ドラえもん・のび太のポケモンストーリー@wiki

ドラーモン作大長編 その18

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「チルタリス、うたえ!」
ミツルの命令で再びチルタリスが歌いだす。
しかしメタグロスは眠らない。
歌う攻撃は命中率の低さが難点なのだ。
「メタグロス、しねんのずつき!」
歌うをかわしたメタグロスが繰り出すのは思念の頭突き。
本来この世界には存在しない新しい技だ。

――――数日前、技教えマニアの家

「いやぁ、こんな技は技教えマニアである僕も知らなかったよ」
小太りの青年はポケモンに思い出させる技リストを見ながらそう呟いた。
このリストはルネ襲撃事件の後に、ダイゴから報酬として貰ったものである。
協力者である教えマニアはそれを使って、ドラえもん達のポケモンに新しい技を教えているのだ。
「ほとんどのポケモンが何かしら変化してる。しかも見たことのない技もあるんだ……」
スネ夫が驚くのも無理はない。
だが、ドラえもんは別の疑念を抱いていた。
『ポケモンのROMの中にこれらの技があったんだろうか?
オリジナルの設定がもしもボックスに干渉できるはずがないんだけど……』
ポケモンの事をよく知らないドラえもんには、未来に発売されるポケモンのデータであることなど知る由もない。



―――舞台は再びチャンピオンロード

メタグロスの思念の頭突きがヒットしたチルタリスはかなりのダメージを負っている。
『あのメタグロス、眠らせたいところだが……』
歌うがまた外れてしまった場合、チルタリスの敗北は確実だ。
「となると、これしかないか……チルタリス、別の歌を聞かせてやれ!」
チルタリスは再び歌を歌いだす。
しかし先程の歌とは違う曲調、メタグロスにも取り立てて変化は無い。
「また外れたみたいだね、しねんのずつき!」
のび太の一声に呼応したメタグロスがチルタリスに突撃する。
その一撃に吹き飛ばされたチルタリスは戦闘不能になってしまった。
チルタリスを戻し、ミツルの出した二匹目のポケモンはロゼリア。
「ロゼリア、確かエスパータイプが弱点のはず、またしねんのずつきで……」
しかし、のび太のメタグロスより遅いはずのロゼリアが先に行動する。
「先制のツメが発動したみたいだね、くさぶえだ!」
ミツルのロゼリアの草笛がメタグロスを眠らせる。
「また眠り攻撃……」
調子を狂わされているのび太、含み笑いをするミツル。



メタグロスは眠らされたが、ロゼリアにメタグロスを倒すほどの力はないはず。
「メタグロスが起きた時が勝負だ……」
のび太はメタグロスに食べ残しを持たせている。
そう簡単には落とされないはずだ。


「チルタリス……別の歌……!!」
スネ夫はミツルの言った言葉に引っかかっていた。
その歌の正体に気が付いたスネ夫がのび太に叫ぶ。
「マズイ!のび太、メタグロスを引っ込めろ!」
「ロゼリア、まきびしだ」
ミツルのロゼリアがメタグロスの周囲に撒き菱を撒いた。
撒き菱は交代で現れるポケモンに傷を負わせてしまう、これでは迂濶にポケモン交代ができない。
「スネ夫、今交代したら次のポケモンがダメージを受けちゃうよ!」
「いいからさっさと変えるんだ!」
スネ夫の剣幕に、渋々のび太は眠っているメタグロスを手元に戻す。
替わって現れたドククラゲは撒き菱を踏んでダメージを受けてしまった。
「やっぱりダメージを受けちゃったじゃないか……」
「友達に助けられたね、ノビタ」
ミツルの言葉を理解できないのび太に、スネ夫が説明する。
「チルタリスが最後に使った技はほろびのうた。歌を聞いたポケモンは3ターンで必ず瀕死になってしまうんだ……」



危うくメタグロスを失うところだった。
のび太は動揺を隠せない。
ドククラゲ交代の隙を突いて、ロゼリアの痺れ粉が炸裂する。
これではドククラゲの素早さを生かせない。
「戻れ、ロゼリア!」
ミツルは役目を終えたロゼリアを戻し、新たにポケモンを繰り出した。
次に現れたのはエネコロロ。
「麻痺していては思うように動けないだろ」
「うるさい!麻痺しても半分の確率で動けるんだ……」
最強技、ハイドロポンプをお見舞いしてやる。
「どうせふぶきかハイドロポンプあたりで逆転とか狙ってるんだろ、そうはいかないよ」
突然すごい速さでエネコロロが動き、油断しているドククラゲを攻撃する。
「ふいうち……のび太のやつ、完全に読まれてやがる!」
ミツルのタイミングのいい攻撃を見てジャイアンが舌うちする。
ハイドロポンプの前に不意打ちしたことでダメージが上がっている。しかも……
「!!……ドククラゲが動かないっ……」
麻痺していて体が動かないようだ。
『このままじゃ……勝てない』
自分の行動は完全に読まれている。
のび太の脳裏を敗北の二文字がよぎった。



『こうなったら、ラティアスを出すしかない』
懐に手を入れるのび太。
しかし、ボールを掴もうとしたその手が寸前で止まった。

―――数日前

「くそ、ラティアスで逆転してやる!」
のび太は劣勢だったメタグロスを戻し、ラティアスを繰り出した。
「ダイゴさん、ラティアスが出てきたからには僕の勝ちだよ」
しかしダイゴはラティアスが現れても全く動じず、ポケモンを入れ換えた。
「ラティアス、めいそう!」
ここ数回ののび太の勝ちパターンである。
瞑想で攻撃力を上げた後に、圧倒的戦闘力で敵を撃破するのだ。
「りゅうのいぶきでやっつけろ!」
ラティアスから放たれたブレス攻撃がダイゴのポケモンに直撃する。
だが、そのポケモン…ソーナンスは攻撃を耐え、その倍の威力の反撃をしてきたのだ。
「うわぁっ……」
「今のはミラーコート、相手の攻撃を倍にして返す技だ」
ダイゴが戦いを中断して、のび太の元に歩み寄る。
「君はラティアスに頼りすぎているようだな。しかしラティアスとて万能ではない」

他のポケモンを使いこなしてこそ切札が活きる。

ダイゴはのび太にそう諭した……



―――舞台は戻る

「エネコロロ、もう一回ふいうちを食らわせろ!」
「ドククラゲ、戻れ!」
エネコロロの不意打ちをその身に受けたのは眠ったままのメタグロス。
「うまい、のび太!」
スネ夫が思わず賞賛した。
ここでラティアスを出していれば、効果抜群の不意打ちで手痛いダメージを受けていただろう。
しかし防御の高いメタグロスならさほどの事ではない。
『ちっ、メタグロスか』
しかし撒き菱と不意打ちのダメージを受け、眠っている今なら畳み掛ける事も可能だ。
「ふぶきだ!」
エネコロロが繰り出した技は吹雪、氷系最強クラスの技だ。
メタグロスはかなりのダメージを負い、しかもまだ目は覚めない。
『あと一撃……』
強敵、メタグロスをあと一歩で撃破できる。
「ミツルくん、今はトレーナー戦なんだよ!」
のび太はそう叫ぶと、回復の薬をメタグロスに使った。
体力が完全回復し、眠り状態まで治されてしまう。
「な、ノビタのくせに生意気に道具を……」
ミツルの捨てセリフを無視するように、メタグロスのアームハンマーがエネコロロを一撃で葬りさった。
『こいつ、化けやがった……』
のび太はミツルの予想を上回る行動をするようになっていたのだ。



次に出したロゼリアは思念の頭突きで瞬殺され、レアコイルもアームハンマーの前に散っていった。
ミツルの最後のポケモンはサーナイト。
「これで、終わりだね」
のび太がそう言い放つ。
「まだだ、僕には元気のかけらもある、まだ負けちゃいない!」
「お願いだよ、僕達の邪魔はしないで」
のび太の言葉に、ミツルはわなわなと体を震わせる。
「友達を助けるためにか?ふん、お前達にそんなことをいう資格などあるものか!」
唖然とするドラえもん達にミツルはさらに畳み掛ける。
「お前達なんかより、僕のほうがあの娘のナイトにふさわしいんだ!」
ミツルはすっかり逆上し、サーナイトにサイコキネシスを命令する。
のび太は悲しそうな顔でそれを迎え撃った。

戦いは終わり、のび太の前ではミツルが泣きながら仰向けに倒れている。
ドラえもんが心配そうに駆け寄る。
「ミツルくんも、しずかちゃんを助けるつもりだったのか……」
「ミツルくん、僕達は必ずしずちゃんを助ける。そしたら、仲直りしようね」
ドラえもん達は傷心のミツルをその場に残し、チャンピオンロードの出口に向かっていった。



のび太に敗れたミツルは一人残され、仰向けで倒れたまま洞窟の天井を見ていた。
「ノビタ、君は何もわかっちゃいない……間違ってるんだよ」
しかし、それを彼に言い出せなかったのは『彼女』との約束だからだ。
「全部ウソなんだ、あいつらならちゃんと見抜いていたと思ってたのに」
「『全部ウソ』、とはなんだい?」
ミツルの独り言に割り込んできたのはダイゴ。
ミツルも有名人であるダイゴの事は知っている。
「元ポケモンリーグチャンピオンが盗み聞きですか、感心しませんね」
ダイゴは仰向けのミツルの横に座る。
「彼らが仲間を助け、あのデキスギを打倒する。それで世界は平和になるんだ」
「平和になる、だって?信じられるものか」
ミツルの確信めいた言葉に、ダイゴは何かが引っかかった。
『これは、こちらの手の内を明かしてでも情報を引き出すべきか……』
ダイゴはミツルと情報交換するために、自分の持っている情報を全て話す。
それを聞いたミツルはポツリ、ポツリとある事実を語りだした。



「ま、まさか、そんなことが……」
ミツルの情報はダイゴも知らない、知っているのはおそらくドラミだけであろう衝撃の事実であった。
ダイゴの中でパズルのピースが組み合わさるように全ての事象が集束していく。
「……この世界の混乱、それが全部あいつらに仕組まれたことだったとは……」
ダイゴは立ち上がると、ミツルに手を伸ばす。
「君に連れていってもらわないといけなくなったようだ」
ミツルはダイゴの目をじっと見つめると、差しのべられた手をがっちりと握り、起き上がった。
「ノビタ達は嫌いだけど、シナリオ通りに話を終らされるのは気に食わない」
ダイゴとミツルは穴抜けのヒモを使う。

『我々が駆けつけるまでなんとか時間を稼いでくれ、ノビタ君……』



ポケモンリーグ、中央受付口。

いつもはたくさんのチャレンジャーと、それを観る観客達で賑わっているポケモンリーグの入口。
だが今はその場には誰もいない……

「人の居ない建物って、何か不気味だね」
のび太はドラえもんにぴったりと寄り添って離れない。

『ようこそ、僕の城へ』
突然辺りにノイズ混じりの放送が響く。
「この声は……出木杉!」
「オラァ出木杉、出てこーい!」
ジャイアンの叫びがこだまする。
『剛田君が何やら叫んでるみたいだけど残念。ここの監視カメラは画像しか拾えないんだ』
ジャイアンは鼻息を荒くしながらも、大声を張り上げる事が無駄だと分かって引き下がる。
『用件だけ言わせてもらうよ』
「何だろう……」
のび太が心配そうに呟く。
「こっちに不利なバトルのルールでも付け足すんじゃないかな」
スネ夫も心配そうな顔でそう答えた。
「出木杉がチャンピオンだから、それを呑まないとバトルできないんだよ」
ドラえもんが悔しそうに答える。
バトル関係なしに総力戦で戦えばこちらに勝気はない。
ポケモンバトルという名目でタイマン勝負で戦うしか術がないのだ。
そこに持ち込むのがドラえもん達の作戦の最初のハードルである。



『君達の浅知恵はお見通しさ。バトルしたいなら君らの好きにしてもいいよ』
「な、なんだって!」
出木杉の思わぬ提案に皆が顔を見合わせる。
「どういうことだろ……」
そう口にしたスネ夫にも出木杉の真意はさっぱり分からない。
こちらの作戦は明らかに出木杉にとって不利なのである。
「よく分からないけど、これはチャンスだ。罠かもしれないけど乗るしかない」
ドラえもんは監視カメラに頷いてみせる。
『了承したようだね。最初の相手はスネ夫君の因縁の相手だよ、じゃあね』
出木杉はそう言い残すと、それっきり何も喋らなくなった。

「やるしか、ないよね」
のび太は不安げにそう言う。
スネ夫はまだ踏ん切りがつかないようだ。
『わざわざこっちの土俵に上がってくるとは……これはやはり罠としか思えないけど』
アレコレと考えを巡らせるスネ夫の背中をジャイアンが叩く。
「ぐちぐち考えてても始まらねえよ。俺たちゃもう後戻りできねえんだ」
「そ……そうだね」
そんな様子を見ながらドラえもんが声を上げる。
「よし、しずかちゃんを助けよう!」
「おおーーーっっ!」
四人は雄叫びをあげると、我先にとポケモンリーグ殿堂へ至る最初の扉に飛び込んでいった。



最初の部屋に入ると、バトルステージの向かい側には一人の少女が立っていた。
「やっと来たわね」
カナズミのジムリーダーだったツツジだ。
その身なりも最初に会った時とは変わっていないが、
優しかった笑顔はすっかり歪んでしまっている。
「出木杉様から話は聞いてるわ。他の邪魔者はさっさと先に行って頂戴」
それを聞いてスネ夫が一歩前に出る。
「当初の予定通り、アイツの相手は僕だ。皆は先に行ってくれ」
出木杉に悟られていた作戦、それは出木杉の四天王に対し一人ずつ当たるという事。
「僕は以前アイツに半殺しにされた因縁がある……」

そう、アクア団とマグマ団が壊滅したあの場所で目撃者となったスネ夫はツツジに瀕死にまで追い込まれている。
『別に恨みとかはないけど、戦うならコイツだな』
戦う相手を決めたとき、スネ夫はそう言ってツツジの名を指差した。
スネ夫はそう思っているが、彼の性格でそれはあり得ない。
スネ夫のネチネチとした負の感情を感じ取ったのか、他の三人は何も言わなかった。

「さあ、みんなは次の部屋に。ここは僕に任せて」
スネ夫の声に従い、他の三人はバトルステージを迂回して奥の通路へ向かう。



ドラえもん達は去り、残されたのはツツジとスネ夫だけになった。
「さて、あの時のリベンジをさせてもらうよ」
スネ夫は手に持ったボールを投げようと構える。
そんなスネ夫にツツジがニヤニヤと笑いながら語る。
「やはりアンタが残ったのね。出木杉様のおっしゃった通り……」
その言葉にもスネ夫は動じない。
「出木杉の奴がようやくボクの域まで考えを巡らせる事ができたってことだな」
自慢気に語るスネ夫を無視するかのようにツツジもボールを取り出す。
「ふふふ、出木杉様の戦略は貴方ごときより遥かに先を見ていますわ!」
そう言うとツツジは両の手でモンスターボールを投げた。
現れたのはフォレトスとレジロック。
『やはり鋼タイプも絡めてきているか。しかもダブルバトル……』
鋼タイプはスネ夫の基本戦術である毒を無効化する。
しかもダブルバトルなのでツツジのポケモンが苦手とする地震は
味方も巻き込むため使いにくい。
「だが、ボクの戦術は負けないよ!」
スネ夫が繰り出したのはキノガッサとクロバット。
「クロバットはフォレトスにあやしいひかり、キノガッサはレジロックにきのこのほうしだ!」
素早さに勝るスネ夫のポケモン達が行動を開始する。



スネ夫の嫌らしい戦術にツツジも舌打ちする。
「分かっていたとはいえ、厄介な戦術ね」
フォレトスは自らを攻撃し、レジロックは眠りに落ちている。
『出木杉様はポケモンリーグでの道具使用を禁止している。
道具で状態異常は治せない……』
バトルタワーなどで採用されているシステムで、バトルステージはポケモンしか出入りすることができないフィールドが発生している。
「ふん、まずはこっちの思惑通りに進んだみたいだね」
「戻りなさいフォレトス」
フォレトスは戻され、次に出てきたのはハガネールだ。
しかしスネ夫はそれが分かっていたかのように行動する。
「キノガッサ、つるぎのまい!」
キノガッサがステップを踏むと、攻撃が上昇していく。
クロバットは再び怪しい光でハガネールを混乱させてきた。
ここにきてツツジもスネ夫の戦術を理解する。
「まさか……キノガッサに積み技をさせるために!」
「ふふふ、もう一回舞えばどうなるかな」
ツツジは毒を封じたことで彼を侮っていた。
まさかこれほどのタクティクスを持っているとは。
『こうなったら、アレしか無いわね』
ツツジも気を引き締める。



「キノガッサ、もう一回舞うんだ!」
さらに攻撃力を増加させるキノガッサ。
そしてクロバットは黒い眼差しで敵のポケモン交換を阻む。
「ハガネール、貴様は私のポケモンなのよ、しっかりしなさい!」
ツツジの言葉が通じたのか、ハガネールは氷の牙でクロバットを攻撃する。
だが、倒すまでには至らない。
そしてレジロックはいまだに眠り続けている。
「じゃあいよいよその力を見せてあげるよ。かわらわり!」
キノガッサがジャンプし、瓦割りが巨大なハガネールの脳天を直撃した。
ハガネールは一撃で戦闘不能になり、ツツジのボールに収められた。
「くっ、なんて威力……」
「僕の戦術の前にはお前なんて三下以下なんだよ」
しかしツツジの顔には奇妙な余裕というか、開き直りのようなものがあった。
『なんだ?何を考えている……』
再び現れたフォレトスにクロバットが噛みつく。
その時、レジロックが目を覚ました。
『起きやがったか、だがレジロックに今のキノガッサを一撃で葬る技はないはず……』
だが、スネ夫はある技の存在を失念していたのだ。
ツツジが口を開く。
「レジロック、だいばくはつ……」
「し、しまったあああっ!」



背後で轟音が響き、のび太は思わず足を止める。
「あの音……スネ夫、大丈夫かな……」
「のび太!今は振り返ってるヒマはねえぞ!」
ジャイアンがそう言いながら奥を指差す。
そこにはポケモンリーグ、第2の間の入口が行く手を塞いでいた。

「次は……俺様の番みたいだな」
中に入った三人の前に現れたのは、フエンのジムリーダー・アスナだ。
「よう、久しぶり」
その陽気な口調は変わっていないが、雰囲気は最初に会った時とはまるで違っている。
「タケシ以外は先に行きな。どうせそのつもりなんだろ?」
アスナの言葉のとおり、こちらもそのつもりだったがやはり先読みされているのは気持ちが悪い。
『出木杉の手の上で踊らされてなきゃいいんだけど』
ドラえもんの不安は拭えないが、ジャイアンはすでにバトルの準備を始めている。
「ジャイアン、気を付けてね!」
「おう!心の友よ、まかされよ!」
ドラえもんとのび太はジャイアンを残して部屋の出口を抜けていった。
それを見送るジャイアン。
「さて、俺は目の前の敵に集中すっかな」
ジャイアンはモンスターボールを構える。



ポケモンリーグ、第3の間。

のび太達二人がたどり着いた時、そこには誰もいなかった。
「ど、どういう事なの?」
のび太の疑問はドラえもんも同じだ。
「三人目がいない……残っているのはナギさん、イズミ。二人のはずなのに」
第3第4と配置されているはずだと思っていたが、どうやらそうではないようだ。
「なんか気になるけど、先に進むしかないね」
二人は先へと進んでいく。


ポケモンリーグ、四天王控室。
一人の女が大柄な男を引き連れてその部屋の扉を開ける。
第3の間を任されていたイズミだ。
彼女が任務を放棄してここに来たのには訳がある。
「いるんでしょ、出てきなさいよ」
イズミの声が聞こえたのか、一人の少女が部屋の片隅から現れる。
「大体分かってると思うけど、アンタは邪魔者なのよ。シズカさん」
出木杉は彼女を妻にすることを皆に宣言している。
他の三人はそれを受け入れたが、イズミは納得できない。
「シズカ、アンタは今からこの船乗りのジロウにレイプされるのよ」
この為にイズミがスカウトしてきたペド男である。
「し、小学生……コイツをヤれるのか、ハァハァ」
しずかを凝視するジロウはすでに臨戦態勢に入っている。



「アンタがボロボロに犯されちまえば、出木杉様は私を見てくれるのよ」
イズミがくるりと背中を向け、合図をする。
「可愛い子……おじさんと合体しようよ」
ジロウの手が怪しく動く。
イズミはこれから起こる惨劇に付き合うつもりはない、と部屋を出ようとする。

「ギャアアアアアアア!」

突然のジロウの悲鳴にイズミは思わず振り返る。
「なっ……」
イズミが見たものは、完全に気絶して床に倒れているジロウ。
そして壁に開いた漆黒の穴。
部屋の隅を見ると、監視カメラもすでに破壊されている。
「アンタ、何をした……」
そう呟くイズミだったが、さらなる驚愕の事態が眼前で展開された。
目の前の穴から何者かが現れたからだ。
「お前は……ううっ、頭が……」
イズミの頭が鐘のようにかき回され、その気持ち悪さに膝をついて嘔吐する。
それが治まってくると、イズミの中にルネシティで失った記憶が甦ってくる。
「お前はドラミ……なぜ今まで思い出せなかった?」
「記憶が戻ったようね」
ドラミが冷たく言い放つ。
しずかはそんな事態を驚きもせずに達観している。
「ドラミさん、助かったわ」
「ええ、しずかさん。全ては貴方のシナリオ通りになっているわ」



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