※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

第三編

ギンガ団壊滅――それが残したものは大きかった。

 ギンガ団の被害を受けた町はテンセイシティを含めかなりの地域に広がっていたが
 組織が首領の下す命令を絶対として行動していたこと、さらにアカギの爆死により
 その目的、研究、実験結果等は完全に消失し公になることは無かった。
 だが、組織の行ってきたことは確実に『何か』をもたらしている。
 組織が最期に実験を行ったと見られるテンセイやま付近では相変わらず
 環境が変化を続け現在も立ち入り禁止特区になっている。
 さらにその変化が周りの地域に広まっていることも発表されたことであり
 人々は全員山間部を離れ、臨海部に避難することを義務付けられた。
 ところが南の孤島で謎の強力な生体反応が確認されると共に
 全国のポケモンたちが海を渡って孤島へ向かう行動が見受けられるようになった。
 当然海を渡れないポケモンもいるわけだが、そういった種は全て海辺に集まり
 人々に危害を与えるため南の臨海部住民は別の町への移動を余儀なくされた。
 ここ最近異常気象が続くこともあり、人々の不安は確実に広まっている。
 高名な民俗学者、及び神話の所縁の地域から来た人々の中にはこの現象を
 世界の終わりと決め付け、周りを仄めかして暴徒化することも起きている。
 日が経つに連れポケモンに侵食されていく住居可能区だが政府に決定的な
 打開策は無く有力なポケモントレーナーにより捕獲していくことで済ましている。
 もちろん現れるポケモンの数は増えているので、必要なモンスターボールの数も
 限られている現状では近々この方法が行えなくなることは明白である。
 人々の不安は苛立ちに変わり、滞った政府への憤りが広まっている。
 荒廃が続きながら、ギンガ団壊滅から既に三ヶ月の時が流れた。

 ここまでが一般に語られている話だ。



ドラえもんたちはギンガ団本部での戦いから
 自分たちがこのままでは無事に元の世界へ帰れないことを知る。
 例え帰れたとしてもその世界は今までの世界と確実に変化しているためだ。
 考えた末、彼らは一つの答えを導き出す。
 簡単に言えばこの世界を『元々存在しなかったもの』としてしまうことで
 そのためには消失したのび太の居所を掴むことが絶対条件だった。
 ギンガ団の研究資料を手に入ると、彼らは計画の礎を築いていく。
 ところが最も肝心な道具が紛失していた。
 そこへ一通のメールが届き、彼らは南の孤島へ招待される。
 また、同時にこの世界が直面している本当の危機にも気づかされたのだ。

 『早くしないとあいつは僕らの元へ来るかもしれない。
  誰にも危害を与えずに決着をつけるにはこの機会しかないんだ。
  これを逃せば元の世界とか言ってる間に、僕らの存在はあいつに掻き消されてしまうぞ……』

~~そらのひかり みだれるとき つまりそれが めざめのとき……
                              (古文書より抜粋)~~



南の孤島――
そこには古城が、ひっそりと屹立していた。
もともとは昔の大富豪が、別荘として使用していた。
それ以前にはとある冒険家が自分の拠点としていたらしい。
他にも処刑場、生贄の送られる所、あるいは聖域ともなっていたとか。
島の歴史は数あれど、遡って共通していることは一つだけ。
この島の歴史が変わるときは必ず、多くの人々が嘆き、苦しみ、死んでいたのだ。

……もっとも、そんなこの島の歴史など、あいつにとってどうでもいいことだ。

古城の最上階――
あいつは椅子に座りながら、窓の外を見つめていた。
ギャラドスやサメハダーの群れが、暗い海を泳ぎ回っている。
空にはひこうタイプのポケモンたちが、星空を裂くように旋回していた。
水平線の遥か彼方がだんだんと白みがかって来た――もうじき日が昇るのだろう。

「……あと120体」
あいつは呟いた。
その言葉はあいつの欲望を贅言無く現していたが、焦燥な様子は微塵も無い。
(招待状は出し終えた。奴らも必ず来るはずだ。
 出木杉は俺の暗号に気づいただろうからな。うまく仄めかせた。
 来るのは5人……そしてこの場にあらかじめ呼んだ16人を合わせて……)
悪辣そうな笑みが、あいつの表情に浮かばれる。
(十分だ。予備もあった方がいいだろうからな……)

再び俯瞰する外では、朝と夜が入り混じっていた。



それほど良い天気ではない。
薄い雲に隔たれ、星の光はどこか遠いもののように感じられた。

病院の屋上で、出木杉は夜空を仰いでいた。
(……僕に出来ることは全てやり切ったわけだ。
 僕のことも、あいつの目的も全てドラえもんたちに話し終えたわけだから)
ヤミカラスの一団が、海へと翔けていく。
夜、ヤミカラスを見ると不幸になる――そんな話を急に思い出して、出木杉は身震いした。
(この世界も壊れつつあるんだ。
 あいつのせいで……僕があの時計画を成功させていれば)
憤りが出木杉の内側で広がっていく。

(僕が成功していれば、少なくとも世界が崩壊することはなかった。
 でも、失敗がこんなに恐ろしいことになるなんて、思いもしなかった。
 ……これは誰のせいだ? 
 この世界の成り立ちそのものが問題ならば、悪いのはあの人だ――)

「おーい、出木杉ぃ!」
いつの間にかジャイアンが屋上に来ていた。
「宴会やるぞ、宴会!」
「ぇ、宴会!?」出木杉は口をぽかんと開ける。「ここは病院だけど」
「バカ野郎! 戦い前の宴会だよぉ! じゃ、お前の部屋でな!」
ジャイアンは踵を返し、病院へ戻っていった。

フッと、出木杉は微笑み、また夜空を仰いだ。
「博士……悪いけど絡糸は切れちゃったみたいだよ。
 切らされたんだけどね。友達に。
 だから……約束は守れないみたいだ」



「本当に行くのですか?」
ポケモンセンターの中から、ミカンが出てきた。
今しがたボーマンダを出したばかりのしずかは、微笑で返す。
「もちろんよ。招待されたんですもの。
 行かなくちゃ失礼よ。あの人に対して」
しずかの右手には招待状が握られていた。
ミカンも招待状が来ていたことは知っている。
いや、おそらくゲン辺りが同盟中に広めているだろう。
もっとも今鋼同盟は政府からの仕事で忙しい。
その上ギンガ団討伐の時に多くの人員を失った。
なので少人数しか残ってはいないだろうが。
「危険ですよ」「えぇ、きっとそうね」「……いえ、絶対危険に決まってる!それでも」
「行くわよ。あたしはあの人を救いにいかなきゃなの」
考えを変えないしずかを見て、ミカンが悔しそうに唇を噛んだ。

ボーマンダに乗りながら、しずかはミカンを見下ろした。
「あのね、救えって言われたから救いに行くんじゃないの。
 救いたいから救いに行くのよ。
 あたしの大切な人だから」
溜め息混じりの声が、しずかから発せられる。
「……故人の行為を蔑むつもりはありません」
俯き加減に、ミカンが言う。「ただ、どんなに強い人でも死ぬんです。ギンガ団討伐の時のように」
「わかってる。トウガンさんを責めるつもりは無いわ。
 さて、そろそろいかなくちゃ。ドラちゃん待ってるから」

ボーマンダが、微弱な星明りに照らされて羽ばたく。
寂しげなミカンを残して。



「――くそ!何だってんだよ!?」
病院の外へ叩き出され、ジャイアンが吼えた。
「病室で騒げばああなるだろうね」
歩きながら病院を出てきたスネ夫が言う。
「じゃあ何で俺だけ力ずくなんだ!?スネ夫はどうして」
「何もされていないか、だろ?
 だって僕何にもしてないからね。ベッドも壊さなかったし、暴れなかったし
 下手な歌で歌わなか――はぅぁ!?」
「ス~ネ~夫~君?」

「外が騒々しいね」
ドラえもんが眉を吊り上げて窓ガラスを覗く。
「犬でもいるのかな。……ま、いいか。
 ゴメンね。出木杉君。うるさくて」
「良いよ。別に」
ベッドに座りながら、出木杉は首を横に振る。
「こんなに楽しいのは久しぶりだからね。
 ……ギンガ団を統べていた頃はこんなことなかった。
 僕もどうかしていた。きっとあの機械の作用だろう」
「それだけじゃないよ」
ドラえもんは窓から出木杉へと目を移す。
「魚は陸に飛び上がっても、すぐに死んでしまう。
 普段いる環境から別の環境に変わった時、絶対に良くないことが起こるんだ。
 死じゃ無いにしろ、あの機械が僕らに悪影響を与えたことは確実なんだ。
 そして、今僕らに出来ることは一つ」
ドラえもんが凄みを効かせて出木杉に告げる。
「招待されたところで全てを戻すしかない」



「ドラちゃん!」
病室の扉に、誰かが現れる。
しずかだ。
「来てくれたんだね」 ドラえもんが顔を綻ばせた。
「えぇ、あたしのボーマンダで飛んできたのよ。
 リーグ前に一度あたしをこの町に呼んだでしょ?
 だからきっと今回もこの町に集まっていると思ったのよ。あとはジョーイさんに聞いたわ」
「来てくれてありがとう。
 ここで待っててね。今外にいるジャイアンとスネ夫を呼んでくるから」
ドラえもんは病室から出て行った。

「……ここに来たってことは、しずちゃんにも招待状が?」
出木杉はしずかに質問した。
「えぇ、来たわよ。
 『旅のレオ』――ふふ、なかなか洒落た名前よね」
「……しずちゃん。さっきの推理で気づいたんだけど。
 君も気づいているんだよね?その招待状――」

「ほら、早く戻るよ!」
ドラえもんはジャイアンの右腕を掴む。
だが、ジャイアンの左腕はスネ夫の首を捕らえたままだ。
「落ち着くんだ、ジャイアン!
 ここで体力を温存しておかないと、あいつを倒せないぞ!」
スネ夫が必死で説得する。
その言葉で、ジャイアンはハッとする。
「おぅ、そうだ!その通り!
 まだ体力とっとかねえと、思いっきり暴れられねえもんなぁ!ガハハハ!!」
すっかり気分を良くしたジャイアンが、病院へ戻っていく。



出木杉がしずかにこれからのことを伝えた。
ジャイアンも喋っていたが、恐らく彼女の耳には入っていなかっただろう。
とにかくドラえもんの意図は通った。
「さぁ、今はどうやって島に行くかだ」
「俺に良い案があるぜ!」
ジャイアンが挙手して、誰にも言われる前に語りだす。
「この町の港にいるハギ老人。
 俺、リーグは中断した後に修行に連れて行ってもらったから知り合いなんだ。
 あの人はどんな海でも渡るって行ってたぞ」
「でも、この世界の住人が許してくれるかねえ」
スネ夫が不安げに呟く。
「最近あちこちで宗教信者目にするんだけど、ああいう奴らに僕らの正体ばれたらと思うと」
「大丈夫だって!ハギさん信者じゃないからよぉ!」
「でも、たとえそうであっても危険はあるよ」
ドラえもんがジャイアンを見据える。
「この世界の歴史だと、ただでさえ人が寄り付かない島だったらしい。
 そんな島がこんな形で注目を浴びているんだ。不気味に思わない人間なんていない。
 そこへ行こうとする人間も奇異の目で見られるはずだ」
「……じゃあ、いったいどうすればいいんだ?」
ジャイアンが参った様子で言った。



「一番いいのは、僕らのポケモンで行くことだ」
出木杉が眉を寄せながら述べた。「誰にも迷惑を掛けることはないからね」
「そうだね」ドラえもんが頷く。
「みんな、『そらをとぶ』か『なみのり』を覚えたポケモンはいる?」
「いや、『そらをとぶ』はまずい」
出木杉が口を挟む。
「きっと海を渡れるポケモンはみんな行ってしまった。
 今は空を飛べるポケモンが島に行く番。衝突はなるべく避けたほうがいい」
「なるほど。確かに群れで飛ぶポケモンの姿は見かけた。
 じゃ、『なみのり』を覚えたポケモンは?」
すると、その場にいた全員が頷いた。
「『なみのり』を覚えさせるのは定石だからね。
 ギンガ団討伐直前の買い物の時にちゃっちゃと買っておいたよ」
スネ夫が得意そうに話す。
「良し。あとはみんな、準備を済ませるんだ。
 明日の朝早く、日の出前にに出発する。誰にも見つからないようにね」
ドラえもんの決定に、反論するものはいなかった。

「よぉーし、気合を入れるかぁ!」
ジャイアンが手を突き出す。
「ほら、みんな乗っけろよ」
ふと、旅立ちの日の事が、各々頭に浮かんだ。
あのときと同じように、みんな手を乗せあう。
出木杉は少し戸惑ったが、一番上に手を載せた。
その上をにドラえもんがちょこんと手を置く。
「じゃあ行くぞ!世界を救いに!」
掛け声が病室に響く。
その後、怒った看護師たちが飛び込んでくるまで、そう時間はかからなかった。



「……では、少年たちが本当にそう話していたと?」
「えぇ、その通りです。耳だけは達者なもんでね。
 しっかり会話が聞こえてきました……」
「なるほど。で、その少年たちは?」
「四人がポケモンセンターに。そしてもう一人はそこに」
つかつかと、歩いてくる音が聞こえてくる。

病室の扉が開かれた。
入ってきた人物はそこを確認している。
「……誰もいないぞ?」
すると、年寄りの声が聞こえてきた。
「へえ?そんなはずは……おれがこの部屋の前を通るときたしかに……
 考えられることはポケモンセンター側の子供たちが、ここの子を連れ去ったのでは?」
「ふん。面倒なことになった」
病室から出て行く人物。そのまま、扉は閉じられた。

ベッドの下から、出木杉は這い上がる。
(まさか聞かれていたとはね……あいつらは信者か)
短い思考を終え、出木杉は窓を開ける。
「フライゴン、僕を連れて行け」
外に発射された赤い光が、一体のポケモンを繰り出した。
出木杉はフライゴンの背に乗ると、ポケモンセンターへと向かう。
(予定はだいぶ早くなうそうだよ。ドラえもん)



ジョーイから部屋番号を聞いた出木杉は、ドラえもんの部屋の扉を叩いた。
「ドラえもん、起きているかい?」
暫く反応が無い。時間帯のせいだろうか。
出木杉が仕方なくボールに手を掛けたその時、扉が開いた。
ドラえもんが、あまり冴えない目で出木杉と対面する。
「……その様子だと何かあったね?」
出木杉は頷き、話し出そうとするが、ドラえもんがそれを制した。
「待ってくれ。こういうときも考えてあった」
ドラえもんはロゼリアを繰り出す。
「ロゼリア、アロマセラピー。
 これでみんな起きてくるはずだよ。扉を叩けば出てくる」

集められた三人を加え、出木杉は病室での出来事を話した。
「恐らく島へ行くことを禁忌とする連中だよ」
スネ夫が半眼のままおびえた様子で言う。
「速くここから出なきゃ、僕らなにされるかわからない」
「うん。まずはここを出よう。
 それから、海へ出るんだ。人と出くわさないようにね」
「そのまま島へ行くんだな!」
ジャイアンが意気込んだ。

一行はポケモンセンターから出た。
町はひっそりとしている。民衆はまだ寝ているんだろう。
「ジャイアン、港はどっち?」
「あぁ、向こうだ」
ジャイアンの示す方向へと、一行は進みだした。



不気味なほど閑散な町。
人々の不安や絶望が、そんな雰囲気を醸し出しているのだろう。
町は人によって出来ている。だからこの町は今、廃れている。

砂浜にはテントがいくつもあった。
「どういうことだ?何だあれは」
ジャイアンが首をかしげて、集団を見つめた。
「連中は島に行く人間がいないか、監視しているんだ」
スネ夫が目を細めて言った。
「どうしよう。砂浜はびっしりと埋め尽くされている。
 あれじゃ海へ行けないよ」
ドラえもんは少し唸り、それから結論を出した。
「まずは……」

砂浜では三人ほどが座っていた。
夜の番をしているのだろう。
ふと、テントから不思議な音色が聞こえてきた。
三人の監視員たちはその音を耳にすると――眠りに落ちた。
「くさぶえは聞いたね」
ドラえもんがロゼリアをしまいながら伝えた。
「今だよ。みんな」
小さい号令が交わされ、五人は飛び出した。
まっすぐ海を目指して。

だが砂浜を半分駆け抜けた時だった。
「!みんな止まれ!」
敏感に変化を感じ取ったジャイアンが叫ぶ。
地響きがして、砂浜から何かが飛び出した。



砂が五人に吹きつけてくる。
「バンギラスだぁ!」
スネ夫が叫んだ。
地中から飛び出したバンギラスが、特性により砂嵐を起こしたのだ。
「みんな、僕に掴まって!」
ドラえもんが声を出した。
「僕の目は赤外線機能がついているから通れるよ」
ゆっくりと、ドラえもんの体に四人が寄ってきた。
だが同時に、人々の声も届いてくる。
「どうやら、バンギラスの特性が目覚ましになっていたようだね!」
出木杉が振り返りながら言った。
「ドラちゃん、急いで!」
しずかがはやしたてる。
こくんと、ドラえもんは頷いて一歩踏み出した。

砂嵐の壁の向こうで、人々の集まる姿がぼんやりと確認できた。
大声で話しているのだろう。言葉が聞こえてくる。
侵入者とか、禁忌とか、抹殺とか、不穏な言葉ばかりだ。
五人はバンギラスから離れ、海面を目指していく。
砂嵐はだんだんとひどくなっていった。
そのせいか、歩みも遅くなったように思える。
「おいドラえもん、もっと速く……ぅげほ、ごほ!」
「しゃべるなジャイアン!」
ドラえもんが一喝し、振り向く。
その時、みんなの後方に近づいてくる影を見た。
その人ははっきりと手を伸ばして――
ドラえもんは咄嗟に叫ぼうとした。



何かが掠めて、人影に攻撃した。
人の呻きと、鋭い斬撃音が聞こえてくる。
それは確かに、エアームドだった。
ドラえもんは瞬き、呆然とした。
四人も振り向く。
誰かが戦っているのが、ぼんやりと見えた。
「誰だあれ?」
ジャイアンが眉を顰める。
「とにかく好機だ。きっと味方なんだよ」
スネ夫が急き立てた。
ドラえもんは頷く。
「その通りだ。行くよ、みんな」
一行が進みだす頃、しずかは砂の向こうでちらりと見た。
ハッサムがポケモンをなぎ倒している姿を。
フッと笑みを浮かべ、しずかは歩き出した。

海岸につくと、不思議なことに砂嵐がやんできた。
上には雲が集まっている。
「みんな、ポケモンを繰り出して」
そうして各々がポケモンを繰り出した。
「さっきも言ったように、僕の目は赤外線機能つき。
 だから僕が先導する。一番生物が集まっているところがあいつのいるところだ」

『すなあらし』がおさまったのだから、視界は良好になった。
これでヨルノズクのさいみんじゅつや、ピクシーのうたうも当てやすくなったわけだ。
そうして彼女らは、その場の連中を一網打尽にした。



海上は静かだ。
波を割く音が、心地よく響き渡る。
ただ、暗い海といつの間にか厚くなった雲が安らぎを奪う。
これから向かう場所に、逃げ道は無い。
自然がそう暗示してくる――

「ついたぞ」
ドラえもんが宣告した。
古城を構える孤島が、目の前に見えてくる。
石造りの城は、むしろ塔のようにも見えた。
蔦が絡み合う古ぼけた城壁が荒廃した城の歴史を物語っている。
一行は島に降り立ち、ポケモンをボールに収めた。
「いいかい、みんな」
ドラえもんが全員の顔を見回す。
「これからの戦いは過酷かもしれない……いや、きっとそうだろう。
 それでも諦めないでほしい。
 戦わなきゃ、何も起こらない。故に、何も救えない」
「そんなこと、わかってるぜ!」
ジャイアンは力強く胸を叩く。
「俺たちはハナから諦める気なんて無い」
「その通りさ。僕だって」
出木杉がドラえもんを見据えて頷いた。
「あたしも」「……僕も」
後続でしずか、スネ夫も答える。
ドラえもんは一息つくと、身を翻して城門へ振り向いた。
「ありがとう、みんな。
 行くよ。全てを終わらせに」



一行が近づくと、城門が開かれる。
中から出てきたのは、ランプを持ったジョーイだ。
「どうぞこちらへ……」
そのジョーイは感情無くそう言うと、中へ入っていく。

「うへ~、映画みたいだ」
ジャイアンが率直な感想を漏らす。
品のある城内は、蝋燭の幽かな明かりで仄かに照らされている。
『不気味』という一言では説明できない、深い感覚が押し寄せてきた。
床に敷かれた赤い絨毯が、中央で弾けた様に別れている。
それぞれの絨毯の先には上り螺旋階段があった。
「螺旋階段は4つあるね」
スネ夫がボソッと呟く。
「丁度こっちのトレーナーの数と同じじゃない?」
「しっ、ジョーイさんが来たぞ!」
ドラえもんが制止を掛ける。
ジョーイは扉を閉めてから、一行に歩み寄ってきた。
「みなさん、ようこそいらっしゃいました。
 レオ様は喜ばれております」
「……なぁドラえもん。レオって誰だっけ?」
ジャイアンがとんと見当つかない様子で質問した。
ドラえもんはリュックから招待状を取り出す。
「これの送り主だよ。
 『旅のレオ』……簡単な暗号さ。どうやら通称としてつかっているらしい」
そう言い終えると、ドラえもんは僅かに歯噛みする。
こんな風に、悔しさを露にするドラえもんはなかなかない。



「みなさんにはこれから、上階へ向かってもらいます」
ジョーイが説明を始めた。
「ここに来ているのは、レオ様の他に16名の有能なトレーナーたち。
 そしてみなさんの中には4人、トレーナーがいます。
 これから一人ずつ、螺旋階段を選んでもらいます。
 それぞれの螺旋階段で上った先に、16名のうちの一人が待ち受けています。
 4階まで、それが続き、5階にレオ様がいます。
 みなさんにはそこまで、連戦して頂きます。
 各階ごとに回復機がありますので、戦闘終了時にはご自由にお使い下さい」
空気が張り詰める。
「なるほど、ようは4人倒して上っていきゃいいんだろ?」
ジャイアンが「よ~し」と意気込んだ。
「こうなったらそのトレーナーたち全員倒してレオんとこ行ってやるよ!」
その力強い言葉が、場の空気を換えた。
「ところで、トレーナーじゃないドラえもんはどうなるの?」
スネ夫がジョーイに聞いた。
「レオ様の指示で、1階で待機していろと」
「どうやら、僕には近寄ってほしくないらしいね」
ドラえもんが推測する。
「平気よ、ドラちゃん。
 あたしたち諦めないから」
しずかが微笑んだ。
「おう、その通り。
 じゃ、みんな行くか。とっとと上り詰めてやろうぜ!」

こうして、4人は螺旋階段を上っていく。
その先の扉に、4人ずつ『トレーナーを超えたトレーナーたち』が待ち受けている。