※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。


~荒筋~
いつもと同じ日常に嫌気がさしたのび太少年はドラえもんの道具を使い、この世界をポケモンの世界に変えた。
そして彼はトレーナー試験の存在を知り、それを受験する事を心に決める。


No.004『INVITATION』



トレーナー試験。

年に一度、各地方及び各地域で開催される一大イベント。
その試験には老若男女問わず様々な人々が受験しにくる。
故にその倍率は5000倍を超える物であり、トレーナーの資格は弁護士、税理士等の数ある資格の中でも最も難易度が高い。
にも関わらず、小学生や老人まで参加してくるのは、それは単なる試験ではなくポケモンと触れ合うイベントという側面を併せもっているが故だろう。

参加するのも簡単。
参加申し込みの電話と書類を送れば、100%と言って良いほど参加が許可され、試験前日に招待状が送られてくる。
それは、かののび太少年も例外では無かった。

ここからはまた、のび太少年の視点で話を進めてみよう。



「…………うーん……」
僕はむずがゆい気持ちに唸り声を上げる。
今は試験前日の夜。
そろそろ「招待状」が送られてきてもおかしくない。
しかし、僕の家には僕のはおろか、ドラえもんの「招待状」さえ送られて来ない。

不安から僕はドラえもんにつっかかる。
「いったいどうなってんの!?
ドラえもん、本当に申し込みしたの!?」

「したよ!もうちょっと待てないのかい!?君は!?」
ドラえもんもピリピリしている様子。
彼も緊張してるのかな。

険悪なムードの中、僕らは十分おきに交代交代ポストの中を確認しに行くが、中は常に空っぽ。

あと一時間待って、来なかったらキレようかなと僕が思った時だった。
ドタバタという音を立てながら、ドラえもんがポストの確認を終え帰ってきた。
「着いたよ!」
手を見ると二枚の紙が握られている。
恐らくそれが「招待状」だろう。
「よかったぁ~…」
僕は喜びの声をあげ、ドラえもんから「のび太様宛て」の招待状を受けとる。

黒と緑に縁どられた単純なデザインのそれは招待状と呼ぶには些か質素で、特筆すべき点といえば真ん中に「集合場所:東京ドーム 開催時間:AM9:00」と小さく書いてあるだった。



「なんか貧乏臭いなあ……。
もっと派手だと思ったのに。
それに何?集合時間が9時って。」
僕は愚痴を溢す。
招待状は貧乏臭いし、この時間は嫌がらせとしか思えない。

僕がぶつくさ文句を言ってると、突然ドラえもんは怪訝な顔付きでこっちを見つめてきた。
「何?」
僕は彼の視線が気になり、訊く。
ドラえもんは驚いた表情で僕に言った。
「のび太君。君、今集合時間が9時って言った?
おかしいなあ。僕の招待状には昼の12時からって書いてあるよ。」
「えっ?」
僕はドラえもんの招待状をひったくり、その中心に目を走らせた。
それには間違いなくAM12:00との記述がある。
しかも、集合場所は渋谷のセンター街とある。
「おかしいなあ?僕が間違えたのか?」
僕は自分を疑い再度自分の招待状を確認する。
しかし、それの内容は以前見たそれと全く変わらなかった。

僕とドラえもんで集合場所も集合時間も違う?
訳が分からない。どっちが本当なの?

僕の脳はパニックを起こす。
すると、腕組みをして考えてる僕にドラえもんが自らの見解を述べた。
「きっと、会場が分かれてるんじゃないかな?」



「それだ!」
僕は相槌をうつ。
成程。確かに会場を区切れば大人数を一気にさばけるし、人見知りの人同士で協力しあうことを出来ないようにすることも出来る。

「それにしても……9時は酷い。」
僕の気持ちは既に明日の朝の気分だ。
起きれるかなぁ。

僕が沈んでいるとドラえもんは僕の肩を叩き、言った。
「まあまあ、君は明日が早いんだから早く寝なよ。
布団は敷いてあげるからさ」
ドラえもんは押し入れから布団を取り出し、畳の上に敷いてくれた。
確かに何時までもグジグジ言ってたって仕方ない。
今は明日に備えて寝よう。
「ありがとう。おやすみ。」
「おやすみ。明日は頑張ってね!」
僕はお礼を言って目覚ましをセットし布団の中に潜りこんだ。
明日の事を考えると少々寝苦しかったけど、眠りに定評のある僕は一分足らずで意識を吹っ飛ばす事に成功した。



試験前日の夜。他の受験者達も明日の試験に向けて英気を養っているだろう。


試験は既に始まってることも知らずに。



No.005 『TOKYO通信』

東京ドーム。

日本有数の観客収容力を誇る、言わずと知れた読売巨人軍の本拠地でありノンプロの方々の甲子園的な場所でもある。
この広大な球場はただ、野球のみに使われるのではなく、ボクシングのタイトルマッチや、アーティストのコンサート会場と、色々なイベントを執り行う施設になっていて、毎日人の出足が絶えない。

そんなモンスタードームに、今日も人々は続々と詰め掛ける。
しかし、その人々の目的は、阪神×巨人戦でも無ければ、ローリング・ストーンズのコンサートでもない。

己の夢、ただそれだけである。

そしてその中には我らが主人公、野比のび太も例外に漏れずやって来ていた。

「あ、あ、あ、あ、あ」
ドームの前で奇声を発するのび太少年。
無理も無い。
筆者も、初めて東京ドームに行った時、余りのインパクトに少なからずヒビった経験がある。

しかし、彼が驚いているのはその事では無い。

余りの人の多さに驚いているのだ。

「大丈夫かなぁ……。」
弱気なのび太は呟く。
見渡す限りで既に一万人は超えているだろうその人数。
倍率が懸念されるのと共に、そんな中に知り合いも無く放り出された不安も襲ってくる。



そもそものび太は、一人で遠くに出掛けた経験がこれといって無い。
空き地の土管に家出するような人間である。

「はぁ、こんな時にドラえもんが居てくれたら……。」
のび太の半ベソをかき、吐いた愚痴がため息になった時だった。

ふと、目の前を見るとアカの他人の山の中に、見知った顔が一つ。

団子っ鼻の小学生らしからぬガタイ、オレンジのシャツ。
そして何よりあのゴリラ顔。
あれはまさしく……
「ジャイアン!!」
である。

「のび太じゃねえか!」
のび太の呼び掛けが聞こえたのか、ゴリラ顔、もといジャイアンは人波をかきわけのび太の元へとやって来た。そしてのび太に言う。
「お前も試験に参加すんのか?」
のび太は、うん、と答えるとジャイアンは辺りを見回すとのび太に抱きついてきた。
ジャイアンの体からはちょっと酸っぱい臭いがした。
「おお!不安だったぜ!心の友よぉ!!!」



よくよく聞いて見ると、クラスでここが試験会場であるのは、のび太とジャイアンだけらしい。
体は大人とはいえジャイアンもやはり小学生。
心細さを隠せなかったのだろう。

これで、孤独の心配は無くなった。
のび太はそう思った。
すると、
「ゲート開きまーす!持ち物検査を行うので順番に並んで下さい!
プラスチック、金属品等は外しておいて下さーい」との声がした。
どうやらやっとゲートが開くらしい。
ジャイアンはゲートを指差して言った。
「おっ、入場ゲートが開いた様だな。
いくぜ、のび太。俺様についてこい!」
突然ガキ大将の風格を取り戻したジャイアンに、のび太は少し吹き出しそうになった。

二人はゲートでの持ち物検査が終わると駆け足でドームの中に向かった。



ドームの中は凄かった。
だが、単にドームの装飾や広さや看板が凄かった訳では無い。
そこを埋め尽す人の数が異常だったのだ。
「…………すげえ。」
ジャイアンはドームの観客席から感嘆の声を上げる。
流石の彼も三万人はいるであろうその中に、少なからず驚異を感じている。

「これから試験が始まるのか……。
なんだかなぁ。」
のび太お得意の弱気が始まる。

いつもはそれを「ばかやろう!」と打ち消すジャイアンも、今はそんな気分になれなかった。
やかましい会場の中、沈んだ気持ちになる二人。
しかし、それで潰れるジャイアンではない。
ジャイアンはのび太に言った。
「まぁ、沈んでても仕方ねぇぜ!俺達は俺達で頑張ればいいんだ。
一次位は突破して……」

「アハハハハハハハ。
それは無理だね。
一次試験は君達みたいな劣等生を叩き落とす為にあるんだ。」

突然、ジャイアンの言葉を何者かが遮った。
のび太とジャイアンは驚いて、その方向を見つめる。

すると、そこにはつり目で口のとんがったスネ夫的なオーラを持つ人物がいた。
「ズル木……。」
のび太は言う。そう、彼は隣のクラスのズル木だった。
ジャイアンは言う。
「それはどういう意味だ……?」



彼のその口調は文字にすると、落ち着いてる様に見えるが、ジャイアンは指をポキポキさせ臨戦体勢に入っている。
返答次第ではぶん殴る、そんな感じ。

ズル木は言った。
「おっ、おっ脅しても怖くないぞ!
おっ、おっ、お前らみたいな塾も行ってない馬鹿がパスできる試験じゃないんだよ!
このゴリラ!」
「な ん だ と !!!!!!」
しかし、このズル木少年。
中々のしたたか者である。リアルファイトでは勝てないのを熟知している彼はそう言い捨てると、細身を利用し人波に逃げ込んでしまった。
ジャイアンは構わずそれを追い掛けようとする。
「ズル木!殺してやるぅ!」
「ま、まずい、こんなとこでジャイアンが暴れたら……」
暴れ牛の様に興奮するジャイアンをのび太は食い止めようと努力した。

ゴチン!

ジャイアンのフラストレーションは、ズル木の代わりにのび太の頭で晴らされる事になった。

「ひっ、酷い……。」
「おい、のび太、ちょっとアレを見てみろ。」
のび太が今日二度目の半ベソをかいたとき、バックスクリーンの電光掲示板にある人影が映し出された。



その映し出された人間は、ペコリとお辞儀をする。

邪馬台国人の様な特徴的な髪型に、地味な色の服。
のび太はその人間に覚えがあった。
「あれは………。」

のび太が言うが早いか、いつもはウグイス嬢のコールに使われるスピーカーから、女の声が響いた。
『お集まりの皆様、今年もトレーナー試験にご参加頂きありがとうございます。
私は、協会公認のカナズミジムリーダーのツツジです。』
「ツツジ?知らねえな。」
ジャイアンが呟く。
どうやら彼女はこの世界でも地味な存在らしい。

放送は尚も続く。
『第一次試験の試験官は、この私が務めさせて頂きます。
どうぞ、皆様、どうか観客席からグランドの方へお集まりください。』
プツン。

ここでアナウンスは終わった。
周りの人達が一斉にグランド内に詰め寄せる。
「のび太、早く行こうぜ。」
「うん。」
のび太達も人混みの中、グランド内へ向かった。



グランド内に人が移動してから10分、未だに次の放送は無い。

ガヤガヤ、ガヤガヤ、。

「なんか……訳が分かんねえな……。」
人波に揉まれながらジャイアンが呟く。
「アナウンス……始まらないね……ぶごっ!」
のび太の鼻に誰かの肘が当たる。
のび太はその肘の主を探すが、分からない。
それほど混雑しているのだ。
「ベゲッ!」
ジャイアンもまた、その洗礼を受ける。
「くそっ!誰だッ!
居ねえッ!今度見たらギタギタにしてやるッ!
チクショウ!それもこれも……」

あの地味な姉ちゃんのせいだ!
ジャイアンがそう言おうとした瞬間、やっと電光掲示板に再びツツジの姿が映し出された。
スピーカーから、また声が響く。
『みなさん、大変長らくお待たせいたしました。
これから、第一次試験を開始します。
みなさん、足元をご覧下さい。』
「足元だって?」
のび太はそう言われ、足元を見る。
すると、みるみる内に、グリーンの芝生が赤色に変色してゆく。
「なっ、なんじゃこりゃあー!」
ジャイアンは叫んだ。
周りからもどよめきが聞こえる。
『みなさん、お静かに。』
騒ぎの静まらぬ中、ツツジは一呼吸おくと、言った。
『これから第一次試験の課題を発表します。
第一次試験の内容は、○×クイズです!』


No.006『○(マル)』


「○×クイズだって!?」「え~、今年は一次突破しないとポケモンを使えないの?」「ククク……私の知識を見せる時が来たか……。」「っていうか足元の芝生の色が……。」「○×クイズ?ガキのお遊びじゃねえんだぞ!」

突然の一次試験課題の発表に騒然とする場内。
「クイズか……。」
のび太は誰ともなしに呟く。
どんな問題が出題されるのだろう。やっぱり、廃人めいた事が出題されるのだろうか。

のび太がそんなことを考えていると、またもやスピーカーからツツジの声が響いてきた。

『えー、皆さん御静聴お願いします。
ただいまより一次試験のルールを説明致します。
皆さま、とりあえずお足元をご覧下さい。』
そう言われ、参加者は一斉に下を向く。
上空から見たら、おそらく黒一色に染まるグラウンドが見れただろう。
ツツジは続ける。
『今、お足元が赤い方と青い方の二通りの方がいらっしゃると思います。
今回のクイズはその色で○×を判断したいと思います。
赤い方は○、青い方は×とお考え下さい。』



「成程……と、いうことは今俺達が立ってる所は『○』のエリアということだな。」
ジャイアンが呟く。

『思考時間は三十秒。
問題は参加者の数がある定数を下回るまで出題されます。
ちなみに、問題に不正解なさりますと、お足元の床がワープ床に変わり、会場の外へと連れ出されます。
分かりましたか?』


ワープ床?ヤマブキジムやトクサネジムにあったアレかな?
のび太はそう考える。ポケモンの世界の科学の力って、スゲー。

『それではこれから一分後に第一問目の問題が出題されます。
みなさん、どうかそのままでお待ち下さい。プツン。』
騒然とした場内の中、放送が止んだ。

「ワープ床か……。
無駄に金かけてんな……。
そんなのに金かけるんならもっと広い会場にすれば良かったの……ブベッ。」
混雑した会場の中、ジャイアンの顔に今日四度目の肘打がとんだ。



東京ドームのある控室。
通常、ここでウグイス嬢が声を響かせているのだが、今日は特徴的な髪型のその本来の主ではないものが、そこを支配している。
「今年は何人残るかしらね……。」
邪馬台国みたいな髪型の女はそう呟き、腰を降ろす。
彼女の名前はツツジ。カナズミジムリーダーであり、今回の試験の一次試験官である。

「まだかしら……」
ツツジは足をまるでリズムをとるドラマーの様にぱたつかせている。誰かを待っている。そんな感じ。
そのリズムが最高潮に加速したとき、不意に扉が開いた。
「遅いわ!あと数十秒で出題よ!」
「すみません!ツツジさん。」
出てきたのはのび太達と余り歳の差は無いであろう一人の少年。上半身は半袖、下半身はトレードマークの短パンをはいている。
名をゴロウといった。
彼は去年、一発で試験をパスした言わばエリートな短パン小僧である。
カナズミジムに所属しており、ツツジの試験官の任務を補佐する役目に就いている。



そのエリート短パンは言う。
「しっかし、今年は異様に受験者が多いですねー。捌くの面倒じゃないですか?」
「そうでもないわ。
私達はただ問題出しながらモニター見てればいいだけだし。それに……。」
ツツジは下目使いにモニターを見やる。顔は軽く笑っている。
「これだけ人がいれば面白い人も沢山いるわ。
まぁ、充分な楽しみとして受け入れられるんじゃないかしら。
あなたは嫌い?他人が慌てるのを見るの。」
人間観察。ツツジの好きな事の一つである。

『暗い人だなあ。』
ゴロウはそう思った。

「それにゴロウ。この○×クイズがただの○×クイズだと思ったら大間違いよ。
この試験はただ知力のみを試すものじゃないんだから。」
ツツジは椅子から立ち上がる。

『ただの○×クイズじゃない?どういうことだろう?
ツツジさんの考えなんて分かんないや。』
ゴロウはそう思った。少々根の曲がった女であることは一年間の付き合いで分かっている。
どうせロクでも無いことだろう。

怪訝な目を向けるゴロウを見やると、ツツジはマイクを握る。
「一つの物に見とれてては物の本質なんて一生分かんないわよ。さて、と。」
ツツジはそう呟くとマイクのスイッチを入れた。
『それでは第一問―――』