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空き地―――

そこは近所の子供達の遊び場となっている。
彼らは野球をしたりサッカーを楽しんだり...
最近、その子供達の間ではポケットモンスターの新作が大流行していた。
学校が終わると即、DSを片手に空き地へ行く...
そんな子供達ばかりだった。


もちろん少年のび太も例外ではない。




ドラえも~ん。ここどうすればいいのォ?」
詰まるとすぐドラえもんに訪ねる情けない少年、のび太。
「うるさいなァ。自分で考えてよ!」
しつこいのび太にイライラを感じているネコ型ロボット、ドラえもん。

今、空き地にいるのはのび太、ドラえもん、ジャイアン、しずかちゃん、スネオ、出木杉の6人。
もちろん全員ダイヤモンド・パールをプレイしていた。
「だからァ!何度も言っただろう?」
「そんな答え方じゃわかんないよ!ドラえもんのケチ!」
感情的になったのび太は空き地を飛び出し走っていった。
「あ・・・走って行っちゃった...。」
「大丈夫よドラちゃん。きっと戻ってくるわよ。」
ドラえもんを慰める可愛い少女、しずか。
「そうだね...」
再びゲームを再開するドラえもん。
この頃、運命の歯車はゆっくり動き出していた。


ゆっくり...ゆっくりと...



カチカチカチ...

「あ...もうこんな時間かァ...。」
時計を見るともう7時半。
ドラえもんはまだ帰ってこない。
「悪い事しちゃったかなァ...。」
罪悪感を感じたのび太はドラえもんに謝るセリフを考えていた。
と、その時
ジリリリリリリリリリ
やかましいほどに電話が鳴り響く。
きっとドラえもんだ!全速力で走り、電話をとる。
「もしもしドラえも...あ、しずかちゃんのママですか。」
電話の相手はドラえもんではなかった。一体こんな時間に何の用だろうか?
「もしもし、のび太くん?しずか来てない?」
少し焦っている様だ。
「え...来てませんけど。」
「そォ...。しずかまだ帰ってきてないのよ。見つけたら電話ちょうだいね。」
のび太は了解し、電話の位置を元に戻す。
ドラえもんもしずかちゃんも帰って来ない?どうしたんだろう?
ジリリリリリリリリリ

再び電話が鳴り響いた。



電話の相手はスネオのママだった。
どうやらスネオもまだ帰ってきてないらしい。
その後ジャイアン、出木杉の親からも同じ内容の電話がきた。
「みんなどうしたんだろう...?」
不安になったのび太は空き地に行ってみることにした。
薄手のジャンパーを羽織り、ココアを一杯飲む。
玄関のドアを開けると急に冷たい風が吹き付けてきた。
「寒ッ。もうあんな所にはいないだろうなァ...。」
のび太はブツクサ文句をいいながら空き地に向かって歩き始めた。
5分程でついた空き地は闇に包まれていた。
土管の上にDSのライトが光っている。
しかしそこには誰もいなかった。
5機のDSが闇の中で光を放っている。

ただそれだけの事なのに彼にはとてつもなく恐ろしく感じた...。



「なんでDSしかないんだろう...?」
一見とぼけているようにも見えるが彼は察知していた。


何かが起きている...と


念のためみんなのDSを誰かに盗まれないように自分の部屋に置いておくことにした。
のび太は家に帰ってからも落ち着きがなかった。
いっそのこと眠ろうとしたが心臓の鼓動がうるさくて眠れやしない。
とりあえずお風呂に浸かり今日の疲れを癒した。
「結局...ドラえもんに謝れなかったなァ...。」
涙がのび太の頬を伝う。
いつの間にかのび太はお風呂場の中で眠っていた。

楽しかった思い出を夢見て...。



あれ...?ここはどこだろう...?
真っ暗で何も見えないや。
あ、ドラえもん!ドラえもんだろ?
どこ行くのさ、ちょっと待ってよ!
話したいことがいっぱいあるんだ!
ドラえも...うわ、なんでこんな所に水が!?
ドラえも...ドラえもーーーーーーん



目が覚めるとすっかり身体が冷えきっていた。
「夢か...良かった...。」
冷え切った身体をタオルで良く拭いた後、冷蔵庫を開け牛乳ビンを一本取り出し、一気に飲み干した。
それだけでも結構落ち着いたような気がする。
辺りはまだ暗い。時計の針は3の方向を示していた。
パジャマに着替えて、階段を上り自分の部屋へ行く。
もしかしたらもう帰ってきているかもしれない...そんな気がした。
おしいれを開けてみたがだれもいない。
深いため息をついた後、のび太は床に横になった。
数分後、ピッピッという機械音が聞こえた。
「何の音だろう? おしいれから聞こえる...。」
聞いたことがある。そう、これは―――

「ポケッチのアプリを変える音だ!」



おしいれを勢いよく開け、5機のDSに目をやる。
この音が出ているのはドラえもんのDSだった。
「なんで...。なんで誰もいないのにDSが動いているんだ!?」
急に機械音が止まった。のび太はそれをじっと見ていた。
止まった場所はメモ用紙のアプリ。
タッチペンもないのに画面上に文字が書き込まれる。

た  す け  て

まるで震えているかのような字だ。
しかもこの字はドラえもんの字によく似ている。
さらに字が書き込まれる。

ごめ  ん  ね・・・

のび太の目から大粒の涙がこぼれた。
もう誰が書いてきたかなんて分かっている。
すぐに返事を書こうとしたが電源が切れてしまった。
ドラえもんが助けを求めているのに何もできない自分が悔しくて悔しくて仕方がなかった。
「ドラえもん...。一体どこにいるんだよ...。」



・・・ピピピピピピピピ
やかましい目覚まし時計を止め、ゆっくりと起きあがる。
ヤバイ、もう8時だ。
朝食を食べている暇はない。
のび太はランドセルを背負い玄関まで一気に駆け込んだ。
みんな帰ってきてるかも・・・
そんな少しばかりの期待を胸に玄関のドアを力強く開けた。

しかしそこにはいつもの風景はなかった。
どこもかしこも黒。もう自分の家は見えない。
すべてが漆黒の闇に包まれていた。
しかし何故か少しばかりデジャヴを感じた。
5秒ほど考えて、のびたは気づく。

「そうか・・・!ここは昨日にでてきた夢の場所にそっくりなんだ!」



のび太は途方に暮れていた。
何もない真っ暗な空間。
持っているのはランドセルだけ。
一体なにをすればいいのだろうか・・・?
そんなのび太を照らし出す一筋の光が差し込んできた。
「光だ・・・!あっちのほうから差し込んでるぞ・・・!」
のび太は、闇の空間を一筋の光を目指して走った。
15分ほど走っただろうか。まだなにも見えてこない。
すこし休憩を取って休んだ。睡眠時間が短かったからまだ眠い。
あくびをして目を開けると目の前に大きな扉が現れた。一体いつの間に!?
白く大きな扉。高さは5mぐらいの扉だ。その扉に英語でこう書いてあった。
   Open the door
              You should help your friend
扉が少しずつ開いていく。のび太は震えていた。
しかしそれが怖いだけなのか武者震いなのかは誰にも分からない。
彼には英語は理解できないが、一つだけ分かることがあった。
「ここに・・・、みんなが・・・ドラえもんが・・・いる・・・!」
完全に開ききった扉の中を威風堂々と歩くのび太。

「ぼくは・・・ぼくは、必ずみんなを助け出してみせる!」


のび太の身体は完全に光のなかに包まれていった。



心地よい風が鼻をくすぐる。
都会とは違う澄んだ空気が漂っている。
ずっとこうしていたい、そう思っていた。
しかし、その快楽もつかの間だった。
「何、コイツ...。」
草むらに仰向けに倒れているのび太に乗る謎の生物。
その生物は茶色の体毛に包まれ、目がつぶらだった。
ちょっと可愛いかも...。
そう思ったのび太は尻尾をそっと撫でてみた。
すると、その生物は急に怒って襲いかかってきた。
「う、うわわわわわ...なんだコイツ。」
見かけによるず機敏に動くその生物は大きな前歯をむき出してこっちに向かってくる。
そんな光景を笑いながら見ている少女がいた。

「クス...。だらしないわね。」



必死で走っているのび太はその少女を発見し叫んだ。
「ちょっと、ちょっと! 見てないで助けてよォ!」
半分泣いているのび太の顔を見て、やれやれといった表情で少女はモンスターボールを構える。
「出ておいで...!ポッチャマ!」
少女はボールを空に向かって投げ、ボールからペンギンの様な生物が現れた。
「あれはポッチャマ!?何でポケモンが現実にいるんだ!?じゃあコイツは...。」
のび太は後ろを向き茶色の生物をよく観察する。
「び、ビッパ!」
そう叫ぶと再びビッパは追いかけてきた。
「ポッチャマ! あわ!」
少女が命令を下すとポッチャマの口からシャボン玉の様な球体が発射されビッパの腹部に当たる。
突然の攻撃に驚くビッパだったが、すかさず戦闘態勢をとり、こちらを睨む。
しかしその体力はもう限界に近かった。目はうつろで、足も震えている。
けれどそのビッパは戦闘態勢を崩さない。
ビッパにもビッパなりのプライドがあるのだ。

「ふぅん・・・。根性あるわね。このビッパ。」



はい。」
のび太は少女からモンスターボールを渡された。
困惑した表情で、少女を見る。
「何やってんの? あんたポケモン捕まえに来たんでしょ?」
のび太はすこし迷った。一体ここがどこかも分からない上にポケモンを捕まえる?
そんなことできるか!のび太は少女にボールを返そうとした。
が、
「早くしなさいよ!」
少女の怒鳴り声にビビってしまったのび太はしかたなくビッパを捕まえることにした。
じりじりと距離を詰めるのび太。ビッパは後ずさりしている。
のび太がある程度近づいた瞬間、ビッパの体勢が急に崩れた。
そう、ポッチャマのあわの当て損ないをビッパが踏んでしまったのだ。
「今だァ~!」
至近距離で思い切りボールを投げるのび太。
ボールはビッパを吸い込み、左右にコロコロと動く。
カチッという快音と共にボールの動きは止まり、歓喜の声があがった。

「やったァー!」



「上出来、上出来。」
少女は可愛らしい手で拍手する。
「私の名前はヒカリ。あんたは?」
ヒカリと名乗る少女は問う。
「ぼくはのび太。野比のび太。」
よく見るとヒカリはかなり可愛かった。
ミニスカートに帽子をかぶり薄手のマフラーを巻いている。
かなりのオシャレ好きなようだ。
ぐうぅぅぅぅぅ
のび太の腹の音が鳴り響く。
のび太はまいったなァという感じでヒカリを見た。
ヒカリは必死に笑いをこらえている。顔が真っ赤だ。
「ププ...、アハハハハハ!面白いねのび太って!お腹減ってるんでしょ?
私の家に来なさいよ。朝ご飯ぐらいごちそうするわよ。」
そう言われてのび太はヒカリの家に行くことになった。
初めての仲間、ビッパと共に...。



201番道路

「すごい...。」
のび太はヒカリに見とれていた。
出てくる野生のポケモンを一撃で倒すポッチャマ。
そしてそのポッチャマをいともたやすく操るヒカリ。
それは、見事なコンビネーションだった。
だが一つだけ不思議なことがあった。
「ヒカリのポッチャマは強いのになんでこのビッパは耐えることが出来たのかな?」
のび太は捕まえたばかりのビッパを見つめる。
ヒカリはまるで待ちかまえていたかのように答えた。
「私もビックリしたわ。今までそんなに頑丈なビッパは見たことがないの。
もしかしたらとんでもない才能を秘めてるのかもね。」
このビッパが...。ゲームでは強いポケモンなど一匹も持っていなかったのび太。やっとすばらしい仲間に巡り会えた...!そんな気持ちで一杯だった。

「さ、着いたわよここが私の住んでる村。マサゴタウン。」



マサゴタウン

おせじにも発展してるとは言えないが、これはこれで趣があった。
「ここはナナカマド博士の研究所だね。」
のび太はゲームで覚えた知識をひけらかす。
「え? 何で知ってるの? もしかして来たことある?」
のび太は困ってしまった。こういう質問されると返事に困る。
これからはゲームのことは伏せておこう...。
「い、いや勘だよ。勘。ホラ、ヒカリの家ってどこなのさ。もうお腹ペコペコだよ。」
見事にかわしたのび太は、ヒカリの家を目指し歩きだす。
ナナカマド博士の研究所を通りすぎて2分ほどで家についた。
「ひゃー!この村で1番大きいんじゃない?」
ヒカリの家の大きさに仰天したのび太はおもわず声を漏らした。

「まぁね。さ、中に入ろう。私もお腹減っちゃってさ。」



「ヒカリお姉ちゃんおかえり~!」
玄関先でヒカリに飛びつく幼い子供。
「ただいま! ヒカリ。おじいちゃ~ん。ご飯の用意してぇ~!」
ヒカリは家の奥にいるおじいさんにご飯の支度を頼む。
「ちょっと待っててね。」
のび太にそう言うと、ヒカリはキッチンの方へ向かった。
一方、幼い子供ヒカルはのび太をしげしげ見つめていた。
「だーれ?お兄ちゃん。」
「あ、ぼくはのび太。ヒカリの友達さ。」
奥からヒカリの上がってぇ~という声が聞こえる。
「あ、のび太お兄ちゃん。ご飯出来たみたいだよ。さ、早く早く。」
いいにおいがのび太の鼻に入り、はやく食べさせろ!と胃がわめく。
「じゃあ遠慮なく。」
のび太は、キッチンのイスにつき朝食を食べる。
「どう? おいしい?」
エプロン姿のヒカリを見てのび太はむせてしまった。
「どうしたの? 大丈夫?」
「あ、うん、大丈夫だよ。多分。」
可愛すぎる。その時のび太の心はしずかちゃんよりもヒカリに傾きつつあった。
気をとりなおし朝食を食べていたが、ヒカリの様子が変だった。
顔が真っ赤で、口を押さえている。
「どうしたの!? ヒカリ!」
「あ~お兄ちゃんおひげだぁ~。」
ヒカルの言葉についに吹き出したヒカリ。
「アハハハハ! やっぱり面白いねのび太って!」
のび太の顔には牛乳を飲んだ後につく白いひげがついていた。

「恥ずかしい...。」



ご飯を食べ終えたのび太は、皿を洗っているおじいさんに話しかけてみた。
「ヒカリとヒカルは?」
おじいさんは愛想良く返事をする。
「あぁ、あの子達はマサゴの浜に貝拾いに行ったよ。」
丁寧に礼を言い、浜に行くことにした。
「ちょっと待ちなさい。君ポケモントレーナーだろ? ナナカマド博士の研究所にでも行っておいで。」
そう言うと再び皿を洗い始めた。
ナナカマド博士の研究所か...。
もしかしたらドラえもんの居場所を知ってるかもしれないな。
浜は後にし、研究所に向かうことにしたのび太。
のび太は道の途中でポケモンセンターを見かけたので寄ってみることにした。
「ここがポケモンセンターか。」
辺りをキョロキョロしながら奥のカウンターへと進む。
「こんにちは!ポケモンの回復ですね?モンスターボールをお預かりします。」
ボールを機械に入れ、スイッチを押す。
するとすぐに機械は止まりボールを渡された。
「お待たせいたしました。またいつでもおこしください。」
ポケモンセンターの外に出て、とりあえずボールからビッパを出す。
さっきまでとはまるで別人のようだった。
「すごいや。ポケモンセンターって。」
そうつぶやくと目的地である研究所に向かって足を進めた。



研究所に着いたのび太。
立派なドアを開けると、そこにはナナカマド博士が待っていた。
「君がのび太君だね?」
のび太は立ち尽くしていた。まさかこんな怖い顔をしていたなんて夢にも思わなかったからだ。
「あ、あのうぼく...。」
完全に震え上がっている。
「なぁに。そんなにおびえることはない。さぁこっちへ来なさい。」
見かけによらず優しいナナカマドはのび太を招く。
「さっきヒカリちゃんから聞いたよ。とても面白い子なんだってね。」
ナナカマドはにっこりと微笑む。
「で、だ。君のビッパ。ちょっと見せてくれないかい?」
急に顔つきが変わる。まさに博士、といった感じだ
のび太はモンスターボールを博士に渡し、ソファーに座る。
「どうかしたんですか? ナナカマド博士。」
のび太は心配になり博士に聞いてみる。
「ウムゥ...。このビッパは、とんでもない能力を秘めておる。
しかしそれを開花させるのは私じゃない。主である君が開花させるのじゃ。」
信じられないといった表情で博士を見るが、博士の顔は真剣そのものだった。
「ぼくはどうすればいいんですか?」
「それはワシにもわからぬ。とりあえずビッパをかわいがってやりなさい。」
モンスタボールをランドセルにしまうのび太。
そして博士に本題である質問をした。

「博士。ぼくの親友...。ドラえもんを知りませんか?」



のび太は、みんなの特徴を細かく説明した。
「ウムゥ...。どうやらここには来てみたいだ。そんな子供達は見たことがないからな。」
「そうですか...。」
ガックリと肩を落とすのび太。
「で、君はこれからどうするのかね?」
博士はのび太に問う。
「とりあえず...みんなを探すために旅をしてみようと思います。」
そうか...。とつぶやく博士。そしてもう一言加えた。
「ヒカリを...。ヒカリを一緒に連れて行ってはくれないか?」
こればかりにはおどろきをかくせずにはいられない。
なぜ?といった表情で博士を見る。
「イヤか?」
「いいえ!そんなことはありません!でもなぜヒカリを?」
窓を開け換気をする博士。しばらく間をおき真剣な顔つきでこう答えた。

「ヒカリには...一ヶ月以降の記憶が...ない。」



しばらく開いた口がふさがらなかった。
「ヒカリの...ヒカリの記憶が一ヶ月以降からないってどういうことさ!」
のび太は怒鳴る。自分の心が安定しない。
「ならば話そう、ヒカリの過去を。」

一ヶ月前―――――


「くそ!雪が積もって積もって歩きにくいったらありゃしない!」
217番道路をナナカマド博士が歩く。
「こんなんじゃキッサキ神殿の調査の前に死んでしまうわい。」
凍えた手を息で暖め、一休みする。
すると数メートル上の崖の二人の人間を狙って、マニューラの群が回り込んできた。
私は何をすればいいのか分からなく、ただウロウロしていた。
その人間は傷つけられ、血しぶきをあげていた。
「おじいさん!こいつを...!ヒカリを安全な場所へ...!」
崖の上から、気絶した少女が落ちてくる。
下は雪だからクッションの代わりになって大事には至らなかった。
「少年!君はどうするのかね!」
私は叫ぶ。この年じゃ崖は上れないし今、持ち合わせもない。
「こいつらくらいなんとかしてみるさ...。いくぞサンダース!」
その少年の腕を信じて私はキッサキシティへと向かいヒカリの看護をしていた。
「驚いた...。傷一つないじゃないか...。」
ヒカリにはたくさんの血が付いていたが、彼女の血ではなかった。
おそらくヒカリを守ってくれたあの少年の血だったんだろう。
「ぅ...うう...。」
「お?気が付いたかね?」
ヒカリがやっと目を覚ました。

「おじいさん...だれ?ここはどこ...?あれ私の名前は...?あれ?」



医者によるとショックによる記憶障害らしい。
どうやらあの少年が傷つけられたことによりショックを受けたんだろう。
少年がヒカリに会ってくれれば記憶が戻るかもしれない―――――
そう信じたかった。


しかし少年は戻ってくることはなかった。
キッサキシティの青年団で探索したが現場にはなにもなかったという。
その事実を聞かされた時、私は大きなショックを受けた。
それじゃあ...それじゃあもうヒカリの記憶は...!
涙が止まらなかった。ヒカリが不憫で仕方なかった。
一応彼女にはその少年のことを教えていない。
いや、正しく言えば教えられなかった。
自分のせいで人一人傷ついてしまったことなど教えられるはずもない。

ヒカリは私にすっかりなついていた。
わたしがキッサキを出ることになった時、彼女は泣いて呼び止めてくれた。
「いや!いやよ!いかないでよ博士!」
私は医者に言われたことを実行してみた。
「だったら私と一緒にくるかい?」
私にすっかりなついているヒカリを離れさせるのは非常に危険。
もし良いのであればマサゴタウンに連れていって欲しい。
マサゴタウンはキッサキとは真逆の場所で心の静養になるから――――と。
私とヒカリはマサゴタウンに着いたが、研究所に住ませるわけにもいかないので近所のおじさんに頼んだ。ヒカリを一緒に住ませてやってくれないか、と。
おじさんは快くOKしてくれた。

そして今現在に至る―――――――



博士が話し終わるとしばらく沈黙が続いた。
のび太は唇を噛んでいた。
それじゃあ可愛そうどころじゃないよ!
そう言いたかったが言葉に出来ない。
そして博士がこう言う。
「結局、私ではヒカリの心の傷を癒してあげられなかった。
だが君ならできると思っているよ。」
博士はにっこりと微笑む。
のび太は悩んでいた。ぼくに...ぼくにそんな大きな役割を果たせるだろうか。
でも...今までずっと戦ってきた。仲間が友達が...ピンチの時には!
もう迷いはない。のび太の心は一つだった。
「はい!分かりました!ぼくが...ボクが彼女の記憶を取り返して見せます。」
のび太は真剣な目つきで博士をみる。


「いい返事だ。」