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……やがてその場が澄み渡っていく。
ジャイアンの目にもはっきり映った。
ルカリオとアブソルが、重なり合って倒れているのを――
「同士討ちか……」
ジャイアンは呟きながらルカリオをボールに収める。
ワンテンポ遅く、ササもアブソルを戻した。
「テッカニン!」「ストライク!」
繰り出された二体は互いに睨み合う。

(……何なんだ、こいつは)
ササの思考が疑問を上げる。
ミヤのことを警察に突き出さなかったのも、ジャイアンの言ったとおり。
警察がミヤを捕まえてくれれば、それで済むと思ったから。
そして、ミヤは捕まり、その後脱獄した。
だから自分で制裁を――
(それは俺のわがままなのか……)

「テッカニン、きりさくだ!」
瞬間飛び込むテッカニンの先。
佇む相手に刃が触れる瞬間。
赤い光が、ストライクを包んだ。
「!?……え」
空を切るテッカニンの攻撃を見ながら、ジャイアンは目を見開く。



「終わりだ」
ササが一声告げ、銀のメダルが投げられる。
弧を描きながらそれはジャイアンの前に落ちた。
「すまないな。こんな戦いさせてしまって……
 私は間違っていたようだ」
そう告げると、ササは立ち去ろうとする。
ジャイアンは銀メダルを拾い、そして
「待てよ!」
と一声掛けてササの元へ向かう。
振り返るササにメダルを突き出す。
「俺はいらないよ。
 あんたも十分強かったからな!」
目を見開くササ。
ジャイアンは微笑みながら、返答を待つ。
すると、ササもにっと笑い、メダルを受け取った。
「私は先にドームへ向かおう。
 お前も勝ち残れよ!」
ササはそう言って、山を降りていった。

「とりあえずは……助かったみたいだ」
ジャイアンは冷や汗を拭う。
(危なかった……俺の中で残っているのはテッカニンと……)
ジャイアンはボールを確かめる。
コドラ、ルカリオ、テッカニンのボール、そしてその脇にもう一つ。
(こいつだけだ……)

その問題児がもうすぐ日の光を浴びることになるとは、ジャイアンはまだ知らない。



東の山道――
逆巻く『ほのおのうず』が木々を焚きつける。
燃え盛る炎が辺りを紅で包み込む。
戦いはどんどん激しさを増していく。
ふと、二体の巨石が宙に浮かび上がった。
(……『じゅうりょく』の効果が切れたんだ!)
舌打ちしながら、ユリはボールに手を掛ける。
(またハスブレロを戻してピッピを――)

「ハッハァ!!」
突如茂みから飛び出してきたスキンヘッズ。
ユリと、ユウトの視線もそいつに向けられた。
「俺の名はジョウ!
 今さっきメダルを取られたリーグ関係者と出会ったぁ!
 さあ、メダルを持っているのはどっちだぁ!?」
(!チャンス)「あっちよ!!」
ユリはすかさずユウトを指す。
「え?えぇ!?」
不意を突かれたユウトを後に、ユリは駆け出す。
ハスブレロもバクーダもしっかり戻して――

「よおし、こっちだな!」
ジョウはにやりと笑いながらユウトの前に立ち塞がる。
「行け、カゲボウズ、コロボーシ、チェリンボぉ!!」
一気に三体のポケモンがジョウによって繰り出される。
「あいつからメダルを奪えぇ!!」

飛び掛るポケモンたちも、それを指揮するジョウ自身も気づいていなかった。
ユウトが笑っていることに――



「……ふう、危なかった」
大分駆けた所で、ユリは木に支えられて一息つく。
(あのままじゃ危険だった。
 ダブルバトルのせいかしら。かなり強かった……
 ま、速くドームへ戻っちゃえばいいんだけどね!)
ユリは思考を切り替え、ドームへ向かっていく。

「……ちょっと聞きたいんだけどさぁ」
ユウトはメダルを弄りながら言う。
「な、なんだ……」
下敷きにされているジョウは、痛々しげに聞き返す。
辺りに散らばる三匹とも、ジョウのポケモン。
今は『さいみんじゅつ』のあとの『ほのおのうず』により瀕死状態。
「どうしてメダルを持っているのに僕のメダルを欲しがったの?」
「……あ、ああ。簡単なこと。
 メダルを余分に持っておけば、もしも強敵に出会った時にも逃げられる。
 そのほうがライバルも減らせ……ぶっ!」
ユウトはジョウの顔を足蹴に地面に降り立つ。
「ふうん。やっぱりそうか」
頷くユウトの後ろで、ジョウがゆっくり立ち上がる。
「こ、の……くそ野ろ」「さいみんじゅつ」
ルナトーンの目が光り、ジョウは白目をむいて倒れた。

「やっぱり、同じことを考える人もいるんだねえ」
ユウトの弄ぶメダルは二つあった。
両方とも銅色のメダルだ。



少し時間を戻し――
ドーム入り口――
(しめしめ、現れたぞ……)
スネ夫は段々と近づいてくる男を見つけた。
間違いなく銅メダルを持っている。
(あと少し……もうちょい近づいたら……)
男はにこやかに笑いながら走っている。
恐らく早い内にメダルを取れたことがうれしかったのだろう。
(ふふ、すぐに僕のになるけどね~!)
男とドームの間には何も無い。
スネ夫は静かに、グラエナの『どろぼう』が出来る範囲を考えた。
(もうちょい、もうちょい……今!)
「グラエナ、どろぼう!」
繰り出されたグラエナは四肢を唸らせて飛び込んでいく。
その黒い毛並みを凝視する男。
そして――
「なに!?」
スネ夫が息を呑む。
グラエナと男の間に突然つるが伸びてきたのだ。
つるは男の体に結びつき、浮かび上がらせる。
グラエナもそこまで届かない位置に。
急いで辺りを確認すると、つるの先にマスキッパ。
それに二人の人影が見える。
(くそ!僕の獲物を!)
スネ夫は物陰から飛び出した。



マスキッパのつるに縛られた男は苦痛で呻いている。
「た、助けてくれー!!」
スネ夫がふと目をやると、男は左手の指を三方向に伸ばしていた。
(なんだあの手の形……癖かな?)
スネ夫はまだ知らない。
もうじきこの左手の形に多大な恩恵を受けることを。
ただ、これは現実世界の話なので今は関係ない。
(そんなことより)
「グラエナ!つるをかみくだけ!!」
猛進するグラエナの牙に捕らえられ、つるはブチブチと切られた。
解放される男はバランスを保つ。
「少年、ありがとう!!」
男はスネ夫に礼を言う。
見るとやっぱり、左手の指が三方向に。
「あの、いったいそれは何――」
「つるのムチ!」
鋭い声が届く。
同時に緑のつるがスネ夫と男の間を突き刺す。
スネ夫が目を向けると、二人の女が走ってきているのがわかった。
(くそ、あいつら諦めてないな……
 !!そうだ、こうなったら)
「あの、あなた名前は!?」
なるべく切羽詰った風で、スネ夫は男に聞く。
「ああ、少年。名乗るのが遅れたね。
 私の名前はミング。
 しかしてあの連中はいったい?」
「ミングさん。
 あいつらはあなたからメダルを奪おうとした悪い奴らです!」



二人の女はスネ夫たちと対峙した。
マスキッパを連れているのは、和服姿の女。
もう一人は短い金髪をたなびかせている。
「やい、お前ら!メダルを取ろうとしたな!!」
(よし、これで!)
「まさか仲間がいたとはね……」
声を出したのは金髪の女。
「サエ!やっちまいな!!」
「マスキッパ、さっきの男を捕らえて!」
サエと呼ばれた和服女は指示を出す。
つるのムチがミングの周りを旋回し、そして――
「ライボルト、ほのおの牙」
ミングの繰り出すポケモンが、つるのムチを焼き切る。
「カラ、そっちは任せたよ!」
サエは金髪の女に告げ、ミングと向かい合う。
カラと呼ばれた方の女はポケモンを繰り出した。
静電気を弾けさせながら現れた、小柄な白い体。
でんきりすポケモン、パチリスだ。

(ふふふ、やったぞ!
 ミングは完全に僕のことを味方だと思ってる!)
スネ夫は笑いを堪えながら、勝利への算段をした。
(なんとか一対一に持ち込めたんだ。
 ミングはきっと勝てるだろう。
 油断しているすきにグラエナの『どろぼう』でメダルを奪い、とっととドームへ――)
「パチリス、メロメロ!」
パチリスが相手にアピールする。



(……メロメロ?
 あれ、僕はまだポケモンを――)
途端に青ざめながら、スネ夫は振り返る。
グラエナがいた。
すっかり興奮した様子でパチリスを凝視しながら。
「し、しまったぁ!」
(まあずいぞ!すっかり出したままなのを忘れてた。
 グラエナがメロメロにかかっちまった!
 これではまともに戦えないな……いったん戻さなきゃ)
ダラダラとよだれを垂らすグラエナをボールに収めながら、考え直す。
(こうなれば……絶えずミングの戦いを監視して
 勝ちそうなところでグラエナと交代すればいい!)
「ほら、早く次を出しな!」
と、カラが催促してくる。
(うるさい奴だな……
 兎に角次は……次は……!!
 あれ、性別なんて図鑑ないから分からないぞ?)

スネ夫は相手を『どく』や『ねむり』にするのが大好きだ。
弱っている相手を叩きのめせる……なんと楽しいことだろう!
だがそれ故に、自分のポケモンが状態異常になることは嫌っていた。
『メロメロ』も『こんらん』も、すぐに対策を打たなければ気がすまないのだ。
だから手持ちにはいつもオスとメスのポケモンを入れておいた。
だけど――今、性別はわからない。

(こうなったら……50%の確立に賭ける!)
スネ夫の思考が一つの答えを導き出す。
(50%で絶対に『メロメロ』を解いてみせるぜ!)
決心して、スネ夫はポケモンを繰り出す。



「行け、チルット!」
スネ夫はポケモンを繰り出す。
雲のような翼が、光と共に現れた。
(確立は50%……当たってくれよ)
スネ夫はカラのパチリスから目を離さなかった。

「パチリス、メロメロ!」
(来た!)
パチリスのアピールが、チルットの目を釘付けにする。
(チルットがメスなら『うたう』で粘るしかない。
 でもオスなら……)
すると、チルットは目つきを変えた。
明らかに好意的な目で、パチリスを見ている。
(当たった!チルットはオスだ)
「オウムがえし!」
ここで技が出せる確立は50%。
一瞬の間――そして
チルットのアピールが始まった。
「!!く、これは」
カラが舌打ちする間に、パチリスは『メロメロ』にかかる。
(これであいつのお得意の『メロメロ』戦法を封じたわけだ。
 元来パチリスは攻撃型のポケモンじゃない。
 大方、『メロメロ』で相手の自由を奪い、その後しどろもどろしている内に
 技を繰り出し、『とっておき』でしめる手筈だったのだろう。
 でも、それもパチリス自身が自由を奪われたことで台無しだ!)
スネ夫がにやついてるうちに、カラがパチリスをボールにしまう。
「ふん、いやな顔してるね……でもすぐに――」
カラの台詞は、二人の間に人物が飛んできたことによって遮られた。



「ミ、ミングじゃないか!」
スネ夫は駆け寄り、確認した。
「ああ、すまん。負けてしまった……」
ミングは情けなく呟いた。
「カラ―!メダルゲットしたよー!」
と、サエが明るく言っている。
「ミング、お前……」
(強いんじゃねーのかよ!こんなに早く帰ってきたからてっきり)
「さ~て、次はそっちだな!」
心で悪態をついてたスネ夫も、カラの言葉で息を呑む。
「ま、待ってくれ!
 僕はメダルを持ってないんだ!」
スネ夫は必死で弁明するスネ夫。
「え?でもそいつと仲間なんじゃ」
「仲間?しらねーよこんな奴!」
スネ夫はミングを足蹴にする。
「お前らと同じだよ!
 ここに来た奴らのメダルを取ろうとしたんだ!!」

(くそぅ、なんでこうなるんだ……)
スネ夫はカラと一緒にテンセイやまへ走っていた。
「いいか、まず見つけたら僕んだからな!」
「何言ってんだい。
 先に取ったモン勝ちに決まってる!」
言い合いながら、二人は駆けて行く。

その隣の道で、ユリがドームへ向かって駆けていた。



「――これで足りるわね」
山中で、トレーナーからメダルをもぎ取る少女が一人。
源静香――たった今手に入れたのは五枚目のメダル。
「くそ、覚えてやがれ!」
典型的な敗者の台詞を吐きながら、相手が駆けていった。
(ふふ、勝手に帰ってくれた。
 ねむりごなをかける手間が省けたわね)
しずかは振り向き、彼らの元へ向かおうとする。

「どろぼう!」
どこかから聞こえてくる指示。
枯れ草を連踏する音。
「キレイハナ、くさむすび!」
足元で、キレイハナが地面に手を添える。
背後で何かが倒れた。
振り返るしずか。
目に映ったのは息を切らせたグラエナだ。
(人のポケモンね)
しずかはそれを確認し、キレイハナに指示を出す。
「あまいかおりよ」
空気が花の匂いで満たされていく。
動物なら誰でも寄ってみたくなる匂い。
ただ、この後起こることは、しずかにも予想外だった。



「あう~、何かおいしそう~」
「ば、馬鹿兄貴、顔出すな!」
右の茂みから騒動が聞こえてくる。
咄嗟に振り向くしずか。
同時に茂みから人物が出てきた。
(に、人間?)
しかも最初の太目の少年に続いて、もう二人。
ボサボサ頭の少年と、メガネの少年だ。
(な、何この三人組……)
多少引くしずかを尻目に、三人はゆっくり起き上がって――

ところ変わって、リーグ本部――
ドラえもんは裏口を開ける。
「開いたね……ここが本部で合ってるよね?」
ドラえもんは密告者に確認した。
「ああ、その通り」
「あたしが覚えている通りだと、ここが本部よ。
 ギンガ団のね」
密告者は二人。
「そう……なんでリーグ開催してるのかは後にして
 入ってみるよ。
 スネツグ。ジャイ子」
ドラえもんの後ろで、二人は頷く。
「へへ、有難いよ。これであいつをぎゃふんと言わせてやれる」
「死んだ茂手夫さまのためにも、絶対出木杉を見つけてやるわ」
ドラえもんは安心した。
やっぱりこいつらを連れてきて正解だった――と。