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「……キミは偉い子だね、野比のび太。僕だったら真っ先に帰るよ」
Dはボールを自分に向けている少年を複雑な表情で見つめる。
「……僕は自分一人助かっても皆が生きてなきゃ楽しくなんか無い。
 大切な友達を……僕は助けたい。
 だから僕は戦う。
 最後まで諦めない!
 君を倒して皆で現実世界に帰る!」
言葉を終えてボールを投げる。
出てきたのは電気ネズミ。
『これで彼の心の強さのテストも終了。
 後試す事は的確な判断力ぐらいかな。
 取りあえず……彼らが入っているのは生命回復装置と言う事は内緒だね』
考えを纏めて、Dは髪をかきあげる。
「さあ、戦闘再開だ!」

セキエイ高原牢獄

ポケモン達の回復を終えて、ソラはボールを触る。
『暇なのか、ソラ』
「貴方はどの面下げて私にそんなことを言うのですか? カイリュー」
先程回収したラティアスは何か知らない物を持っていた。
綺麗な宝石のようだがラティアスが拒否するのでソラはあえて何も言わずに放っておいた。
『悪かったとは思っている。しかし』
「今は言葉を聞きたい気分ではありません。弁解は後で聞かせてもらいます」
ボールをドレスの肩の部分に入れて、ソラは溜息をつく。
「入っておいで、ソラ」
耳にカリンの声が届く。
言葉を受けて、ソラは扉を開けた。



『おめでとう、ソラ!!!!!』
ドアを開けた瞬間、クラッカーの音が盛大に響く。
「……これは何事ですか?」
冷静を装って、ソラは隣に居るカリンを見た。
「貴方のお別れパーティーよ。ついでにナナシマリーグ筆頭リーダーのお祝いの式でもあるわね」
「そう言うことだよ、ソラちゃん!」
声に思わず髪を握り締めるソラ。
マントをつけた赤い髪の男が近づいてくる。
その顔に、ソラは見覚えがあった。
「貴方はワタルさん。……何故捕らえられていないんですか?」
ソラの言葉にワタルは目を丸くする。
しばらくして思い出したかのような動作を取り、ワタルは笑った。
「そういえば君も知らなかったんだね。この戦いの本当の意味を」
「本当の意味?」
すかさず聞き返すソラ。
「それはね」
「そこから先は俺が答えるよ、ワタル殿」
歩き出してきたのは今、ソラが最も恐れている相手。
「カ、カイ様……」
「ああそうだ、カイ様だ」
黒いスーツを着込んだ男、カイ・バレフィルドだった。



「何故ここに居るのですか!? 貴方は今リーグに居るはずです!」
髪を握り締めながらソラは叫ぶ。
今にも涙が出そうな表情を浮かべて。
「穴抜けの紐でここに帰ってきた。俺の戦闘は終わったしあっちに残る意味も無い」
問いに答えるカイ。
タバコを吸いながら失望した様な表情でソラを見つめる。
「……で、お前の事だから俺の為に動いたのだろう? 
 俺の事を思うなら行動はしないはずなんだがな」
「それは……」
強く髪を握り締めるソラ。
言葉を一度止めて、カイを睨みつける。
「いえ、これは私の意思です。
 むしろ……カイ様は私をこういう風に動くよう誘導したんじゃないんですか?」
言葉に溜息をつくカイ。
タバコを携帯灰皿に押し付け、吸殻を仕舞う。
「お前が動くのは計画の範囲外だよ。Dに言われて俺は釘を刺しに言ったんだぞ」
「で、でも! この様子を見ると私が来るのをわかっていたようじゃないですか!」
ソラは慌てて言葉を返す。
言葉にカイは後ろを向いて言葉を発さなくなった。
後姿をずっと睨みつけているソラ。
この様子に一番慌てているのはソラでもない、カイでもない。
パーティーをする為に集まった団員達と何故かここに居る出木杉英才だった。



「とにかく、パーティーを始めませんか?」
険悪なムードの中、声を出したのは仮面をつけた男、イツキだった。
「……もう勝手に始めてもいいんじゃない?」
イツキの言葉に呆れたように答えるカリン。
「こういう催しでは祝われる者が最初の言葉を言わなければならないのだが」
二人の言葉に口を挟んだのは金髪の男、ヒョウ。
刹那、ヒョウの身体は蹴り飛ばされる。
同幹部、赤いバイクスーツを着た女、ハルによって。
「頭が固いんだよ、アンタは!」
「何も蹴る事は無いだろう! 全く、お前は乱暴な奴」
「…………もう煩い!!」
叫んで叩きつけるような足音を立てて、ソラは壇上に向かう。
「私が言えばいいんでしょう! 全く、全然変わってないんだから!」

「いつもああなんですか?」
出木杉英才は隣に居た男の四人組に話し掛ける。
顔が似ている所を見ると兄弟らしい。
「ソラちゃんはいつもからかわれてるのさ」
「団で真面目なのはソラちゃんとヒョウ様とカイ様だけだから」
「そんなヒョウ様もハル様と一緒に居られるとただのヘタレに変わってしまうんだよ」
「だから……からかいにくいカイ様の代わりにいつも他の幹部にからかわれるのさ。
 そんな真面目でいい娘のソラちゃんだからこそ、人気投票で一番人気が出るんだろうけどね」
出木杉は言葉を聞いて壇上に上がっていく少女を見る。
少女は呆れたように笑いながら壇上のマイクの前に立って、マイクを握った。
「皆様、私のためにお集まりいただき、真にありがとうございます。
 では……皆様、式を祝して……」
全員がグラスを掲げてソラの言葉を待つ。
それを見て、ソラは笑顔で言葉を放った。
『乾杯!』



式が始まると凄い勢いで食べ始めるロケット団。
出木杉は知っている顔が居ないのでソラを探していた。
「何処に行ったんだろう……」
人が大勢居るせいか見つけることが出来ない。
皿に盛ったスパゲティをバランスよくもって歩く。
「やあ」
声をかけられて後ろを振り向く。
居たのは四天王の大将、ドラゴン使いのワタル。
「改造……」
言いかけて言葉を止める。
幸いワタルは気が付いていないようだ。
「ワタルさん。この計画の本当の意味って何ですか?」
「……君も聞きたいだろうね。いいだろう、教えるよ。
 まず、この世界は君たちが言う現実世界によって作られたんだ。
 それはわかるね?」
無言で頷く。
「で、ここからが本題だ。
 落ち着いて聞いて欲しい。
 ……今の君達の現実世界は現在存在しない。
 この世界は今、君達の現実世界と入れ替わってるらしいんだ」
「何だって!?」
衝撃の言葉を受けて出木杉は皿を落とす。
『これもあの青い髪の少年がやったことなのか?』
「そして……それを阻止する為に君達は戦わなきゃいけない。
 本当の未来犯罪者とね」
「本当の未来犯罪者!?」
またもや驚く、出木杉。
『つまり、あいつは……誰なんだ?』
「そして……倒せるのは現実世界から来た者達だけ。
 つまり君達だよ。僕達は君達を試す為にこの計画を起こしたのさ」



セキエイ本部

「マニューラ、冷凍パンチだ!」
「ピカチュウ、アイアンテール!」
指示に従い足に力を溜めて飛び掛るマニューラ。
飛び上がってとてつもなく素早い動きを見せてピカチュウを殴りつける。
だが、一撃では倒せない。
ピカチュウは尻尾をマニューラに叩きつけてガッツポーズを取る。
ガッツポーズの通り、一撃でマニューラは崩れ落ちた。

「やるね。そのピカチュウ」
ボール回収を終えて、次のボールをポケットから取り出すD。
「僕のポケモン達は皆一緒に育ってきた。
 僕の為に力を出してくれるんだ!」
叫ぶのび太。
Dは叫びを終えたのび太を見て、呆れたように髪を触る。
『ポケモンのレベル自体は僕と大して遜色が無い。
 後はトレーナー自身の腕ということになる。
 ……試してみるか。本来はガブリアスなんだろうけど……。
 あくまでもこの戦いはテスト。だから……ゴメンねラグラージ」



「ラグラージ!」
ボールを投げるD。
顔には迷いの表情が色濃く出る。
その表情に気が付かないほどのび太は鈍感ではない。
『何だ、あの表情? 僕の次に言う技がわかっているのか?
 だったら何でラグラージを出すんだ?
 ……考えたって仕方ない。僕が勝たなきゃ皆が死ぬんだ!』
のび太は眼鏡を掛け直して指示を出す。
「ラグラージ、地震!」
「ピカチュウ、草結びだ!」

『やっぱり覚えさせていたか……。
 これで全部の試験は終了。
 彼の強さは及第点以上、合格だ。
 ……後は皆が来るまでの時間稼ぎ。
 あっちはカイとソラが揉めてるんだろうなあ……長い時間を稼がなきゃ』
倒れたラグラージを回収するD。
「ゴメンね、ラグラージ」
ボールに向かって謝って、次のボールを投げる。
出てきたのは鮫のようなポケモン。
『何だ、あいつ!?』
表情を見てDは溜息をつく。
「わからないって言うんだろうけど、時間はピカチュウを倒した後にあげるから。
 ガブリアス、地震だ!」
「ピカチュウ、電光石火!」
高速に動いて、攻撃を放つピカチュウ。
だが大して効いた様子も無い。
ガブリアスから放たれる地面の揺れ。
その攻撃を受けて倒れない事は無かった。



「ご苦労様、ピカチュウ」
ボールを回収して図鑑を開ける。
のび太が見ている間にDは残った三つのボールを取り易い場所に置いておいた。

「成る程……そいつはガブリアスってポケモンなんだね」
図鑑を閉じてのび太が嬉しそうに呟く。
その様子を見て溜息をつくD。
「キミはこの後しっかり勉強する事だね。
 ポケモンや普通の勉強もね。
 これが正式ルールの場合、キミはもう負けているよ」
言葉を詰まらせてのび太はボールを投げる。
出てきたのは恐竜、ラプラス。

「ガブリアス、逆鱗だ!」
「ラプラス、冷凍ビーム!」
炎を纏い突進するガブリアス。
突進を受け止めて氷を吐くラプラス。
ガブリアスは攻撃を受けて一撃で倒れる。

「サンダース」
雷を発して現れるポケモン。
すぐさま電撃を放ち、ラプラスを一撃で倒す。



『相手はサンダース……カビゴンで行くか』
「カビゴン!」
現れる巨体のポケモン。
思わずDは顔を歪めた。
「サンダース、十万ボルトだ!」
「地震だ、カビゴン!」
電撃を発して巨体のポケモンに当てる。
だが大して効きもしない攻撃にカビゴンは腹を掻いて地面の揺れを放った。

「追い詰められたよ……まさか僕がパートナーを使う事になるとはね」
最後の紫色のボールを上にかざす。
複雑な表情で腕に力を込めた。
「出て来い、マイパートナー! その圧倒的強さを相手に見せつけろ!」

プレッシャー。
目の前に居るポケモンから伝わってくる感覚。
のび太は終始自分に有利な展開に持ってきたつもりだった。
事実、持ってきていた。
しかしその有利な展開が嘘だったかのような絶望感。
前のポケモンから感じる圧倒的な力。
(何故私は此処に居る?))
黄色の弾で瞬間的にカビゴンを吹き飛ばす。
出てきたのはカントー最強のポケモン、ミュウツー。
その膨大な力で目の前の物を捻じ伏せる圧倒的な力の持ち主だ。



『とうとう僕の出番がきたんだね』
そう言って、のび太の腰のモンスターボールから出てきたのはのび太の切り札。
「うん。とうとう君の力が必要になったんだ、ミュウ」
笑顔で隣に居るミュウに答えるのび太。
前に居るミュウツーはミュウをただ睨みつけている。
(やはり貴様か……部屋に小僧が入ってきた時からずっと感じていたぞ)
ミュウはいつもの無邪気な様子を見せず、ただ前に居るミュウツーを見据える。
『久しぶりだね、ミュウツー。
 君は落ち着く為にハナダの洞窟にいったはずなのに何で此処にいるの?』
周囲の物をサイコキネシスで吹き飛ばし威嚇するミュウ。
(私は共に歩く事ができるパートナーを見つけた。
 同じ境遇の私達にオリジナルである貴様がわかる筈も無い。
 これ以上私の友を追い詰める気ならば……私と貴様の戦いがまた始まるだけだ!)
同じく天井のライトを叩き落しミュウを威嚇するミュウツー。
両者の間に火花が散り、天井が砕け落ちていく。
落ちてきた破片で四本のカプセルが割れた。
緑の液体が飛び散り、中に居た四人がのび太の前に転がっていく。
「ミュ、ミュウツー……落ち着い」(黙っていろ!))
仲裁に入ろうとしたDをサイコキネシスで吹き飛ばす。
のび太はその様子を見て、口を開けて呆然としていた。
『いつまでたっても人の話を聞かないね。
 それに親に対する口の利き方がなってないんじゃない?』
(貴様が親だと……貴様は親などではない! ただの目の前に居る敵だ!)
黒い弾を作り出しミュウに向けて、撃つ。
間一髪でミュウはその弾を避けた。
『……お前はいつまでたっても子供だ! 一回わからせてあげるよ!』
(黙れ! 子供は貴様の方だ!)



セキエイ高原牢獄前

「結局……貴方は私の言う事を聞きませんでしたね」
ソラはラティアスのボールを持ち、聞いてみる。
『聞く気も無いのに聞くわけ無いでしょ。
 元々私はお兄様とも離れて気分が悪いのよ。
 あーあ、カイも何で私を貴方に預けたのかしら』
先程からソラが機嫌が悪いのをわかっているのか、いないのか。
今すぐボールを握りつぶそうかと考える。
「……まあいいよ。それより私は今からリーグに向かうんだ」
『それがどうかしたの?』
とぼけたように聞いてくるラティアス。
ソラはボールに力を込める。
「連れてって」
『嫌』
叩き潰す。
ソラは頭の中で決意した。
力をこめて、握り潰そうと思った時、足音が耳に入った。
この足音にソラは聞き覚えがある。
「……何か用ですか?」
「俺たちもリーグに向かわなければいけないのでな。
 お前のカイリューに乗せてもらおうと思って来たんだが……無理だったか?」
ソラは言葉を聞いて、顔を背ける。
背けた先には出木杉の姿が見えた。
「僕からもお願いだ! ソラさん、連れてってくれ!」
頭を下げる出木杉。
それを見て、ソラは諦めたように肩に手を入れた。
「…わかりました、行きましょう」



野比のび太は呆然としていた。
目の前の光景をただ呆然と見詰めることしか出来ない。
「いてて……」
勝手に戦い出すポケモン達から目を離し言葉を発した少年に目を向ける。
「ミュウツーの奴、完全に戦闘モードに入ったな」
少年は呟きながら頭をかいて、腰のボールに触る。
サイコキネシスで浮きあいながら技の押収を繰り返す二体。
両者の手にに橙色の輝きが灯っていく。
それを見ると否や少年がのび太の周りに気絶している四人を集めた。
「ロクデナシ! リザードンを出して皆を連れて逃げろ!」
「どうして!?」
「此処に居たら確実に死ぬ! 此処でキミ達が死ぬわけには行かないんだ!」
少年の慌てた様子を見て、リザードンを出す。
リザードンに全員を乗せて、少年はのび太に乗るように促した。
壁にもたれかけ、少年は自分のボールを触っている。
「……君はどうするの?」
リザードンに乗って少年を見下ろす。
「……僕はミュウツーを見届けなければいけないんだ。
 あの状態のミュウツーはボールに入ってくれないからね」
言葉を受けてのび太はリザードンから降り、少年の隣に立った。
「……どういうつもりだ?」
「ミュウは僕のポケモンだ。君が残るなら僕も残るよ。
 リザードン、行け!」
のび太の声に反応して飛び立つリザードン。
天井の穴に向かい、翼をはためかせる。
「…これで僕達二人がミュウツー達を止められなかったら僕達は終わりだ。
 覚悟は出来てるの……のび太君…」
「出来てるよ! 二人でミュウ達を止めるんだ!」



煙が巻き上がり部屋の備品が崩れていく。
「うわあ……こんな量を復元光線で戻すのは面倒だよ」
「愚痴を言ってる場合じゃないよ! どうにかして止めなきゃ!」
先程の緑の液体を浴びたおかげでボールのポケモン達は全員回復した。
後はポケモントレーナーの腕次第。
「君と一緒にダブルバトルか。悪くないね」
「こっちもね」
先程まで戦った最強の敵。
現在の状況では最強のパートナーだ。
(く、貴様、何時まで私の目の前に立ちはだかる!)
『お前こそいい加減にしろ!』
「いい加減にするのは君達だ!」
眼鏡をかけた少年、のび太が叫ぶ。
「いい加減落ち着いてくれないかな?
 正直これ以上ここを壊されるのは面倒なんだけど」
髪をかきあげて言い放つ青髪の少年、D。
(人間ごときの言う事で止まる私だと思うのか?)
『今僕達は取り込んでるんだ! 邪魔をするなら君達から倒させてもらうよ!』
のび太の前に緑色の弾を放つミュウ。
床が削り取られる。
その恐ろしい様を見てのび太が力強くボールを掴む。
「戦うしかないね、ドラえもん」
「そうだね、のび太君。もうこいつ等には口で言っても無駄だ!」



「ラプラス!」「ガブリアス!」
出てくる両者のポケモン。
その、個体能力の高さは折り紙つきの二匹だ。
「ラプラス、冷凍ビームだ!」「ガブリアス、逆鱗!」
炎を纏い突進するガブリアス。
口に冷気を溜めていく、ラプラス。
(ガブリアスだと? 下らん、冷凍ビームでも受けておけ!)
『ラプラスか。じゃあ波動弾でも受けといて!』
手に冷気を集めて、ミュウツーはガブリアスを撃ち抜く。
身体の前に黄色い弾を作り出し、ミュウはラプラスに向かって撃ち倒す。
一撃でやられるポケモン達。
二人の表情が蒼白に変わっていく。

「あいつら……悪巧みとか使ってるな」
「また能力強化か。でも、一撃も与えられないんじゃ手が出ないよ!」
悲痛な叫びを上げるのび太。
そんな様子に溜息をつきながら、Dは次のポケモンを決める。
「先手を取ればいいんだよ。
 電磁波を当てればミュウツー達より先に行動できるはずだ」
「でも、あの二体には先手を取れないんじゃ!」
叫ぶのび太にDはポケモンを構える。
「あるよ、確実に電磁波をプレゼントできる方法が。
 のび太君。ピカチュウにこれを……」
「それなら大丈夫そうだね!」
その言葉を受けて、のび太はピカチュウのボールを取る。
そして、同時にボールを投げ放った。



「ピカチュウ!」「サンダース!」
指示を受けて、出しピカチュウの隣に居るのはサンダース。
「まずは麻痺しとけ! サンダース、電磁波だ!」
「ピカチュウ、ミュウに電磁波!」
(サイコキネシスで吹き飛ばしてくれるわ!)
『電磁波は撃たせないよ!』
ミュウツーの思念波がサンダースに向けて放たれる。
行動はサンダースよりも早かった。
「サンダース!」
吹き飛ばされるサンダースにDは反応する。
ミュウツーは倒れたサンダースを見て勝ち誇ったかのように腕組をしていた。
腕組をしているミュウツーにDは笑いかける。
「どうやら運が無かったみたいだね……なーんて僕が不確実な方法を取ると思うの?
 残念だけどね、気合の襷を持たせていたから一撃では倒れないよ」
吹き飛ばされたサンダースから電磁波が放たれる。
電撃をミュウツーは苦しそうに受け入れた。

「そっちも成功したの?」
「まあね」
隣に居るのび太がピカチュウを回収して、笑う。
サンダースを回収して、Dは髪をかきあげる。
「さて……どうやってダメージを与えるかな?」
「物理攻撃で押してみようよ! あの二体が戦っていたんだから軽視してるはずさ!」
「言い案だね」
のび太の提案を受け手を叩いて賛同する。
そして、ボールを投げた。
「君の出番だよ、マニューラ!」
「カビゴン! 行け!」



『いくらなんでも麻痺したぐらいでカビゴンよりは遅くないよ!』
(マニューラごときの火力で私を倒せると思っているのか?)
二体のポケモンは前に黄色い弾を作り出していく。
だが二人の目に、臆する気持ちなど見えない。
「攻撃しないとわからない!」
剣のように爪を振りかざしマニューラはミュウツーに切りかかる。
「アイテムって君は知らないの? どんなポケモンでも色々な可能性を秘めてるんだ!」
ミュウに物凄い速さで腕を振り回して飛び掛るカビゴン。
素早く飛び掛ってくる巨体のポケモンに驚いて腕で攻撃をガードする。
(貴様……私に傷をつけてくれたな!)
『先制の爪か。
 でも僕達はこの程度では倒れない!』
作りかけの黄色い弾を完成させて二体のポケモンに撃つ。
一撃で倒れていくポケモン達。

「ダメージは受けてるみたいだけど……倒せるほどじゃないよ!」
悲痛の叫びを上げてのび太は隣の少年を見た。
隣の少年は楽しそうに笑っている。
ただ目の前の二体のポケモンを見つめて。
「ど、どうしたの?」
「見つけたよ、あいつ等の戦術の穴をね」
「えっ!?」
髪をかきあげて呟く少年。
少年の言葉にのび太は驚く。
この状況を打開する手立てなんてあるのだろうか。
少なくとものび太には思いつかない。
「どうやら……能力強化が自分達だけの特権と思ってるみたいだね。
 教えてやるよ、能力強化は諸刃の剣って事をね!」



セキエイ高原上空

紫のドレスを着た少女、ソラはカイリューの上に座っていた。
「相変わらず凄いスピードだねえ。ソラのカイリューは」
バイクスーツを着た女、ハルが退屈そうにソラに近づいていく。
「ハル。……皆は?」
「天才坊ちゃんにこの世界を説明中。暇だからあたしは逃げてきたんだ」
笑ってハルは袋を渡す。
「これは……?」
「カイ様がゴミ箱に捨ててた一輪の花。
 他のゴミには灰がかかってるくせに、これだけは袋に入れてあったから眼に止まったのさ」
ソラは渡された花を見つめる。
「この花は……」
彼女の頭によぎる昔の記憶。
大きい手、白いフリージアを頭につけてくれる優しい手が。
「その花がどんな意味をなすのかは知らない。でもアンタはカイ様に思われてるのさ。
 本当はアンタが家に居る予定であたしが誘いに行く予定だったんだから」
カイリューが降下し始めるのを確認してハルは体制を整える。
「着いたみたいだね。あたしは行くけど……アンタはどうするんだい?」
「……」
ソラの震える後姿を見てハルはカイリューから降りる。
「着いたよ! ヒョウ、天才、ついておいで!
 カイ様は来るんじゃないよ!」
歩き出して行く女。
出木杉が無言で後ろに続く。
「アンタは娘と仲直りでもしとけ。それまで来るんじゃないぞ」
金髪の男性も走って続く。
無言でタバコを吸って、スーツを着た男は溜息をついた。



「いいんですか? 二人きりにして」
出木杉が大きく開いた穴のほうに歩いていく。
「あの二人には親子としての時間がほとんど皆無。
 親が居るという幸せをソラにはわかって欲しいんだ」
金髪の男が眼鏡をかけて出木杉に答えた。
その言葉に相槌を打つ赤い女。
「孤児院出身のあたし等にはわかんないだよ……。
 あたし達は家が無い。強いて言うならロケット団が家さ。
 でもソラには立派な家がある。その家に一人で居させるなんて最低の奴だと思うよ」
赤い女は大きな穴の前で立ち止まりモンスターボールを出す。
「はい、オレンジメール」
出木杉は何もわからずにメールを渡された。
それを見てヒョウがハルに眼鏡ケースを投げる。
「痛! 何すんだよ!」
「何をするか説明もしないでわかるはず無かろう!
 俺なら別だが他のロケット団員でもわからないぞ!」
ヒョウに眼鏡ケースを投げ返し、出木杉にボールを投げる。
「下に居る眼鏡小僧にメールを書くんだ。
 そしたら書いたメールをそのロケット団特製の飛脚が届けてくれるはずさ」
そう言って、ハルが穴を覗き込んだ瞬間の事。
大きな穴から炎の翼竜が飛び出したのだ。



「皆!」「しずか!」「スネオ!」
リザードンが担がれた全員を落として鳴き声を上げる。
「君は……のび太君の!」
メールを書くのを止めて、リザードンを見る出木杉。
どうやら、まだのび太は楽な状況では無いようだ。
「しずか! 起きな、しずか!」「下がれハル」
しずかを抱き上げるハルにヒョウが離れるように指示する。
ハルは男の真剣な声音を聞いて、無言で全員から離れた。
「寝ている奴等を優しく起こすには雨が最適だ。
 それが人工的でも決して代わらないだろう」
ボールから白いポケモンを出して雨乞いを指示する。
雲が集まり落ちてくる冷たい水。
「これで起きるだろう。優しく起こすには最適のはずだ」
「少なくとも……下には眼鏡小僧とあいつが居る見たいだね」
雨を弾く穴を見て呟くハル。
どうやら下に居る者以外の力は受け付けないようだ。
「結界……奴しか出来ないからな。
 あの馬鹿、一度セットしたらどちらかのポケモンが全て倒れるまでは外れないんじゃなかったのか」
ポワルンをモンスターボールに戻してヒョウは愚痴をこぼす。
「リザードン、こっちは大丈夫だ。速くのび太君のところに戻ってあげてくれ」
言葉を受けて、リザードンが翼を動かす。
空中に炎を吐いて、穴に飛び込むリザードン。
その様子を見届けた後、出木杉は後ろの二人に向き合う。
「のび太君には後でゆっくり説明しましょう。
 とりあえず、此処に居る三人には僕から説明します」
言葉を聞いた二人は、顔を見合わせた後、静かに頷いた。



セキエイ高原 チャンピオンの間

二人の人間と二体のポケモンが向き合っている。
眼鏡をかけ直して状況を見つめる少年、のび太。
ポニーテールの青い長い髪を鬱陶しそうに払う少年、D。
周りを円形のバリアの様な物で自分を守っているピンク色のポケモン、ミュウ。
同じく周囲を紫色のバリアの様な物で自分を覆っているポケモン、ミュウツー。
全員の状況はまさに一触即発。
その張り詰めた空気の中、先程隣の少年から聞いた作戦にのび太は素直に驚いていた。
「凄いね、僕じゃ思いつかなかったよ!」
隣に居る少年をのび太は尊敬の眼差しで見上げる。
その眼差しに気がつき、照れくさそうに顔を背けた。
「作戦を誉めるのは成功してからにしてくれよ。
 成功する確率は半々だからね」
モンスターボールを取り出し、少年は髪をかきあげる。
のび太は動作を見て、笑った。
「勝とうよ。僕たちの力でね!」
「僕は最初からそのつもりさ。さあ、反撃の始まりだ!」

のび太が出したのは現状最後のポケモン、エーフィ。
Dが出したのは、ゲンガー。
二体のポケモンはいつでも指示を受けれるように待っている。
その時、のび太の目に見えた。
ミュウツーに雷光が走るのを。
「あいつ、麻痺してるよ!」
「! 今がチャンスだ!」
のび太は指を突き出す。
Dは手を下に振り下ろす。
「「自己暗示!!」」



『まずい! 間に合え!』
黒い弾を作り出し、エーフィに攻撃を仕掛けるミュウ。
その攻撃は自己暗示で特防を二倍にした後だった。
(ええい! 何をやっている!)
『動けない奴が文句を言うな!』
口論を始める二匹。
だがそんな暇を神は二匹には与えなかった。
「自分達の戦術を恨むんだね!」
「特攻が二倍のエーフィの攻撃はダメージが大きいよ!」
「「シャドーボール!」」
エーフィからミュウツーに。
ゲンガーからミュウに。
二体を黒い弾が打ち抜く。
(倒れぬ! 私は倒れぬぞ!)
『まだ戦えるよ!』
エーフィに黒い球を打ち返すミュウ。
強大な思念波をゲンガーにぶつけるミュウツー。
一撃で倒れる二体。
だが二人の顔に絶望の色は無い。
のび太の目には空中から戻ってきた相棒、リザードンの姿が映る。
Dの目には最後のボールがずっと見えている。
倒れたポケモンをボールに戻して二人は頷きあう。
二人の最後のポケモンが目の前に並んだ。



リザードンの姿を確認し、のび太は指示する。
二人の好きな、あの技を。
「リザードン、地球投げだ!」
ミュウに向かって飛び掛るリザードン。
その速さは、麻痺したミュウより早い。
リザードンは掴んで、空中に浮かんだ。
「そのまま、叩き落せ!」
言葉にミュウが反応する。
『また!? もう嫌だああああああああああああ!!!!』
のび太は前回通りミュウの声を無視して行動を続けるように指示する。
リザードンは大きな鳴き声をあげて空中を回り始めた。

「ラグラージ、守るだ!」
緑の防護壁を作り出しラグラージは守りの体制に入る。
(時間稼ぎ……私はそれを読んでいたぞ!)
ミュウツーは叫んで光を纏っていく。
「この光は……自己再生か!」
判断ミスを痛感し、Dが壁を殴りつける。
隣で轟音が響いた。
その音を聞いてDは叫ぶ。
「とりあえず一体撃破。後は君だけだ、ミュウツー!」
そうは言ったものの、Dの表情に余裕など無い。
『畜生! 僕のミスでミュウツーに負ける!
 地球投げ二発とラグラージの攻撃で……いや、無理だ。
 とてもじゃないけど倒せない。
 手詰まりなのか……畜生!』



ラグラージの横にリザードンが飛ぶ。
横に並ぶ二匹。
「ミュウを倒したよ!」
モンスターボールにミュウを回収してのび太がDに話し掛ける。
だがのび太は彼の顔を見て驚いた。
焦ったように髪をかきあげながら歯軋りをしているD。
隣ののび太が自分を見ていることを気がついた時、Dは顔に手を当てて小さく呟いた。
「いくら頭で計算してもミュウツーは倒せない。
 僕の判断ミスで回復された。
 もうどうやっても倒せないんだ!」
壁を殴りつけて、Dはミュウツーを見つめる。
だが、彼の反応を気にする様子も無くのび太はDの肩を叩いて、囁いた。
「まだ、僕のリザードンであいつを倒せる手段がある。
 僕を信用して僕の指示に動いてくれない?」
言葉にDは驚いたような眼差しでのび太を見つめる。
その目を見たのび太は胸を叩いて、作戦を話した。

「それなら……勝てるかもしれない」
Dが前のミュウツーを見つめ、頷く。
「乗るよ、最後の作戦。もうそれしか手は無いみたいだからね」

(こそこそとした相談は終わりか?)
ミュウツーが痺れを切らしたように話し掛けてくる。
「ああ、終わりだよ。君を倒せる手段は話し終わったからね!」
(戯言を!)
足場を砕き、腕に力を溜めていくミュウツー。
眼鏡をかけた少年、のび太が今までで一番大きな声を上げて叫んだ。
「これが最後だ! 行くぞミュウツー!」