ドラえもん・のび太のポケモンストーリー@wiki

セカンド その6

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akakami

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#ジャイアンサイド

リッシ湖に辿り着いた俺とスネ夫は、かつて無い光景を目の当たりにしていた。
澄み渡った湖の面影は何処にも無く、完全に干乾びている。
元々ここに住んでいたコイキングも、虚ろな目で力無く跳ねていた。
「これはひどい……」
思わず言葉が漏れてしまう。
スネ夫は何も感じていないようだった。

「僕は下っ端達をやる。ジャイアンは幹部の相手をしてくれ」
そう俺に指図するスネ夫。
少し気に入らなかったが、やるならやり応えのある幹部だろう。
俺はスネ夫と別れ、空洞の中へと足を踏み入れた。

見ると、やはり中には幹部が居た。
俺は様子を伺う。
「居るのはわかっているぞ。コソコソしないで出て来い」
ギンガ団幹部、サターンが俺の方を振り向く。
その右手には一つのモンスターボールが握られていた。
「出番だ、ユンゲラー!」
そのボールから出てきたのはユンゲラー。
間髪入れず俺に光線を放ってくる。
「う、うわっ!あぶねぇ!」
俺はそれを辛うじて避け、モンスターボールを宙に放った。



俺が繰り出したのはカイリキー。
サイケ光線を受けながらも、反撃のリベンジで撃破する。
「いよっしゃぁ!」
思わずガッツポーズを取ってしまう俺。
サターンは平静を装い、次のボールを投げる。
「いけ、ドクロッグ!」

それからの戦闘は、終始サターンが優勢だった。
「ドクロッグ、とどめだ!」
ドクロッグの毒を帯びた手が、俺の最後のポケモン、マスキッパを襲う。
効果が抜群なこともあり、ダウンするマスキッパ。
これで俺の手持ちは無くなった。
「俺の……負け……?」
呆然と立ち尽くす俺に、サターンは冷酷に言い放つ。
「ああ、お前の負けだ」

サターンが言い終えると、先程まで停止していたドクロッグが走り出す。
それも、俺の方向かって一直線に。
「ギンガ団に逆らった罰だ。死んでもらうぞ」
その言葉を合図に、ドクロッグは右手に毒を宿す。
それは紛れも無く『どくづき』の体勢だった。



更に加速をつけ、俺の方へ走ってくるドクロッグ。
どくづきを直に受けたら、多分死ぬ。
俺は必死に逃げようとしたが、体が言う事を聞かない。
これが恐怖ってヤツか。

「うわああああああああああっ!」
気がつくと、俺は訳の分からない叫び声を発していた。
まさかこんな所で死ぬとは思わなかった。
今なら、今ならあの世への入り口が見えそうな気がする。
次の瞬間、サターンは表情を全く変えずして最後の指示を降した。

「決めろ、ドクロッグ」
その言葉を聞いた俺は、自然と目を瞑っていた。
心臓がバクバク鳴っているのが、自分でも分かる。
激しく動きすぎて破裂しそうなぐらいだ。
多分、もう俺とドクロッグの距離は僅か数メートルだろう。
今まさに右手を俺に突き刺そうとしている筈だ。
俺は覚悟を決めた。

皆の手持ち
ジャイアン ラムパルドLv42、カイリキーLv40、マスキッパLv40
スネ夫   ゴウカザルLv41、クロバットLv40、ビークインLv40



#スネ夫サイド

「ふぅー、これで全員か」
その場にいる下っ端達を全員片付けた僕は、近くの岩にもたれかかった。
虚しく跳ねているコイキングと力尽きて倒れている下っ端を見比べ、僕は薄ら笑いを浮かべる。
「……戻れ、ゴウカザル」
僕の横に佇んでいたゴウカザルを戻し、溜息を漏らした。

正直、ジャイアンの所に援軍に行く気にはなれなかった。
面倒臭いし、ジャイアンの為に行くのも馬鹿らしい。
仮にジャイアンが負けていたとしても、僕には関係無い。
どうせ伝説のポケモンはギンガ団の手中に納まる訳だし。
僕がそこまで考えた時だった。

「うわああああああああああっ!」
空洞の中から、ジャイアンの悲鳴が聞こえてくる。
中の状況は分からないが、恐らく危険な状態なのだろう。
僕は息を潜め、空洞の中を覗いた。



僕の予想は見事に的中していた。
サターンのドクロッグが、ジャイアンの方へと向かってきている。
ジャイアンの悲鳴は、さっきより数段トーンを増していく。
僕はどうしたらいいのか、自分でも混乱していた。

――気がつくと、僕は無意識の内に走り出していた。
ドクロッグと同じく、ジャイアンの方向かって一直線に。
幸い、ジャイアンの悲鳴で幹部は僕に気付いていない。
このままいけば、僕がドクロッグの攻撃を受けるハメになる。
なのに、何で僕はこんなに走っているんだろう。
僕の足は自然と前を目指し、ただひたすらに突き進んでいく。

もう、後数メートルだ。
必死のあまり少し変な格好をして走っている事も気に留めずに、僕は腕を動かす。
多分、今までで一番速く走っているのだろう。
限界を超えて悲鳴を上げている足も、風を切って疲れている腕も、まだ止まろうとはしない。
そして、僕がジャイアンとドクロッグの間に割って入ったその瞬間――

「……ぐわぁあっ!」



#ジャイアンサイド

「……ぐわぁあっ!」
不意に、聞き慣れた声がする。
それも、俺の目の前からだ。
とりあえず分かるのは、俺がまだ死んでいないという事。
それと俺の前の奴が攻撃を防いでくれたという事だ。
少し戸惑うも、俺はゆっくりと両目を見開く。

「スネ夫……!」
俺の代わりにドクロッグの攻撃を受けたのは、何とスネ夫だった。
一瞬、何が何だか分からなかった。
この俺を庇ってくれたのか……?
「……バカだよなぁ、僕……」
俺の方を振り向かずに、無理に声を出すスネ夫。
その両足はガクガクと震え、腹部辺りから血が流れ出ている。
「スネ夫ォォォォォォ!」

スネ夫の体のほぼ真下にある水溜りは、赤く染まっていた。
澄んだ無色の水の中に、次々と真紅の血が垂れていく――



自然と目から大量の涙が溢れ出てくる。
我先にと俺の目から零れ落ち、頬を伝っていく。
俺の真下の水溜まりには、同じ無色の液体が混じっていった。
ピチャン、という音が絶え間無く俺の耳に響いてくる。

「今回はコイツに免じて……お前だけは見逃してやるよ」
重傷のスネ夫を担ぎ、その場を後にするサターン。
「ま、待て……スネ夫を……」
突然の出来事に混乱しているせいか、頭がフラフラしてくる。
いつもなら自然と出てくる声も、今となっては喉の辺りまでいくのが関の山らしい。
次の瞬間には、鈍い音と共に俺は倒れていた。

薄れゆく意識の中、俺は空洞を出ていくサターンをただ呆然と眺める事しか出来なかった――

皆の手持ち
ジャイアン ラムパルドLv42、カイリキーLv40、マスキッパLv40
スネ夫   ゴウカザルLv41、クロバットLv40、ビークインLv40



「ん……」
空洞の天井から俺の顔に水滴が滴り落ちる。
「はっ……スネ夫!」
すぐさま記憶を取り戻した俺。
信じたくない事実だが、スネ夫は居ない。
「スネ夫……何でだよ……」
スネ夫は俺を庇って、幹部に捕えられた。
全部……全部俺のせいだ。
再び涙が頬を伝う――

それから暫く泣いていた俺は、ある事に気付いた。
「カイリキーのボールが……無い」
おそらく下っ端にでも取られたのだろう。
俺は二度目のショックを味わった。
「とりあえず……キッサキシティに行かなくちゃな」
イベントを進行させる為には、まずキッサキシティへと向かう必要がある。
確かジム戦を終えたらギンガ団のアジトへ行く手筈だった。
今頃エイチ湖では、ドラえもんと出木杉が幹部を倒しているだろう。
「ポケモン二匹だけだけど……行くっきゃねぇ」
一刻も早くギンガ団を倒し、スネ夫を取り戻さなければいけない。
俺はラムパルドの背中に乗り、キッサキシティを目指した。

皆の手持ち
ジャイアン ラムパルドLv42、マスキッパLv40



#ドラえもんサイド

「やっぱりか……」
湖に入った僕は、そう呟いた。
そう言う僕の目線の先には、ギンガ団幹部のジュピター。
僕は懐からボールを取り出し、臨戦体制に入る。
「やい、そこの幹部!僕とバトルし……」
「あら、その必要は無いわよ」
僕の言葉を遮って、ジュピターは言う。
「どういうことだ……」
僕がそこまで言った時だった。

「うわっ!」
急に、後ろに居た出木杉君が僕の動きを封じる。
「な、何すんだよ!」
顔の見えない出木杉君に怒鳴るが、返事は聞こえてこない。
「ふふ、まだ分からないのかしら」
「な、何が……」
僕は冷静に考えを巡らせる。
やがて出てきた答えは一つだった。
一瞬、僕の背筋に寒気が走る。
「まさか、出木杉君……君が……」
僕が恐る恐る言うと、遂に出木杉君が口を開いた。

「ふふ、君の考えている通りだよ。僕がこの世界の設定を変えた犯人なのさ……」



「君だったのか……」
今すぐにでも事情を聞きたい所だが、生憎そんな状況じゃない。
前には幹部、そして後ろには出木杉君が居る。
その上僕の動きは完全に封じられている。
「一つ教えてやるよ。君のスペアポケットが奪われたのも、僕の差し金なのさ。
スペアポケットの無い君はただのポンコツ狸だからね……はは」
僕の背後から出木杉君の声が聞こえてくる。
「ギンガ団に加担していたというのか……」
僕は驚きを隠せなかった。
まさか、あの出木杉君がそんな事をするなんて夢にも思わなかったのだ。

「まずは一番邪魔な君を消させてもらうよ。
野比君達はもう少し泳がせてから、ゆっくりと料理させてもらうさ。
……それじゃあ…………死ね」
その出木杉君の言葉を合図に、ジュピターはボールからスカタンクを繰り出す。
出木杉君は即座に僕の後ろから退く。
そして、スカタンクは僕に向かってありったけの炎を吐き出した。
「や、やめろ……」
今僕の頭にある感情は、怖い……ただそれだけだった。
断崖絶壁の上に立った時のように、足が竦む。

炎はこの世の全てを飲み込むかのような勢いで、僕に迫ってきている。
燃え盛る紅蓮の炎だけが、死を覚悟した僕の目に映っていた――

皆の手持ち
ドラえもん ムクホークLv42、ムウマージLv40、ヌオーLv39
出木杉   フーディンLv44 他不明



#のび太サイド

シンジ湖を後にした僕は猛スピードでテンガン山を抜け、大雪原に出た。
そして、僕は予め持っていたふかふかのコートを着る。
何せここ一帯は寒いなんてレベルじゃない。
寒すぎるのだ。

「はぁ……はぁ……」
まだ一回も足を休めず、僕は息を切らせながら走っている。
脳裏には常にドラえもんの事が過ぎっていた。
静香ちゃんの推理によると、設定を変えたのはあの出木杉。
この世界で何をするのかはまだ分からない。
だが、ドラえもんを狙っているという事は確かだった。
というのも、この世界でやりたい放題する為に、一番障害になるのがドラえもん。
そして、そのドラえもんを確実に消す為にスペアポケットを奪った……静香ちゃんはそう言った。
正直信じたくないが、現状が現状。
その可能性も十二分に考えられる。

「今、助けに行くからね……ドラえもん……」
僕は重い足を尚も動かしながら、颯爽と雪原を駆け抜ける。
最早一刻の猶予も許されないだろう。
厳しい猛吹雪に見舞われている雪原の中で、僕は一人走り続けた。



走っていると、やがて入り口みたいなものが見えてきた。
おそらく、エイチ湖のほとりだろう。
僕はようやく辿り着いたのだ。
「……行こう」
この入り口を抜けた先に、ドラえもんと出木杉が居る。
僕は覚悟を決め、エイチ湖内部へと足を踏み入れた。

エイチ湖に入って、真っ先に目に入ったのはスカタンクの炎だった。
炎は見る見る内にドラえもんに迫ってきている。
その付近には、薄ら笑いを浮かべている出木杉が居た。
ここに来て、僕はようやく確信する。
やはり出木杉は裏切った――と。

「……畜生!」
懐のボールを取り出し、ドラえもんと炎との間に放り投げる。



次の瞬間、炎は跡形も無く消えていた。
僕が出したポケモン……ポニータのお陰だ。

「ふう、ポニータの特性が貰い火で良かったよ」
汗を拭い、出木杉を見据える僕。
「のび太君……助けに来てくれたんだね」
ドラえもんはゆっくりと僕の方へ駆け寄ってくる。
今までの疲れが一気に取れたような気がした。
「ドラえもん……間に合って良かったよ……本当に……」

短い会話を交わす僕達を見て、出木杉はチッと舌打ちをした。
「ジュピター、お前は先にアジトへ戻っていろ。コイツ等は僕一人で十分だ」
指示を受け、ジュピターは戸惑いながらもエイチ湖を後にする。
それと同時に出木杉は二つのボールを放った。
「いけ……ガブリアス、フーディン!」
当然、僕とドラえもんもボールを投げる。
放物線を描いたボールは空中で回転し、青白い光と共にそれぞれのポケモンが姿を現した。



「もう終わりかい……?」
そう言って、雪の上にうつ伏せになる僕とドラえもんを見下す出木杉。
僕もドラえもんも、鍛えられた出木杉のポケモン達には到底敵わなかった。
「……くそ……」
出木杉は一歩ずつ、ゆっくりと僕達の方へ近づいてくる。
その傍らには、興奮状態のガブリアス。

「じゃあ……二人まとめて死ね」
出木杉がそう言い、ガブリアスが僕にトドメを差そうとした……その瞬間。
「ポニータ!」
さっきまで僕の横で同じように倒れていたポニータが、突如光り出す。
それは紛れも無く進化の光だった。
「……進化だ……」
僕は呆然とそれを見ていた。
ポニータの体がどんどん大きくなり、鬣は更に激しく燃え盛る。
やがて進化の光が消え、ギャロップがその姿を現した。

「ギャロップ……!」
僕とドラえもんは即座にギャロップに乗る。
勝負で勝てないなら、逃げるしかない。
「ギャロップ、走れっ!」
僕の指示を受け、ギャロップは猛スピードで駆けて行く。
エイチ湖の入り口目指し、疾風の如く。



「逃がしはしないよ」
その出木杉の言葉と共に、僕達の希望は潰えた。
ガブリアスが物凄い衝撃波を発し、一撃でギャロップの体力を奪ったのだ。
「うわあっ!」
無様な形で転倒する僕とドラえもん。
だが、出木杉はガブリアスに指示を出さなかった。

「くそ……次々と邪魔者が……!」
そう悪態をつく出木杉の目線の先には、エンペルトを従えた静香ちゃんが居た。
「遅くなってごめんなさい……のび太さん、ドラちゃん」
言い終えると、静香ちゃんは出木杉の方をキッと睨む。
出木杉は眉を顰めていた。
「私のポケモンは全員万全の状態よ。それでもやる?」
幸い、出木杉は僕とドラえもんとの戦闘で消耗している。
出木杉は芳しくない状況に、再び舌打ちをした。
「ここは退いておくか……そろそろ戻らなきゃいけない頃だし」
出木杉はそう吐いてドンカラスに乗り、おぼろげな月が浮かぶ夜空へと飛び立っていった。

皆の手持ち
のび太   ライチュウLv42、ヨルノズクLv41、ギャロップLv40、スコルピLv39
ドラえもん ムクホークLv44、ムウマージLv43、ヌオーLv40
静香    エンペルトLv46 他不明
出木杉   ガブリアスLv50、フーディンLv44、ドンカラスLv40 他不明



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