ドラえもん・のび太のポケモンストーリー@wiki

ギンガ その6

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akakami

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カンナギタウンに向かうために、俺はズイタウンを経由して、210番道路へとやってきた。
この道路は背の高い草が生い茂っていたり
たくさんの木々が聳え立って居たりと、暗い感じの道路だ。

さらに仮面を装着しているせいで、余計に視界は暗い。
脱いでしまいたいところだが、もう装着してしまっているし
脱いだところを他人に見られたら、元も子もない。

さらに歩き、霧が立ち込めるところまで辿り着いた。

「……ンガ団と戦……けどよ……」
「さす…はジャイ…ン! 凄…よ」
「怖……な…ったの?」

うまく聞き取れないが、どこかで聞いたことあるような声だ。

『全然っ怖くなんか無かったぜ! また来たらボッコボコにしてやんよ』

この声はジャイアンの声だ。そうなると周辺に居るのはのび太と……スネオ。
俺は少し前の日の出来事を思い出す。
あの日、ポケモン達と頑張って特訓し、手に入れたバッジを、笑いながら奪われた……
あの時のことを思い出し、あいつに対する憎悪が湧き上がってくる。
向こうは俺の姿が見えていない。このまま攻撃してしまおうか…?
いや…駄目だ。今は任務中、いかなる場合においてもこちらを優先せねばならない。
ここは気づかれないように立ち去るのが―――

その時、俺のリュックが振動し、中からロトムが出てきた。
そして、ロトムは一筋の電撃をスネオ目掛けて射出した。



電撃波は辛うじてスネオには命中しなく、足元を僅かに掠めただけだった。
だがこの攻撃のせいで、向こうがこっちの存在に気づいてしまった。

「だ、誰だぁ!? 僕を狙う奴は!」
「くそぉ……これもギンガ団の仕業か?」

「な、なんてことをしてくれたんだ、ロトム!」
ロトムの顔を見ると、『憤怒』という感情をそのまま表したような表情をしている。
そういえばバッジを奪われたときに、スネオに散々馬鹿にされてたな。
ここは仕方が無いか……

「俺たちも応戦しよう、行け! ゴーリキー」
「行け! ヌケニン」「えぇ~と……お願い、アゲハント」

……この天候を利用して、三人から逃げるしか無いな。
「銀色の風!」「空手チョップ!」「シザークロス!」
三匹のポケモンが、それぞれ得意な技を使用する。
どの技もロトムには効果は少ない。だが保険をかけておくか……



「シザークロスを連発しろ!」「こっちも空手チョップ連発だ!」
ヌケニンとゴーリキーはロトムを捕らえ、一斉に攻撃を繰り出す。
「なんてしぶといポケモンなんだ…のび太も加勢しろ!」
「わ、分かったよ。メガドレインだ」
アゲハントが緑色の球体を発射し、ロトムはその球体の囚われる。
そして、そのままアゲハントに体力を吸収された。

アゲハントの攻撃が終わった直後、唐突にロトムは消滅してしまった。
「突然居なくなったけど…逃げられたのか?」
「いや…あれは逃げたというよりは、消滅したって感じだと思うよ」
「もしかして…死んだのか?」
「じゃあトレーナーはどこに行ったんだ……?」
三人の少年が呆然と立ち尽くす中、霧はさらに濃くなっていった。



―――ククク、今も俺の罠に引っ掛かってるのかな。
俺の隣には、ロトムもちゃんと居る。一緒にあそこから逃げてきたのだ。
俺があの時にかけた保険というのは『身代わり』
ロトムの身代わりをあの場所に放置しておけば、勝手に間違えて、あの場所に留まってくれるだろう。
幸い、ゴーストタイプに対して虫タイプの技は効果いまひとつ、格闘タイプに至っては効果が無い。
身代わりを壊すのにも、それなりの時間を必要とするだろう。

今のうちにさっさと……?
「ケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケ」
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああ」

俺の目の前に現れ、俺を脅かしてくるムウマージ。
なんでこんなところにムウマージが……
「あそこだ、テッカニン!」
鋭い羽音を立て、高速のスピードでテッカニンが迫ってくる。
そのまま俺目掛けて、爪を振り下ろしてきた。



「で、電撃波だ!」
弱弱しい声でロトムに指示をしたが、ロトムは的確にテッカニンを射抜く。
電撃波に撃たれ、テッカニンは戦闘不能となった。

まずい……今の悲鳴で俺の居場所が確実に突き止められた。
こんなにすぐに追いつかれるなんて……
「うぉぉぉお! 行けっ、ゴーリキー!」
荒い足音を立て、突進してくるゴーリキー。
「ヌケニン、テッカニンの敵を取るんだ!」
さらにゆらゆらと空中を浮遊しながら、迫ってくるヌケニン。
周りには、計三体のポケモンと、三人のトレーナーが居る。
幼少期に見ていた戦隊物の悪役になった気分だ。

「姿はよく見えないが、そこに居るんだな? ギンガ団…」
「俺たちでボッコボコにしてやるぜ!」

……ここまでか。

「なにをやっているんだい? 君達」



突然背後に現れたのは、出木杉。
「おぉ……ちょうどいいところに来たな。今から一緒にギンガ団を懲らしめてやらないか?」
「ここにギンガだんが居るのかい!? なら僕も参加するよ」
まずい…三対一ですらきついのに、出木杉が加わった四対一など勝利できる訳が無い。

「行け、ムクホーク! とりあえずこの霧を吹き飛ばすんだ!」
鋭い目を持ったその鳥ポケモンは、高らかに声を上げると、
その大きな翼を羽ばたかせ、霧払いを始めた。
こうなったら……一か八かだ!

霧もほとんど晴れ、周囲に居た四人の姿が視界に入ってくる。
「ついに姿を現したなギンガ団…その仮面を剥ぎ取ってやる!」
ジャイアンが俺目掛けて突進してくる。今だ。
『怪しい光で、周囲を全て包み込め!』
俺の指示で、いつもより数段強力な怪しい光を繰り出す。
その光に俺を含めた五人は包み込まれた。
「しまった、目潰しか! グ……くそっ」
「目がぁああああああぁあああ、目がぁああああああああああああああ」
目を瞑っているから見えないが、四人全員の悲鳴が聞こえるからには
おそらく、全員にこの光の効力はあったのだろう。無論ポケモンにも。



やがて、怪しい光は終わり、目を開ける。
すると虚ろな目をしたポケモン達と、同じような表情をしたトレーナー四人の姿が見える。
もう追撃する必要は無いな。さっさとこの場を立ち去ろう。
四人に背を向け、そのまま前進しようとする。
しかし、俺の右足を持ち、進行を邪魔する者が居た。

「待て……ギンガ団」
そいつはのび太。目をやられながらも、俺の進行を邪魔しようとしているのだ。
『はなせ!』
右足を上げ、のび太の手を振り落とす。
すると、そのままのび太は気絶してしまった。

再び四人を背に向け、そのままカンナギタウンへと歩いていった。


ナナシ
ルカリオLv42、クロバットLv40、ロトムLv38、ラグラージLv41
のび太
アゲハントLv37 残りの手持ち不明
スネオ
テッカニンLv34 ヌケニンLv34 残りの手持ち不明
ジャイアン
ゴーリキーLv40 残りの手持ち不明
出木杉
ムクホークLv41 残りの手持ち不明



その後、俺はカンナギタウンへと到着した。
カンナギタウンは、ハクタイシティと似たような雰囲気を持ち
歴史の重みを感じる町である。

ポケモンセンターでポケモンを回復させる。
そして、その裏で再び変装をし、遺跡へと向かった。

遺跡の入り口には二体の神話に出てきそうなポケモンが描かれている。
中は見えない、仮面のせいで視界が悪い。
だが今から入ればいいことだ、俺は遺跡へと足を踏み入れようとした。

『待ちなさい!』

声のした方向を振り向く。
そこに居たのは黒いコートに身を包み、金髪かつ長髪の女性だった。
「なんのようだ?」
「その遺跡は一般人立ち入り禁止よ」
「じゃあどうすれば入れるんだ?」
「私のお婆ちゃんの許可が要るわ、でもギンガ団であるあなたには許可はでないわね」
『そうか、なら力ずくで入らせてもらおうか!』
俺はモンスターボールを投げた。



「ミロカロス、ハイドロポンプ!」
ミロカロスのハイドロポンプで、俺の最後のポケモン、ルカリオは瀕死になった。
俺は相手のポケモンを、一体も倒すことなく全滅してしまった。
「今のあなたじゃ私に勝つことなんてできないわ」
「くそっ……」
倒れているルカリオをボールに戻す。
悔しい話だが、この人に今の俺が勝つのは不可能だ。
「何者だお前は……?」
「私はシロナよ、今日のところは見逃してあげるからさっさとここから立ち去りなさい!」
シロナ……現シンオウリーグチャンピオン、シロナのことか!?
そ、そんな相手に敵うわけがない……
敵が情けを掛けてくれている内に立ち去るしかない。

俺は重い足を上げ、カンナギタウンの出口へと進んでいった。



今、俺は変装を解き、霧の深い道路の岩陰に身を隠している。
一度は退散したものの、俺には任務失敗という現実ができてしまった。
いつかはギンガ団の総裁となる俺にとって、任務失敗など論外。
なんとしても遺跡の中に入って、中を調査しなければならない。
しかし、あそこを見張っているシロナを倒すことは不可能。
どうすればいいんだ……

「なにやってるんだい、ナナシ君?」

声のする方を向くと出木杉が居た。
「なんの用だ、出木杉?」
平然を保っているつもりだが、心臓がバクバク鳴っている。
今、俺を何一つギンガ団だと認識させる物は無いはずなのに……
「ちょうど良かった、今から一緒にカンナギタウンの遺跡を見に行かないかい?」
……こいつを利用すれば、シロナに疑われることも無くあの遺跡を覗けるのではないだろうか?
「ああ、別にかまわん」
立ち上がり、出木杉と一緒に再びカンナギタウンに戻ることにした。



「お使いごくろうさま、出木杉君」
出木杉は何かの入った袋をシロナに手渡した。
「じゃあシロナさん、遺跡を見せていただけますか?」
「ええ、約束だものね」
そうか、それでさっき出木杉に会ったのか。
おそらく、シロナは出木杉にお使いに行って欲しいと頼んだ。
出木杉は交換条件に、遺跡を見物させて欲しいといったのだろう。

「そっちの子は出木杉君のお友達?」
俺のことだ、シロナに上から見落とされる。
ほんの一時間前に俺のポケモンを全滅させ、この町から追い出した人間……
今は変装はしておらず、俺をギンガ団だと結びつけるものはないが
もしも正体を見破られたら……その恐怖が俺の頭を駆け巡って行く。
「ええ、僕と一緒に旅立った仲間の一人です。
 遺跡を見物したいと言っていたので、僕と一緒に見せてはもらせませんか?」
「出木杉君がそういうなら私はかまわないわ、あなたの名前は何?私はシロナよ」
俺は簡単な自己紹介をした、正体を見破られまいと神経をすり減らしながら。

「お喋りもそろそろ終わりにしましょうか、じゃあ遺跡の中を案内するわね」
シロナはそう言うと、暗い遺跡の中に足を踏み入れて入った。



暗い遺跡の中を懐中電灯で照らし、コツコツと足音を立てながらシロナは進む。
その後ろを俺と出木杉が歩いていく。
「さあこれが遺跡の壁画よ、あんまり人に見せたりはしないのだけれど特別よ」
持っていた懐中電灯で、壁画が照らされた。

壁画は正三角形が基礎となっており
それぞれの角に、妖精のようなポケモンが描かれていて
その正三角形の内部には、二つの球体……
そしてその中心には……用途不明の道具が描かれていた。

「これが大昔から伝えられている壁画よ」
「三角形の角に居るポケモンはなんですか?」
「アグノム、ユクシー、エムリット……
 過去にディアルガとパルキアを、コントロールしたと言われているポケモンよ」
ディアルガとパルキア……遠く昔から記憶の片隅に置かれていた。
この二体こそがギンガ団の目的とするポケモンだ。
おそらく、父さんはこの二体の入手方法を、探って欲しかったのだろう。
「この三体はどこにいるんですか?」
「それは教えられないわ、ごめんなさい」
さすがにそう簡単には教えてもらうことはできないか……
下手に探りを入れると感づかれるかもしれない、ここは引いておこう。



「貴重な物を見せていただき、ありがとうございました」
出木杉が子供とは思えないほど丁寧な挨拶をする、俺も見習いたい。
「いいのよ、お使いに行ってくれたお礼だから」
俺も簡単なお礼を言った。
「そういえばさっきギンガ団がこの近くに現れたから、気をつけてね」
「あの仮面をつけた奴ですか?」
「あなたも会ったのね……」
仮面をつけたギンガ団……間違いなく俺のことだ。
再び冷や汗が俺の額を走る、手が震えている。

『あっ! 今日は私の家に泊まってったらどう?それなら絶対に心配いらないわ』
「はい、僕はそうします。ナナシ君はどうするんだい?」
普通だったらここで泊まると言っていただろう。
しかし、俺はギンガ団……泊まっていったら確実に正体を見破られてしまう。
「お、俺はまだ行きたいところがあるんだ、じゃあな」
俺はカンナギタウンの出口目掛けて走っていった。



――ギンガハクタイビル内部

テンガン山を経由して、ここに訪問した。
ここならば本部であるトバリと連絡が取れる。
俺は電気をつけて、パソコンの前に座った。

「私だ……カンナギの遺跡について調査は完了したか?」
「成功した、これから写真を送る」
ポケッチをパソコンにセットし、画像をパソコンにコピーする。
そして、そのままギンガ団の本部に画像を送信した。
「ほぅ……これはなかなか興味深い、ごくろうだった」
一回失敗はしたものの、任務は成功した。

「……ところで、カンナギでシロナという女に会っただろ?」
……なぜだ、なぜそれを知っている。
『答えろ』
あの時の同じ感覚がする。それは今日で二回目だった。
その威圧感に押し負け、俺は今日の出来事を全て話した。

「そうか……まぁとにかく今日はそのビルで寝ろ、食料なら二階に置いてある」
「ありがとう、そろそろ接続を切るよ」
俺は、パソコンの電源を切った。



二階にあったチョコドーナツを食べ、俺は寝る事にした。
ベッドは純白のシーツに包まれており、毛布も真っ白である。
毛布を体にかけ、体を横にした。
天上をみつめていると、昼間に言われたことを思い出した。

《今のあなたじゃ私に勝つことなんてできないわ》

「くそっ……」
勝つことができない……それはレベルが足りないという意味だろうか?
それとも、俺のトレーナーとしての力量が足りないのか。
……どちらにしても、まだ俺の経験が足りない。
いつかは……勝てるだろうか?

この時に、ふとヒロトのピィのことを思い出した。

ギンガ団がポケモンを殺す。
その事実は耳に入れてはいたものの、そこまで気には留めて居なかった。
だが、その被害者を見るのは初めてだった。
俺は、他人のポケモンを殺すなんて行為はできない……
一体……俺は本当にギンガ団に次期総裁などになっていいのだろうか?

そんなことを考えているうちに、俺は夢の世界へと落ちていった。

ナナシ
ルカリオLv44、クロバットLv42、ロトムLv40、ラグラージLv43



朝……日当たりが悪いせいか俺は目覚めるのが遅くなってしまった。
パンにジャムを塗り、口に入れる。
その時に、ふとジャムの瓶を見てみたら
『ギンガジャム』と書いてあった。
ギンガ団は食品会社もやっているのだろうか?

色々と身支度をして、俺はギンガ団のアジトを出た。

外は懐かしい光景――
数週間前に訪れたばかりだが、非常に懐かしい。
ナタネにまた会いに行こうかと思ったが
忙しそうだし、会うのはやめることにした。

206番道路を通る。
ここででジャイアン、スネオ、俺の三人で探検隊なんてやったっけな……
スネオ……しばらくは会っていないが、次に会った時は――
拳を強く握り締めた。

クロガネシティに着いた後に、クロガネゲートを潜った。
ここではズバットを捕まえたな……俺が初めて自分で捕まえたポケモンだ。
"バチンッ"
またしても、ズバットが俺に体当たりしてきた。
もう慣れてしまったがな……

コトブキシティに着いた。
ドミノのように並んだ高層ビルが目に着く。
俺の目的地はミオシティ……もうすぐだ。


ラグラージに乗って、ミオシティまで来た。
その途中、気持ちわr……特徴的な感触がした。

ミオシティは船の町……といっても過言では無い様な町だった。
町の真ん中は海と通じており、常に船が三着ほど停まっている。
町の感想を言うのもここまでだな……
毎回のこと、俺が一番に訪れたいのはポケモンジム。
しばらく訪れていなかったせいか、のんびりとしそうになった。
なるべく急いで進みたいからな……

名残惜しい気もしたものの、俺の足はジムへと進んでいた。



ジム内は、何かの特訓場のような雰囲気……というよりも特訓場そのものだった。
「私に挑戦しにきたのかね?」
マントを羽織った中年の男性が、俺に話しかけてきた。おそらくここのジムリーダーだろう。
その質問に首を縦に振って答える。

「そうか、まず始めに自己紹介と行こう。
 私の名前はトウガン、クロガネジムのヒョウタの父親だ」
ヒョウタ――俺が初めて戦ったジムリーダーだ。
「その様子だと、もうクロガネジムのバッジを手に入れたようだな
 全く……今度また稽古でもつけてやろうか、最近は負け続きのようだしな」
トウガンは天上を見上げて、ぶつくさと愚痴を言う。

「ここのジムはどういう形式で戦うんですか?」
「あぁ……ちょうどいい、ちょっと私の実験に付き合ってくれないかね?」
実験?なんだろうかそれは……
「今回の君との対戦はポケモンバトルでは無い
 簡単なゲームみたいなものだ、当然私に勝利すればジムバッジは贈呈する」
どんな方法であれ、ジムバッジを入手できればそれでいい。
俺はトウガンの実験に付き合うことにした。



「まず一回戦、どちらがたくさんの動くフリスビーを破壊することができたか
 使用ポケモンは一体だ、私はこのポケモンで行く」
トウガンの投げたモンスターボールから、巨大な鎧の様なポケモン……
クロガネの博物館で見た、アーマルドが出てきた。

俺はルカリオで参戦することにした。

「では行くぞ……」

ピィィィ――――

ホイッスルの合図と共に、機械からフリスビーが飛んできた。
「ルカリオ、波動弾だ!」
俺がルカリオをこの競技に選んだ理由……
それは『波動弾』があるからだ。
波動弾は必中技であり、この競技にはもってこい。
この勝負……貰った!

波動弾は的確にフリスビーを捕らえ、粉々にしていく。
「なるほど……必中技ならどんなに早く動いていても関係ないからな
 だが、まだ甘い。ロックブラストだ、アーマルド!」
アーマルドがたくさんの石を連射する。
「くっ……そういうことか……」
例え命中率が低くかろうと、一発の威力が低かろうと
この競技は脆いフリスビーを破壊すればいい。

ロックブラストは半分以上外れたものの、波動弾より多くのフリスビーを破壊していた。



この勝負の結果は、こちら側が二十三個、相手が三十六個で
完全にトウガンの勝利だった。
「くそっ……」
「ハハハ、まだ慌てることは無い。勝負は二回戦、三回戦とあるからな」
二回戦、三回戦……次があったとしても既に敗北は許されない状態だ。
気を引き締めて次の競技に望まなければ。

「次の競技は陸上だ、当然ただ走るだけじゃないぞ」
トウガンが指を鳴らす。
すると、突然強風がジム内を襲った。
「こ、これは……」
50mほどの長い道の奥に、巨大な扇風機が設置されていた。

「この強風の中、先にゴールしたほうが勝ちだ
 ついでに、一度競技に参加したポケモンは参加することができないぞ」
単純なルール、しかしそれはとても難関のように思える。
既に使用したポケモンは競技に出せない。
なら残りは、クロバット、ラグラージ、ロトム。
すぐに吹き飛ばされてしまいそうなロトムは却下。
すると、残りはクロバットかラグラージ。
……ここは元から素早さの高いクロバットに任せるか。

俺は、クロバットのモンスターボールを宙に投げた。



「ほぉ……クロバットか、なら私はこいつで行く!」
クロツグの投げたボールからは、トリデプスが出てきた。
こちらは元からの素早さに頼る、相手は下の素早さは低いが確実性を重視し一歩ずつ進むタイプ。
正反対の戦法だが、どちらが勝利するか……
勝つのは……俺だ。

ピィィィ―――

「行けぇ! クロバット」
クロバットは強く羽ばたき、前へと出た。
しかし、思ったより前へと進めない。
前へ進んでも、強風で吹き飛ばされ後ろへ戻ってしまうのだ。
トリデプスはゆっくりだが、確実に一歩一歩前進している。
このままでは、また敗北してしまう。

「ここでお終いかね? どうやら期待外れだったようだな」
……こんなところで敗北してしまったら、俺はギンガ団次期党首になどなれない。
クロバット……お前に大きな負担が掛かるが我慢してくれ……

『ブレイブバードだぁ!』

クロバットは羽を折りたたみ、強風を切裂きながら進む。
「なるほど……これなら強風など問題無く進める。だがいつまで体力が持つかな?」
『最後まで突き進めぇ!』「む、無理だ、クロバットへの負担が半端無いぞ!」
そんなこと分かっている……だがクロバットならやってくれる。俺は信じている!

ピィィィ―――――

再びホイッスルがジム内に響き渡る。
そのホイッスルはクロバットがゴールしたことを表していた。


現在の状況
一回戦、×ルカリオvs○アーマルド
二回戦 ○クロバットvs×トリデプス



「大丈夫か、クロバット?」
クロバットの息は荒く、目も閉じかけている。
「ありがとう、ゆっくり休んでいてくれ……」
クロバットは赤い光に包まれ、モンスターボールの中へと帰っていった。

「これで一対一、次の競技で勝敗が決するわけだ
 最後の競技に私は参加しない。ナナシ……お前とポケモン一体だけが参加するのだ」
どんなルールだ?
「この鋼の城を二十分以内に登りきることが出来たら、マインバッジを進呈しよう」
鋼の城……競技中からずっと俺の目前に聳え立っていた。
これを二十分以内に上りきる。それは難しいかもしれない。
だが、あそこで死力を尽くしてくれたクロバットのためにも俺は上りきらねばいけないのだ。

「準備はいいか?」
「大丈夫だよな? ロトム」
ロトムはニヤリと笑う。問題は無いようだ。

「なら開始するぞ、よーいドン!」

『行くぞ、ロトム!』



乾いた足音が響く中、俺とロトムは鋼の城を進んでいる。
運動に特別な自信があるわけではないが、このまま進めばおそらくゴールできるだろう。
……それだとパートナーとしてロトムと一緒に来た理由が無くなる。
おそらく、なにかの仕掛けがあるはずだ。油断はできない……

想像通り、道の途中に罠が仕掛けてあった。
だが問題なく突破することができた。、
これくらい難しくなければジムバッジを手に入れても嬉しくない。
俺は再び足を進めた。

「ハァ……ハァ……くそっ……」
なぜこんなに疲れているかと言うと、途中で強固な壁があったからだ。
ロトムのパワーではなかなか破壊することができず、破壊するのに時間がかかってしまった。
破壊できたときには、既に残り時間は五分。
急いで走ってきたがもう限界だ、ゴールはもう見えているのに―――

俺がここで諦めてどうするんだ? クロバットだって同じようなことをしたんだ。
なのに俺が諦めてしまったらクロバットに申し訳ないだろ。
まだやれる……やらなくてはいけないのだ。

鉛となった足を立たせる、残り時間は既に一分を切った。
このまま走ったとしても、ゴールできる保障はどこにも無い。
だが……一つだけ方法がある。



「ロトム、俺を怪しい風でゴールまで吹き飛ばしてくれ」
ロトムは戸惑ったような表情をする。
「大丈夫だ、いざとなったらこのパラシュートを使う」
このパラシュートは、万が一の時のためにトウガンから受け取っていた。
これを見てロトムは安心したような表情を見せる。

『じゃあ頼むぞ……怪しい風だロトム!』

怪しい風で加速し、向こう側までジャンプする。
下は見ていない、見たら怖くなってしまうからな。
トウガンの叫び声が聞こえる。
なんて言っているかはよく聞こえない。
もう少しだ、もう少しで頂上の足場に手が届く。
もう少―――

伸ばした手は空中を切る、足場には届かなかったのだ。
まずい、このままでは落下する。早くパラシュートを……
しまった…ジャンプ中に地上に落としてしまっていた。
体から血の気が抜け、顔は真っ青になってしまっている。
もう駄目だ……



突然体が宙に浮き、頂上の足場へと着地することができた。
これは……俺の側にはロトムが居る。
そうか、ロトムが二回目の怪しい風を使用してくれたおかげか……
頂上に置かれていたマインバッジを手に取り、その場に寝転がった。


「全く…なんて無茶をしてくれるんだ。私のジムで死者が出たなんていったら洒落にならないぞ」
「すいません……」
「まあその勇気は認めるがな、君に進呈しよう、そのマインバッジは」
手にある小さいながらも重みのあるバッジ、それを手に入れることができたのだ。
「次のジム戦も頑張ってくれよ、じゃあな」
トウガンは手を振っている。
俺は鋼の扉を開け、外へと出た。

ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ

電子音が発生する。
音源は……俺の左手に装着されているポケッチ――

「すぐにトバリビルへと戻って来い、仕事だ」

ナナシ
ルカリオLv47、クロバットLv45、ロトムLv43、ラグラージLv46


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