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 スネ夫は静かに待っている。
ここは暗い山道。ここを抜ければ次の町だ。
スネ夫は意識を集中させた。
(ムウマ、あいつらはどこにいる?)
するとスネ夫にある映像が伝わった。
茂みで群れている三匹のポケモン。
 スネ夫は暫し驚嘆した。
(すごいや。こんなことって)

 スネ夫はここ最近にゴーストタイプの特異な性質に気づいた。
ゴーストタイプはトレーナーと意識を通わすことができるのだ。
もちろんこれはゲーム内にはないまったくオリジナルの隠し要素だった。

 スネ夫は偵察しているムウマに伝える。
(ムウマ、そいつらにあやしいひかり)
 程なく、前方の茂みが揺らぎ、獣の吠え声が聞こえてきた。
「そこか!」
スネ夫は茂みにモンスターボールを投げ込もうとした。
だが同時に茂みから一体が飛び出してきた。
 こんらんした目で暴れる野生のポケモン。
四肢を狂気に唸らせるそれは、グラエナだった。
 スネ夫はグラエナのたいあたりを何とかかわした。
(く、ムウマ、戻れ!)
スネ夫は指示したが、ムウマからは二体のグラエナに囲まれている様子が伝わる。
どうやらかぎわけるを使われたようだ。
 スネ夫が舌打ちしている間にグラエナの二撃目が来た。



 スネ夫は急いでポケモンを繰り出した。
前の町を出てすぐに、廃棄物にまみれていたところを捕まえたポケモン。
「いけ、ドガース!」
繰り出された球体のポケモン、ドガースはスモッグをふりまいた。
苦しがるグラエナにスネ夫はボールを投げた。
 だが、
「なにぃ!?」
突然小さな影が飛び出し、ボールにぶつかった。
ボールはそれを吸収し、しばらく揺れて止まる。
その隙にグラエナは逃げてしまった。
「……くそ、でもまだ二体いる」
スネ夫はムウマの元へ急いだ。
 ムウマはいかれた目つきのグラエナにいかくされていた。
「ムウマ、逃げるんだ!」
ムウマはスネ夫の方へ飛ぼうとしたが、その前にグラエナが立ちはだかる。
「ドガース、ムウマを助け」
「ヨマワル、かなしばり」
突如誰かの命令が響き、二体のグラエナは体を強張らせた。
(誰だ? 二体のポケモンを簡単に……)
スネ夫はあたりを睨み回し、誰かが近づいてくるのを認めた。
「ヨマワル、おどろかす」
その人物の囁くような声と共に、人魂のようなポケモンが突拍子もなく現れる。
 突然現れたヨマワルのせいでグラエナたちは叫び、一目散に駆けていった。



「大丈夫かい?」
その人物はスネ夫に声をかけた。
ヨマワルを優しくなでる男。それはマツバだった。
「どうもありがとうございました」
スネ夫は丁寧に頭を下げる。
「別に、その様子なら平気そうだね。
 おいで。町はすぐそこだよ」
 マツバはスネ夫を手招きする。
スネ夫はドガースを戻してから素直についていった。
ムウマがそのあとをふよふよとついてくる。
「この辺は獰猛な野生が多いからね」
マツバが話し始めた。 「ところで君もゴーストタイプを使うようだね」
マツバはスネ夫のムウマを一瞥する。
「ええ、 そうです」
スネ夫は短く返事した。
 マツバは微笑む。
「あの町では、ゴーストタイプ使いは重宝されている。
 周りにゴーストポケモンがいないからね」
スネ夫は首を傾げた。
「じゃあ、あなたはどうしてゴーストポケモンを持っているんですか?」
マツバは悲しげな顔に変わった。
「昔はこの町にも沢山ゴーストポケモンがいたんだ。
 でも、人が増えていくにつれ、いなくなってしまった。
 ゴーストポケモンは清閑とした暗闇を好む。理由はなんとなくわかる。
 僕はまだゴーストポケモンがいたときにゲットしたんだ。
 ……ほら、ついたよ」
スネ夫は町に着いた。……



 スネ夫は呆然と目の前の状況を見ていた。
広い和室にはたくさんの膳が敷き詰められて、人々が和気藹々と騒いでいる。
マツバの話では、町の代表者たちが全員集まっているとか。
そしてそんな場で、スネ夫は上座に座っていた。
(ゴースト使いは重宝さえている)
ふと、マツバの言葉が脳裏に蘇った。
そう、この宴会はスネ夫のために開かれたのだ。
ムウマの使い手であるという理由で……

「気分はどうですかな?」
突然話しかけられ、スネ夫は振り返った。
話しかけてきた禿げ頭の男、この町の町長だ。
「いやぁ、もう最高ですよ、フフ」
スネ夫は久しぶりに金持ちのパーティーを思い出していた。
 その後、町長が立ち、スネ夫を盛大に称えた。
始めは顔を赤らめていたスネ夫も、拍手にまみれて次第に気持ちが高揚していく。
 宴会は夜更けにも続く。
 「どうです、この宴会は?」
時間の感覚が無くなっているスネ夫にマツバが話しかけてきた。
「いらぁ、もぉいいれぇ、さいこぉれすよぉ、フフ」
スネ夫は酒を飲んでいなかったが、匂いだけでグデグデになっていた。
「それはよかった」
マツバは大げさに喜びを示し、お猪口を差し出す。
「ささ、これも飲んで!」
スネ夫はその液体を何の迷いもなく飲み込んだ。
 目の前で舞妓が踊っている。華麗に、上品に。……
スネ夫の前で、舞妓が歪む。世界がぼやけ、霞み、……やがて深い闇へ落ちていく。
気分は最高潮のまま……スネ夫の意識は沈んだ……



「……それで、こいつのポケモンは?」
「はい、全て押収しました」
「そうか。抜かりは?」
「ありません。ところで、この少年は?」
「本来なら連れて行くところだが……実は連絡が届いている」
「では……?」
「始末はまかせた」
「かしこまりました」

 町長は話を終え、倉に入った。
ランプの火が灯り、町長が暗闇に浮かぶ。
町長は目の前の暗がりに目を凝らした。
 さっき眠らせた少年、スネ夫はここに隠しておいた。
もし薬の効果が薄かった場合、町に逃げられては厄介だからだ。
(……ふん、どうせ逃げてもこの町からは出れないだろうに)
 町長は不気味にニヤつきながら、倉の奥へ入っていく。
やがて白い布を巻かれて横たわっているものを見つけた。
(しかしこんな少年が、まさか)
 町長は思案しながらそれを抱えた。
「!! なっ何!?」
そのとき、町長は背中から強い衝撃をうけ、その場に倒れた。



 町の墓地は清閑としている。
町の人々はこの場を避けていた。
まあ、実は避けさせられていたのだが、特別反対する奇妙な人はいなかった。
 だが、いくら表に人がいなくても耳を済ませば聞こえてくるのだ。
その物音は……

 突然破壊音が響きわたる。音の発信源は神社の窓だ。
「な、何だ?」
住職は窓に駆け寄るが、目の前の小さな影にかみつかれ、ひるんだ。
 小さな影はその隙に奥へ進み、一つの扉へ到着する。
突然、影の後ろから姿が音もなく現れた。

「……どういうことだ?」
マツバは目の前の機械の異常に気づいた。
「エネルギーが足りない……いや、むしろゼロだ。
 いったい何が起こったって」
「残念でした」
マツバは不意をつかれ、ゆっくり振り返る。
「……どうして君がここにいる?」
マツバは平静を保ちながらきいた。
 その少年はいじらしく口端を上げる。
「僕にそんな子供だましがきくと思った?」
部屋の入り口で笑う少年、スネ夫は勝ち誇った笑みを浮かべていた。



「その機械のエネルギー源なら、今頃解放されているよ。
 パートナーの指示でね」
「馬鹿な! そいつらは全員寺に閉じ込めて」 「おっと、今いっちゃうの?」
スネ夫の大げさに驚いた風を見てマツバは歯噛みする。
「まあとっくに知っているから別にいいんだけどね」
スネ夫は笑い、そして急に鋭い目になった。
「あんたのやったことはこうだ。
 まず町の入り口に来るトレーナーに出会うことから始まる。あのグラエナたちはあんたが仕向けたものだ。
 その証拠に、僕らとあんたが出会ったときグラエナは素直に逃げていった。
 グラエナたちがあんなおどろかす一発で逃げるなんてタイプ相性で考えておかしいからね。
 とにかく、あんたは僕の手持ちを全て見ることが目的だったんだ。
 そして僕がムウマ、つまりゴースト使いであることを知り、作戦に移った」
スネ夫はいったん言葉を切った。
「僕を薬で眠らせ、僕のポケモンを盗んだんだ。もっとも狙いはムウマだけだった。
 あんたはゴーストポケモンを集めている。その機械のためにね。
 さあ教えてもらおうか、あんたはここで何をしていた!?」
スネ夫は凄んだ。
 マツバはため息をつき、顔を上げた。
「その前にきこうか。君はどうして薬が効かなかった?」
「あんたもゴースト使いなら知っているはずだ。
 ゴーストポケモンはパートナーと意思疎通できる。
 僕は確かに薬で眠っていた。でもムウマが起こしてくれたんだ。
 僕は目が覚めると倉の前で町長とお前の話を盗み聴きした。
 そして町長が探しにくる間に作戦を練り、ムウマに伝えたんだ。
 町長は今頃、僕のダミー人形を抱えたままお寝んねしてるよ」



「ムウマは僕の命令で逃げ出し、僕の他のポケモンを見つけ出した。
 そしてゴーストポケモンの念波をたどったんだ。
 どうやらさっき僕のポケモンと共に、そいつらを救出したようだよ」
「ほう、面白い」
マツバはふっきれたように笑い出した。
「さあ、とっとと目的を……!!」
突然天井が開き、強風が吹いてきた。
 天井からのぞく空では、ヘリコプターがホバリングしている。
と、スネ夫の足元に何かがあたった。
「バッジはあげるよ。謎を解いたプレゼントだ!」
マツバはそういうと、ヘリからの梯子に飛び移った。
「待て、逃げる気か!」
スネ夫は強気に叫んだが、目の前の光景に唖然とした。
 機械が浮かび上がり、ヘリまで飛んでいったのだ。
(……サイコキネシスか!?) スネ夫は直感し、震え上がった。
「エネルギーはもう十分たまっている。もって行っても差し支えないのさ!」
マツバがそう言いながら手をふった。
「じゃあな、少年! 君は僕を楽しませてくれそうだ! 
 それと、町を出るときには注意するんだな!!」
 マツバはそう言い残し、ヘリへ入っていく。
 ヘリは大きく旋回した。
 そのとき、スネ夫は見た。ヘリに書かれた赤い「R」 の紋章を……
ヘリは飛び去った。



 スネ夫はバッジを拾い上げた。
(……ムウマ、今すぐ来れるか?)
数秒後、寺から何かが飛び出す映像が送られてきた。
(あの影は……)
スネ夫は少し考えたのち、森で飛び出してきたあのポケモンだと気づいた。
(僕は覚えてないわけだ。あのときは急に)
 その時、廊下を駆けてくる足音が聞こえ、スネ夫は息を飲んだ。
「マツバさん!?」
息を荒くつきながら戸を開けたのは、体つきのしっかりした大男だった。
大男はあたりを見渡し、そして開けた天井をみる。
「何だあれ……? いや、そんなことより」
「どうかしたかね?」
大男の後ろから町長が現れた。
「ああ! 町長さん! 実はマツバさんが……」
大男は町長に小声で耳打ちする。
 その後、町長は悲嘆の顔つきを見せ、大男を連れて戻っていった。

 機材が入った箱の裏から、ゆっくりと青ざめた顔が出る。
スネ夫は男たちが去ったことに一息ついた。
 ふと、マツバの言葉がよみがえる
――この町から簡単に出れると思うな――
スネ夫は意を決してそこを出た。
 やがて建物の裏から出て、走り出す。



「いいか! 皆の者!!」
町の公園で、大男が演説していた。
「我が町最後のゴーストポケモンの使い手、マツバ様が失踪した」
その場に集まっている町の人々がざわつく。
「理由はおそらく夕刻来たあの少年!!」
大男が語調を強める。
「さきほどのヘリに気づいたものは多いだろう。
 あのヘリはその少年の仲間のものだと、町長が証言した!!」
人々の目が町長に向けられる。
 町長は毅然とした態度で立っていた。
その態度は人々を信頼させる。
「奴らはマツバ様を連れ去った。
 理由は何にせよ、少年がこの町に害をもたらした。
 元はゴーストタイプと人間が仲良く暮らしていたこの町。
 ポケモンと人間の唯一の架け橋であった方が連れ去られた!!
 このことで何もしないでいられようか!!
 皆の者、直ちに少年を捕らえるのだ!!
 この町の恐ろしさを教えた上で、地獄の底まで追い詰め、捕らえ、ここへ連れてくるのだ!!!」
大男の怒号が響き渡る。
 大衆からは狂気の雄叫びが上がる。
大男は部下に命令し、火を焚きつけた。
大衆の呼応と共に、不気味なサイレンが鳴り響く。
 この瞬間、町は処刑場と化したのだ……



(何だ、あの、……気持ち悪いサイレンは?)
スネ夫は路地裏でそのサイレンを聞いた。
さきほどの建物からここまでずっと走り続けていたのだが、その夜を切り裂くサイレンに足は自然と止まった。
(まさか町の人が全員ゾンビか何かになるなんてことは……まさかね)
スネ夫は笑いつつも、心から安心出来なかった。
 スネ夫は路地へ出た。 人影は無い。
閑散としたそこで、スネ夫は体力を温存すべく影を歩いた。
 だが、やがて後ろからの低い震えに気づいた。
地面が揺れている。……スネ夫は恐怖を振り払い、後ろをみた。
 町民の大群がライトを手に、駆けてくるのが目に写る。
スネ夫は声にならない悲鳴を上げ、すぐ隣の建物に飛び込んだ。
 途端に軽快な音楽が鳴り響く。
 そこはトレーナーの憩いの場、ポケモンセンターだった。
「あらどうしたの? そんなに急いで?」
ジョーイが気軽に話しかけ、スネ夫は呆然とした。
(もしかしてポケモンセンターはなんとも無いのかな)
スネ夫の体に安堵が満ちる。
 「休むんならこっちの……あら?」
ジョーイはふと話を切り、スネ夫に近づく。
「ど、どうしたんですか?ジョーイさん?」
スネ夫は必死で平静を保ちながら語りかけた。
「……そういえばさっきサイレンが鳴ってたわね。
 私ったらうっかりしちゃってた……」
スネ夫は冷や汗をかきながら首を傾げた。「いったい何の――」
 言葉は途切れる。
その隙に、ジョーイの懐から出刃包丁が、ニュッと――



「ぎゃぁあぁあぁぁ!!」
スネ夫はジョーイの脇を駆け抜け、ポケモンセンターの階段を駆け上った。
 後ろから恐ろしく低い声が聞こえてくる。
「みんな、こっちよ! あのガキ二階にいるわ!!」
その後、怒号が聞こてくる。
 スネ夫は二階の窓から、一気に隣の屋根へ飛び移った。
(ムウマ、速く来てくれ!! このままじゃ死ぬ!!)
スネ夫は顔を歪ませながら返答をまった。
 下では人々が一斉にセンターへ突撃してきている。
人々は各々凶器やポケモンを連れ、それが延々と、百鬼夜行のごとく……
「上だ! 上にいるぞ!!」
「きたぁあぁあ!!」
スネ夫は急いで立ち上がり、ねずみ小僧のように屋根をわたって行った。
 そのときムウマからの連絡が来る。
町の出口で落ち合おうと――
 スネ夫はそのまま屋根を走っていった。

 スネ夫は出口周辺のゲート前に着いた。
あたりに人気はない。 スネ夫は町からきこえる狂気のうねりに震えながら叫んだ。
「ムウマ、どこだ!?」
目に写る反応はなかった。
「おい、ムウマ、速くしないと殺される」
「こいつのことかな?」
スネ夫は町側から声を掛けられ、振り返った。



 町長がムウマをつかみながら立っていた。
「ムウマ!!」
スネ夫は歩こうとしたが、目の前から響く騒ぎで、はたと止まる。
町民たちが集まってきたのだ。
「ムウマ」 (どうした、お前なら)
ムウマは拒否の念を放ってきた。 
 町長には言葉の方しかきこえない。
(どうしたっていうんだ!? それに、ボール)
ムウマはその答えを送ってきた。
 その間に、町民が次々と押し寄せてきた。
その目に生気はない。ただ血への渇望だけが渦巻いている。
「さあ、どうする?」 町長はにやりとした。 「仲間を捨てて逃げてもかまわ」
その町長の言葉を遮り、何かのとおぼえが聞こえてくる。
 小さな影が颯爽と飛び出し、町長に噛み付いた。
「っぐお!?」
町長はうめき、その拍子にムウマを手放した。
 月明かりに照らされ、その影は明らかになる。
小さな影の正体、それはポチエナだった。
 スネ夫ははじめて見る自分の新しい仲間を見つめた。
ふと、その口にボールが二個くわえられているのに気づいた。
(なるほど、こいつを待ってたのか、ムウマ)
 スネ夫は納得した。ムウマならばつかまれても簡単に抜け出せたはずだからだ。



「ふん、そんな子犬がどうしたって?」
町長がかまれた腕をさすりながら言った。
「どうせおまえらは逃げられん。さあ、皆の者、捕らえ……おい、どうした?」
町長は町民の異変に気づいた。
 みんな虚ろなで、町長を見ている。 もっとも焦点はあってないが。
 スネ夫ははっとして意識をのばした。
そしてきづいた。 その場に見えないけれどゴーストポケモンが集まっていることに。
(開放された奴らが来て、みんなを操ってる)
 スネ夫はムウマとポチエナを呼び、ゲートへ向かった。
「おい、お前どこへ」
呼び止める町長の前に、町民の一人、あの大男が立ちはだかる。
 町長は当然、大男として話しかける。
「おい、どうしたんだ? お前ほど正義感のある男なら」
突然、大男はケタケタと高笑いした。
人のものとは思えない声。
「おい、お前」
大男は変に高い声のまま言った。
「ずいぶん俺たちにひどいことしてくれたよなぁぁ」
 声はだんだん低くなり、大男は町長へ詰め寄った。
 いや、町民全員がじりじりと町長のまわりをつめる。
「お、おいお前たち。いったい、ど、どうし」
「いこう」
スネ夫はゲートへ入った。
 町長の断末魔の叫びが響く中、スネ夫は町を出た。