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 のび太はポケモンセンターでため息をついていた。
前の町からここまでの道のりは、体力のないのび太にとって地獄だった。
途中でハヤトが業を煮やし、エアームドにくわえさせて飛んだことも。
「のび太、休憩はすんだか?」
ハヤトが気楽に話しかけてきた。
 のび太が頷くと、ハヤトは「よし」 と微笑んだ。
「じゃあもうジム戦できるな」
「ちょ、ちょっと待ってよ」 のび太は冗談じゃないという風に首を振る。
「明日でいいじゃないか。 それより、町を回ってみようよ!」
 のび太に懇願され、ハヤトはしぶしぶ頷いた。
 ――この町は一見派手で、そこらじゅうにネオン付きの看板がたてられている。
人々もどこか陽気で、活気にあふれていた。
 のび太はすっかりここの空気に飲まれ、気持ちが浮かれてきていたが
「? どうしたの、ハヤテ」 「ハヤトだ」
と素早く返したハヤトだったが、その顔は険しかった。
「俺はこういう騒がしいところは嫌いなんだ」
ハヤトは腕を組みながら、人ごみを避けていった。
 のび太はせかせかとその後をついていった。
そんなふうに歩いているうちに、二人はジムの前に来ていた。
 ジムは赤と黄色に装飾され、周りの建物より一際派手にある。
「……ジムリーダー、マチス。イナズマアメリカン……」
のび太は入り口の看板を棒読みする。
「ふん。ジムにこんな装飾などしやがって……」
とハヤトは嘲り、その場を去ろうとした。
 だが、



ハヤトははっとして振り返る。
 そこはジムの脇の路地裏だった。
「……のび太、来てみろ」
ハヤトはのび太の制止を無視し、ずんずん入っていった。
 空が夕闇深くなるにつれ、路地裏は急速に暗くなっていった。
「どうしたのさ、ハヤt」 「静かに! 何かきこえるだろ」
 のび太はいつものノリが遮断されたことにイラッときたが〔確信犯〕 
素直に耳をそばだてた。
 ……やがて微かな、鳴き声が聞こえてきた。
「鳥、かなあ」 「ああ、あれはムックルだ」
(流石ひこうジムリーダーだなぁ) とのび太は感心した。
 やがて二人はその音源を見つけた。
ムックルが二体のコイルと一体のパチリスの攻撃をくらっている。
三体の電撃が放たれるたびに、ムックルは悲痛な叫びをあげた。
(あの、ムックルかわいそうに。いじめられて、ん?)
のび太が呆気にとられている間に、ハヤトが飛び出していた。
「エアームド、奴らを追い払え!」
 ハヤトが繰り出したエアームドがコイルに突撃する。
コイルは反撃するが、 エアームドとはレベルの差がありすぎた。
「エアームド、スピードスター!!」
 エアームドの閃光がもう一体のコイルを吹き飛ばす。
「エアームド、最後は」 「おうおう、てめえ!!」
 突然怒鳴られ、ハヤトは路地の奥を見た。
バイクにまたがったスキンヘッズ三人が立っていた。



「てめえ、兄貴のポケモンに何しやがるんでぇ!!」
どうやら手下の一人が口を出した。
「兄貴の遊びを邪魔しやがって、このy」 「遊びだと!?」
二人目の手下の言葉を遮って、ハヤトが怒鳴る。
「ひこうポケモンを何だと思っているんだ!!」
「はん、ひこうがどうした?」 一際大柄のスキンヘッズがハヤトを睨む。
「ただの雑魚だろうが」
その言葉で、ハヤトはきれた。
「エアームド!!! あのはげを八つ裂きにしろ!!!!」
エアームドは猛スピードで突進する。
はげ共は、失礼、スキンヘッズたちは間一髪でよけ、その場に倒れる。
「てめえ!! 俺のパチリスちゃんになにかあったら殺すぞ!! ゴラァ!!!」
リーダー格の奴は〔のび太が爆笑してることも知らずに〕怒声を上げた。
「五月蝿い!! これでも食らえ!!」
 ハヤトはリュックからピッピ人形を取り出し、投げつけた。
「ピ、ピッピちゃん!! ぶぉっ!! ぉぉ」
 スキンヘッズは〔鼻から〕 大量出血し、その場に倒れた。
「あ、兄貴いぃ!!」
手下たちはリーダーに駆け寄る。
手下たちは兄貴に触れようとするが、ハヤトの殺気に満ちた目線に気づいた。
「ち、ちくしょう!! 覚えてやがれ!」
 手下たちは自分たちのコイルを戻し、一目散に逃げていった。
 その場に一瞬沈黙が流れた。



 のび太は隠れていた物陰から出た。
「ハヤト、もうかえろ」 
「HEY! おめえら!」
そういいながら、ジムの裏口からイナズマアメリカンが出てきた。
「人のジムの裏でなに暴れてるんだYO! 
近所からJANJANうるせえうるせえCALLが来るじゃ」
 ハヤトはマチスの口早な言葉を無視して振り返った。
「A-HA-? てめえどこへっと!」
マチスは地面に横たわるスキンヘッズに気づいた。
「……HEY,YOU」
マチスに呼び止められ、ハヤトは立ち止まる。
「暴れてたのはこいつだろ。だったらSORRY。こいつは俺の部下なんだ」
急に頭を下げるマチスに、ハヤトは目を見開く。
「いや、いいんだ。俺はただ」
「こいつは俺と違ってTHINKしたらすぐにMOVEしちゃう馬鹿だから」
その言葉と、マチスがちらりと地面にのたばるムックルを見た瞬間、
ハヤトの微笑みは消えた。
 ハヤトはキッとマチスを睨む。
「貴様もひこうを愚弄する気か!!」
「HAHAHA! 俺は何ともいってないぜ」 といいつつマチスは
明らかな蔑みの目をハヤトに向ける。
 しばらく二人は睨みあい、、やがてマチスがスキンヘッズを持ち上げた。
「じゃあな。FRY BOY」
マチスはパチリスが入るのと同時に戸をしめた。
 ハヤトは舌打ちして振り返った。



「ねえハヤト!」 「ハヤテだ」 「ハヤテ……あれ? ねえハヤテ! 」 
「ハヤトだ」 「ねえハヤト」
なんて会話を繰り返すうちに、二人はポケモンセンターにたどりついた。
 だが突然目の前に何かが舞い降りてきて、二人は立ち止まった。
「あれ、さっきのムックルだ」
 のび太は興味津々に抱えた。
 そのままのび太たちはセンターの中に入る。
「僕らをついてきたのかな。……あれ?」
のび太はムックルを観察しているうちにあることに気づいた。
「このムックル、メールがついているよ」
ハヤトはやっとその言葉で振り向いた。
「誰かのポケモンなのか?」 「うん、多分」
 二人はいすに腰掛け、メールを開いた。
 それは手書きで、こう書かれている。
 SOS ――――
 のび太は固まった。「ねえ、これ」
「ああ、これを出した人は」 ハヤトも緊張した面持ちで呟いた。
「ねえ、これは助けてほしいんだよね? だったら」
「落ち着け、のび太。 今はあのジムを勝利することが先だ」
 ハヤトはそう言うが、のび太はあいた口がふさがらないままだ。
「いいか、この先何かがおきれば絶対旅に関わってくるはずだ。
その前にここを出なきゃ意味ない」
 ハヤトはそう言うと、自室へ帰っていった。
のび太はやっとの思いで手紙を畳む。
「……あれ、ムックル?」

 ハヤトは突然後ろからつつかれ、振り返る。
「何だ、どうしてお前ここに!?」
ハヤトは叫んだが、ムックルは去ろうとしなかった。

注釈:ハヤテはピッピ人形をジムを去るときに持ってきたようだ



 朝、のび太はハヤトの部屋の戸を叩いていた。
「ねえ、本当に行かないの?」
「ああ、誰が行くか。 あんなとこ」
ハヤトは頑として譲らず、仕方なくのび太は一人でジムに向かった。
 派手派手しいジムの戸を、のび太はおどおどと開ける。
「こんに――」 
のび太の言葉は大きなノイズに掻き消される。
 ジムに入った途端、周りのトレーナーたちが祝砲を放ったからだ。
「っわわぁ!!」 のび太は反射的に叫び、耳を塞ぐ。
「HEY,BOY!!」
 ジムの奥で、マチスが呼びかけてきた。
「YOUだけかい? あのFLY BOYは来てないのか?」
 のび太はひどくおびえた表情で頷く。
「MMM, まあOK. LET'S BATTLEね!」
 マチスはそう言うと定位置につく。
のび太もそれに倣った。
(……うわぁ、外野が睨んできてる……)
のび太は柄の悪いトレーナーたちの視線をビンビンに感じていた。
「GO! ライチュウ!!」
マチスはポケモンを繰り出した。
(相手はでんきだ。 それなら) 「いけ、ドンメル!!」
 ドンメルが繰り出され、戦闘が始まった。



「ライチュウ! でんこうせっか!!」
マチスの指示で、ライチュウが光の如くドンメルに突撃する。
すばやさの低いドンメルは簡単に捕らえられるが、致命傷ではない。
「ドンメル、マグニチュード!」
ドンメルは地面を揺らす。
その場が大きく振動し、ライチュウは一撃でひんしになった。
 マチスは力なく横たわるライチュウを戻す。
 それと共に、外野からブーイングが飛んでくる。
「卑怯者―!!」 「でんき相手にじめん出しやがって!!」
「そ、そんな無茶な……」 
のび太の反論は尻すぼみに消えた。
「NO PROBLEM, NO PROBLEM!!」
マチスが叫び、外野は静かになる。
「じめん相手ならこいつだ!」
マチスは次のポケモンを繰り出した。
 青い体から二本の触覚を出す姿。
地面の上で力なくはねるそのポケモンは、チョンチーだった。
のび太はその危機を察した。 「ドンメル、マグニチュード!」
「チョンチー、地面にみずでっぽう!」
チョンチーは先手で水を放ち、その体は宙に浮く。
その直後地面が揺れたが空中では関係ない。
「やばい!! ドンメル動け!」 「SLOWLY! みずでっぽう!!」
のろいドンメルは容赦なく放水を浴びる。
ドンメルは悲鳴を上げ、力尽きたように倒れた。



「ドンメル、戻れ」
のび太は急いでドンメルを戻し、のこりの一体を繰り出した。
「いけ、ハスボー」
ハスボーがフィールドに現れる。
「ハスボー、すいとるだ!」
ハスボーはチョンチーに飛び掛った。
「チョンチー、みずでっぽう」 
チョンチーは放水し、ハスボーに当たるが相性はよくない。
ハスボーはチョンチーをくわえ、すいとり始めた。
「チョンチー、ふりはらえ! じたばただ!!」
チョンチーは技を放つが、ハスボーはなかなか離れない。
「ハスボー! 絶対離すなよ!!」 「SIT! 何としても離れさせろ!!」
チョンチーはじたばたを繰り返すが、ハスボーは倒れない。
何故ならすいとるで回復し続けているからだ。
 やがてチョンチーは息も絶え絶えになった。
「く、……チョンチー、あまごいだ!!」
マチスは指示を変え、チョンチーは最後の力を振り絞っていく。
やがて天井に雨雲がたちこめ、雨が降り出す。
それと共に、チョンチーは力尽きた。
 その時、ハスボーの身に変化が起きる。
「ハスボー!?」 のび太は目を見開いてそれを見ていた。
ハスボーは光だし、見る間に姿形が変化していく。
 ハスボーは進化したのだ。



「ハスボーがハスブレロになった!」
のび太は歓喜するが、マチスは舌打ちする。
「SIT! 地味に決めやがって、そのうえ進化まで……BUT, 次でTHE ENDね!!」
マチスは次のポケモンを繰り出す。
 出てきたのはあの三位一体のポケモン、レアコイルだ。
「一気ににいかせてもらう!! レアコイル、かみなり!!」
「ハスブレロ! 避難だ!!」
上空の雨雲が光り、稲妻が落ちる。
 一瞬であたりに煙がこもった。
「……避けても無駄。 RAININGだとかみなりはHIT率100%。逃げ場は無いぜBOY」
「……どうかな?」 のび太は不思議と強気だった。
煙がはれ、のび太の予想は的中する。
「!! レアコイル!」 マチスは叫んだ。
見るとレアコイルはハスブレロの少し上を、危うそうにふらついていた。
「かみなりが直撃したのさ!! ハスブレロを追ったかみなりにね!! 」
そう、ハスブレロはあの一瞬で、レアコイルの下に隠れたのだ。
「それに僕のハスブレロの特性はすいすいなんだ!!」
 マチスは舌打ちし、レアコイルに指示をするがレアコイルは様子が変だ。
「SIT!! 今のかみなりで磁力がおかしくなりがったみたいだ……
 だがハスブレロに決定打は無い!! このままなら回復を待って」
「そんな時間はないよ。 ハスブレロ、しぜんのちから!!」
マチスは瞬時に理解した。 
 ハスブレロは雨がたまってできた池の上にいたのだ。
しぜんのちから、つまりバブルこうせんはレアコイルを連打する。
相性は普通。 だが、何度もくらえば……
 磁力がいかれたレアコイルは泡にまみれて墜落する。……



「俺の負けだ」 マチスはあっさり認めた。
「FLY BOYに伝えといてくれ。お宅のひこうを中傷して、
つまりけなして悪かったと」
マチスはバッジを渡す際、のび太に伝えた。
 もっとものび太はトレーナーたちの視線が怖くてよくきいていなかったが。

 のび太はバッジを受け取り、センターへ戻ってきた。
「勝ったのか」 ハヤトにきかれ、のび太は頷く。
「すごかったんだよ、ハヤテ!」 「ハヤトだ」
のび太のふるいつものやり取りにハヤトが答える。
 のび太はポケモンを預け、ハヤトにジム戦を話した。
マチスのポケモンやそれをどう倒したか……ハスブレロへの進化など。
最後にのび太はマチスの言葉を思い出した。
「そうそう、マチスに何か君に伝えてくれって言われた」
「ほう。あいつが……何て言ってた?」
「えーとね……」
のび太は頭をひねったが、何しろ不良たちの視線がきになっていたため、
思い出すのに苦労した。
ようやく思い出した言葉はこれだ。
「……そうだ。
 ひこうおたくは重症だな、けなして悪かったって!!」

 因みにのび太はたまに確信犯になる。
ハヤトが神速でセンターを出て行ったときににやりと笑ったのは、
もしかしたら……