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暫くしてナナカマド研究所には5人が集まっていた。
呆然としているジャイアンとスネ夫。
この二人ほどでは無いがまだ信じられないような表情をしているしずかとドラえもん。
そしてこの4人の目線の先でエムリットをナナカマドを見せているのび太の5人だ。

「感情の神!そんなに凄いポケモンだったんだね、君は」
のび太の言葉を聞いてエムリットが嬉しそうに研究所内を飛び回る。
「うむ、これは間違いなくエムリットだ・・・!生きている内にこのポケモンを見れるとは!」
ナナカマド博士が興奮しながらエムリットを観察している。
「しかしのび太くんが伝説ポケモンを捕まえるなんてなんでまた・・・」
ドラえもんが不思議そうに呟く。
「本当だぜ!おい、のび太どうやって捕まえたんだ?俺様にも教えろ!」
余程、のび太に伝説ポケモンを手に入れられたのが悔しいのだろう。
ジャイアンがのび太の胸倉をつかんで詰め寄る。
「そ、そんな事言われたって・・・ただ突然現れて僕にまとわり付いてきただけだよ!」
慌てふためきながらのび太が必死に説明しようとする。
「馬鹿言うなよ!理由も無く伝説のポケモンが仲間になる訳が――」
「ああ、その通りだ」
その重みのある声に思わずジャイアンがのび太を離す。
声の主は当然ナナカマド博士だ。



「野比のび太と言ったか・・・このエムリットに会う前に本当に何も無かったのか?」
目は飛び回るエムリットを観察しながらものび太に問いかける。
「えっと、あの湖で昼寝してたらムックルに襲われてその時に何かが光ってそしたらエムリットが出てきたんだ」
(のび太くん、草むらで眠るなんてすごい度胸だな・・・)
ドラえもんが妙な関心をする。
「その前は何をした?」
あまりこの件には興味が無いらしい。
「ドラえもん達と逸れて草むらの中を歩いてて・・・そこで湖に行って綺麗な湖だなぁって言って――」
「それだ!」
突然目を見開き鋭い声を出すナナカマド博士・・・怖すぎる。
「エムリットは感情ポケモン、人々に感情を伝えたと言われるポケモン・・・ということは知っているな?」
ナナカマドの言葉に全員が頷く。
「つまり、エムリットには信用できる人間かどうかを見分ける位は容易いことなのだ」
そこまでいえば分かるだろう、とナナカマド博士が口を閉じる。
もちろん、そんな説明で把握できるほどのび太の頭は柔軟ではない。
「ねぇドラえもん、どういう意味?」
いつもの様に困ったときのドラえもん頼りだ。
「あのねぇ、のび太くん。せっかく褒められてるのに・・・」
呆れたような表情で言うドラえもん。
「僕が褒められてる?」
まだ意味が分かっていない彼を見かねたのかしずかが一歩前に出た。
「博士、のび太さんは伝説のポケモンに信頼できると認められたってことですよね?」
しずかの問いにナナカマド博士が大きく頷く。
「・・・君」
「は、はい!」
突然ナナカマドにしっかり見据えられて思わず焦るのび太。

――暫くの沈黙、そして・・・

「伝説のポケモンに認められたトレーナーか・・・行く末が楽しみだな」
そう言ったナナカマド博士の目から僅かに笑みがこぼれていた。



その後、ナナカマド研究所を出た5人は一旦集合していた.

「それじゃあ色々とあったけど・・・そろそろ旅に出ようか」
「ああ、さっさと解散しようよ!のび太のせいでただでさえ出遅れてるんだから」
スネ夫お得意の辛辣な言葉が炸裂するが当ののび太は余裕な表情をしていた。
「悪いね、スネ夫。待たせた上に僕だけ伝説のポケモンを手に入れちゃって」
そう言ってさりげなくエムリットを入れたモンスターボールをチラつかせる。
こっちもスネ夫に負けず劣らず嫌な奴だ。

「それにしても・・・出木杉さんは何処に行ったのかしら?」
しずかがまだ帰ってこない天才を心配する。
「確かに心配だね、まさかのび太くんみたいにポケモンに襲われてるんじゃ・・・」
ドラえもんも不安顔だ。
だが、その二人にジャイアンとスネ夫が反論する。
「出木杉はもうポケモンを持ってるし襲われても大丈夫だろ、それにのび太じゃねぇんだから」
ジャイアンにしてはまともな意見だ。
そこにスネ夫が追い討ちをかける。
「僕は出木杉がのび太を探すとき次の街の方へ行ったのを見たんだ、どっちにしろ僕達もその方向へ向かうだろ?」
そして最後のダメ押し。
「出木杉なんて気にしないでさっさと旅に出ようよドラえもん!」
物凄く個人的な意見をのび太が述べた。
「う~ん、みんながそこまで言うならしょうがないか・・・分かった、旅に出よう」
遂にドラえもんから旅に出る宣言が出された。
「よっしゃ、俺様のチャンピオンへの伝説の幕開けだぜ!行くぞスネ夫!」
「あっ、待ってよジャイアン!」
一目散に駆け出したジャイアンをスネ夫が追いかける。
「じゃあねドラちゃんとのび太さん、私も行くわね!」
しずかが続いて走り出す。
「みんな行っちゃったね・・・それじゃあ僕らも行こうか」
そう言ってのび太の方を振り向くドラえもん。
だが、その少年からは予想外の答えが返ってきた。
「ドラえもん・・・僕は一人だけで冒険するよ!」



~102番道路~
「ムックル!体当たりだ!」
短パン小僧の声でムックルが勢いを付けて急降下をしていく。
――だが、次の瞬間
「竜の怒り!」
激しく燃える炎の玉が灰色のポケモンの口から放たれた。
それが急降下するムックルを飲み込み・・・地面に墜落した
「はあ・・・戻れムックル」
短パン小僧が焼き鳥となったムックルをボールに戻す。
「完敗だよ、はい賞金」
「ありがとう、機会があったらまた勝負しよう」
そう言って短パン小僧のなけなしの賞金を貰っているのは・・・出木杉英才だ。

(フカマルのレベルも上がったしそろそろ行くか・・・)
次の街、コトブキシティを目指そうとしている出木杉。
そう、彼は元々のび太を探すつもりは無かったのだ。
「野比くんには悪いが僕は出木杉・・・勝負事には負けられないな」
爽やかそうに見えてなかなかの野心家だ。
そんな事を考えながら歩いているうちに巨大な街が見えて来た。
「あれがコトブキシティか、フラゲ人の話ではポケッチが手に入れるんだっけ」
どうやら情報収集もバッチリらしい。
(そういえば、ドラえもんと野比君はどんなポケモンを貰ったんだろう・・・まぁいっか)
のび太が伝説のポケモンを持っている事も知らず出木杉はコトブキシティに一番早く足を踏み入れるのだった。



もうドラえもん達が旅を始めて1時間ほど経過したころ。
「ほっほ~い!よく見つけれたねぇ!そんなお嬢ちゃんにはポケッチをプレゼント~!」
「え、ええ。どうもありがとうございます・・・・」
しずかがやけにテンションの高いピエロからポケッチを受け取る。
(余り役に立ちそうに無いけど機能も増えてくらしいし持ってて損は無いわね)
と、小型の機械を眺めていたその時、見慣れた声が聞こえてきた。
「スネ夫、速く先へ進むぞ!」
「ジャ、ジャイアン。もう少し休憩しない?この街にも役に立つアイテムがあるかも・・・」
しずかが振り返るとコトブキシティの出口でジャイアンがスネ夫を必死で引っ張っている所だった。
「ジャイアン、あそこでポケッチキャンぺーンなんてものが――」
「後だ後!俺たちにのんびりしてる余裕は無いんだ!」
1分後、ジャイアンとスネ夫の姿はコトブキシティから消えていた。
少年の悲痛な叫びは少しの間残っていたが。
その姿を遠くから見届けたしずかは思った。
(無駄に急いでも後半で詰まるだけなのに・・・私は焦らないで進まないと)
どうやら彼女も相当の策略家のようだ。

そしてしずかがもう少し街の散策をしようと振り返ったその時、彼女はまた見慣れた姿を見つけた。
後姿なので表情は見えないがその青い体と特徴的な体型は他の誰かと間違えようが無い。
「ドラちゃん!」
しずかがその青い体の物体に声をかける。
「あぁ・・・しずかちゃん」
ゆっくりとこちらを見たドラえもんの表情がどこか沈んでいるようにしずかは感じた



数分後、二人は近くにあったテレビ局のロビーで話をしていた。
「えっ!のび太さんがそんな事を言ってたの?」
「うん、そうなんだ・・・・」
ドラえもんが相変わらず抑揚のない声で話す。
「この世界ではドラえもんに頼らず自分の力で旅をするって言って聞かなくてさ・・・無謀すぎるよ」
そう言って再びため息を付く。
どうやら彼が元気が無いのはのび太に一人旅ができるのかという心配が原因らしい。
「だけどドラちゃん、のび太さんは伝説ポケモンを持ってるのよ?きっと一人でも大丈夫よ」
しずかが何とかドラえもんを元気付けようとする。
「そうなんだけど・・・何だか嫌な予感がするんだよなぁ、のび太くんだし」
付き合いの長さから来るものなのか、まだドラえもんは浮かない顔をしている。
(・・・否定できないわ)
その妙な説得力のある言葉にしずかも黙り込む。
(気まずいわね)
何とかこの空気を変える話題は無いかとしずかが辺りを見渡す。
そしてそれは自分の腰に付いている小さな球を見て解決する。
「ドラちゃん、心配ばっかりしてもしょうがないしバトルでもしない?」
そう言ってモンスターボールの開封スイッチを押す。
ドラえもんは暫く黙っていたがやがて立ち上がり同じくボールを持つ。
「そうだよね・・・うん。よし、勝負だ!」
こうして初めてのポケモン世界に来た者同士の戦いが始まろうとしていた。



一方その頃、噂の人物はというと
「Zzz・・・」
寝ていた。

改めて30分後
「ふぁ~、休憩もしたしそろそろ僕も行こうかな」
ポケモンセンター前でのび太が気だるそうに言う。
勿論、彼が今いるのはコトブキではなくマサゴタウンのポケモンセンターだ。
「みんなはどれ位進んだかな・・・まぁ僕にとっては丁度良いハンデってとこだな、うん」
もはや完全に図に乗っている。
その余裕の源は彼の右手の中にあるモンスターボールだ。
「そういえば出木杉はこいつを知らないんだよな、くく・・・どんな顔するだろうなぁ」
色々と妄想にふけりながら草むらに入っていくのび太。
まさか今の自分にとんでもない落とし穴が待っていることにも知らずに・・・。



マサゴタウンを出てからのび太は特に変わったこともなく道路を歩いていた。
「う~ん、一匹くらいポケモンが欲しいけど中々出てこないな・・・まぁいっか」
そう呟きながらも進んでいくと大きな町並みが見えてきた。
「でっかい街だなぁ~!よし、速く行こう!」
のび太が駆け出そうとしたその時――
「そこの君!俺と勝負しないか?」
突如、横から呼び止められる。
見るとそこにはゲームではお馴染みの短パン小僧がこちらを見ていた。
「・・・つまりポケモンバトルってこと?」
ようやく事態を理解したのび太が問いかける。
「ああ、目が合った以上勝負は断らせないぜ、行けムックル!」
短パン小僧の声でボールから出てきたムックルが勢いよく飛翔する。
それを見てのび太は笑いを隠すことができなかった。
(可愛そうに、相手を選ぶのを間違えたな・・・)
「君、本当に僕と勝負するんだよね?」
のび太が言う。
「ああ、そっちも速くポケモンを出してくれよ!」
ニヤついている相手にイライラしているのか短パン小僧が急かす。
「後悔しても知らないけどな~・・・いけっ、『感情の神』エムリット!」
のび太のボールが炸裂した次の瞬間、辺りを不思議な威圧感が包み込む。
その威圧感の原因はもちろん額に水晶を持ったピンク色のポケモン、エムリットだ。
「な、なんだよ、この空気」
短パン小僧が思わず声を震わせる。
空中にいるムックルも相手が誰なのか分かるのかうろたえている。
そしてのび太はその様子を見て得意げに笑う。

「さて、じゃあ悪いけど本気を出させてもらうよ・・・!エムリット・・・相手を消し飛ばせぇ!」



「どうぞ、お預かりしたポケモンは――」

「うわあああああああああああああああああああああああ!」

「ポケモンは元気に――」

「うわああああああああああああああああああああああ!」」

「もう・・・またのご利用をお待ちしています!」
ジョ―イが半ば無理やりボールをのび太に押し付ける。
――そう、ここはポケモンセンターだ。
しかも、そこはのび太の前に見えていた大都市ではなくマサゴタウンのポケモンセンターだ。
「ひっく、なんで・・・なんで・・・」
のび太が何故泣いているのか、そして何故マサゴタウンに戻ってきたのか。
全てはこの一言が何もかも証明していた。
「なんで『眠る』しか覚えてないんだよおおおおおおおおおおおおおお!」
こうしてのび太の壮絶な冒険は幕を開けたのだった。



~マサゴタウンのポケモンセンター~

「今日はリッシ湖のほとりにあるレストラン『七つ星』を紹介しました!それではまた~!」
アナウンサーの甲高い声で夕方のニュース番組がEDに入る。
そしてその画面をつまらなそうに見ているのは・・・のび太だ。
「はぁ~あ、やっぱ何処の世界もこの時間はつまんない番組しかやってないな」
そう言って愚痴をこぼしながらベットの上で寝転がる。
「今日は疲れたしもう寝ようかな」
そう言って本格的に寝る体勢に入るのび太。
一瞬で寝ることが特技ののび太の事だ、当然数秒後には――

寝ていなかった。
(みんなは今頃次の町か・・・いや、次の次の街かな・・・出木杉とかは今頃ジムに挑戦してるかも・・・)
そう、仲間への凄まじい劣等感が彼の睡眠を妨げていたのだ。
「だけど、どうしろって言うんだよ!攻撃技も使えないなんて!」
そう言って腰に付いているボールを恨めしそうに見つめる。
最初は誇らしかったエムリットも短パン小僧に散々打ち負かされた今となっては只のピンク海月にしか見えなかった。
(ポケモンを捕まえようとしても体力を削れないしボールは当たらないし・・・)
彼の-思考モードが完全に始動してしまったようだ。
「やっぱり僕は駄目なんだ、この世界でも負け犬まっしぐらなんだぁ!」
布団を頭まで深く被る。
――もう諦めてしまおう。
無理やり眠ろうとする・・・意識が少しずつ遠のいていき、そして・・・


「カラナクシ、濁流だぁ!」



「ド、ドラえもん?」
慌てて布団を放り投げ辺りを見渡す。
だが、部屋の中にあの青狸の姿はない。
「一体どこに・・・」
次の瞬間、のび太は言葉を失った。
消し忘れていたテレビの中でドラえもん、そしてのび太の将来の婚約者しずかがポケモンバトルをしているのだ。

「な、何で二人が・・・?」
慌ててテレビの目の前に座るのび太。
画面の右上には『新人トレーナー、謎の青狸ポケモン現る!?』という文字が出ている。
「いいぞ、カラナクシ、その調子だ!」
ドラえもんに褒められたカラナクシは自慢げにこちら
「ポッチャマ、大丈夫?」
濁流を受けたポッチャマは少し苦しそうだったがそれでも主人のために立ち上がる。
その意思が通じたのかしずかが笑顔になる。
「ありがとう、ポッチャマ・・・泡攻撃よ!」
「カラナクシ頑張れ!水の波動だ!」
二匹の攻撃が激しくぶつかり合う・・・そして次の瞬間――



「・・・・・・」

のび太はテレビの電源を切った。
そして糸が切れたように再びベットに倒れこむ。
(何やってるんだ僕は・・・一人で調子に乗ってみんなに追い抜かれてそれを全てエムリットのせいにして・・・)
思えばエムリットはこの世界でのび太のピンチを助けてくれた命の友人だ。
それなのに自分は・・・
「伝説ポケモンを持っているとか言う前に完全に他のみんなと負けてるじゃないか!」
そう言葉に出した瞬間、のび太の中で何かが目覚めた。

「エムリット、出てきてくれ!」
ベットから起き上がりボールを足元に落とす。
そして出てきたエムリットは何故か目を伏せていた。
「エムリット、何で目を伏せてるんだい?」
のび太が尋ねるがエムリットは更に目を伏せてしまう。
最初は良く分からなかったが、ようやくのび太はピンと来た。
「ひょっとして今日バトルで何回も負けたから僕が怒ってると思ったの?」
その言葉を聞いたエムリットが小さく頷ずく。
「大丈夫、怒ってないよ・・・それより今から手伝って欲しいことがあるんだけど」
のび太とピンク海月の逆襲作戦が始まろうとしていた。



~クロガネシティのポケモンセンター~

「それでは、最後にカメラに向かって一言どうぞ!」
「はい、えっとこれからチャンピオン目指して頑張りたいです」
「そうですか、頑張ってくださいね!それではこちらの着ぐるみの方も感想を――」
「中の人などいない!・・・じゃなくて、僕も頑張ります」
「というわけで今日の期待の新人は『しずかさん』と『ドラえもん』でした~!」

のび太が途中まで見ていた「シンオウnow」という人気番組がテレビで流れている。
そしてこの番組を観ながら、何かを思案するような表情をしているのは・・・出木杉だ。
(これは生放送じゃないようだな・・・建物の中だったから断言できないがさっきのバトルは4時~5時に撮ったものだろう)
テレビを見ている時もしっかり敵の分析をしていたらしい。
(つまりだ、何処かで道草を食っていない限りこの二人はクロガネシティにいる可能性が高――)
突然、隣の部屋から大きな声が聞こえてきた。
「なんだよスネ夫!一緒に部屋使った方が安いだろうが!」
「何言ってるんだよ、ジャイアンと一緒の部屋で寝るなんて拷問に等し――」
荒々しい声と生意気そうな声、そして正義の鉄槌の音がポケモンセンター内に響く。
(・・・これで4人の状況は分かったな)
唯一のび太の事だけは全く分からないが彼は特に気にも留めなかった。
「フフ、『コールバッジ』を手に入れている時点で僕が1枚上手・・・勝つのは僕だ」
そう華麗に決めて、出木杉は早めの就寝に就くのだった・・・。


深夜にジャイアンのいびき地獄を食らうことも知らずに。



――夜

「ふぁっくしょん!・・・ふふ、どうやらあいつらはいなくなったみたいだな」
夜風に体を震わせながらも得意げに笑うのび太。
真夜中に一人笑う姿は傍から見ればなんとも不気味だろう。
最も、本当に誰もいないんだから気にする必要が無い気もするが。

「僕の全財産の半分を削った奴らに逆襲できないのは残念だけど・・・まぁいいや、勝利は目前だ!」
暗闇の中でそう言い放った後、のび太の『作戦』は開始された。

のび太が最初に向かったのは草むらだった。
「う~ん、中々出てこいな」
暗闇の中を必死で目をこらしながら歩き回るのび太。
何を探しているかは・・・大体草むらという時点で大体分かるだろう。
そして、数分後。

野生のムックルが飛び出してきた!

「ムックルか・・・色々と嫌な思い出があるけどゲットするには申し分ない!」
そう言って彼が華麗なフォームでボールを投げる。
出てきたのは勿論――

「感情の神エムリットおおおおおおお!すごいぞ~かっこいいぞ~!」
今日散々打ち負かされたトレーナーとは思えないハイテンションっぷりだ。



「いいね、エムリット。作戦通りにいこう!」
のび太の言葉にしっかり頷くエムリット。
その姿からはもう期待は裏切りたくないという主人への想いが感じられた。

そんなエムリットが最初にした行動とは・・・
「あいつの周りを飛び回れ!」
エムリットが俊敏な動きでムックルの周りを飛び回る。

当然ムックルは攻撃をしかけてくるが、伝説のポケモンだけあって中々攻撃を当てることができない。
その光景をのび太は真剣な表情で見ていた
(エムリット・・・もう少し耐えてくれよ!)
必死にその様子を見つめるのび太の右手にはモンスターボールが握られていた
(ここでポケモンを捕まえれなかったら・・・もう僕は本当に負け組みじゃないか!))

そう自分を奮い立たした直後。
(エムリット!)
ムックルの体当たりがとうとうエムリットに直撃したのだ。
更にその一発でエムリットがよろめいた所にムックルが一気に追撃をかけてきたのだ。

「エムリット、大丈夫――」
声は途中で途切れた。
必死にムックルの攻撃を避けながらも、エムリットがこちらを見つめているのだ。
その眼差しは・・・のび太を信じきっている。

「分かった、エムリット。今がチャンスって言いたんだね」
小声で呟きボールをしっかり握り締める。
決める!

すっかりエムリットへの攻撃に夢中になっているムックルに狙いを定める。

――そして
「いけぇ!モンスターボール!」



「アハハハ、エムリット。見てよ、あんなに買い溜めしたのにもう一個だよ」

のび太の作戦は上策だった。
攻撃できないとは言え伝説のポケモンのエムリットに攻撃を受けさせる。
そして注意を引いた所でのび太が野生のポケモンに近づきボールを投げる・・・単純だが最も効果的だ。
だが、この作戦には予想外の穴があったのだ。

のび太の悲惨すぎるボールコントロールだった。

いくら近づこうとも何故かボールは明後日の方向へ飛んでいき、そしてポケモンはのび太に気付き逃げ出す・・・。
これを10回ほど繰り返しているうちにボールと時間だけが過ぎていったのだ。

「はぁ・・・もう、コトブキシティまで行こうか」
のび太が諦めの言葉を吐く。
今ここでポケモンを手に入れないと自分の旅が終わってしまうのは分かっている。
だが、散々歩き回った疲労と眠気が彼を蝕んでいたのだ。
「馬鹿だなぁ・・・やっぱ僕は駄目なんだ・・・」
激しく落胆するのび太にエムリットが駆け寄ってくる
「君のせいじゃないよ、全て僕の責任問題――いてっ!」
突然ピンク海月が頭を突いて来たのだ。

「な、何するんだよ!急に」
文句を言おうとしたその時、のび太の耳に鈴のような音色が入ってきた
「この音、綺麗だなぁ」
体を癒してくれるような音色に思わず聴き入るのび太。
どうやら音の発信源は茂みの中のようだ。
「なんか気になるな・・・見に行こうか」
そうのび太が言うや否やエムリットが某電気鼠の如く彼の肩に乗っかってきた。
どうやらエムリットがのび太を小突いたのはこれが理由らしい。

こうして、一人と一匹は謎の音の正体を調べることになったのだった。
そんな事してる暇あるのか?