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「で、お前は敵意の無い事がわかっていながらナイフを父に振りかざしたわけか」
黒いスーツを着た男、カイがソラに告げる。
「私を置いていったセイト兄様、私の居場所を変えたカイ様。
 シーナ母様が亡くなっている以上鍵を持っているのはこの二人です。
 セイト兄様は私に格闘を教えた人、カイ様はセイト兄様に格闘を教えた人。
 どちらでも私の攻撃は避けれる、と踏んで行動しました」
ソラは説明を終えてコーヒーを注げる。
「確かブラックでしたよね?」
「ああ、そうだ」
カイの目の前にコップを置き、椅子に腰をかけるソラ。
「で、何の用でしょうか? 私の記憶ではカイ様は私にお祝いを言うような人ではありませんが」
自分の分のコップにコーヒーを注ぐソラ。
コーヒーを飲むソラにカイは溜息をついた。

「お前は……父との団欒を楽しむ気も無いのか?」
「本当の用件は違いますよ。カイ様なら。
 ……私に計画に参加するなと仰られるんでしょう?」
問いにカイは頷く。
「……私はジムを作っておけと言う事ですか? 本当の戦いに備える為に」
「そうだ。だがサカキが反対したんだ。俺はドラえもんと戦いたいとな。
 だから俺は反対だが今回はお前の意思で決定を許可する。
 サカキと話せるようにしておくから相談してもいい」
カイは席を立ち、タバコを取り出した。



「相変わらずコーヒーは上手いな。シーナ譲りだよ。
 しかししっかりしたお前はいいとしても自称『頼りになる兄』は、今、何処で、何をしてるんだか」
「さあ? 元気にはしてると思いますよ。多分ですけどね」
コーヒーのカップを洗いながらソラは答える。
「ふん。違いない。……ソラ、今まですまなかったな」
「何がですか?」
ソラはカップを棚に置きカイと向き合った。
「いや……今まで悪事に加担させた事などだ」
男の言葉に少女は溜息をつく。
「……私は幸せでしたよ。団の皆は私にとってもう一つの家族でした。
 それに……ハル、ヒョウ、イツキ、カリン、サカキ様……そしてカイ様。
 ……私は思うのです。
 私が見てきた副首領は決して間違った事はしない。
 だから後悔しないで、誇ってください。
 貴方は……私の最高の上司です。そして……自慢の父です。
 ……私からは以上ですよ。さようなら……父様」
そう言うと、ソラは扉を開けて自分の部屋に戻っていった。

カイは涙を流して家を出る。
その手には一つのモンスターボール。
「なあ・・・・・。俺は幸せ者だな」
『そうだな……子供を持たぬ我には理解出来ぬがお前は幸せ者だよ。
 あれほどまでに慕う者が居るのだからな』
カイはそのポケモンを出して、飛び乗る。
「……あいつの為にも……この世界を崩壊させるわけには行かない。
 俺が死んでもお前は最強の剣として戦ってくれるか?」
『勿論だ。ルギア、ホウオウ、、ディアルガ、パルキア、ギラティナの救出の為にも……。
 私とミュウツーは永遠の剣となって未来犯罪者を叩き潰してやる。
 それが伝説と呼ばれた我等の宿命だ』
「……では行くぞ」



セキエイ高原 牢獄前崖

『……そうです、私は自分の意志でこの場に立つ事を決めたのです。
 何故今更迷うのです……私はまだ負けたわけではない。
 私の親友がまだ居ます。(そうだ、まだ私が居る)
 ! カイリュー……何ですか?(お前がやっても埒があかない……少し変わってもらうぞ)
 いえ……私は……まだ……(もう遅い)え?』
「うああああああああああ!!!」
頭を抱えて絶叫し、ソラは地面に倒れこむ。
「だ、大丈夫、ソラさん!?」
その様子を見かねて、思わず声をかける出木杉。
言葉を受けて少女は立ち上がる。
「……大丈夫だ」
呟いて、すぐにボールを投げる。
出てきたのは黄色い龍、カイリュー。
「カメックス、冷凍ビームだ!」
「龍の舞」
冷凍ビームを直撃するカイリュー。
だが効いている様子も無い。
「馬鹿な! 冷凍ビームが効かない……そうか、氷半減の実か!」
「私を甘く思うな……私は戦闘のプロだと言う事に気が付か無いのか?」
「! 誰だ君は!?」
出木杉は思わず尋ねた。
目の前に居る少女の先程までとは違った雰囲気に尋ねざるをえない。
「私か? 私の名前はロケット団元幹部、ナナシマリーグ筆頭リーダー、ソラ・バレフィルド。
 ロケット団の意地と、ナナシマリーグ筆頭のプライドにかけて、まだ負けるわけにはいかないのさ。
 覚悟しろ、出木杉英才! 私達の戦いは、これからだ!」
叫びに反応してカイリューが鳴き声を上げる。
その鳴き声は逆襲の始まりの音か。



轟音を立ててカメックスは倒れる。
目の前に居る黄色の破壊神、カイリューの手によって。
「私の相手にすらならない! 次を出せ!」
拳を突き出しソラは叫ぶ。
その様子に途惑う出木杉。
『どうしたんだ!? まるで人が変わったみたいだ。
 彼女の話し方も違うし……何より仕草がおかしい!
 それもこれも……カイリューが出てきてから……。
 ということはあのカイリューを倒せば元に戻るのか?
 ……わからない……だけど……可能性はある!』
力強くボールを握り締め、ボールを放つ。
出てきたのはフーディン。
「フーディン、サイコキネシス!」
フーディンから強い思念波が浴びせられる。
だがカイリューは堪えもしない。
「貴様に圧倒的な火力を教えてやろう! ハハハハハハハハハ!!!」
叫びに答えるようにカイリューは暴れまわり始めた。
『これは……逆鱗! まずい……流石に耐えられない!』
カイリューの腕がフーディンの身体を空高くまで打ち上げる。
落ちてきた衝撃で更にヒビが入っていく地面。
ソラの周りなどもう砕ける寸前だ。
「弱い、弱すぎるぞ! 貴様の実力はこんな物なのか! クハハハハ!!!」
狂ったように笑い続けるソラ。
出木杉の身体は震えてボールもつかめない。
『何だこの震えは……。
 ……恐れているのか……同じ年の女の子に。
 何を恐れている、同じ年の女の子に恐れを抱くのか?
 しっかりしろ、出木杉英才! 僕は天才だぞ!』
震える身体に鞭を入れハッサムのボールを投げる。
そうして、改めて出木杉はソラを睨みつけた。



「ハッサムだと……私を愚弄しているのか? 吹き飛ばしてくれるわ!」
『ここは一つの賭けだ……まずこいつの高速移動が成功しなきゃ勝機は無い!』
「ハッサム! 僕を信じて高速移動だ!」
指示に従い高速に移動を開始するハッサム。
すかさずカイリューの腕がハッサムを捕らえて妨害をする。
だがハッサムは倒れない。
「何!? 貴様……そうかその鉢巻だな!」
「その通り! そして僕の君を倒す戦術は始まっている! バトンタッチだ!」

出木杉のボールから新たに出てきたのはブラッキー。
「フハハハハ! そいつも吹き飛ばしてくれるわ!」
カイリューが腕を振り上げブラッキーに攻撃を仕掛ける。
だがブラッキーは少し吹き飛ばされただけですぐに立ち上がった。
「防御能力の高いブラッキーを舐めるな!」
「ぐう……頭がはっきりしない……グオオオオオオオ!!!」
叫び声と同時にカイリューは自分を殴りつける。
「影分身!」
分身を作り出し本物のブラッキー隠して戦う出木杉。
「おやおや……私としたことが焦ったな。守りの重要性を忘れるとはな」
カイリューが綺麗な光につつまれていく。
『あれは神秘の守りか。これで状態異常技は意味がない』
「フハハハハ、続けて瓦割り!」
拳を振り上げてカイリューは一体のブラッキーを殴りつける。
だがそのブラッキーは本体ではなかった。



「それは外れだよ! ブラッキー、のろいだ!」
素早さを落として攻撃力と防御力を上げる。
だがそれをしたことでブラッキーはカイリューに場所を見抜かれてしまった。
「今度は逃がさん!」
腕を振り上げブラッキーに攻撃を仕掛けるカイリュー。
「守る!」
緑の防護幕を出して攻撃を防ぐブラッキー。
その様子を見てソラは叫ぶ。
「ブラッキー、貴様は臆病なポケモンだ! 自分から攻撃を仕掛けて来ない等とはな」
言葉を受けてブラッキーは出木杉を見る。
『戦わせてくれ』と言わんばかりの眼差しだ。
だが出木杉は首を横に振った。
「僕を信じてくれ! 勝つ為にはこの作戦は必要なんだ!」
その言葉にブラッキーはカイリューを睨みつける。
ブラッキーの目にもう迷いは無い。
「何だその目は? まさか私に勝てるとでも思っているのか?
 私には負けられない理由がある! 貴様等に負けるか!」
腕を振り上げブラッキーは攻撃を受ける。
だがのろいのおかげか、後一回は確実に耐えそうだった。
『のろいを二回した……大丈夫だ!』
「ブラッキー、バトンタッチ!」
「そう来ると思ったぞ! だから私はあえて高威力の技を打っていなかったのだからな!
 馬鹿な奴だ……素直に守ればよいものを!」
炎を撒き散らして突進してくるカイリュー。
『あれは……逆鱗! これを耐えれば……』
「捕らえた!」
拳がブラッキーを捕らえ宙に舞い上がる。
だが宙に舞い上がったブラッキーの姿は突然消えた。



「何!? 何処に行った!」
ソラとカイリューが辺りを見回して叫ぶ。
「カイリュー、君は上を見ないのかい?」
「何!? 上だと!」
上を見上げるソラとカイリュー。
そこには出木杉最後のポケモン、ピジョットが姿を現していた。

「やっぱり君はカイリューだったのか」
出木杉がソラを見つめて話し掛ける。
「……そうだ。私はカイリュー、ソラの能力を最大限に開放して私が憑依した状態だ」
「ソラさんの能力?」
尋ねる出木杉にソラは口を閉じる仕草を見せる。
「おっといけない。バレフィルド家の秘密を語るところだったな。
 私はカイ様とシーナ様とセイトに約束したのさ、ソラを守りつづけると!
 勝ちに急ぐ余りまともな判断が出来ないソラ……見ていられなかった!
 だから私は最近現れたソラが気にする男性、出木杉英才に負けるわけにはいかない!
 最後の馬鹿者が力を貸さない以上、私が倒すしかないのだ!」
ソラが腕を広げてカイリューに指示を出す。
「そいつがお前の切り札だろう! そいつを倒せば手負いのブラッキーとハッサム。
 一撃で倒してくれるわああああああああああ!!!!」
炎を撒き散らして突進し始めるカイリュー。
突進を見て出木杉は笑う。
「何がおかしいいいいいいい!!!」
「僕の技はソラさんだったらわかっただろう……この勝負、君が憑依した時点で負けだったんだ!
 ピジョット、オウム返しだ!」
炎を撒き散らして突進をし始めるピジョット。
両者はそのまま激突した。



突進して崩れ落ちていく二体のポケモン。
『ドローか……ソラさんの最後のポケモンで決まる』
地面に二体のポケモンが落ちる。
出木杉は前を見て気付く。
ソラが倒れている事に。
慌ててボールを取り出す出木杉。
「ソラさん!」
倒れたピジョットを回収して出木杉は走る。

「うっ……カイリューの奴、私の力を勝手に解放しましたね……」
起き上がろうとするソラ。だが足がおぼつかない。
「大丈夫、ソラさん?」
手を伸ばす出木杉。
ソラは一瞬躊躇したが、迷いなく手を握る。
「ありがとうございます……出木杉さん」
力を借りてソラはゆっくりと立ち上がる。
肩からボールを取り出して、カイリューに向けるソラ。
地上に立ってカイリューを回収した瞬間だった。

元々カイリューとピジョットが落ちた時に地面は限界だったのだろう。
ここまで良く耐えたと誉めるべきなのかもしれない。
二人が大地を踏みしめた時、彼等の足場は無くなった。



決着

出木杉   カメックスLV91 ピジョットLV83 フーディンLV83

      ハッサム LV84 エレキブルLV85 ブラッキーLV88

ソラ    メガヤンマLV87 エルレイドLV90 キュウコンLV85

      サーナイトLV90 カイリューLV100  ?  LV100

出木杉△―△ソラ

最終戦
のび太対ノメアロD



セキエイ高原牢獄前

『確かかなり地上に離れていたよな……これは死んだかな。
 皆……ゴメンね。僕が失態を犯すなんて』
諦めて眼を閉じる僕。
だが眼を閉じた瞬間、何かに抱きしめられた。
ソラさんだ。
「ソラさん? 何をする気ですか?」
あれ? 僕は驚いているはずなのに。
何でこんなに冷静なんだろう。
もう死ぬのに。
「私がクッションになります。地面に私が先に当たり貴方のマット代わりになりますよ」
何を言ってるんだこの人は?
こんなに震えているのに。
震えている?
いや震えているのは僕の方か……。
でもねソラさん。
僕は無い可能性よりある可能性に賭けるんだよ!
「ソラさん……最後のボールには何が入ってるの?」
「最後のボールですか? 私の最後のポケモンです。決して言う事を聞いてくれませんがね」
――ポケモン!
まだ可能性はある。
もしかしたら彼女の言う事を聞くかもしれない。
「ソラさん。やらないよりはやるほうがいい。出してそのポケモン」
「……わかりました。左の肩の所に入っていますので取ってください」
「僕が?」
「私では手が届きません」
言われた通りに僕はドレスに手を入れる。
手以外の女の子の素肌を触るのは初めてかもしれない。
……よし、これだな。



僕がボールを投げて出てきたのは赤と白の綺麗な身体をしたポケモン。
ホウエンの伝説、ラティアス。
「ラティアス、言う事を聞いてくれない?」『嫌』
ソラさんの言葉も空しくラティアスは何処かに飛び立っていった。

「やはり無駄ですか……いつもああなんですよ」
「そうなんですか……これで万策つきましたね」
もうしょうがないや。
僕の頭でもこの状況を脱出する手段は無い。
こんなに可愛い女の子と一緒に死ねるなら、それでも良いかもしれない。
さようならドラえもん、のび太君、しずかちゃん、スネオ君、タケシ君。
僕のせいでゲームのクリアに失敗して、ゴメン。
目を開けるとすぐ近くに地面が見えた。
僕の人生も後わずかだ……。

僕が目を開けると青い空が見える。
天国にも空はあるのか……綺麗だな。
でも少し胸が冷たいかな。
「……何で私のネイティオがここに?」
隣に居るのはソラさんか。
無理も無いか、一緒に死んだんだし。
一緒に天国にきたって違和感は無いよな。
……ネイティオ?
まさか……僕は生きているのか?
僕は横を見て確認する。
そこにはネイティオとボールを肩に閉まっているソラさんが見えた。



「ソラ! 何やってるんだよ!」
仮面をつけた男がやってくる。
出木杉がゲームで見たことのある顔だ。
「イツキ! どうしてここに!?」
『ソラさんが知っている。と言う事は多分ロケット団か』
出木杉は考え事にふける事にした。
「僕だけじゃない! ハルもヒョウも……カイ様も居るよ」
ネイティオを撫でるイツキ。
嬉しそうにネイティオは翼を揺らす。
「よーし、いい子だ」
「……私のネイティオをイツキが面倒見てくれたの?」
「ああ、カイ様にも頼まれたしね。さあ行こう! 皆待ってるよ!」
仮面から笑顔が垣間見える。
だが、ソラの表情は違っていた。
「私は正式に脱退しました。今はナナシマリーグ筆頭リーダーです。
 貴方達と会う訳にはいきません」
冷酷な表情でソラは腕からナイフを取り出す。
出木杉が今までに見たことの無い表情だ。
「そうはいかない……君には一回強制的にでも来てもらわなきゃいけないんだから。
 でないと……そこの男の子、殺すよ?」
仮面の奥から冷酷な笑みが浮かぶ。
出木杉は背中に汗を感じていた。
「カリン……貴方がそうしているのはそう言うことですか」
少女は髪を握り締めて悔しそうに俯く。
その様子を見て、出木杉は状況に気がついた。
「自分の命が天秤にかけられている気分はどう? お坊ちゃま」
自分の胸にナイフが突きつけられていることに。



セキエイ高原牢獄

結局僕の命と引き換えに僕とソラさんはロケット団に招待された。
僕は女の子に命を救われたわけだ。
「私は戻りませんよ。いざとなったら力づくでも逃げます」
「相変わらず本気になったら怖いわねえ。でも、ソラは逃げれても隣の男の子は逃げれないわよ」
言葉にソラさんはカリンさんを睨みつける。
その様子を見たイツキさんが僕にこっそり囁いてきた。
「気にしないで、君はすぐに帰れるから。
 それにソラも組織に戻す気は無いよ。ただ……」
「イツキ!」
僕に囁くイツキさんにカリンさんが怒鳴る。
「怖いなあ、タイプも悪ばっかりだし……僕は君が一番苦手だね」
「それはただの僻みじゃない……」
「僻みでもなんでも良いよ」
そう言うと、イツキさんとカリンさんは口論をはじめた。
見かねたソラさんが二人の頭を叩く。
「煩いよ二人とも。……全く、私がいなくなったって言うのに……ちっとも変わってないじゃない」
「変わってた方が良かったの?」
「そ、そう言うわけではないけど。でもヒョウとカイ様に負担かけすぎです。
 少しは真面目にして下さい!」
「仮面をつけた僕が真面目だと思うのかい?」
ごもっともだ。
僕もそれには同意する、っていうか思ってるなら外せばいいのに。
「着いたわ。じゃあ少年と私たちは先に入るから……入ってきたら少年を殺すわよ」
扉を開けてカリンさんがソラさんに告げる。
「じゃあ、行こう。ソラ、僕たちがいいというまで入ってくるんじゃないぞ」
僕は扉の向こうに連れて行かれた。



セキエイ高原本部

「ドラえもん!」
全員が帰ってきたドラえもんに賞賛の言葉を与える。
だが一人浮かない顔をしている。
のび太だ。
「ドラえもん……話があるんだけど」
「何?」
「実は」
だが少年の声は最後まで発せられなかった。
少年の姿は一瞬で消え去ったからだ。

「ここは?」
「ここは最後の間だ。僕とキミとの最終決戦に相応しい場所だろ」
奥の道から登場する青い髪の少年。
その顔には笑顔が浮かべられている。
「まさか全員負けるとは思わなかったよ。
 キミとこうして向かい合うなんて事は考えていなかった。
 キミの仲間たちは素晴らしい活躍をしたんだ。
 感謝すべきだよ、キミの頼れる仲間達にね」
少年が頭を下げる。
「一度名乗ってるけど改めて自己紹介させてもらうよ。
 僕の名前は「ドラえもんだろ?」
少年の言葉に口を挟むのび太。
その顔には自信が満ち溢れている。
「へえ、何でそう思ったのか推理を聞きたいな。
 聞かせてよ、キミの推理を」



「まず最初にお前は名前を尋ねられた時慌てていた。
 何故か……それはDだけだったらばれる可能性があるからだ。
 後……お前は僕たちのフルネームを知っていた。
 未来犯罪者は偶発的に狙ったと言うドラえもんの意見とは食い違いができる。
 ……お前の正体がばれないようにする為のカモフラージュかな?
 決定的だったのは名前そのものだよ。
 お前の偽名、『ノメアロD』はローマ字筆記では『NOMEAROD』
 これを逆から読むと『DORAEMON』、『ドラえもん』だ!
 だから君の正体はドラえもんの道具じゃないかな?」
言い終えたのび太が大きく息を吸う。
少年はずっと聞いていた。
そのうち少年から一つの音が聞こえてきた。
手を叩く音が。
「正解! 凄いね、まさかキミに名前がバレるとは思わなかったよ。
 天才少年が居ないから安全と思ったのは間違いだったみたいだね。
 ……一つ聞きたいんだけどそのローマ字筆記と言う言葉、何処で覚えたの?
 オリジナルの記憶の中にはそれは存在していないんだけど」
Dの問いにのび太はボールを一つ取る。
「それは……教えないよ。でも一つ言う事があるなら……。
 頭の悪い僕をサポートしてくれるポケモンが居るって事かな」
「ふうん。ダレだい、それ?」
ボールを取り出しDは尋ねる。
「それも言わないよ。でも僕は君に言いたい事があるんだ。
 それはね……しずかちゃんとスネオに謝れって事だよ!」
のび太は言葉を言い終えて息を大きく吸い込み、ボールを力強く投げた。



「エーフィ!」「ゲンガー!」
最初のポケモンはスピードアタッカー対決。
単純にこの勝負はスピードの速いほうが勝つ。
今まで戦いをしてきた者にはわかりきっている事。
二人は単純にポケモンの持つ最強の技を指示した。
「エーフィ、サイコキネシス!」
「ゲンガー、シャドーボール!」
先に動き出すのはゲンガー。
黒い弾を当て、エーフィを吹き飛ばす。
――だが、エーフィは一撃では倒れなかった。
一撃を受けきったエーフィからゲンガーに思念波が放たれる。
その攻撃はゲンガーを仕留めるには十分なものだった。
思念波を受けてゲンガーはあっさり倒れた。

「気合の襷か。そいつに持たせているならゲンガーは催眠術を打つしかなかったって事だね」
冷静に状況を分析してDは笑う。
「その通りだよ。まずは僕に先手が渡ったね」
眼鏡を直してのび太は告げる。
Dはその様子を見て考える。
『オリジナルの記憶とは大分違う……ただのへタレのはずなんだけど少し頭も使ってくる。
 この世界に入って成長したか……オリジナルと僕の無駄な計画は意味があったわけだね』
少年は溜息をついてボールを取り出す。

「第一ステップはクリア。じゃあ次のステップに入ろうかな」



Dが投げたボールから出てきたのは赤い髪が伸びた黒いネコ。
「あっさり行くよ、氷の礫だ!」
瞬間的に氷を投げつけられエーフィは崩れ落ちた。

ポケモンを見て、のび太は目を丸くする。
「な、何だ、そいつ!? 改造か!?」
慌てるのび太にDは溜息をつく。
「図鑑を見ても良いよ。人の言葉を受けてばっかりだと成長なんて出来ないからね」
図鑑を見るよう指示を出し、Dはポケットからスイッチを取り出す。
のび太は図鑑をポケットから取り出す。

ポケモン図鑑は10歳以上の者が手にする事ができる冒険の必需品だ。
この図鑑はポケモンの詳細を確認する物だが他にもいろいろな機能がある。
ポケモンに向けると自動的にそのポケモンのページに変わる機能があり調べる時にはもってこい。
自分のポケモンのステータス確認や、通信機としても使える。
この高性能の機械は、ほとんどのトレーナーが持っており戦闘中に使うものも居るぐらいだ。
なお公式大会では使用を禁止している。
トレーナーの知識も戦闘力と見るためだ。

「成る程、そいつはニューラの進化系なんだね」
嬉しそうに声を上げて図鑑を閉じるのび太。
喜ぶのび太を悲しそうな瞳で見つめるD。
「……キミはダイヤモンド・パールをやったことが無いんだね。
 オリジナルもずるい事をするな。はっきり言って卑怯だね。
 キミ以外のメンバーは全員プレイしているのに。……キミには同情するよ。
 だからそんなキミにも復讐のチャンスをあげるよ」
Dはスイッチのボタンを押す。
――爆音が響いた。



「な、何の音だ!」
「キミの仲間たちがここに来る音だよ」
Dの周りに四本のカプセルが飛び出す。
中に入っているのは緑色の液体に飲まれた大切な仲間達。
「しずかちゃん! スネオ! ジャイアン! ドラえもん……」
のび太は心配そうな表情で三人を見つめた後、複雑な表情でドラえもんを見つめる。
「この作戦はオリジナルと僕は関係ない。素直に心配して良いよ」
すかさず言葉を入れるD。
その言葉を受けてのび太はDを睨みつける。
「皆をどうする気だ!」
「僕はどうにもしないよ」
言葉に即答するD。
「決めるのはキミだ、野比のび太。今……キミはこの子達を見殺しにする事も助ける事もできる。
 見殺しにする場合はキミ一人を現実世界に帰してあげよう。
 助ける場合は僕を倒したら全員を解放しようじゃないか。
 キミに選択権を与えるよ。さあ、彼らの命の選択を!」
「……」
無言で俯くのび太。
確かに今考えたら自分の知らないルールで戦うのはしんどかった。
出木杉に負けたのもルールのせいかもしれない。
のび太の頭に色々な事が思い浮かんでくる。
「キミは頑張った。ここで諦めても問題はないよ」
『じゃあ……諦めても良いかな?』
のび太が甘い考えに揺れる時、男は言葉を続けた。
「でも……キミより自分達が圧倒的に有利なルールに勝手に決めた連中でも大切と思えるなら……キミは僕と戦え。
 選べ、野比のび太! キミの取る道はどっちだ!? 戦うならボールを僕に向けるんだ!」
言葉にのび太は顔を上げる。

のび太の選択は――