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本来なら、高らかに勝利宣言をするところだ。
だが、審判は黙っていた。
「審判さん。勝利宣言は?」
まどろっこしそうに聞くリン。
だが、審判は首を横に振ったまま何も言わない。
あんな光景を目の当たりにして、口を開けなかったのだ。
「しょ、勝者……」
体をブルブルと震わせ、小声を出す審判。
「勝者……リン選手」
それを聞くと、リンは満足げな顔をして闘技場を出ていった。

ドーム観客席。
「そんな……ウソだよね?」
信じられないという表情ののび太。
そして、すぐさまのび太は駆け出した。
「うわあああああっ!」
猛スピードで階段を駆け下りるのび太。
だが、彼の足はそこで止まった。
「離せよ!離せってば!」
のび太を掴んでいるのは、出木杉。
そして、出木杉はゆっくりと口を開いた。
「やめておいたほうがいい。決着は……バトルでつけよう」
のび太はその場に崩れ、ありったけの涙を流した。



同時刻、闘技場の方では準決勝の説明が行われていた。
「……準々決勝は明後日の9時となっております」
だが、会場は沈んでいた。
さっきのバトルのせいである。
「では、組み合わせを発表します」
司会の声と共に、モニターに組み合わせが映る。
そこにはこう書かれていた。

第一試合 のび太VS出木杉
第二試合 スネ夫VSリン

トクサネシティの宿。
試合を終えたのび太達は、一旦ここに戻ることにした。
「はぁ……」
まだ涙を流しながら、仰向けになっているのび太。
そんな時、突如として部屋の窓が破られる。
そこにはエアームドがいた。
「君は……?」
よく見ると、ダイゴのエアームドに似ていた。
「あっ……」
ついてこい!と言わんばかりに飛び立つエアームド。
のび太は宿を出て、その後を追っていった。



「待ってよ!エアームドー!」
のび太の叫びも虚しく、エアームドは海の方向へ飛んでいく。
「仕方ない……いけ、ペリッパー!」
のび太もペリッパーに乗り、海に繰り出した。

トクサネシティ周辺の海底。
エアームドにここで潜れ、と促されたのび太の行きつく先はここだった。
「ここは……まさか!」
のび太はその場所に見覚えがあった。
「……デボンの本拠地?」
そう、前に乗り込んだデボンの本拠地だ。
のび太は奥へ進むことにした。

「んー……」
ひたすら奥へ進むのび太。
その頃の記憶がだんだんと蘇ってくる。
「ここでジャイアン達が食い止めて……」
そんな時、のび太は古そうな机の上にある小さなノートを見つけた。
「これは……?」
のび太は何故か興味をそそられ、ゆっくりとノートを開いた。



ノートに記述されていたことは以下の通り。

1ページ目。
今、この世界に危機が迫っている。
早く、一刻も早く英雄達を仲間にしなければならない。

2ページ目。
父さんの水晶玉に映っていた子供達。
父さんの話によると、彼等がこの計画の障害になるらしい。
僕も詳しいことはわからないが、彼等がこの世界を救う英雄なのかもしれない。

3ページ目。
彼等の仲間と思われるロボットが捕らえられた。
そのポケットの中には、様々な道具と思われるものがある。
それも、化学では証明できていない原理のものばかりだ。
もしかしたら、このロボットが……。

4ページ目。
父さんとの密約者、リン・サブラスがロボットのことを聞きつけた。
どうやら、このロボットは自分のものにするらしい。

5ページ目。
行動は早く起こさないと意味がない。
英雄と思われる彼等のうちの一人、眼鏡をかけた少年の力量をはかった。
その為に、あのロボットが持っていた道具を使ってあのロボットに成りすましたが……。
今はまだ未熟だが、ひょっとしたらこの子かもしれない。



6ページ目。
計画が段々と進行してきている。
また行動を起こさないとならないようだ。

7ページ目。
前戦った眼鏡の少年と戦ってみたが……あまり進歩はない。
ポケモンを託し、僅かな望みにかけることにした。

8ページ目。
ついに計画が実行された。
ギリギリの所でコールをかけたから何とか食い止めれたが……。
その後、例の少年達と会った。襲撃は明日だ。

9ページ目。
襲撃は成功した……だが、父が殺され、リン・サブラスは消えていた。
不成功というべきなのかも知れない。

10ページ目。
チャンピオン・リーグが開始された。
僕が巻いた種なんだ。リン・サブラスには必ず勝つ。
だが、もし勝てなかったら、その時は……

記述されているページはそこまでだった。
その時は……の後には何か書いているような跡があったが、綺麗に消されていた。



「これは……ダイゴさんのノート……」
のび太の頬を涙が伝う。
「ダイゴさんは……ずっと僕らを見守ってくれてたんだ……」
流れる涙の勢いは、強まるばかりだ。
「ああ、ダイゴさん……」
暗い暗い部屋の中に、少年の泣き声が響き渡った。

トクサネシティ。
真っ暗闇の中、のび太は宿へ戻る。
そして、ある決意を固めた。
『ダイゴさん……僕、勝つよ。絶対に優勝してみせるからね』
そのまま目を閉じ、深い眠りにつく――

その翌日に、のび太は皆にその事を伝えた。
「そうだったのか……」
出木杉が悔やむ。
すると、のび太がゆっくり立ち上がった。
「どこいくんだよ。まだ朝だぜ?」
呆然とするジャイアン。
「修行してくるよ。誰にも負けないように、ね」
のび太はそう言い残すと、部屋を出ていった。



スネ夫の部屋。
ここで、スネ夫は一人考えていた。
『僕が戦う相手は、あのリン・サブラス。ダイゴさんを上回る実力者だ』
スネ夫の頭の中に絶え間無く不安が過る。
だが、無理も無いだろう。ダイゴとのあんな試合を見せ付けられた後なのだ。
ひょっとすると、自分の命まで奪われてしまうかもしれない。
スネ夫はそれを恐れていた。
『僕はまだ……死にたくない。こんな所で死ねるもんか。でも……』
負ければ、多分死ぬ。
今のスネ夫には勝つ自信が無かった。
『だけど、僕は勝たなくちゃいけないんだ』
モンスターボール1個1個の感触を確かめるスネ夫。
そして、自らを奮い立たせた。
『相手が誰であろうと負けないさ。僕は……勝つ』
ゆっくりと立ち上がり、ボールを持つスネ夫。
そのまま扉を開け、部屋を後にする。

『さぁ、ラストスパートだ』
太陽がじんじんと照りつける中、スネ夫は最終調整に臨んだ。



サイユウシティ。
のび太は一通りの修行を済ませ、ドーム観客席へ向かった。
『明日、ここで出木杉とバトルか……』
のび太が思案に暮れている時、突如としてその視界に何かが入った。
いつしか見た、オレンジ色の髪の少女。
『まさかっ!』
のび太は咄嗟の判断で、その少女の元へ走っていく。

ドーム闘技場。
「はぁ……はぁ……」
そこにいたのは、リン・サブラス。
のび太の予想通りだった。
「あら、前に会ったわね」
オレンジ色の髪を靡かせるリン。
対して、のび太は怒りで震えていた。
「お前……お前が……お前が、ダイゴさんを!」
力任せに殴りかかろうとするが、止められる。
「邪魔だったから消しただけよ。悪い?」
悪びれもなく言う少女、リン。
のび太は再び手を構え、リンの顔面を殴ろうとした。



「無駄よ。やめておきなさい」
のび太の拳は容易く掴まれる。
すると、のび太は小さく口を開いた。
「……んで……」
「え?」
「……なんで僕達の目の前に現れたんだ!」
そう、それはミュウツー襲撃事件の時だった。
「あの時の君は、凄く楽しそうで、純粋で……何でなんだよ!」
のび太の目には涙が溜まっている。
「何で……こうなっちゃったんだよ……」
拳を握り締めるのび太。
それを見て、リンは吹き出した。
「……ププッ!アハハハハハ!面白いことを言うわね、あなた……」
リンは何とか笑いをこらえようとしている。
「あれは演技よ、演技。
あなた達がここまで来ることはわかっていたわ。
私が優勝してこの世界を壊そうとしている事も知ってるんでしょ?
だから、予めああしておいたのよ。
なんか、裏切られた気分でしょ?アハハ!私はそういうのが好きなの。
物凄い快感よ。たまらないわ。アハハ!」
のび太はただただ黙っていた。
握った拳を必死に押さえながら……。



「あら、今度は殴らないのね」
リンがいうと、のび太は顔をあげる。
「ああ。決着はポケモンバトルでつけてやる。お前みたいな奴には……絶対負けない」
のび太は夕日を背に、ドームを後にした。

トクサネシティ。
ペリッパーに乗って戻ってきたのび太は、真っ先に宿へ向かう。
そして、自分の部屋に入った。
『いよいよ明日か……。今日は早めに寝よう』
布団に入り、グーグーと寝息を立てるのび太だった。

燦然と輝く綺麗な星空。
月明かりを受け、煌びやかに光る海。
今日は、いつもと比べて賑やかな夜だった――



ドーム闘技場。
「ワー!ワー!ワー!ワー!」
会場全域に響き渡る観客の声。
何せ、今日は準決勝なのだ。
「では、選手入場です!」
右サイドからのび太が、
『僕は勝つ。出木杉に勝って、あいつを倒さないといけないんだ』
左サイドから出木杉が出てくる。
『野比君。悪いが、ここで散ってもらうよ』
両者がそれぞれの位置につく。
そして、審判が大きく旗を上げた。
「では、準決勝第一試合……始め!」
両者、ボールを放つ。
「ペリッパー!」
「ヘラクロス!」

ドーム観客席。
「ついに……始まったね」
スネ夫が言った。
だが、彼としては他人の試合を悠長に見ている場合じゃなかった。
『やる事はやったんだ。今は……見よう』
スネ夫は震える足を押さえ、闘技場を見つめた。



「つばめがえし!」
二撃目を食らい、倒れるヘラクロス。
『チッ、相性が悪かったか……』
「次はお前だ……ボーマンダッ!」
繰り出されたのは青き竜、ボーマンダ。
「ドラゴンクロー!」
必殺の一撃がヒットするも、ペリッパーは持ち応えていた。
「そんな!」
見ると、ペリッパーの羽には一本のハチマキが結び付けられている。
「くそ、きあいのハチマキか……」
悔やむ出木杉に追い討ちをかけるように、冷凍ビームがボーマンダにヒットする。
だが、それを持ち応えたボーマンダは二撃目でペリッパーを沈めた。

「頼んだよ、アブソル!」
のび太が次に選んだのはアブソルだった。
『アブソルか……。かわらわりで仕留めてやるよ』
「かわらわりだ!」
ボーマンダの手刀がアブソルを襲う。
だが、アブソルはギリギリの所で持ち応えた。
『攻撃力の高いアブソルでも、一撃では仕留めきれないハズだ。次のかわらわりで決める!』
しかし、出木杉の考えは脆く崩れ去ることとなった。
「アブソル、冷凍ビームだ!」
4倍ダメージ。ボーマンダは沈んだ。



「冷凍ビーム……だと?」
まさかアブソルが特殊技を使ってくるとは思わず、呆然とする出木杉。
対して、のび太はニヤニヤ笑っていた。
「僕だって、何も考えずに技を覚えさせているワケじゃないさ」
そう、のび太はデボンの本拠地で出木杉と戦い、その後の出木杉とダイゴの戦いを見ている。
「ボーマンダとレックウザ……二匹とも氷に極端に弱いからね」
のび太はこの出木杉戦のために、特別にアブソルの技を変えたのだ。
「くそ……なら、サクラビスだっ!」
サクラビスの耐久力なら、確実に一発は耐える。
そして、返しの一撃でアブソルを倒すのが出木杉の考えだった。
「アブソル、シャドーボール!」
黒い玉が綺麗にヒットする。
だが、それなりのダメージを与えただけで致命傷には至らない。
「トドメだ!波乗り!」
サクラビスが強力な波を起こす。
その波に飲み込まれ、アブソルは体力を失った。

ドーム観客席。
「すげえよ、二人とも……。まさかのび太が出木杉と対等に戦えるなんてな」
感嘆の声を漏らすジャイアン。
スネ夫もそれに続く。
「強くなったな、のび太……。このままいけば、もしかしたら……」
「出木杉さんに、勝てるかも知れないわね」
しずかが更に続いた。



続くベトベトンのヘドロ爆弾によって、サクラビスの体力が奪われる。
『ベトベトン……厄介なポケモンだな。だが、対策がないワケじゃない』
「いけ、サーナイト!」
当然といえば当然なのだろう。
出木杉はタイプ的に有利なサーナイトを繰り出した。
「催眠術だ!」
案の定、催眠術は見事にヒットしてベトベトンを眠りにつかせる。
『後は補助技を積んで、押し切るだけだ』
出木杉が薄ら笑いを浮かべる。
――だが、それはすぐに不安の表情になってしまう。
「甘いよ、出木杉」
ニヤニヤと含み笑いをするのび太。
そう、ベトベトンは起きていたのだ。
「眠気を覚ます木の実……というわけかい」
驚く出木杉を他所に、ベトベトンのヘドロ爆弾がサーナイトの体力を奪った。
「まさか、君相手にここまで追い詰められるとは……いけ、リザードン!」
出木杉は空高くボールを放ち、リザードンを繰り出した。
「地震だっ!」
地響きが起き、衝撃波がベトベトンを襲う。
ベトベトンはヘドロ爆弾で抵抗するも、次の地震でやられてしまった。
そして、のび太が次なるボールを放つ。
「頼んだよ!ハリテヤマッ!」



「食らえ!つばめがえし!」
先手必勝、リザードンが一撃を加える。
だが、一撃では倒せなかった。
「ハリテヤマ……がんせきふうじ!」
「しまった!」
反撃のがんせきふうじを受け、リザードンが沈む。
そして、出木杉は最後のボールに手をかけた。
「いけ……レックウザ!」
最後はやはり、切り札のレックウザ。
甲高い咆哮を響かせ、その威容をあらわにする。
「コイツは一筋縄じゃいかないさ……つばめがえしっ!」
レックウザが一瞬でハリテヤマの目の前に現れる。
そして、その長い尾を振り下ろした。
「……何!まだ倒れないのか!」
舌打ちをする出木杉。
ハリテヤマはまだ倒れていなかったのだ。
「どういうことだ?リザードン戦の蓄積ダメージを考えれば倒れるハズなのに……」
そんな出木杉に対し、のび太が答える。
「ハリテヤマの首を見てみなよ、出木杉」
首で促すのび太。
ハリテヤマの首には、貝殻でできた鈴があった。
「貝殻の鈴……か」
歯噛みする出木杉と、自信に満ちた表情ののび太。
いつの間にか、試合はのび太ペースになっていた。



「ハリテヤマ、にほんばれだっ!」
ハリテヤマが天に手をかざし、日差しを強くする。
「ふふ……ハハハ!」
おかしくてたまらない、と言いたげな表情で笑う出木杉。
「何をするかと思えば、にほんばれなのか……ハハハ!」
だが、のび太は至って冷静だった。
次の攻撃で沈んだハリテヤマを戻し、新たなボールを放つ。
「いけ、ダーテング!」
ダーテングを見ると、出木杉はどこか安堵したような素振りを見せた。
「野比君、君の考えはわかるさ……。前に戦ったときと同じ、大爆発で倒すつもりなんだろう?」
のび太は頷く。
「……ハハハ!甘いな、君は。僕のレックウザはダーテングより速い上に、ダーテングを一撃で仕留めれる」
余裕の表情で言い放つ出木杉だったが、のび太は動じない。
そんなのび太を見て腹が立ったのか、出木杉はすぐさま指示を降した。
「レックウザ、大文字だ!」
――だが、レックウザは動かない。
「どういうことだ?」
出木杉がわからない、という表情をする。
すると、そんな出木杉を嘲笑うかのように――のび太のダーテングがゆっくりと動いた。



ヒュンと空中で飛び、レックウザの懐に入り込むダーテング。
「何故だ?何故、レックウザが先に動かない……」
顔を硬直させ、首を横に振る出木杉。
そんな出木杉を見て、のび太はゆっくりと口を開いた。
「葉緑素、だよ」
葉緑素。日差しが強ければ、素早さが2倍になるという特性。
出木杉はこの特性の存在を失念していたのだ。
「そうか!だとしたら、さっきのにほんばれは……」
そう、のび太はダーテングが先手で大爆発を行えるようにする為に、にほんばれを指示したのだ。

試合直前――
「のび太、これやるよ」
大急ぎで走ってきたスネ夫が、何かをのび太に手渡す。
「これは……技マシン?」
突然のことに戸惑うのび太。
「ポケモンに覚えさせておくといいさ。きっと役に立つだろうから」
その技マシンには「技マシン11 にほんばれ」と記述されていた。
「それじゃ、僕はこれで」
観客席の方へ戻っていくスネ夫。
のび太はよくわからないまま、ハリテヤマににほんばれを覚えさせたのだった。



『ありがとう、スネ夫……』
心の中で礼を言うのび太。
そして、最後の指示を降した。
「これで終わりだ……ダーテング、だいばくはつ!」
ダーテングの周囲に光が集まる。
段々それは眩しくなり、大きな爆音と共に弾けた。
「ダーテング!」
「レックウザ!」
大きな爆音が鳴り響き、辺りを爆風が支配する。
やがて煙が晴れ、力尽きたダーテングとレックウザが現れた。
「野比君にはまだメタグロスが残っている……」
出木杉が首を横に振る。
自らの敗北を悟ったからだ。
「僕の……勝ちだね」
ダーテングを戻し、言い放つのび太。
その顔には何か凄いことを成し遂げたような、そんな偉大なものが表れていた。
「そんな……僕の、負け?ウソだ……」
頭を抱え、ひたすら首を横に振る出木杉。
そんな出木杉を、のび太は何も言わず見守っていた。
「勝者、のび太!」