ドラえもん・のび太のポケモンストーリー@wiki

DPその2 その9

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 9月30日

のび「ごちそうさまー」
のびたのパパ「どうしたんだ?そんなに残して。気分でも悪いのか?」
のび「ううん、心配ないよ…」
この日、朝ごはんの食卓にドラえもんの姿はなかった。
ポリゴンの強力なシグナルビームを浴びて気絶状態なのだ。
数年前に起きた事件と似ているが、少し休ませれば大丈夫だろう。今はのびたの部屋で寝かしてある。
ただし、のびた達4人と違ってゲームの世界に入ったままだ。
玉子「ドラちゃんもお昼時になったら起こしてね。
いつもはのびたよりも早く起きるのに……昨日のゲームで疲れたのね。」
のび「うん、そうだと思う。」
のびたは二階に上がった。

さて、ドラえもんをどう片付けよう
のびたは畳に寝そべっているドラえもんを見下ろした。
ジャイアンたちが来たときにドラえもんが寝そべっていたら怪しく見られな
だけど、見かけによらず超重量級のドラえもんをどうやって移動したものか。
のびたはあれこれ考え、スペアポケットを取り出すと、
タケコプターをドラえもんにつけて押入れまで飛ばした。



ピンポーン
のび「ジャイアンたちだ。」
のびたは階段をダッシュで駆け下りた。
が、玄関口にのびたの期待した人は立っていなかった。と言うかジャイアンしか来ていない。
ジャ「今日はしずかちゃん、出木杉と勉強会するって。
お昼過ぎたら合流するってさ。あ、後スネオは塾」
のび「なあんだ……じゃあ、とりあえず上がってよ。」
ジャ「おっ邪魔しまーす!!」
ジャイアンはのびたより早く階段を駆け上がっていった。
のび「やれやれ、くれぐれもドラえもんがいないことにはつっこまないでほしいな。」

のびたが自分の部屋に行ったころにはジャイアンはゲームの世界に入っていた。
のび「しずかちゃんが着くまで待ってらんないよ……ぼくも始めよちゃおうっと。」
のびたはゲームのスイッチを押した。
たちまち、のびたの視界は目に悪そうな光に覆われた。



昨日のびたがレポートを書いた場所は、
勇ましいBGMのファイトエリア。
のび「たしかここで次にどこに進むか決めてたんだよな。
えっと…カラナクシで波乗りは出来ないから、北に進もうか。」
のびたの都合で進路は225番道路となった。

のび「ゼ~~~ッ!!ハア~~~~ッ!!!ゼェ~~~~~ッ!!!」
タウンマップを見れば分かることだが、225番道路は起伏の激しい場所。
もともと運動音痴なのびただが、今日は朝ごはんもろくに食べなかったのが災いし、早くも体力が尽きたようだ。
のび「フーーッ……いやあ、なかなか歩き甲斐がありますな。」
見栄を張りつつものびたはボールからエレブーを出した。
どうやらおんぶしてもらおうとしているようだ。
のび「な!エレブー!ちょっとぐらい良いじゃない、
ご主人を助けると思ってさ!」
エレブーはそっぽを向いた。
捕まえられたときにエレキブースターを捨てられてしまったのをいまだに根に持っているのかもしれない。
のび「何だよ、何か欲しいの?」
エレブーはこれを聞いて少し希望を持った。
『エレキブースター』の大きさに手で立方体を形作る。



のび「なにそれ?失くしちゃったの?」
エレブーはうんうんと頷いた。
のび「仕方ないな。探してやるよ。」
エレ「…………」
落としたのはここじゃねえよ!たにまのはつでんしょだよ!
第一、 てめえが捨てたんだろうが!!
こんなことを思いっきりぶちまけられたらどんなに良いか。
しかし、ポケモンは喋れない。
のび「あれれ~?何かあったよ、これのこと?」
のびたが見つけたものを草むらから拾い上げる。
エレキブースターと形は似ているが、紫で半透明だ。
エレ「……∑( ̄△ ̄;)」
のび「そうか、違うのか。でも一応バッグに入れとこう
……うーん…あまいみつの箱で入んないよ。ポリゴン2にでも持たせとけ。」
バッグの整理が苦手なのびたはポリゴン2に変な箱を渡した。
その途端、
ポリ「;asne4cto0w.a34:@^to0c/w[45」
のび「え?!なな何で?」
ポリ[(@○@)(@○@)(@○@)(@○@)(@○@)(@○@)」
のび「うわああああ!!戻れポリゴン!!」
炸裂音と共にポリゴン2はボールに戻っていった。
のび「ハア…ハア…ポリゴン2が……壊れちゃった…………?」
のびたがポリゴン2のステータス画面を見る。
ステータスになんら変化は見られない。ただ、持ち物の所には『あやしいパッチ』という表示があった。



ノモセシティの朝は爽やかな鳥の声とともに訪れた。
ジャ「ッァーあ…ねみい。昨日も結局遅くまでしちまったな。」
ジャイアンは服を着た。
そして、町の真ん中で大声を出し気合を入れる。
朝一でノモセジムに挑戦するのだ。

ジャ「たのもーーーー!!」
ジムに挑むときはこの一言がないと始まらないとジャイアンはそう思っていた。
マキシマム仮面「ぅおう!挑戦者かぁ!丁度良い!今暇してたとこだ!どっからでもかかって来い!!」
ジャイアンは一歩踏み出し、ジム全体を見渡した。
部屋全体がプール、といった感じだった。
深さがまちまちで、水を入れるボタンがあちこちにある。
マキ仮面「おう!どうした!?早くこねえか!」
ここのジムリーダーはマキシという親父だ。
どうやら語尾に!を付けるのが癖らしい。
ジャ「今行くぜ!」
ジャイアンも負けじと声を張り上げる。
マ仮面「元気が良い坊主だな!いいか!
ポケモンは3匹までしか出せねえぞ!じゃあ初め!」
マキシさ…マキシマム仮面はアズマオウを繰り出す。
ジャ(俺のポケモンは3匹しかいねえ。ってことは全員参加か)
ジャイアンは仕方なくモウカザルを繰り出した。
マキ「おう!モウカザルかァ!………でもちょっと頭の形がおかしいなあ?よっぽど激しいファイトをしてきたんだな!」
ジャイアンはマキシマム仮面の喋り方がしゃくに触った。



マキ「悪いが!ここのフィールドは俺の管理下にあんだ!水を入れさせてもらうぜ!」
マキシマム仮面はそう言って足元のボタンを踏んだ。
すると、タイルの表面から染み出してきたように水が出てきた。
ジャ「うわっ、また濡れちまった!」
マキ「水は良いよなあ。自由に動けるし!立たなくて良いし!何より気持ちいい!試合の汗を流すのに最適!」
ジャ「こいつ変人だ…まー、個性を出さないとジムリーダーとして目立たないもんな。仕方ないか。」
ジャイアンがマキシマム仮面のテンションに引いているのをよそに、
本人は水に飛び込み、アズマオウと戯れている。

ジャ「うへぇ……見るに耐えねえ。ところで、もう攻撃してもいいのか?」
モウカザルはちらりとジャイアンを振り向いた。攻撃の命令を催促している。
ジャ「よし、大丈夫だよな!かえんほうしゃだ!」
モウカザルの尻尾から火の玉が飛び出し、水面を焼いた。
蒸気が立ち上る。
マキ「うあちゃちゃちゃ!!あっぶねーな!俺がここにいるのが見えねーのかよ!!」
ジャ「戦いを忘れてそうだったから思い出させてやっただけだ。
俺はお前との勝負に全力で臨む。だからお前も余裕こいてないで全力でかかって来い。」
ジャイアンの啖呵でマキシマム仮面の顔から笑いが消えた。
マキ「おい小僧、俺にそんな口を利かないほうが良いぞ。
ジムリーダーってのはいろんなレベルのポケモンを持ってるもんだ。
良く『バッジを手に入れた』なんて言ってる奴らがいるがそれはジムリーダーの方が手加減してんだぜ。
俺達はいつも弱いポケモンを先に出し、相手の実力を測る。
そして、お前らの実力に等しいポケモンじゃなく、少しレベルが高いポケモンを出す。
最近の挑戦者は少し頑張れば勝てるものをちょっと強いからってすぐ降参しやがる。
覚えておけよ、ジムリーダーは決して強すぎもせず、弱すぎもしない。
ただ、結局は一般トレーナーを育成するために程よく負けなけりゃなんねえだけだ。」
ジャイアンはポカーンとした。
さっきまで怒鳴ってばっかりだったマキシマム仮面が急に静かになり、がらにも無く説教を始めたのだから。



マキ「今の話で俺のアズマオウがいわゆる『弱いポケモン』だって事が分かったろ!早く倒せ!」
ジャ「分かったよ、かえんほうしゃ!」
業火が水に映り、辺りはまた黄色い光に包まれた。
そして、元通りの明るさになったときにはアズマオウは水面に力なく浮いていた。
マキ「フー…まあまあのトレーナーだな。じゃあこいつだ。」
マキシマム仮面のスーパーボールが開かれ、マンタインが現れた。
ジャ「勝負決めるぞ、かえんほうしゃ!」
三度モウカザルの尾が火を噴く。
(この勝負が始まってからジャイアンはかえんほうしゃしか使っていないが、それはモウカザルが水に入れないためだ。)
マンタインのぬるぬるしたボディを火があぶるが、効いていない。
モウカザルはバブル光線の反撃を受けて瀕死になった。

ジャ「ドーミラー行け!」
ジャイアンの手持ちのニューカマーだ。
マキ「成程ドーミラーかあ!かえんほうしゃ!」
ジャ「かえんほうしゃぁ!?」
マンタインはかえんほうしゃを使えないはず。
だがマンタインは指示通り鰭から細い火を出した。
間一髪でジャイアンのドーミラーはそれを避けた。
ジャ「じんつうりき!」
決まった。ドーミラーの不思議な力でマンタインは苦しんでいる。
ジャ「マンタインがのたうち回ってるうちに質問だ。
何でマンタインはかえんほうしゃなんて使えるんだ?」
マキ「あー?知らん!自分で理由を探せ!」
マキシマム仮面は答える気が微塵も無い。



ジャ「まさか改造じゃねえだろうな……」
脳裏によぎる疑惑。
マキ「何ボーッとしてんだ?かえんほうしゃだ!」
ジャ「は!?」
何故かじんつうりきで拘束されているはずのマンタインからまた炎が吐かれた。
そしてそれはドーミラーに直撃した。
ジャ「ドーミラアァァ!!」
鋼タイプに炎攻撃は命取りだ。ジャイアンはドーミラーに駆け寄った。
ジャ「ドーミラー!大丈夫か?」
平気だ。
ジャイアンは捕まえたポケモンの特性を選んだりはしないので、偶然ドーミラーは耐熱だった。それだけのことだった。
ジャ「ん?何だか元気そうだな。まだ戦えるか?」
ドーミラーは頷く代わりに瞬きした。
ジャ「そっか、じゃあみらいよちしとけ。」
技の相性不利と見たジャイアンはドーミラーを捨て駒にし、カブトで勝負に出ることにした。
マキ「コラァ!最後まで戦え!
確かにドーミラーじゃ決定力に欠けるが、それはドーミラーを囮にする理由にはならねえぞ!」
そろそろジャイアンもこのやたら説教を垂れるジムリーダーに腹が立っていた。



ジャ「うるせえええっ!!!」
幾度と無く同年代の友達を黙らせ、自分の意見に従わせてきたこの一言。
さすがにマキシマム仮面は多少怯む。
ジャ「ドーミラー!みらいよちは済んだな?交代だ、カブト!」
ボールから飛び出すと共にカブトは水に潜る。
ジャ「水中から奇襲しろ!」
マキ「オーロラビームだ。」
マンタインは七色の光でカブトを威嚇する。間合いに入らせない。
ジャ「オーロラビームまで使えるのかよ。お前……まさかとは思うが……マンタインに手を加えてなんかいないよな?」
マキ「何言ってやがる。俺のポケモンは100%オールナチュラルだ。
改造なんてする人間は勝つことしか考えられないような奴だ。」
ジャ「じゃあ…何でさっきから変な技ばっかり使うんだ?お前こそ勝つことしか考えられない奴なんじゃねえのか!!?」
その言葉はマキシマム仮面を黙らせた。
ジャ「どうした、何も言えねえのかよ…がっかりしたぜ。トレーナーを育てる云々より大切なことが有るだろ。」
ジャイアンはここぞとばかりにマキシマム仮面を攻め立てる。



マキ「お…俺は……今まで一度も勝つことなんて…。」
ジャ「もう分かった。何も言うな。俺がお前を負かすことでお前を楽にしてやる。行け、カブト!……カブト?」
カブトの様子がおかしい。
体が小刻みに震え、激しい光と熱を出している。
ジャ「し…進化か!……これはいいタイミング。」
進化を終えたカブトの体は大きく、スマートになった。
強靭な鎌を持つ古代ポケモン、カブトプスだ。
ジャ「覚悟しろよ、マッドショットォォォッッ!!」
カブトの時とは比べられない量の泥がマンタインに飛んでいく。
が、それを易々とかわすマンタイン。
ジャ「飛行タイプか!」
マッドショットが利かない理由に一瞬で気付いたジャイアン。というよりこれはポケモンの基礎知識だ。
そして、考えてというよりは野性の勘でカブトプスに次の指示を出す。
ジャ「切り裂け!」
鎌を生かした単純明快な戦法だ。
だが、マキシマム仮面が正面から突っ込んでくるカブトプスを易々と通すわけが無かった。
マキ「タネマシンガン。」



あっという間にカブトプスはジムの床に伏した。
ジャ「お前はそこで見てろ。今楽にしてやるって言っただろ。」
マキ「俺はな、ずっと………為に…戦って…」
ジャ「(何か言ったか?)お前は技のレパートリーで勝ったつもりだろうが、
こっちにはすいとるがある。」
ジャイアンの声で再びカブトプスが動いた。
マンタインまでアクアジェットで移動し、その体にしがみついたのだ。
ジャ「カブトプスはこうやって食事すんだよ。」
カブトプスのすいとるがマンタインの体力を奪う。
草タイプとは違い、相手の体液を直接口ですするのがカブトプス流だ。
ジャ「これで体力はそっちの方が少なくなったはずだろ?大人しくやられてくれ!」
ジャイアンのカブトプスの鎌が今度こそマンタインを捉えた。
マキ「はねる……」
ジャイアンに悟られない程度に指示を与えるマキシマム仮面。先ほどのジャイアンの一言から声が小さくなっていた。
はねたマンタインは辛うじてきりさくの直撃を避けることが出来た。
―――が、完全に回避したわけではなかった。

ドスッ!
進化したてで異常に鋭いその鎌は、マンタインの鰭の一部を削ぎとってしまった。
タイルの床を滑り、音も無く水に沈むマンタインの肉片。
ジャ「うわあああああああああああ!!!!!!」
もはやジャイアンは喋るどころではない。
普段スネオの家にあるゲームでしか見る機会がないような光景を間近で拝み、呆然と立ち尽くしていた。



マキ「やっちまったか。」
マキシマム仮面は水に飛び込み、マンタインの鰭の一部を拾い上げた。
ジャイアンはそれを直視できない。
ジャ「早く……早く捨ててくれ………本当に悪かった、すみません。」
ジャイアンをじっと見つめるマキシマム仮面。
ジャ「そんなつもりは無かった……信じてくれ………。」
その場に膝をつき、許しを請うジャイアン。
そんなジャイアンをマキシマム仮面は責めなかった。
マキ「まあまあ、仕方ねえ事だ。今回の勝負はお前の惨敗ってことにして、それで許してやるよ。」
ジャ「………ごめんなさい。」
最後にジャイアンはそれだけ言い残すと、トボトボとジムを出て行った。

マキ「………いつまで死んだフリしてるつもりだよ。」
マキシマム仮面がそう呟くと、ジャイアンがマンタインの肉片だと思っていた部分が元気に泳ぎだした。
その正体は噴射ポケモン、テッポウオだ。
マキ「バトルのスタイルに特徴や勢いはあってもやっぱり消防は消防だな。
図鑑をちゃんと読めばテッポウオがマンタインにくっつく性質があることぐらいすぐ分かるのにな。」
マンタインをさするマキシマム仮面。
マキ「よし、無傷だ。」
確認が終わると、テッポウオがマンタインに張り付く。
この二匹はマンタインがタマンタから進化するときからずっと一緒だったのだ。

ポケッチが振動し、マキシマム仮面は電話に出た。
マキ「おうメリッサか。何?また俺のファイトマネーを使う気かよ。
勘弁してくれよ、しかもあんな奴のために…………同期の仲?お前何か頼むときはそればっかだな。
……分かった分かった、行きゃ良いんだろ行きゃ!」
マキシマム仮面はポケッチを床に叩きつけると、乱暴に扉を開けて外に出た。
そして、ニョロボンを出すとその背中につかまり、どこかに向かって海上を泳いでいった。



現実世界 出木杉宅

しず「宇宙が出来たのは100億年前のビックバンによって、だったかしら?」
出木「……ウン。だけど、本当は別の原因があったかもね。」
休日を返上して勉強するしずかと出木杉。
しず「別の原因?例えば?」
出木杉の知識を少しでも吸収しようと必死なしずか。
出木「例えば……その頃には既に生物が存在していて、宇宙というものがそもそもそいつによる巨大な建造物だとか…」
しずかは出木杉の話に「すごい!」というリアクション付で感動する。
もっと聴きたくなった風を装い、疑問を追及した。
しず「じゃあ、その生き物はとっても大きいのよね!?」
出木「それは分からないよ……ある程度の大きさがあれば、沢山の腕を駆使して宇宙を作る事だってできるよ。」
出木杉にはその生き物の想像図が既に頭の中にあるようだ。
どうも理解しがたいと感じたしずかは話題を変えることにした。
しず「それじゃ、化学分野の質問だけど……水を電気分解する際に、
水に溶かしておかなきゃいけないものって何だったかしら?」
出木「それはね………って言うかさ、今の小学生は水に電気がよく通るものだと思っているんだ。
何でそういう認識が広がったのか全然分からないけど、そういうのはちょっと問題だと思うんだよ……」

しず「流石出木杉さんだわ。全然話に付いて行けなかった。」
出木杉の家から出て、可愛らしい手帳を出すしずか。
勉強会が終わると、一回家に帰って昼食を取り、ピアノのお稽古。その後はのびたさんの家でポケモン……
勉強と遊びがごっちゃになって頭がおかしくなりそうだわ……しずかは電信柱に寄りかかった。



ゲームの世界、高速船甲板

目を瞑って穏やかな表情で寝るドラえもん。
シグナルビームを直接食らったとはいえ、所詮それは首元のリーシャンを狙ったもの。
今は気絶したロボットというよりはむしろただのお寝坊さんといったほうが正しい。
恐らくあと1,2時間のうちに目を覚ますだろう。
が、こうしてる間にも時間は現実世界の半分のスピードで刻々と秒を刻んでいる。
ドラえもんが取っている遅れも大きくなる一方。
さらに、それに伴いのびたとの距離も離れていく。物理的にも、精神的にも………

ドラ「ビ…ビーダル?おはよう。」
24時間の休養を取り、ドラえもんが覚醒した。
ビーダルが身振り手振りでドラえもんが寝ていた間のことを説明しようとする。
のびたがドラえもんに別れを告げたこと、ファイトエリアに単身旅立ってしまったこと。
だが、いまいち表現力に欠け、ドラえもんに肝心なことが伝わらない。
仕方なく、ビーダルはドラえもんの図鑑を指差すだけにした。
ドラ「これがどうかしたの?」

隅々まで図鑑に目を通すドラえもん。
そのうちにあることに気付く。
ドラ「ポリゴンと…ポリゴン2のデータが入ってる……」
ポリゴンは通信で進化するポケモンだったはず。
ドラ「確かのびたくんもポリゴンを持ってた。
とするとこのポリゴン2はのびた君が交換で進化させた個体だね。
で、肝心ののびた君は?」
のびたがドラえもんに言いたかったことが伝えられずにしょんぼりとうつむくビーダル。



ドラ「のびたくーーーーん!!!」
ドラえもんはそれから小一時間、のびたを探してファイトエリアを駆けずり回った。
道行く人が何人か振り向いたが、新種のポケモンだと思ったらしく、誰も気に留めない。
とうとうドラえもんは地面に倒れこんだ。
ドラ「のびた君……どこに行っちゃったんだろう?一人じゃ何も出来ないくせに!」
コンクリートを叩いてのびたについての悪態をつくドラえもん。
だがこれはあくまでのびたのことを心配する余りの行為だ。
ドラ「………こうしちゃいられないや。どうやら今日は日をまたいで土曜日みたいだし、
のびた君も朝からゲームの中にいるはずだ。」
ドラえもんはのびたににポケッチで電話をかける。
が、電話の向こうで聞こえた音はのびたが非情に電話を切る音だけだった。

ツー…ツー…ツー…

ポケッチに耳を押し付けて受話器の音を拾うドラえもん。
耳がヤブ医者の手術によって消えて以来、ドラえもんの耳のありかを知るものはいない。
しかしそのなけなしの耳は、受話器から機械の音以外の音を、
のびたの声を聞こうといつまでもそばだてられていた。



バトルタワー

最上階で一人の男がバトルパークを見下ろしていた。
いい年して金色に染めた髪はてんでんバラバラな方向に伸びている。
子供を持つようになってからその顔は幾分穏やかになっていた。

マキ「おい!花束だ!受け取れ!」
背後から背広のかっぷくの良い男が花束を投げてきた。
窓と向き合っていた男は振り向きざまにそれを受け取る。

そして噴き出した。
マキ「て…てめえ!…なんとなく予想はしてたが……やっぱり笑いやがったな…!!」
?「だだだってよ!お前、いつもの……上半身裸の仮面姿じゃねえと、なんて言うか……ただの親父だな。」
怒りを抑えて真っ赤になっている『ただの親父』はノモセシティのジムリーダー、人呼んでマキシマム仮面だ。
マキ「“バトルタワーwi-fi開通記念!“の祝いの場じゃなきゃ吹き飛ばしてやるとこだぜ!」
?「吹き飛ばす?オイオイ忘れちまったのか?俺はお前のこと小さい頃から知ってるけど、
お前が俺に触れたことなんてあったか?」
もはや答えは分かっている、といった雰囲気で金髪男はマキシに問いかけた。
マキ「ねえよ!!お前は殴りかかろうとするといつもカイリューを出して俺を寄せ付けねーだろ!!」
金髪男はまあな、と適当な相槌を打ち、思いついたように質問をした。
?「そういやあ、シロナはお祝いに来るのか!?ん?」
マキシは金髪の男をやれやれといった様子で眺めると、一言だけ言った。
マキ「後で来る。」
?「そうかそうか、ありがとなマキシ。外してくれるか」
マキ「俺を追い払うつもりかよ。まぁ俺としてもこんな所に長居したくは無いがな。」
そそくさとその場を後にするマキシ
?「じゃーなマキシ!」
マキ「じゃあなクロツグ!」



「長引いちゃった、急がないと。」
住宅街を爆走するスネオ。
彼は都内の学習塾に通っているが、ダイパ発売のせいで宿題をすっぽかし、先生にこっぴどく叱られた所だった。
スネ「おかげで居残りに追試だよ。まあサボったけど。」
先生の怒り狂う様を想像するスネオ。自然と笑いがこみ上げる。
スネ「まっ、その怒りもそろそろ収まってるはずだね。」
スネオの頭に浮かんだものは……自分の母親が謝礼金を塾に振り込む様子だった。

スネ「こんにちはー!お邪魔しまーす!」
玉子「あらいらっしゃいスネオさん。最近よく来るわね………もしかして勉強会?」
異様な部屋の静かさをどう勘違いしたのやら、のびたにそっくりな母親は期待に満ちた目でスネオの返答を待っている。
スネ「はい!のびたくんの成績が悪くて、それで…」
言ってしまってからスネオはしまったと口を押さえた。
うっかり友達と同じノリで話してたよ。
言ったことに間違いは無いけど、のびたのママの失望した顔を見るのは忍びないな……
恐る恐るのびたのママの顔色を伺うスネオ。するとのびたのママは、
玉子「そうだったの!?あら~~~~ぁまあ!優しいのねぇ。お菓子もって行きましょうか。」
満面の笑みでルンルンと去っていくのびママ。
スネ「出来の悪い子供を持つと大変なんだな………ウッ」
のびたのママの苦労を考えると、何故かスネオの目頭が熱くなってきた。

 のびたの部屋

スネ「さて、今日もやりますか。」
一応お菓子は断っておいた。ゲームしてるときに入って来てもらうと困るから。
それとスネオには一つ気になる点があった。
玄関にしずかの靴と思えるものが無かったことだ。
スネ「もしかしたらどこでもドアで直接来たのかもしれないけど、もし用事でゲームに参加してないのだとしたら…」
スネオの顔が引きつったように笑みを浮かべる。
スネ「わき目も振らずに一生懸命ポケモンの育成に励んだぼくが一番強いことになる!!」
モチベーションが最高潮に達したスネオはゲームへの参加ボタンを押した。



スネ「さぁ~て今日育成するポケモンは?ピッピカチュウ!」
オーキド博士のポケモン講座に見立ててスネオは自分のボールをシャッフルし、その中から一つを取り出した。
スネ「№398といえばー?そう!ムクホークじゃな!………ムクホークゥゥ!!?」
スネオの手のボールの中に入っていたのは昨晩までのムクバードではなくその進化形のムクホーク。
ビジュアルも特性の威嚇がより際立つようになり、いつの間にか会得したインファイトまで携えている。
一晩の間に起こった、まるで別のポケモンのような変化にスネオもしばらく開いた口が塞がらなかった。

数分後、正気を取り戻したスネオはポケッチの通信サーチャーを起動させた。
スネ「この時を待っていたんだ…ムクバードが進化して、ぼくが飛行手段を得る時を!」
スネオが電話をかけた相手はしずかちゃん。
スネ「もしもしー!?もしもしー!?」
しずかの返答が無いと分かるとスネオの顔はいよいよ人間のものではなくなっていた。
スネ「ウヘヘヘヘ…しずかちゃんはまだゲームに入っていない……
いよいよだ。いよいよぼくの計画が動き出す、動き出せる!!」
スネオはムクホークの足につかまり、地面を強く蹴って飛翔した。

ムクホークにぶら下がりながらスネオはまたポケッチを使い出した。
スネ「ドラえもん?何処かに伝説のポケモンいなかった?」
電話の向こうのドラえもんは暗い声で答えた。
ドラ「伝説?そーいえばキッサキシティの神殿にポケモンの石像があったなぁ…
レジロックとかを連れて行くと動き出すとか書いてあったよ。」
即座に電話を切るスネオ。
ムクホークに指示し、進路をキッサキシティとする。
スネ「すぐそこまで来てるぞ……ぼくが伝説のポケモンを自在に使い、他の奴らがぼくにひれ伏す時代……」
スネオがずっとパルパーク周辺でポケモン育成をしていたのは全てこのためだ。
さらに、誰よりも早くムックルを捕獲したのもこのことに繋がっている。
スネ「これからはムクホークでシンオウを飛び回るぞ。今に見てろジャイアンめ!!」



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