しようかぁ~!
  生徒諸君、残りは……いや、これじゃ面白くない。ヒッヒ。
  現在脱落者は、ルビー、ドラAAモン、ワンダー、パパドラ
  炎赤葉緑、チュシコク、にゃーす、活劇、シナリオ、2VS2。
  計10人!ヒッヒ、面白くなってきたねぇ~。
  現在時刻は10時。あと2時間生き残れるかねぇ~ヒッヒ」」
放送は終わった。
「……あと2時間か」
赤髪が窓を覗く。
「あ、赤髪!おい握手は」
しかし赤髪は新カントーを無視して話し出す。
「脱落者は10人。
 確か最初にいた生徒は……27人だっけか?」
「ん、いや。28人だったと思うぞ」
新カントーは少し頭を抱えた。
「誰がいたかは覚えてないけど」
「まあつまり、あと18人ってことか」
赤髪は被服室から見える、校庭のケヤキを見つめた。
ケヤキの西にあるのは体育館。
それを見て、赤髪はふと思いついた。
「なぁ新カントー。
 今体育館に誰かいると思うか?」



北門――通称正門――
ジャイアンは走っていた。
「ハッハッ!くそぉ、まさかあんなに追ってくるとは」
ジャイアンは後ろを振り返る。
書こうかが部下を従えて追ってきていた。
「「ヒッヒッヒ、ジャイアン、あきらめろぉ~」」
拡声器で呼びかけてくる。
「「たった一人じゃ勝てないよぉ~!」」
ジャイアンは舌打ちすると、正門へ走り出す。
「畜生!こんなゲームやってられっか!
 学校出ちまえばこっちのもんだろ!?ナハハハハ!」
高笑いしながらジャイアンは門へと駆ける。
だがその前に、何かが倒れていた。
「?ド、ドラミ?」
ジャイアンの前で気を失って倒れているのは、ドラミだった。
「な、何だ?どうしたんだドラミ!やられたのか」
「ホッホッホ、その通り」
正門の脇の花壇から、DP3が出てきた。
「先生!?どうしてここに」
「走るのは苦手でな。ここで待っておったのじゃ。
 貴様のような、ゲームをリタイアしようとする弱者をなぁ!!」
DP3はジャイアンを撃った。
煙が散布し、ジャイアンは倒れる。
意識を失った――ゲームオーバーだ。
「「DP3先生。だめじゃないですか。連絡くれなきゃぁ~」」
書こうかが拡声器越しに言う。
「「さっきの放送が誤報になってしまうじゃないですかぁ~ヒッヒ!」



校舎、図書室――
三人の男が走ってくる音。
「早く、早くしろビギナー!」
「お、押すなよ扉。!図書室に入るぞ!」
そんな会話が聞こえてきた。
直後、図書室のドアが開かれる。
「……だ、誰か来たよ携帯獣!」
「どうしよう……逃げる?」
ミュウと挑戦者が慌しく質問を浴びせてきた。
「落ち着け二人とも。まだ向こうは気づいていない!
 少し待っていればそのうち――」
「あれ、ミュウと挑戦者じゃん!?」
いきなり声を掛けられ、携帯獣は顔を強張らせる。
図書室のカウンターから顔を覗かせている人物――扉。だ。
「あれ、誰かいるの?扉。?」
そう言って、二人が扉。のそばによってくる。
「や、やぁ二人とも」
ミュウが引きつりながら喋った。
「どうしたのこんなとこで」
「ああ!そうなんだお前ら!
 ちょっと隠れさせて」
ビギナーが堰を切ったように話し出した。
「俺ら今追われているんだよ!助けてく――」
その時、図書室のドアが再び開かれた。
「見つけたぞお前らぁ!ハッハッハ!」
その場の六人は顔を青ざめる。
ドラーモンが図書室の入り口に現れたのだ。



「お、お前らの追われてるのって……」
携帯獣が恐る恐る、ビギナーに話しかける。
ビギナーは小刻みに頷いた。
「ん~、誰かそこにいるのか?
 まあいい。何人いようと俺を相手にして生きられる奴はいないからな!ハッハ!」
大きく笑いながら、ドラーモンは銃を構える。
「まずは三人!」
刹那、携帯獣は直感し、同時に叫ぶ。
「逃げろ!煙が撒かれるぞ!」
カウンターの中にいた三人は飛び出した。
先ほどまでビギナーたちがいたところに煙が撒かれる。
もちろんカウンターも巻き添え。
「うぉおぉぉお!」
何を思ったか、ビギナーが突然ドラーモンに飛び掛った。
流石のドラーモンも動揺を隠せない。
「扉。!俺が抑えているうちに撃て!」
ビギナーは身を犠牲にドラーモンを捕らえたのだ。
「び、ビギナーお前……」
躊躇する扉。に、ビギナーは一喝する。
「早くしろ!チャンスは今だけだ!」
「……わかった。おい、三人は逃げろ!」
言われたとおり、ミュウ、挑戦者、携帯獣はドラーモンの脇を抜け、図書室を駆けて抜けて行った。
「ぬぅう!この糞ガキがぁああ!」
ドラーモンの呻く中、ビギナーは必死に耐えていた。
「ビギナー、ごめんよ!」
扉。が絶叫し、弾丸が発射される。
煙が怒涛のごとく広がった――ドラーモンとビギナーを飲み込んで。



「……煙だ。扉。が撃ったんだ」
ミュウが震えながら、小さく言う。
窓から月光が差し込んでいる。
それにより、廊下の様子はよく確認できた。
「でも、これならドラーモン先生だって――」
挑戦者の言葉は途中で途切れた。
煙から一人の男が歩み出てくる。
煙が薄まり、次第にその影がはっきりと見えてきた。
「バ、バカな……」
携帯獣が絶句する。
煙が完全に晴れた。
立っている人物は二人の男を放り投げる――扉。とビギナーだ。
そう、立っていたのは、ドラーモンその人だった。
「……っハッハッハ!
 驚いてるな?な~に、息止めなら自信があるんだ。
 5分は軽いぜ!ハッハッハ!」
その瞬間、三人は理解した。
自分たちが相手している人物が、とうてい敵わない化け物であることに。
「ぅ、うわあああ!!」
狂ったように、ミュウが銃を乱射する。
ニ発の弾丸がドラーモンにヒットした。
煙はドラーモンの顔に昇り、そして――
「効かぁぁああん!!!!」
ドラーモンは呼気で、煙を吹き飛ばした。
跡形もなく消える煙に、ミュウはただ唖然とする。



「みゅ、ミュウ。それと携帯獣……聞いてくれ」
挑戦者が声色に恐怖をありありと浮かべながら、呼びかけた。
「どうした挑戦者?」
携帯獣が横目で、挑戦者を確認する。
その顔はいやに青ざめて見えた。
何か大きな力に押しつぶされているかのような緊迫感。
「お、俺はとてもじゃないが耐えられねえ。
 こんな、怪物相手に……敵うわけねえよ」
すると、挑戦者は窓へと歩んでいった。
「な、何する気?挑戦者?」
ミュウの言葉にも、挑戦者は振り向かない。
そのまま窓の鍵を開け、開いた。
「お、おい何する気だ!ここは三階――」
「俺はまだやられたくないんだ!じゃあなぁ!!」
そう言い残し、挑戦者は飛び降りた。
「挑戦者あぁ!!」
ミュウが急いで窓に近づこうとする。
だが、そこに弾丸が発射された。
「っ危ない、ミュウ!」
携帯獣はミュウの服をつかみ、引っ張った。
弾丸は窓ガラスに当たり、煙を分散させる。
「くそぉ!」
舌打ちしながら、携帯獣は図書館の向かいの階段を目指す。
しかし、その前にドラーモンが立ち塞がった。
「ハッハッハ!逃げられると思ったか?」
余裕の表情を見せるドラーモン。
携帯獣は冷や汗を掻きながら、睨みを効かせていた。



(くそ、どうすればいい?
 どうすればドラーモンを眠らせられる?どうすれば……)
携帯獣は思考を巡らせた。
ふと、隣でミュウが震えていることに気づいた。
そしてその姿に、携帯獣は不思議な感じがした。
(そういえば……あのときも)

校長室で、二人は立たされていた。
目の前には高校の校長先生、初代が立っている。
「君たちが何をしたか、わかっているのかね?」
初代は辛辣に、二人に話しかけた。
それは5年前の携帯獣と、新カントー。
「君らはこの高校でそうとう暴れているようだが、まだ小学生だろう?
 こんなことして許されると思っているのか!?」
初代は怒鳴りながら、扉を閉めた。
「反省するまで帰さんぞ」
その時、携帯獣は震えていた。
高校の校長に対し、恐怖を抱いていた。
そこにいるのは小学校の甘ったるい校長とは違う、威厳溢れる校長。
逆らってはいけないような雰囲気を感じていた。
だから携帯獣は震えていたのだ。
でも、携帯獣の隣で立たされていた新カントーは違った。
彼は笑っていた。
「な、何がおかし――ぐぼぉ!」
新カントーは初代の口にビー玉を押し込んだ。
「携帯獣、逃げるぞ!」
その時の新カントーは溌剌としていた。



あの時、携帯獣は気づいていた。
新カントーの中にも、尊敬できるところがある。
威厳溢れる様子も、恐怖を与えることも無い。
ただ、自分が信頼おけるリーダーの姿。
自分が恐くて震えていても、威勢良く手を差し伸べてくれる姿。

携帯獣は震えているミュウに、自分を投影した。
(……もしミュウを俺として例えるなら。
 俺は今、新カントーなんだ。
 ミュウを助けなくてはいけない、リーダーなんだ。今の俺は……)
「へ、へへ……」
携帯獣は肩を震わせる。
恐怖ではなく――武者震いだ。
「ミュウ!走れぇ!」
隣で、ミュウがハッとする。
「階段だぁ!」
「ぬう、お前何を」
ドラーモンがミュウを取り押さえようとする。
だが、その口に携帯獣は銃を突き刺した。
「!?」
仰天するドラーモンの脇を、ミュウが駆け抜けていく。
「いくら息止めが出来ようと……」
携帯獣が力強く銃を握る。
自信に満ち溢れた顔で、ドラーモンを見据えて笑う。
「直接口にぶち込まれたら吸うっきゃねえよなぁああああ!!!!」
引き金が引かれ、ドラーモンの口が膨張する。



ドラーモンは倒れざま、銃を撃った。
銃弾は携帯獣にヒットする。
煙が携帯獣を包み込んだ。
「へへ、新カントー……悪いな。
 俺はお前のようには……うまくできねえや。やっぱ……」
そう言うと、携帯獣は意識を失った。
一人のリーダーの最期だった。

「あれ、みんなどうしちゃったのぉ?」
図書室からのっそりと出てきた少年。
ビギナーや扉。と一緒に来ながら、あまり目立たなかった。
影の薄い彼の名はDPその2。
後の優勝者の一人である。



「ヒッヒッヒ、ノート先生どうしましたかぁ~」
書こうかが校長室に入ってくる。
「ふふふ、書こうか聞いてくれ。
 新カントーと赤髪が逆らって逃げたのだよ」
「ヒッヒ、じゃあ作戦は失敗ですかい?」
「失敗?ふふ、バカなことを。
 ちゃんと案は考えてある。しっかりとした裏の支配者の器をね」
ノートはにやりと笑い、書こうかを見つめる。
「本当はこの件に巻き込みたくは無かったんだがね」
「つまり……彼を勝たせることに路線変更したわけですか、ヒッヒッヒ」
書こうかの笑いに、ノートは頷いた。
「ああ、書こうか。連絡はとれるな」
「ヒッヒ、携帯の番号は控えとります」
そういうと、書こうかは携帯を取り出した。
番号を押して、連絡を取る。

携帯の音が響き渡る。
ミュウは急いで電話を取った。
「も、もしもし!?」
そこは一階。
周りには誰もいないように見える。
だが、その闇の中で蠢く者がいた。
「……うん。わかった。行ってみる」
ミュウが電話を切ったその時。
誰かが目の前に飛び出してきた。



「よぉぉお~、ミュウじゃねえか」
「久しぶりだなぁ~ヒャッヒャ」
「元気してたかあ?」
出てきたのは三人。
ミュウはビクッとして叫んだ。
「に、虹色、ヨーダ、コロシアム!」
「ほ~、呼び捨てとはいい気なもんだなあ、ヒャッヒャ!」
ヨーダが身をくねらせて笑い出す。
「なあミュウよぉ~、てめえもゲームにさんかしてるとわなぁあああ」
虹色が息の長い言葉で、ミュウに詰め寄る。
「なあ、俺とお前の仲だろ?こっちこいよぉぉおおお」

ミュウは心の中で葛藤していた。
目の前の三人は中学校時代につるんでいた仲間だ。
ただ、必ずしもミュウにとって良い仲だったわけではない。
ミュウは高校で挑戦者と出会うと、三人とは縁を切ったつもりだった。

「い、いやだ」
ミュウが小さく抵抗する。
「あぁあああん?何だってぁあ!?」
虹色が挑発するが、ミュウは負けじと睨み返す。
「いやだっていってるだろ!
 僕はもうお前らとかかわるのはやめたんだ!
 もっと良い友達が出来たんだからね!」
ミュウの言葉に、その場は静まり返る。
そして――



「ぶぅっはははは!!」
「ヒャヒャヒャ~~、何いってんのお前~~」
「ばあぁああっかじゃねええええのぉ!?」
三人は一斉に笑い出した。
途端にミュウの顔が赤くなる。

ミュウは中学で三人と出会った。
それまでミュウは塞ぎ込みがちの性格で、友達がいなかった。
だから、三人と一緒にいたときはそれなりに嬉しかったのだ。
たとえ小突かれても、自分のことを構ってくれる人が出来たのだから。
自分を仲間と認めてくれる人間が出来たと思ったから。
そう信じていた。

「な、何で笑うんだよぉ……」
ミュウが小さい声で言い返した。
「ヒャヒャヒャ、よ~く聞いてなミュウ。
 お前友達が出来たとか言ってたけどさぁ~ヒャヒャ!
 ど~せまた嘘つかれてるんだろぉ?お前に友達なんて出来るわけねえだろ~が!ヒャヒャッヒャ」
次第に、ミュウの呼吸が荒くなっていった。
(嘘……僕は騙されてるのか……本当に、そうなの……?)
「ミュウ、最近挑戦者とよくつるんでるようだけど」
コロシアムが詰め寄ってきた。
「戻ってきなよ。
 どうせお前じゃ友達なんて作れないぜ。
 一生俺らの下でこきつかわれる運命なんだからな」
コロシアムはわざと耳元で呟き、ミュウの気持ちを扇いだ。



「ヒャヒャヒャ、ずばっと言っちゃってくれるじゃん!コロシアム~」
ヨーダが拍手している。
けど、ミュウの耳には届いていなかった。
(僕が……騙されて……運命?)
コロシアムの言葉が反芻される。
(僕では無理……いや。
 挑戦者が僕を嘲ってる……違う。
 一生こいつらの下でこきつかわれて……そういう運命……いや)
キッと、ミュウは銃を構える。
(違う!)「うわああああああ!!」
ミュウが放った弾丸が、コロシアムを仕留めた。
「ヒャヒャ!?」「ミュウぅ、お前何して――」
続けざまに二発、ヨーダと虹色に当てられる。
煙は二人を包み、意識を奪う。
残ったのはミュウ一人。
「……違う。僕は騙されてなんかいない。
 だって」
ミュウは倒れている三人を見据えた。
「だって……僕は自分で選べるから。
 運命なんて自分で作れるもんね!)
意気揚々と、ミュウはその場を後にする。
だが、すぐに異変に気づいた。
恐る恐る、銃を確認する。
「そ、そんな……」
ミュウは愕然と立ちすくした。
「弾が……無いや。どうしよう」



少し時間を戻し――
赤髪は携帯をしまった。
「どうだって?」
新カントーは赤髪に聞く。
「ああ、わかったって」
二人がいるのは一階。
目指しているのは体育館。

そう、ゲームが始まったのは体育館だ。
大概のゲーム参加者は学校の敷地内で争っているはず。
だが、体育館はどうだろう。
わざわざ来た道を逆戻りしていく奴がいるだろうか。
恐らく、そう多くは無いはずだ。
赤髪はそう推測し、体育館へと向かっていた。

渡り廊下の前の扉――
「?誰か向こうにいるぞ?」
新カントーが目を凝らす。
ガラス張りの扉の向こうで、誰かが倒れていた。
「あれは……ダイパ未来!?」
二人は扉越しに確認した。
ダイパ未来はほぼうつ伏せに倒れていた。
それでも、腰についているチェーンで判別できる。
まぎれもなくダイパ未来だ。
腰のチェーンは、ダイパ未来のお気に入りだったものだ。



「……眠っているのか、ダイパ未来は」
赤髪は呟く。
「やられたのか?ちょっと見てくる」
新カントーは扉を開けた。
「!!待て、新カントー!」
赤髪がハッとして叫ぶ。
だが、すでに新カントーは扉を開けていた。
不思議そうな顔をする新カントー。
と、そのすぐそばに、誰かが降りてきた。
「っな!」
新カントーは降りてきた人物に気づく。
その人物は銃口を新カントーに向けた。
「新カントー!」
「動くな!」
駆け出そうとする赤髪を、その人物は制する。
「っおい、お前……」
新カントーは人物の正体に気づいた。
月明かりで、腰のチェーンが輝いている。
「出木杉未来じゃないか」



出木杉未来は新カントーと赤髪を交互に睨みつけた。
「二人とも……生き残っていたのか」
そう呟くと、出木杉未来は銃をわずかに降ろす。
しかし射程圏内には新カントーをおさめたままだ。
「出木杉未来、いったい何があったんだよ」
新カントーはおもむろに質問する。
「お前、ダイパ未来と仲が良かったじゃないか!
 どうして撃ったんだ」
「……あいつが」
出木杉未来はダイパ未来を顎で指し、顔を歪ませる。
「俺を襲ってきたのさ。
 だから倒してやった。俺の手でな!
 そうさ、あいつはもう俺の友達でもなんでもねえ。
 ただの争い相手だ。そしてお前らも」
出木杉未来は銃口を持ち上げ、再び新カントーに向ける。
「ま、待て出木杉未来!」
新カントーは必死で打開策を練った。
やがて、その目線が出木杉未来のチェーンに向けられる。

銀色に輝くチェーンの先には欠けた星がついている。
それはダイパ未来についていたチェーンと似ていた。
新カントーは思い出した。
「出木杉未来、俺らはお前を襲わない!
 お前もそうだろ?少なくともあのときのお前は」
その言葉で、出木杉未来は息を呑む。



高校生になりたての頃だ。
ダイパ未来はよく同級生にいじられていた。
毎日、ダイパ未来のそばでは笑いが絶えなかった。
ダイパ未来も言い返さず、ただやられるだけだった。
クラスのみんな、誰も反論しなかった。
ただ一人を除いて。
それが出木杉未来だった。
始めはダイパ未来も困った様子でいた。
でも、出木杉未来はみんなに訴えかけた。
もうダイパ未来をいじるのはよそう――と。
それから、ダイパ未来は出木杉未来と仲良くなったのだ。
たとえ周りが違っても、自分を信じて善行しようとする。
それがその頃の出木杉未来だった。
もちろん、この事は知れ渡り、新カントーや赤髪の元へも届いていた。
彼らも面白がって出木杉未来をからかってはみていたが、鼻を明かされた。
出木杉未来の誠実さは本物だったからだ。

「お前はずっと、良い事してきたじゃねえか」
新カントーは銃口に怯まず、出木杉未来を見つめる。
「俺らも、みんなも知っていることだ。
 お前がむちゃくちゃ良い奴だって、みんな知ってる。
 裏切られたからってなんだよ。一度くらい誰だってあるぜ!
 だから、ダイパ未来のことも許してやれよ」
すると、出木杉未来は目を見開く。
新カントーはにこりと笑い、手を差し伸べた。
「俺らは襲わないから」



新カントーの手と、出木杉未来の手が触れ合う――直前。
出木杉未来はフッと見てしまった。
倒れているダイパ未来の姿を。
「ぅ……うぅぅ!!」
出木杉未来は頭を抱える。
「お、おい出木杉未――」「俺は無理だ……」
出木杉未来は唸った。
「俺は、ダイパ未来を撃っちまった。
 もう償えねえんだ!やっちまったことはぁ!!」
そう叫ぶと、銃を構える。
まっすぐ新カントーを捕らえ、そして。

爆煙が出木杉未来の顔を一瞬にして覆う。
新カントーは弾が放たれた方向を見た。
「赤髪!お前何してんだ!」
新カントーの怒鳴り声に、赤髪は顔をしかめる。
「何言ってんだ新カントー!
 もう少しでお前、やられるとこだったんだぞ!」
煙が晴れ、出木杉未来の寝顔が現れる。
それを見てから、新カントーは呟いた。
「……まだわかんなかっただろ」
「何?」
「まだ俺は撃たれていなかっただろ!
 まだ……まだ出木杉未来が俺を撃つとはかぎらな」
その時、赤髪が新カントーの胸倉を掴んだ。
「てめえ、まだそんなこと言ってるのかよ!」



「いいか、お前は銃を向けられてたんだ!
 もう狙われていたんだ。情けを掛ける必要なんてどこにもねえだろうが!」
それでも、新カントーは顔を変えず、赤髪の腕を取り払った。
「赤髪……お前はそれでいいのかよ。
 自分に敵対する恐れがあれば、全員倒すのかよ!」
新カントーは真剣な顔つきで赤髪を睨みつけた。
赤髪も睨み返していたが、やがて目線を逸らす。
「新カントー、やっぱてめえとは気があわねえようだな」
「ああ、俺も丁度そう思ったとこだ!」
新カントーは一声怒鳴り、体育館へと向かっていった。
赤髪は舌打ちし、新カントーの後を追う。



校長室――
「ノート先生。これでいいんですね」
少年が差し出したのは、二人の眠った少年。
ギンガとアクアマリンだ。
「あぁ、その通りだ。
 よくやってくれた。ワタリ、我が息子よ」
すると、ワタリはにっこりと笑い、つけくわえる。
「残りは体育館きっとにいますよ。
 だって校舎に隠れられる場所は、もう無いんですから。
 全部ゾンビたちが見張っちゃってるもの」
「そうか、わかった。書こうかに連絡しよう」
ノートはすっくと立ち上がる。
「最後の狩りと行こうか。
 私の面汚しを狩りつくそう」

ミュウは校長室前から駆け抜けていった。
「大変だ……早く新カントーたちに伝えないと。
 確か体育館に行くって言ってたぞ……」
その時、後ろで物音がする。
校長室の扉があけられたのだ。
ビクッとして、ミュウは職員室の中へ入る。
「……ぇ」



体育館――
明かりは消えている。
暗い館内に、二人が入ってきた。
新カントーと赤髪だ。
「……どうやら誰もいないようだな」
赤髪がホッとした。
だが、新カントーからの返事は無い。
「……っチ、まだきれてんのかよ、新カントー!」
赤髪は悪態をついて、隠れ場所を探す。
新カントーも同じく、体育館内を巡った。

時刻は11時――

「ヒッヒッヒ、みんなそろったね~」
書こうかは校庭で生徒を整列させる。
全員、脱落者だ。
あの煙を吸ったらしく、顔に生気は無い。
ゾンビの一団と言ったところか。
「さぁて、行くぞ!ヒッヒ」
書こうかは懐中電灯で体育館の入り口を照らす。
脱落者たちはぞろぞろと、体育館へ向かっていった。
そのゆっくりとした書こうかは、顔を歪ませる。
「先発隊で十分だろう、残ってるのはほんの少し、ヒッヒッヒ!」

ドラミ、ジャイアン、ビギナー、扉。、チュシコク、パパドラ、活劇、にゃーす、炎赤葉緑
シナリオ、2VS2、ワンダー、虹色、ヨーダ、コロシアム、ダイパ未来、出木杉未来――以上17名。
書こうかを指導者とし、体育館へと攻撃を開始する。