ドラえもん・のび太のポケモンストーリー@wiki

ドラーモン作大長編 その11

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akakami

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ルネシティ。
そこでは一触即発の空気が漂っていた。
「ボクはそんな事やっていない!」
「そんな姿の奴がこの世界に二人もいるわけがないだろう!」
言い争っているのはヒースとドラえもんである。
ルネジムの前でばったり出会ったドラえもん達とヒース&ウコン。
ジンダイが言っていた風体そっくりの未知の生物を目の当たりにしたヒースは、完全にドラえもんを犯人扱いしていた。

「はい、そこまで」
延々と続く言い争いを止めたのはウコン。
ドラえもんの顔をじっと見つめ、やれやれといった顔でヒースをなだめる。
「こやつの目には曇りが無い、ウソはついておらんよ」
「う、ウコン爺がそういうなら……」
納得はしていないがヒースは引き下がる。
ウコンの人を見る目は確かだからだ。
「ワシはウコン。すまんの、ヒースが勘違いしておったようじゃ」
案の定のび太から「ウンコ?」などという無礼な間違いがあるがウコンは気にしていない。
「はぁ、誤解がとければいいんだけど」
ドラえもんも拍子抜けしたらしく、ウコンの謝罪をあっさり受けてしまった。



「時におぬしら、デキスギという少年を知っているかね?」
「な、なんで出木杉の名前を?」
ウコンの問いにびっくりする三人。
まさかこの世界の住人からその名前を聞くとは思わなかったからだ。
「やはり知っておるか……では君たちがスネオ君のお仲間じゃな」
少し話がしたい、とウコンはドラえもん達をポケモンセンターに誘った。

ウコンから事の顛末を聞き、驚きを隠せない三人。
スネ夫が出木杉によって負傷したこと、伝説ポケモンが出木杉の手にある事、そしてドラえもんによく似た姿のポケモン窃盗犯。

「やっぱり、出木杉君はボクらを倒すつもりみたいだね」
ドラえもんがため息をつく。
「出木杉の奴、本当に変わっちゃったんだ」
のび太も落胆の色を隠せない。
実は心の奥底では出木杉が変貌したことをどうしても信じられなかったのだ。
しかしここまで話を突き付けられればもう彼を信じることはできない。



落胆するドラえもん達にウコンは話し掛ける。
「おぬしらがスネオ君のようにデキスギと戦うのなら、我々フロンティアブレーンが力を貸そう」
思わぬ申し出にドラえもん達は戸惑うが、そこに口を挟んだのはなんとヒースだった。
「ボクはやっぱり反対だ!このタヌキみたいな生物の疑いは完全に晴れたわけじゃない!」
「僕はタヌキじゃない、ネコ型ロボットだ!」
ロボットだという事実に(ネコだと主張している事実にも)驚きながらもヒースは退かない。
「ロボットなら尚更だ、お前がデキスギの操り人形の可能性あるじゃないか!」
のび太が必死でドラえもんの無実を証明しようとするが、頭の弱いのび太では到底無理だ。
「とにかく、こんな信用のならない奴を手助けしたくはない」
ヒースはそう言い放ち、席を外してしまった。
ウコンが謝罪する。
「すまん、我々も敗北続きで疑心暗鬼になっていてのう」
ドラえもんもそれを聞いてゆっくりと腰を下ろす。
「ヒースはあんな調子じゃが、おぬしらのバックアップはフロンティアブレーンの名に賭けてやらせてもらうよ」
ウコン達は自分達が宿泊している場所を書き残して帰っていった。



残された三人。
「なんかとんでもないことになったねぇ」
そういうドラえもんをのび太は冷たい目で見ている。
「どうしたんだい?」
「ドラえもん、まさか本当に泥棒したわけじゃないよね」
のび太の信じられない質問にドラえもんは声が出なかった。
「ドラえもんみたいな格好をしてる奴なんてこの世界にいるわけないじゃないか」
「の、のび太くん、キミって奴は!キミって奴はぁっ!」
疑いの目を向けるのび太にドラえもんの怒りがぶつけられる。
「けどドラちゃん、トクサネでは私たち単独行動してたわよね……まさかその時に……」
しずかの言葉はドラえもんを更に窮地に追い込む。
「し、しずかちゃんまで……」
まさかしずかまでもが自分に疑いを持つなんて。
「もしかして出木杉と組んで、もしもボックスを壊したってウソついたんじゃないだろうな」
「ドラちゃん、出木杉さんを道具で変にしちゃったなんてことは……ないわよね」
のび太もしずかも完全にドラえもんを疑っている。
『違うんだ、違うんだ!』

「うわぁぁぁぁぁぁん!」
ドラえもんは耐えきれなくなり、その場を逃げ去ってしまった。



「ドラえもん!」
「待って、ドラちゃん!」
二人の叫びを背に、ドラえもんはエアームドで空の彼方に消えていった。

「なんで逃げちゃったんだろう」
激しい後悔に襲われているドラえもん。
これでは自分が犯人と認めるみたいではないか……
「ポケモン窃盗だけじゃなく、もしもボックスを壊した犯人まで僕にするなんて……」
こんな世界にくるんじゃなかった、元の世界に帰りたい。

元の世界?

「ああああああああああ!」

ドラえもんは重大な見落としをしていたのに気付き、思わず声を上げた。

ミシロタウン。
ゲームでは主人公の家だが、二階の部屋はのび太の部屋のままになっている。
ドラえもんはドタドタと部屋に駆け込むと、もしもボックスの残骸を漁りはじめた。
「やっぱり!これは偽物だ!」
そう、これは巧妙に作られた偽のもしもボックスだ。
「うっかりしていた……ボックスが壊れれば世界は元に戻るはずなんだ」
となると、本物のもしもボックスは別の場所で健在だということ。
この世界をリセットされれば困る存在といえば、それは一人しかいない。
「やっぱりこれは出木杉くんの仕業なのか……」



トクサネシティ。
ジンダイは宇宙センターの裏に隠れるように立っていた。
「言われた通りにした、これでいいんだな……」
「ええ、ご苦労さま」
ジンダイに声をかけたのは、出木杉から遣わされた連絡役であるマユミだ。

バトルフロンティアで敗北したあの日、フロンティアブレーン達は追っ手を分散させるためにバラバラに逃げた。
そして出木杉が追ったのはジンダイ。
ジンダイは捕らえられ、リラ、コゴミ、アザミの命を守るために出木杉に従ったのだ。

まずはスネ夫という少年を助け、彼と仲間達をルネに結集させるように仕組んだ。
そしてフロンティアブレーン達を集めてポケモン盗難事件をでっちあげ、犯人を丸顔の2頭身とする。

盗難事件のでっちあげについてはジンダイも出木杉の真意は分からない。
そのような生物に面識はないからだ。

「これで、彼女達は助かるんだな?」
「ええ、殺しはしないわ。ぶっ壊れるかどうかは彼女達の精神次第だけど」
ジンダイの言葉にマユミが笑いながら答える。
それは「殺しはしないが慰みもののまま」という事だろう。
『今はこれが精一杯だ。死なないでくれ……』
ジンダイは歯をくいしばる。



「で、本当はどこにあるのかしら、貴男のポケモン達」
マユミの質問にジンダイの目が鋭く光る。
「貴様も見ただろう。俺の自宅が本当に荒らされていたのを……」
監視役のマユミがジンダイと共に彼の自宅に行ったとき、彼の部屋が何者かによって荒らされていたのは事実だ。
だから今回の窃盗事件をでっちあげたのである。
「まぁあの時間で貴男が何かできるはずはないしね」
伝説の3鳥を出木杉様の戦力にできないのは残念、とマユミはつぶやいた。
「では私は引き続きブレーン達が勝手な動きをしないよう牽制する」
「定期連絡はかかさないこと、じゃあね」
マユミはオオスバメを出すとそれに乗ってサイユウへと帰っていった。


「ふう……」
ジンダイがゆっくりと腰を下ろす。
「このような全てを欺くような事をしたくはなかったんだがな……おい、聞いてるんだろう?」
ジンダイは空を仰ぎながらひとりごとをつぶやいた。
「ごめんなさい」
すると何もない空間からジンダイに声がかかる。
ジンダイは声のする方向を睨み付けた。
「こうすれば、本当にあのデキスギを倒すことができるんだな」
「必ずやってくれるわ、のび太さんなら。それがこのゲームの本当の目的ですもの……」



ゲームだと?
我らが暮らすこの世界をこのようにしておいて……
ゲーム気分の少年達の遊びに巻き込まれてリラ達はあのような無残な仕打ちを受けているのか?
ジンダイは怒りを抑えながら声の主に問い掛ける。
「あの時、私の自宅で囁きかけてきた君の言葉に私は乗った。そして二重スパイのような屈辱に身をやつしている……」
「出木杉さんにあれ以上力を与えるわけにはいかなかったの」
そう、この声の主がジンダイの部屋を荒らして3鳥を奪った張本人なのだ。
「せめて姿を現してくれるわけにはいかないのか?」
「……」
返事は帰ってこない。
やはりだめか、とジンダイがため息をついたその時、その姿は不意に現れた。
グレーの帽子を手につかんでいるその姿は、2頭身で丸顔……
「そ、その姿、まさか……」
ジンダイがブレーン達に吹き込んだ犯人の風体と全く同じなのだ。
「彼らが貴男を使って仕組んだ窃盗事件、それはのび太さんとお兄ちゃんを引き離す出木杉さんの罠……」
「アンタはいったい誰、いや、何なんだ……」
ジンダイの問いに黄色いその生物は答えた。

「私はドラミよ」



ミシロタウン上空。
「のび太くん達に知らせなきゃ!」
喧嘩や疑心暗鬼の事などどうでもいい。
もしもボックスが健在であることを知らせなければ。
エアームドに乗り、ルネを目指して飛ぶドラえもん。
『けど偽物まで仕立てて、誰が何のために……』
もしもボックスの事を知っているのは(他人に喋っていない限りは)自分達だけだ。
あれだけ巧妙な工作をしたんだ、ボックスの重要性も分かっているだろう。

『やっぱり出木杉くんだろうか?』
この世界で最高の栄誉と自分の欲望が叶っている現状から現実に帰りたくないから、ボックスを隠したんだろうか?

「うーん、なんか腑に落ちないなぁ」
出木杉を犯人としたい気持ちに何かが引っ掛かっている。
しかしドラえもんにそれ以上考える余裕は与えられなかった。
「あら、お久しぶり」
ドラえもんの目の前に現れたのはレックウザの背に乗ったナギだ。
「あ、あなたはナギ…さん」
のび太やフロンティアブレーンなどに聞いた変貌ぶりが事実であれば、自分は助からない。
そして予想した通りの答えが返ってきた。
「あなたをここから逃すわけにはいかないわね。死になさい……」
レックウザは空高く飛び上がった。



「あれはそらをとぶ攻撃、まずい!」
ドラえもんもエアームドに追い掛けるよう命令する。
間一髪レックウザの一撃をかわしたエアームドは同じ攻撃を逆にレックウザにくらわせた。
「……そ、そんな!」
エアームドの一撃は確かにレックウザを捉えた。
しかしその身体にはほとんどダメージが無い。
「レベルが違いすぎるのよ、レベルが」
ナギの言うとおり、これは勝ち目が無い。
この状態でエアームドがやられてしまったらドラえもんは空に放り出されて一巻の終わりだ。
「ふふふ、一度暴れたら止まらない……レックウザのげきりんのパワーを見せてあげるわ」
ナギはレックウザの弱点である逆さに付いた鱗を殴りつける。
その痛みに狂ったように暴れはじめるレックウザ。
『あれに巻き込まれたら終わりだ!』
思わず目をつぶるドラえもん。
しかし、攻撃はこなかった。
「……!!」
目を開けたドラえもんが見た光景。
身体の節々が凍り付いたレックウザと、吹雪を吐き出した謎の鳥ポケモンだ。
「ふ、フリーザー…なぜこんなところに!」
「あれ、フリーザーっていうのか……」
どうやらナギはあのフリーザーなるポケモンをよく知っているようだ。



凍り付いてうまく動けないレックウザにフリーザーが矢のように降下し、突進した。
「フ、フリーザーがとっしんですって!馬鹿なっ!」
ナギは思わず叫んだ。
フリーザーが突進を覚えるはずはない。
しかしあのフリーザーは自らも傷つきながらも、身体をぶつけるような攻撃をしかけてきた。
「ちっ、ここは引くしかないわね……」
レックウザはすごい速さでこの場を去っていった。

「助けてくれて、ありがとう」
ドラえもんはフリーザーに礼を言った。
しかしフリーザーには感情のようなものが感じられない。
まるで無理矢理戦っているようだ。
「あ……」
気が付くと、フリーザーは彼方へと飛び去っていた。

フリーザーが降り立った森の中。
そこにはドラミが一人、フリーザーの帰りを待っていた。
「使えないのはみずのはどうのようね」
ジンダイのフリーザーは水の波動、吹雪、燕返し、リフレクターが使えるはず。
だが水の波動の変わりはさっきの突進技だ。
「仕方ないわね、万能な攻撃技に変わったと思うことにしましょう」
フリーザーが使った技はダークラッシュ。
ある状況のポケモンだけが使える闇の技である。
「スナッチシステム……ごめんなさい、これしか方法が無かったの」
ドラミの謝罪も今のフリーザーには聞こえない。



そんなドラミの前にジンダイが現れる。
「まさか強制的に他人のポケモンを使う手段があったとはな」
「ええ、オーレ地方の犯罪組織が作ったシステムよ。使うのは本意ではなかったんだけど……」
ドラミの協力者となったジンダイだが、3鳥の所有権は譲ってくれなかった。
だから仕方なくスナッチに頼ることになった。
「で、今回はなぜ私の邪魔をした?」
ジンダイは出木杉から命令を受けていた。
ナギにやられたドラえもんを助け、行動をともにするようにと。
「そのシナリオ通りにいくと、お兄ちゃんは最終決戦にほとんど参加できないの」
出木杉の巧妙な引き離し作戦である。
ドラえもん抜きの子供ばかりなら負けは絶対にないと踏んでいるのだろう。
「でも今回は私がお兄ちゃんを助けた。これで彼の描いたシナリオは大きく変わるはずよ」
良いほうに転がるか、悪いほうに転がるか、どうなるかは分からない。
「君のおかげで任務に失敗した私はデキスギにどう言えばいいのか……」
ジンダイの心配にドラミが答える。
「大丈夫、おそらくあなたよりお叱りを受ける人間が出てくるから」
ドラミの言葉の意味が分からず、ジンダイは首を傾げた。



ルネシティ。
ドラえもんと嫌な別れ方をしてしまったのび太としずか。
二人はジム戦をする気分にもなれずにこの日を終えることになった。

「あーあ、やなこと言っちゃったなぁ」
その場の雰囲気とはいえ、ドラえもんには悪いことを言ってしまった。
そんな気分でのび太はベッドに転がっている。
『明日には帰ってくるだろうか』
その時は素直に謝ろう。
のび太の頭からはドラえもんへの疑心はすっかり消えていた。

皆がすっかり寝静まった頃、事件は起こった。
「きゃーーーーっ!!」
耳をつんざく悲鳴。
「この声は、しずちゃん!」
のび太も何度か入浴中のしずかからこの悲鳴を聞いているから間違いない。
自分の部屋を飛び出し、隣にあるしずかの部屋に急ぐ。
「ノビタ!」
「ヒースさん!」
向かいの部屋から現れたヒースと合流し、しずかの部屋に向かう。
ヒースがドアノブを回すが、鍵が掛かっていて開かない。
「ケッキング!」
のび太が出したケッキングが扉を吹き飛ばす。
中に入った二人が見たものは、気を失ったしずかを抱えて窓に足をかけるウコンの姿だった。
「う、ウコン爺!」
信じられないといった顔でヒースが叫ぶ。
そんなヒースにウコンは一言つぶやいた。
「油断するなと言うたのにのう……」



「なぜ、なぜこんな事を!」
ヒースの問いにウコンは答えない。
しずかを抱え、そのまま窓の下に飛び降りる。
「ま、待てっ!」
のび太が窓から顔を出すが、その時にはウコンの姿は消えていた……

「はぁ、はぁ」
しずかを背負いながら必死で走るウコン。
辿り着いた場所は、木の実をくれる少女がいる広場。
今は夜なのでひっそりと静まりかえっている。
「確かここで……」
ウコンが辺りを見回すと、そこには自分を倒した女が立っていた。
「アスナ……おぬしじゃったか」
「ふん、その娘をこっちに渡しな」
ウコンは背負っていたしずかを下ろすと、ゆっくりと後ずさった。
「あんたの望みは叶えてやるよ。」
アスナはゆっくりとしずかに近づいていく。
しかし、しずかを覆うように現れた影がアスナの足を止めた。
「誰だ!」
「よくわかんないけど、しずかちゃんに触るな!」
現れたのはエアームドに乗ったドラえもんだ。
予定外の出来事にアスナは狼狽する。
『こいつはここに来ないはずでは……ナギとジンダイめ、しくじったね!』
「ウコン、もうアンタは用無しだ!」
アスナはランターンを繰り出すと、ダイビングを使い海中へ姿を消したのだった……

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