ドラえもん・のび太のポケモンストーリー@wiki

短期連載Ⅱ

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目の前の雑踏は耳障りなノイズを奏でる
人々の声、足音、そして――ポケモンの声。

~~僕は5年前、この町に来た。

といっても、他の町から来たとかそんなもんじゃない。
違う世界だ。
そう、僕がいた世界だ。
5年前まで、そこが僕のいるべき世界だった。~~

夕暮れに差し掛かる。
斜陽は紅く世界を照らす。
僕のいた世界と変わらない。
聳えるビルも、鉄の民家も同じ。
違うのは、ポケモンがいることだけ。

~~5年前、友達を巻き込んで、僕はこの世界に来た。
青い狸のようなロボット、ドラえもん。
彼が出した機械によって僕らは来たのだ~~

――僕の名前は野比のび太――15歳



人々から離れ、僕はアパートに帰った。

ようはポケモンをうまく扱えれば、この世界では暮らしていける。
僕の仕事は、とあるジムで挑戦者相手に小手調べすること。
前哨戦みたいなもので、ジムリーダーに言わせれば弱ければ弱いほどいいらしい。
そうすれば挑戦者は油断するから。
だから僕を選んだのだろう。
バトルに関しちゃ全然だめな僕を――あいつらしいや。
まぁ、それでも仕事にはなる。
一応、あいつには感謝しているのさ。

「あぁ、のびさん。おかえり」
お隣のばぁさんが寄って来る。
僕は挨拶をして「ただいま」と返した。
「お客さんが来てるよ。部屋の中にいるみたい。
 鍵を掛けっ放しにしてたのかい?危ないねえ。フェッフェ!」
いやに耳に残る笑いを残し、ばぁさんは自分の室内へ入った。

お客さん――一体誰だ?
見当はつかない。
それに鍵? 僕はちゃんと……

僕のポケットの中にはちゃんと鍵があった。
こうなるとますます怪しい。
ばぁさんが嘘でも言ったか……いや、ボケたか?
……ま、確かめてみるかな。



そう心に決めてはみるものの。
やっぱりちょっと怖い。
ノブを握る僕の手は少し震えていた。

……回すぞ!

グッグッ

……あ、鍵か。

誰も見ていないのに急に恥ずかしくなる。
兎に角、ドアを開けた。

「のび太さぁん!!」
突拍子も無く彼女が飛びついてくる。
背後には見覚えのあるマリルリの姿が見受けられた。
「……しずちゃん?」
胸の上を擦る、懐かしいおさげ。
源静香、かつての僕らのマドンナだ。

同時に記憶がふつふつとよみがえって来る。
「ど、どうしたのしずちゃん!?
 とにかく中へ……あ、僕が入るのか」
そんなこんなで泣きじゃくる静香を押しながら、部屋へ入る。



暮れなずむ町を背に、僕は扉を閉める。

目の前の静香は大袈裟に大人びて見えた。
無理も無い、僕が最後に会った静香はまだ10歳だったのだから――

「のび太さん!今まで何していたの!?」
静香は堰を切ったように質問を浴びせてくる。
「あたしがロケット団に捕まってからもう5年も経つのよ!
 どうしてこうなったの!?
 誰かがチャンピオンになったら元の世界に帰れるんじゃなかったの?」
「あぁ、うんまあ……そうだったんだよね。本当は」
僕は静香を宥めながら、床に座らせる。
「実はね静香ちゃん。
 あの道具……壊れちゃったんだ」

フッと、静香の顔から表情が消えた。

「こ、壊れたって?」
「うん。
 実は参加者の一人がチャンピオンになっても元の世界に戻らなくてさ。
 そのチャンピオンが言うには機械が壊れているみたいって」
「そんな……それで!?
 ドラちゃんはどう――」
首を横に振る僕を見て、静香はようやく思い出したようだ。

ドラえもんが手持ちのピカチュウの攻撃を喰らい、ショートしてしまったことを――



「……ごめんなさい」
静香がおもむろに頭を下げたので、僕は慌てた。
「べ、別にいいんだよ!
 もうみんな知っているんだから。
 僕らがこの世界から帰れなくなったこと、みんな理解してくれた。
 仕方ないから僕らはこの世界で暮らしているんだ。
 ほら、この世界ってポケモンが使えれば――」
「そんなことよりのび太さん!」
そんなことですかしずちゃん。
「あたし今大変なの!
 追っ手が来てるのよ!匿って!!」

そういえば、静香は5年間ロケット団のところにいた。
道具が壊れた騒ぎですっかり忘れられていたのだ。

「お、追っ手って……ロケット団の?」
「そうよ!
 あたしロケット団員として養成されていたんだけど
 その腕が認められて幹部にまで上り詰めたの。
 だけど、のび太さんたちがずっと来ないから心配になって
 暇だったから脱出したの」
色々と突っ込みたかったが、静香の様子が本気なのでやめておく。
「……わかった。
 でもそれだったら僕なんかよりジムの方へ――」

ガシャン!
不意に部屋の窓ガラスが勢いよく割られた。



振り向くと、ドンカラスと共に一人の男が侵入して来る。
完全な犯罪だ。訴えなきゃ。
いや待てよ。
このままじゃ僕が大家さんに訴えられる!
「見つけたぞ!静香!
 ロケット団を裏切るとは愚かなことを!
 この空の覇者、須羽ミツ夫から逃げ切れるわけ――」
「行け、ピカチュウ!10万ボルトだ!!」
名誉の危機を感じた僕はポケモンを繰り出す。
黄色ねずみは凄まじい電撃を繰り出し、須羽を処した。
須羽の絶叫が響き渡る。
う~ん。さすが僕の第一のパートナーだ。
あの電撃の輝き、威力……なんとすばらしい!
因みにドラえもんをショートさせたのもこいつだ。

須羽がマックロクロスケとなっているうちに、僕は静香の手を握る。
「さぁ、行こう!しずちゃん!!
 ……時にしずちゃん。どうしてこの部屋に入れたんだい?」
「ええ、ピッキングよ!
 ロケット団にいるうちに習ったの!」

しずちゃん。
5年間の歳月はいったい君に何をもたらしたんだ……

かくして僕らの逃亡劇が始まった。
電気ねずみと水ねずみを従えて――
まず目指すのはジムだ!



《《《
「……おい、1号がやられたぞ」
男はたこ焼きを頬張りながら言う。
かなりの巨漢だ。
それを背負うペリッパーも、標準に比べればかなり大型。
「1号……懐かしい呼び名ね」
女はピジョットに腰掛けながら下を見ている。
駆けて行くのび太と静香の前に。ばぁさんが立ち塞がっていた。
「ああ、俺らにとっちゃあいつはいつまでも1号や。
 んなことより……次はどうすんねん?」
「順番からして、次は2号ね」
「ウキャ!?」
「ええんかいな、そんなんで……2号ええんか?」
「ウキャキャ!」
チンパンジーは勢いよく民家から降りていく。
腰にちゃんとモンスターボールをつけて――
》》》

「会話は聞いてたよ。
 壁越しから聞こえるんだ。フェッフェ」
……僕は5年間もそんな所に住んでいたのか。
ばぁさんはドードリオを繰り出す。
「乗りな!」
「……いえ、いいです」
僕はばぁさんの脇を擦り抜け、駆けていった。
逃亡劇は始まったばかりだ!



僕は走った。
しずちゃんを連れて、ジムへ向かったんだ。
ジムの扉を蹴破り、ジムリーダーの元へ――

「おい、リーダー!助けてくれ!!」
僕は急き込んで叫んだ。
「ど、、どうした?のび太?
 それに……しずちゃん!?」
これがこのジムのリーダー。
一角獣のスネ夫だ。

僕はことのあらましを説明した。
「なるほど、しずちゃんがロケット団に追われているのか……
 よし、僕も協力しよう!」
スネ夫は頷く。
一角の如きヘアーが襲ってきたのを置いといて、僕らは裏口からジムを出る。

この町のゲートまで来た。
「この先はポケモンリーグなんだ。
 四天王は僕らの知っている人物だ。きっと助けてくれる」
「……おい、ちょっと待てスネ夫。
 お前が僕らを助けるんじゃ」
「あ、それとついでにこれを受け取ってくれ」
僕の言葉を切って、スネ夫は紙を差し出した。



[ハナダキャバレー
 採れたて新鮮な美女たちがあなたをおもてなし――]

「あはは、ごめん。間違えた」
スネ夫が笑いながら誤魔化す。
……おい、なんだその『行ってて当たり前だよね』的な目つきは。
そして何故それを僕に向ける?
そんなに打ち殺されたいか?一角獣。
「これだよこれ」

[スネ夫君。
 ○月○日、ポケモンリーグに来てほしい。
 重大発表があるんだ。
              チャンピオンより]

「これが数日前、僕の家に届いたんだ。
 日付は今日。だけど僕は大事な用があるんだ。
 だから代わりにチャンピオンのところへ言ってくれないか?」
怒りを鎮めた僕はその手紙を受け取った。
「わかった。チャンピオンの所へ行けば――」

ドオォォォン!!

爆音が町中でこだました。
「な、何だあれは!?」
僕は思わず叫ぶ。



町中に突如、巨大なケッキングが現れたのだ。
頭にチンパンジーが乗っている。
ケッキングは町の塔によじ登っている。
「!!あそこには店が!
 のび太、しずちゃん!来い!」
スネ夫は先導する。

「?……どうしたの?しずちゃん」
僕は隣のしずちゃんが震えていることに気づいた。
しずちゃんはケッキングの上のチンパンジーを凝視している。
「のび太さん。
 あたし、あのチンパンジー知ってるわ!
 あたしが幹部になるときに『人じゃ無いから』っていう不純な理由で
 一階級落とされたロケット団員よ!
 ロケット団員は幹部の下が全員下っ端なの!
 だからあたしのこと相当恨んでるはずよ!!」 
……ここで突っ込んだら負けだここで突っ込んだら負けだここで突っ込んだら(ry

兎に角僕らは町を救うため戦いに躍り出た。
待ってろよキングコング!



巨大ケッキングが町を破壊していく。
何やら塔に登り、雄叫びを上げている。
!!巡回するヘリをぶっ壊しやがった……何の映画の撮影だこれは。

そんなこんなで僕たちは町に戻ってきた。
機動隊がケッキングに爆撃を仕掛けている。
「くそ……僕の町をこんなに荒らしやがって!!」
スネ夫は悪態をつきながらケッキングを見上げていた。

その時
「あ!あれは何!!」
しずかが空の一点を指す。
僕はそれを見た。
「あれは確か――!!」
僕は気づいたんだ。
二体のネンドールが一体のドダイトスを頭に載せている。
その上には一人の王女の姿!

「ムス子さんだ!!」
僕は思わず叫ぶ。
「えぇ!?
 ムス子ってあの笑わないでいつもムスっとしていた女の子のこと!?」
しずかは明らかに動揺していた。
当然か……あれは確かに驚くべきことだったから。



「そうだよ。
 ムス子さんはね、旅の途中自分の本名を知ったんだ。
 ロムス子・パロ・ウル・ラピュタ――それが彼女の本名。
 彼女はどっかの古代文明の、王族の末裔だったんだよ!!」

何故だ……しずかが訝しげに僕を見てくる。
嘘はついていないのになぁ。

「「愚かな猿よ!!」」
ムス子王女が拡声器をつかって話し出す。
返事の代わりに、ケッキングの唸りが一声。
「「我の王国はこの町のそばに浮かんでいる。
  そこへお前の攻撃音が響いてきた。
  それが我の安眠を妨げたのだ!!
  よってここいら一帯の人間と共にお前を滅ぼす!!覚悟しろ!!」」
ネンドールの足の先で、エネルギーが溜まっていく。
「あれはきっと本気だぞ……しずちゃん、ほっといて行こう」
「ええ」
そうして僕らはポケモンリーグへ向かうことにした。

光が弾け、爆発、突風。
町の中心に攻撃が放たれたのだ。
「「あはははは!!
  見ろ!人がゴミのようだ!!あはははは!!」」
拡声器を通して、ムス子の笑い声が聞こえてきた。
「あぁ、のび太さん。あのムス子が笑ってるわ。
 5年の間に随分変わったのね」



僕はリーグへ入った。

左にはジョーイ、右にはフレンドリィショップ店員がいる。
「リーグ参加者ですね。何かお買いに?」
店員が話し掛けてきた。
僕は首を横に振る。
「いや、僕は戦いに来たんじゃないんです。
 チャンピオンに会いに来たんです」
「どっちにしろチャンピオンに会うためには四天王の間を通らなければいけません。
 しっかり話せば大丈夫でしょうが、四天王は全員血気盛んなので戦いを挑んできてしまうかと」
とジョーイが教えてくれた。

僕は溜め息をつき、しずかの手をより強く握る。
「行くよ。しずちゃん。
 なるべく戦いは避けるよう協力してくれ」
「わかったわ」
しずかは力強く頷く。

なんとか大丈夫だろう。
そういえば四天王も知り合いばっかりだった気が……

とりあえず僕は第一の間の扉を開けた。
待ってろよチャンピオン!



第一の間――『美来斗利偉・拉麺男』

メガネをかけたテンパの男が中央に座っている。
カップヌードルを啜っている。
「むごっ! ひょーふぇんしゃだば!!」
食べながら喋ってやがる。きたねえ。
四天王の男は一気にカップヌードルを吸い込んだ。
「―ーよし、食い終わった!
 俺の名は小池!四天王の一人さ!
 カップヌードル片手に時空を越えて参上する最強の背景キャラ――」
な、なんだかわからんが熱い奴だ。
僕はとりあえず交渉してみる。
「あの……僕たち戦いに来たのではなく」
「行くぞ、まずは俺のポケモン!
 行くんだ、『ナカタニ』!」
小池さんが繰り出したのは『ナカタニ』という名のカイリキーだ。
「ふわー、はは!!
 どうだ、俺の先鋒の威圧感は!?
 ん、何故『ナカタニ』なのか聞きたそうだな?
 『中谷』という字を立てに並べて丸で囲んでみろ!ぶわー、ははは!!」
だめだ、こいつ。
「しずちゃん。ここはスルーで」
「マリルリ、はかいこうせん」

しずちゃん……僕の言葉は届かなかったんだね……

マリルリの口元で光が急速に収束し、発射される。

光線にぶち当たり、壁まで吹き飛ばされるナカタニ(カイリキー)。
「な、ナカタニぃぃ!!
 ……くそぉ、よくもやってくれたなこの」



突然僕の背後の扉が破壊される。
「やっと見つけたわよ……」「あの町を出るのはホンマ、大変だったで」
アイドルスタイルの女と、巨漢の男が現れた。
隣でしずかが息を呑む。
「のび太さん!
 あいつら幹部よ!!ついにここまで来たんだわ!!」
「くくく、その通り」
幹部の女がキッと、僕たちを睨んだ。
「さぁ、その女を渡しなさい!」

……渡せって言われて渡す奴いるかっての。バカだろこいつら。
「しずちゃん、次へ行こう」
僕は先導し、次の部屋への扉を開ける。
階段だ。
どうやら第二の間は二階らしい。
僕らは駆けて行く。次の間へ――

《《《
「追うのよ、パーやん!」「もちろんでぇ、パー子!」
「まてぇぇい!!」
小池が扉の前に立つ。
「俺を倒してから行きやがれ!!」
こうして第一の間で死闘が始まった。
しかし面倒なので省くことにする。
》》》



第二の間――『自虐妖怪・御化Q』

僕は第二の間の扉を開けた!

「毛~がさ~んぼ~ん、毛~がさ~んぼ~ん」
白いたらこクチビルの……お化けが歌っている。
恐らく歌は自分のことだろう。
情けなく生えている毛は確かに三本しかない。
「あのね~。Q太郎はね~。
 毛が三本しかないんだよ~♪
 ……
 う ら み は ら さ で お く べ き か あ!!!!!」
どうやら僕らは恨まれたらしい。
そして何故か……
僕は無性に腹が立った!
「何で恨むんだこの野郎!
 僕の友達の『ドラえもん』はなぁ!!
 あったまてっか、て~か!されどぴっか、ぴ~か!!てなぁ
 毎週歌ってたけど、いっつも泣いてたんだぞ!
 部屋の隅で泣いてたんだぞ!!」
僕は怒った。
久しぶりに怒った。
だけど、目の前の白い物体は何も言わない。
「くそ、三本も残ってるのに自虐に走りやがって!!
 そんなものあるからいけないんだよ!えい」

ブチッ
ぷしゅうぅぅぅぅ――

その変化で、しずかが気絶した。
僕は見なかったことにして、しずかを負ぶさる。
さて、次へ行くか。



第三の間――『危うし、オシシ仮面!』

「ふふふ、オシシ仮面よ。ついに追い詰めたぞ」
敵の参謀が語り出す。
「くそ、油断していたぜ……」
オシシ仮面が悪態をつく。
周りには十数人もの敵の傭兵。
もはや助かることは不可能か――?
「バカな奴だ。
 まさか先代のライオン仮面の名を少し利用しただけで簡単に捕まるとはな」
「!!そ、それじゃまさか」
オシシ仮面は息を呑む。
自分の考えてることがあってなければいいと、心から願って――
「ふふふ、ようやく気づいたようだな。
 オシシ仮面よ。お前の考えている通りだ!
 ライオン仮面は死んだのだよ!!ふはははは」
「嘘だ!」
オシシ仮面は必死で首を横に振る。
「嘘だ嘘だ!兄貴がお前ら何かにやられるわけ」
「うるさいやつだ。消せ!!」

バシュ!

「グェーーーー!!」
ばたりと倒れこむオシシ仮面。
そのまま動くことは無かった。

「すいません。ちょっと通りますね」
お取り込み中悪いので、僕は急いで第四の間へ向かった。



第四の間――『発明家奇天烈が遺した機械侍コロ助』

「ワガハイの部屋へようこそナリ~」
黄色い二頭身の何かがいた。
絡繰ってやつだな。
僕はとりあえず説得から始めてみる。
「あ~僕は戦いに来たんじゃないんだ。
 チャンピオンに会いに着たんだ。
 それだけだから」
「だめナリ!
 ワガハイを欺こうたってそうはいかないナリ!」
くそ、こいつも頭かてぇな。
ドラえもんみてぇなやつだ。ショートしてぇ……
「いくナリ、ワガハイのしもべ!」
コロ助がボールを投げた。

出てきたのはなんと、人間だ!
「驚いたナリか?
 奇天烈が遺した発明品、人間捕獲服従球!
 これを使えば人間をポケモンと同じように扱えるナリ!」
な、何て道具だ。
奇天烈――外道だな。
「因みにその人間が奇天烈本人ナリ。
 研究のやりすぎでニートになり、目障りだったので発明品を使って捕らえてやったナリ!
 いけ、奇天烈!」



奇天烈の拳が、僕に目掛けて襲ってきた。
「ま、待て!コロ助!
 お前確かコロッケ好きだったな!」
拳がピタッと止まった。
「どうして知ってるナリ?」
「アニメ見てたからな。そのくらい知ってる」
「ふぅん……アニメに出るときに設定されたことだけど、確かにコロッケは好きナリ!」
「じゃあ、コロッケやればチャンピオンに会わせてくれるな!」
「……考えてやってもいいナリよ~」

ふ、かかったな!
僕はポケモンを繰り出す。

出てきたのはエビワラー。
「そいつの名は『コロッケ』だ。何故かわかるか?」
なぁに、すぐわかるぜ!
「コロッケ、あの技だ!
 死んだ親父から教わったあの技、見せてやれ!」
コロッケ(エビワラー)の右手が、炎に包まれる!
一気にコロ助に詰め寄り、そして
ほのおの拳がコロ助を吹き飛ばした!!やったぜ!

え、何?ほのおのパンチ?
違う、あれは『ハンバーグー』だ!



「とにかく、終わったな」
僕はボーっとしている奇天烈の秘孔をついた。
息を引き取る直前、奇天烈は「あぁ、近視の僕にも死兆星が見える」と呟いた。
いったいどこから星を見たというのだ……いや、言いたかっただけか。

僕が次の階へ登ろうとした、その時!
「ナリ~!!」
なんとコロ助が再び立ち上がった!

〈まずい……まずいぞ!
 まず『北斗の拳』と『コロッケ』のネタを一度に理解する人間なんてざらにいない!
 ただでさえ苦しいギャグ運びだと言うのに、コロ助め起き上がりおった!!
 このままじゃいけない。
 のび太よ……早く!次の一撃で勝負を決めるのじゃ!!〉

な、なんだ!?
神の思し召しが聞こえてくる。
そうか、ここで終わらせなきゃ……僕らはお蔵入りらしい。
冗談じゃない。「次で決めるぞ!コロッケ!!あの技だ!!」
コロッケ(エビワラー)は炎の拳で北斗神拳の何かを繰り出した。
あいにく僕は北斗百裂拳しか知らないのでわからない。
「ちぃ~、ば~!!」
……おい、コロ助。その断末魔は幻の

〈急げのび太!このままではぼろが出る!〉

天の声だ。
僕は急いでしずかを抱え、チャンピオンの間へ向かった。



チャンピオンの間――『結局僕が一番強くて凄くてチャンピオンなんだね』

僕は扉を開ける。
その部屋の中央に置かれた物体。
それは僕の目を釘付けにした。

頭でっかちな、青いフォルム。
あまりにも懐かしいその姿。 
そう、僕が壊したあの――
「……ドラえもん?」
僕は目を疑った。

まさか……そんな
ドラえもんは僕のピカチュウがショートさせてしまい
置き場所に困って廃棄処分に出したはず。
なんでここにあるんだ?

「やぁ、来てくれたかい」
ふと、部屋の奥から白衣の男が現れる。
出木杉だ。

出木杉は話してくれた。
この世界から出る方法を考えていたこと。
そのために、ドラえもんをなおしていたこと。



「そしてもうすぐで、ドラえもんはなおるんだ!」
出木杉が力説する。
「その瞬間にみんなを集めたかったんだけど……そうか、スネ夫君は来てくれないか」
「?みんなって……僕は何も聞いてないぞ?」
「え……あ、ああ忘れてた!ははは」
この野郎。
「さあ、ドラえもん復活まであと10分!
 ちょっと待ってて――」
出木杉の言葉は、扉の破壊音で途切れた。

さっきの幹部二人だ!
こいつらは扉の開け方を知らないのか?
「――は!」
しずかが背中で目覚めた。
「のび太さん、あいつら幹部よ!!
 きっとあたしを追って」
ごめん、さっきも聞いたよ。しずちゃん。
「おい、お前ら!」
とりあえず僕は声を張り上げる。
「小池さんはどうなったんだ!?」
「ふふふ、あいつならパーやんに凶器攻撃してきて退場になったわ!
 とにかく、しずかを奪いに来たわよ!」
女の言葉の後、出木杉が不敵な笑みを漏らす。
「残念だったな!もうじき僕らは別の世界へ行くんだ!
 このロボットの力でなぁ!」
「なら、そのロボットごと破壊してあげるわ!」
「な、なんだってー!?」
出木杉……余計なことを



襲ってきた幹部たち!
狙いはドラえもんの完全破壊!
絶体絶命、どうなる僕ら!
と、その時!

天井が破壊され、ボーマンダが現れた。
「な、なんやこれは!?」
「こいつら、まだ仲間がいたのか!」
幹部たちが慌てふためく中、僕は見た。
ボーマンダの背に乗る男を。
「あ、あれは!
 ガキ大将軍ジャイアンじゃないか!」
僕は歓喜のあまり叫んだ。
「えぇ!?15歳でまだガキ大将なの!?」
そこはつっこまないでよ、しずちゃん。
「よぉ、待たせたな出木杉!
 手紙の通り来てやったぜ!」
ジャイアンが振り向く。
「よく来てくれた、武君!
 とりあえず今からドラえもんを復活させようと思うんだが邪魔者が入った!
 そこのゴミ二人を抹消しろ!」
「まかされよぉ!」
ジャイアンの攻撃が始まる。



僕の背後で凄まじいバトルが繰り広げられた。

「出木杉、まだなおんないのか?」
「まだだ、ドラえもんの左真ん中のひげが無い!」
「……おい、それ故障中だからいらないぞ」
「な、なに――!?」
「ピッピ、ピカチュウ、プリン、加勢してあげて!」
ビシャァァァ――ン!!!
ショォォー――!!!
ブジュゥゥ、ブジュゥゥ!!!
「しずちゃん、それのどこがピッピて――うわあぁぁ!!!」
激戦は続く。
「……やった、やったぞのび太君!
 ドラえもんの尻尾が見つかった!これで完成だ!」
「パトラッシュ、僕すごく眠いんだ……」
「ドラえもん、起動しろ――!!」
――タラララッタラ~♪
「ぼくドラえもん~」
ドラえもん、蘇生完了。
「ドラえもん、この世界から出たいんだ。なんとかしてくれ!」
出木杉は急いで、壊れた『ゲームの世界へ入れる道具』を取り出した。
「……よし、わかった!え~と」
――タラララッタラ~♪
「タイムふろしき~。
 これでどんな道具もなおっちゃうよ~」
……ちょっと待て出木杉。
ドラえもんが壊れてても四次元ポケットはなんともなかったんじゃ
「やった!なおったぞ!」
そのまま出木杉はスイッチを押した。



ここはいつもの空き地。
もとの世界へ帰ってきた。
僕らの世界の住人だった人々も、みんな。
この場にいるのは、六人。
チャンピオン、僕、しずか、ガキ大将軍、そして焼け焦げた一角獣。
「ドラえもん、スネ夫が死体だよ!」
「タイムふろしき~」

「れ、あれ?みんなどうしたの?」
みんなの間で、スネ夫がゾンビということは内緒になった。
「どうやらみんなはそれぞれの家に送られたようだね」
「ポケモンの世界も結構楽しかったのになあ」
「僕はもうこりごりだよ~」
5年前のように、笑いの絶えない日常。
帰ってきたんだ!
僕らの生きるべき世界にね!

それからの話を少々。
復活した古代文明は某国大統領のラジコンジェットに激突し、墜落したらしい。
どこかの超人たちが集まる大会で、テンパの新チャンピオンが誕生したとか。
また、どっかの戦隊がリーダーの急死により解散した。
そしてある発明家が遺したものが、騒動を巻き起こしたことも。
さらにオシシ仮面の後継者、オカメ仮面が……おっと、国家的秘密でこれ以上わからない。

僕たちはドラえもんの『コンピューターペンシル』を奪い、高校に入った。
みんな別々の高校だけど、心はいつも繋がっている。
いつまでも、友達さ!


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