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ジャイアンが目を開けた時、周りの景色は変わっていた。
静寂が耳を突いてくる――土の壁が僅かな音をも吸収してしまっているのだ。
そう、ここは地下、ただ均等に置かれた松明で辺りの様子はわかる。
ハッとジャイアンが振り返ると、そこは行き止まり。
そばには少し大きな三角錐の形をした岩がある。
「……ここがスタートってわけか」
そう呟くと、ジャイアンの顔には自然と笑みが浮かぶ。
「へ、迷路なんてちょろいもんだぜ!
 さぁて、行くか」
意気揚々とジャイアンは歩みだした。

「……あ、あれ?」
行き止まりに辿り着いたジャイアンが首を傾げる。
そばには少し大きな三角錐の岩――
「い、いやまさか!
 俺様が同じ場所に戻ってくるなんてありえねえぜ!」
大声で言いながら、ジャイアンは身を翻す。
「さぁて、今度こそ行くか!」

数分後。
例の三角錐の岩に持たれかかるジャイアン。
「……へ、へへ。
 俺様が素直になっていることが間違いだったんだ」
ポンと投げられるボールから、コドラが繰り出された。
‘お、兄貴悪そうな面してる……’
「コドラ、壁に向かってアメタルクローだ!」
ニッと笑って壁を破壊するコドラ。
「よし、俺様を遮るものは全て壊してやるぜ!」



スネ夫は銅メダルの迷路から入っていた。
今は目を瞑り、神経をその髪型以上に尖らせている。
(ムウマ、どうだい?)
その後、頭に送られてきたのは迷路の道筋。
スネ夫の現在位置から先、曲がり、下って、上って、また曲がって……やがて大空洞へ。
そこには誰かがいる。
(誰だ、そいつは?)
すると画面がトレーナーの肩にズームされていく。
銅メダルを持ったケーシィが座っている。
(なるほどね。でもいったい何をしているんだろ)
そのスネ夫の疑問を晴らすため、ムウマが画面をずらした。

「ふぅ、これで良し」
大空洞のトレーナーは汗を拭った。
「出て来い、ディグダ。穴は掘り終わっただろ」
暫くして、足元にわらわらと六匹のディグダが現れた。
全部このトレーナーのポケモンである。
今しがた、この大空洞の地下全域に穴を掘ったのだ。
「これで、この大空洞に入ってきた奴らは全員落下する。
 そこを突いてケーシィ倒しちゃえば――」
不敵に笑いながら、その場を去ろうとする。
だが、足は動かなかった。
「……な、なんだよこれ!?」
いくら足を踏ん張っても、そのトレーナーは歩けなかった。
「『くろいまなざし』だよ」
大空洞の入り口で、誰かの声。



「話聞いたけど、ずいぶん頑張って穴掘ったんだってねえ。
 まあ無駄だけど~」
入り口で目を細めるのは、スネ夫だ。
「な、なんだお前!?
 どうして俺の声が聞こえ、いや、計画に気づいた?」
「こいつだよ」
すると、スネ夫は指を鳴らした。
トレーナーの前に突如、ポケモンが現れる。
「ぅ、うわぁ!!」
尻餅をつくトレーナーを見下ろし、宙を漂うムウマはケラケラ笑った。
「安心しろよ。ただの『おどろかす』だよ」
スネ夫はいじらしく教えた。
「な、なんで命令もなし、に技を出せたんだ、ぉよぉ……」
トレーナーは乱れた呼吸を必死で堪えながら、質問した。
だが、言葉を無視して、スネ夫はドガースを繰り出す。
それに掴まるとふわふわ浮いて、トレーナーの傍に降り立った。
「ふふ、こうしないとこっちに来れないからね。
 あぁ、質問の答えは『ここをつかう』ってことさ」
スネ夫は頭を指差した。
トレーナーが眉を顰め、聞き返そうとする。
「ムウマ、サイケこうせん」
光線がケーシィの体にぶち当たった。
「ケ、ケーシィ!」
トレーナーは慌ててケーシィに触れた。
その瞬間ケーシィが煌き、少年もろとも消え去る。
「なるほど。これが脱落の仕方か……」
スネ夫はもっともらしそうに頷いた。



突然、大空洞に拍手が響く。
スネ夫は元々細い目を更に細め、大空洞の出口を見た。
「やぁ、すごかったね」
出口の少年は賞賛する。
右肩にはケーシィが座り、左肩にはピィが座っている。
「誰だい、君は?」
スネ夫はなるべく親密感を出しながら聞いた。
相手の少年も、笑顔を崩さない。
「僕の名前はユウト。
 君と同じように、銅メダルを持って二次予選に来たんだ」
(ムウマ、姿を消せ。あのユウトとかいう奴の挙動を見張れ)
「それで、そんな君がどうしてここにいるんだい?
 早くゴールしないとまずいんじゃないのかな」
スネ夫はユウトを見据えたまま、首を傾げた。
「実はね。僕は優勝なんかはどうでもいいんだ。
 行方不明の友達に会いたいだけなんだよ。
 君、こいつ知ってる?」
ユウトはポケットから一枚の写真を取り出した。
慎重さを保ちながら、スネ夫は近づいてその写真を見た。
「ぁ……」
慌てて口を閉じるスネ夫。
写真に写っていた好青年は、出木杉だったのだ。
(まずい、多分ここで知っているって言ったら)
スネ夫は恐る恐る、ユウトを見上げた。
途端に、鋭い眼光と目が合う。
ユウトは僅かに笑みを浮かべた。
「知ってるね」



「ま、待ってくれ!
 そいつがお前の友達なはずないぞ!」
スネ夫は距離を取りながら、必死で弁明した。
「?どうしてそう思ったんだい?」
ユウトは微笑んだまま聞いてきた。
暫く、沈黙。
やがてスネ夫は声を出した。
「そいつは……僕の知り合いで、僕らの町にいた。
 僕はお前と接点が無い。そして、そいつとお前との接点も見当がつかない」
そう一気に言い終えると、スネ夫はユウトの反応を待った。
ユウトはおもむろに口を開く。
「その通り。僕が探しているのはこいつじゃない。
 僕の友達は数日前、こいつと一緒にいたんだ。
 生憎証拠はこれしかないが、僕は確信しているんだ。
 こいつを見つければ友達も見つかるはずだってね。
 ところで、君はこいつを知っているんだろう?」
スネ夫は一瞬ビクッとして、それから平静を保つ。
「あ、ああ、出木杉って言うんだ。
 何で君の友達と一緒にいたのかは知らないよ。
 でも、そいつは多分このリーグの傍にいる。僕らも探しているようなものだからね」
「なら都合がいい!これから一緒に行動しようよ!」
ユウトは明るく提案してきた。
「ぇ、でもこのリーグに参加してるとは限らな」
「でも本選に行けば会えるかもよ。観客席にいるかもしれない」
ユウトは手を差し出した。
「さあ、握手しよ!
 同志としてね」    ―――