ドラえもん・のび太のポケモンストーリー@wiki

ドラーモン作大長編 その8

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akakami

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《インターミッション》

ドラミです。
物語も中盤を越えたんで、私が今の状況を整理しますね。

まずタケシさん。
今ミナモからトクサネに向かっている最中のようね。
手持ちはラグラージLV46、バクーダLV41、ペリッパーLV32、コドラLV40、マタドガスLV35、ヘラクロスLV31。
天気研究所での限界バトルがかなりの戦力アップになったようね。
コドラが進化すればさらに戦力アップよ。

スネ夫さんはお兄ちゃん達から隠れて送り火山で何かを探しているわ。
みんなに敗北してかなり慎重になってるわね。
手持ちポケモンは結構変化してるみたい。
ジュカインLV38、キノココLV40、クロバットLV38、ヌケニンLV38、マルノームLV33、そして120番道路で得た新しい仲間。
いったい何なのかしら?
控えはコノハナLV32、テッカニンLV35、秘伝用のジグザグマがいるわね。

のび太さんはお兄ちゃんやしずかさんと送り火山。
地道に、しかし確実に戦力を上げてるわね。
手持ちは色違いドククラゲLV39、ケッキングLV42、トロピウスLV41、ジュペッタLV44、そしてしずかさんと交換したマッスグマLV32。
手持ちはまだいっぱいじゃないから、今後何をゲットするか気になるわ。



しずかさんは相変わらずサーナイトメインで戦ってるわ。
手持ちはサーナイトLV45、マリルリLV37、マッスグマLV35、マッスグマLV31、マッスグマLV29、そして新しい仲間、ロコンLV29。
近ごろのしずかさんは妙に計算高くなっている気がするわ。
炎の石を入手後にロコンをゲットしたり、のび太さんからヒンバスをゲットしたり。
実はポケモンやったことがあるんじゃないかしら……

お兄ちゃんは今のところ一番戦力が劣るわね。
手持ちはグラエナLV36、ヤミラミLV46、エアームドLV38、アブソルLV28、そして癒し用のチリーンLV28。
わが兄ながらこの体たらく、がっかりね。

出木杉さんは……
何かすごいことになっているわね。
近況としては、子供離れした性生活のおかげでついに精通が始まったらしいわ。
まぁタケシさんと違って一人プレイの必要はないんだけど。
部下にジムリーダーのツツジ、アスナ、ナギを従え、アクア団のイズミも彼のスパイね。
手持ちポケモンは変幻自在、カントーやジョウトのポケモンも使ってるらしいわ。
どうやってゲットしたのかしら?

以上、ドラミが今の皆の状況をお知らせしました!



トクサネシティ。
「すっげー、ロケットだぜロケット!」
ジャイアンは塔のようにそびえるロケットにただ感動していた。
「やっぱ近くで見たいよな、宇宙は男のロマンだぜ!」
ジャイアンはジム戦の前に意気揚揚と宇宙センターに向かう。

そこでジャイアンが見たのは壮絶な光景だった。
宇宙センターの前に数人の赤装束の男女達が倒れている。
「こいつら、マグマ団か……どうなってんだよ」
ゲームの世界である以上、宇宙センターへのマグマ団襲撃に誰かが関わっているはずだ。
ジャイアンより前に進めるだろう奴は出木杉しかいない。
「出木杉がやったのか?畜生、遅れを取ったぜ!」
ジャイアンは急いでセンター内に駆け込んだ。

しかしそこにいたのは出木杉ではなく、以前戦ったあの女だった。
「確か、アクア団の女幹部……」
「イズミよ。よろしく、ゴウダタケシ」
なんでコイツが俺の本名を……
事態がさっぱり飲み込めないジャイアンにイズミが語りかける。
「タケシ、あんたに復讐したくてココで待ってたらこいつらが喧嘩ふっかけてきたんでね」
ジャイアンがごくりと唾を飲む。
「俺と戦う前に…こいつらを全滅させたってのか」
「ええ、ウォーミングアップにもならなかったけどね」
ジャイアンがモンスターボールを握る。
「じゃあ、やりましょうか。タケシ……」
イズミはニヤリと笑った。



「くそ、ラグラージ!あんな女コテンパンにしてやれ!」
ジャイアンが繰り出したのはエースのラグラージ。
それに対するイズミのポケモンは……
「トドゼルガ、蹂躙しろ!」
「な、なんだって、そんな馬鹿な!」
ゲーム中のイズミはトドゼルガなど使わない。
「あくびだ、トドゼルガ!」
あくびがラグラージの眠気を誘う。
「くそ、とっしん!」
ラグラージの突進がヒットするも、さしたるダメージにはならない。
「こりゃやばい、交替だ!」
あくびによる眠りを恐れたジャイアンはポケモンをマタドガスに入れ替える。
『とりあえず粘ってから自爆でも使うしかない』
そんなジャイアンの目論みもイズミの力の前には無力だ。
「ぜったいれいど!」
トドゼルガの絶対零度が炸裂し、マタドガスを一撃で葬り去る。
「あら、当たっちゃった。ラッキー」
イズミは余裕の台詞で挑発する。
「ちくしょう、次はこいつだ!」
ジャイアンが繰り出したのはペリッパー。
しかしこれでも圧倒的に分が悪い。
「のしかかり!」
トドゼルガに先制され、のしかかられてペリッパーも一撃で撃破される。
「ぷ、弱っ!」
イズミが吹き出す。
「わ、笑うな、笑うな!」
ジャイアンは頭に血を上らせてバクーダを繰り出す。
イズミがすっとぼけたように声を上げる。
「いやーん、私のトドゼルガ、水技を持ってないわ!」



「へへ、ざまあみろ……」
相手の狼狽ぶりに正気を取り戻すジャイアン。
しかし次のイズミの行動に凍り付いた。
「じゃあ交替ね、次はキングドラ!」
現われたのはまたも所持していないはずのキングドラ。
「やばい、ラグラージ出ろ!」
ポケモンを交替するジャイアンに対し、イズミのキングドラは竜の舞で戦闘力を上げる。
「次はキングドラかよ……」
「とりあえず、その気持ち悪いポケモンは沈んでもらうわよ」
キングドラは破壊光線を発射し、ラグラージを一撃で倒してしまう。
「あら、次のターンは動けなくなっちゃうわね」
『か、勝てねえ……どうなってんだこいつ!』
コドラやバクーダでは傷すら付けられずに瞬殺、育成が不十分なヘラクロスではまともに戦えない。
とりあえずバクーダを出すが、ジャイアンの敗北は決定していた。

破壊光線の余波で倒れているジャイアンの腹をイズミが蹴りとばす。
「うああっ……」
「ガキの分際で大人のやることに顔を出すからこうなるんだよ、覚えときな!」
イズミは懐から何やら布切れを取り出す。
「お前、ジムリーダーのアスナの下着で毎晩シコシコご盛んらしいじゃないか。私のもくれてやるよ、ありがたく使いな!」
ジャイアンの鼻先に上下の下着を押しつける。
「使用済みだからしっかりクンクンしなよ、ハーハハハッ!」




イズミが去った後、ジャイアンは地に這いつくばりながら悔しさに唇を噛み締める。
「ちくしょう、何もできなかった……」
いや、何もできなかったわけではない。
この直後、ジャイアンはセンター近くの木陰でイズミの残したものを使って男のたしなみだけはやり遂げたのだ。
「くそっ、くそっ!ウッ、アアッ!」
ジャイアンの涙の自慰は1時間にも及んだ。

イズミは満足気にトクサネを後にする。
「さて、本当はノビノビタも倒してしまいたいところだけど、タイムオーバーね」
そう、ここでマグマ団を倒すと次のステップに進める。
出木杉様の言う事が真実なら、そこでは……
「アオギリ様も好きだったけど、出木杉様にはかなわないわね。ふふふ……」



ミナモシティ。
スネ夫はミナモデパートで買い物をしていた。
「まもるとはかいこうせん、後はふぶきとかみなり……」
この町の民家の人から眠るの技マシンも貰った。
「リフレクターにひかりのかべ……は必要なときに買いにくればいいか」
当面はこれで大丈夫だろう。
それよりも……
「この天気、これはあのイベントだよな」
そう、ついさっきから雨と日照りが繰り返されている。
こんな異常気象が起こるとすれば、あれしか考えられない。
『まさかジャイアンがルネを越えたのか?』
時間的には不可能に思えるが、それでも起こっている事は事実だ。
「こりゃ急がないといけないなぁ」
このイベントを起こしたのがジャイアンならば、奴はトクサネにはいないはず。
ジャイアンとの勝負はチャンピオンロードになるはずだ。



トクサネシティ。
「やっぱりジャイアンはいないようだね」
トクサネに着いたスネ夫は念入りにジャイアンがいないことを確認していた。
ジャイアンの目撃報告はほとんどなく、話に上がっているのは宇宙センター襲撃事件の話題ばかり。
「よし、さっさとジム戦を終えてルネに向かわないと」

トクサネジム。
このジムはエスパーとゴーストタイプの使い手が多い。
そしてジムリーダーに対してはこちらも切り札を持っている。
「よし、やるか」
スネ夫はワープ床に足を踏み入れた。

スネ夫はジュカインを主軸にしてトレーナー達を退け、攻略ノートを見ながら巧みにスイッチとワープのトラップを攻略していき、ついにジムリーダーの間に辿り着いた。
そこにはいたのは双子のジムリーダー、フウとラン。
「あなたの力、私たちに見せてもらいましょう」
「ふ、ボクの力を見せてあげるよ」
フウとランはそれぞれネンドールとネイティオを繰り出す。
「お前達がエスパータイプを使うことはリサーチ済みさ、行け!」
スネ夫が繰り出したのはなんとダーテングとドジョッチ。
「トクサネに来るまでコイツを集中的に稼いで、やっとLV49さ!」
草技を持たないダーテングでひたすらトレーナー戦を繰り返し、秘伝用ジグザグマがときおり拾ってくる不思議な飴も全部投入した。
おかげで他のポケモンがほとんど育っていない。
120番道路で釣ったドジョッチもそのままだ。



「ダーテング、シャドーボールだ!」
シャドーボールも送り火山にわざわざ出向いて入手した技マシンを使っている。
その攻撃を受け、ネイティオが一撃で戦闘不能になった。
「どうだい、君たちと次のアダンを攻略するための切り札、ダーテングの力は」
さすがに悪タイプのポケモン相手ではジムリーダーとはいえ分が悪い。
ドジョッチの方は完全に守りに入っている。
おそらく経験稼ぎのつもりで出しているのだろう。
スネ夫の勝利はゆるぎなかった。

「完敗です、よくぞここまでポケモンを育てましたね」
フウからバッジを受け取るスネ夫。
「ああ、このダーテングとドジョッチは奴と対戦するときの切り札だからね」
「ライバルとの対戦ですか、目標を持つことはいいことですね」
ランもスネ夫の健闘を讃える。

ジムから出たスネ夫はニヤリと笑う。
「奴のバクーダやコドラ対策はナマズンで、マタドガスはダーテングのじんつうりき……」
そう、スネ夫の眼中にはジャイアンしか見えていない。
「無計画なフルアタ馬鹿にはフルアタでガチ勝負してやろうじゃないか」
そう、力に頼る奴を力で押さえ込む。
それが最大の復讐、そして力関係の逆転につながるのだ。



ミナモシティ。
のび太一行はしずかにせがまれてコンテスト会場にいた。
「えいっ!えいっ!」
三人はひとつの機械を囲んでなにかを回している。

数十分前。
「ねぇ、お願いがあるんだけど」
「な、なんだい?」
しずかのいきなりの切り出しにのび太とドラえもんがびっくりする。
「のび太さんから貰ったヒンバスちゃん、かわいそうだから少しでも綺麗にしてあげたいんだけど……」
「しずちゃん、そんなに僕のヒンバスを大切に……」
のび太は自分が大切にされているかのごとく感動する。
「ミナモシティのコンテスト会場にポケモンを綺麗にするお菓子を作る機械があるらしいの」
「要するにそこでお菓子作りをしようっていうの?しずかちゃん」
ドラえもんの言葉にしずかが頷く。
「ドラえもん、しずちゃんのために行こうよ!」
「んー、まあそんなに急ぐ旅でもないしね。行ってみよう」
「ありがとう、ドラちゃん、のび太さん!」
のび太はしずかの感謝の言葉にすっかり舞い上がっている。
しかしドラえもんはなんとなく腑に落ちない何かを感じていた。



そして3人はコンテスト会場で「ポロック」というお菓子を作るために木の実ブレンダーを囲んでいるのだ。

「うーん、イマイチだね」
ドラえもんが言うのも無理はない。
完成したポロックが思うようにレベルが上がらないのだ。
「やっぱり回転数が低いからかなぁ」
「いいんじゃない?これをとりあえずあげてみようよ」
のび太が妥協しようと提案する中、しずかが口を開いた。
「見ててくれない?」
「はい?」
「のび太さん、見ててくれない?」
「そんな、僕だって手伝おうと一生懸命頑ば」
「あなたがやると回転数が落ちるのよ!」
しずかがこの旅でのび太に対し初めて怒りの感情を顕にした。
のび太はドラえもんに助けを請おうと目で助けを求めるが、ドラえもんは下を向いたままだ。
「そ、そんなぁ……」
目の前でドラえもん、しずか、そして見知らぬじいさんの三人が木の実ブレンダーを回転させている。
のび太はただそれを見ているしかなかった。

「のび太さん!ヒンバスがすごく綺麗になったわよ!」
「ああ、そう……」
進化したミロカロスをうれしそうに見せるしずか、そしてがっくりするのび太。
そんな様子を見ながら、ドラえもんは考えていた。
『ミロカロスといい、ロコンの件といい、やっぱりしずかちゃんはポケモン知ってるよなぁ。知らないふりしてたのかな?』
女って恐い、ドラえもんはつくづくそう思った。



浅瀬の洞穴。
ジャイアンは食料を買い込み、ここで泊まり込みの特訓をしていた。
「バクーダ、いわなだれ!」
タマザラシを一撃で撃破するバクーダ。
「俺は、俺はもっと強くなるんだ!」
ジャイアンは異様に燃えていた。

イズミに敗北した後、トクサネジムでのジム戦には勝利できた。
しかし、今の戦力であのイズミと再び出会っても勝ち目は薄い。
電気系ポケモンをゲットするという選択肢もあったが、ジャイアン脳で強い雷ポケモンはライコウかサンダーくらいしか思い浮かばない。

そしてジャイアンが修業の場にここを選んだ理由がもうひとつあった。

修業を終えたジャイアンは洞穴の入り口から外を覗いている。
「マホちゃん、ナホちゃん、はっ、はっ」
例にもよって男のたしなみだ。
「こ、この、痛苦しいのが……たまんねぇ!」
最奥の氷フロアで特訓していたため睾丸が萎縮しているのだ。
その時不意にオカズ対象の二人の女の子がジャイアンのほうを向いた。
「きゃっ!」
「ウッ!」
驚いたジャイアンは瞬間的に達してしまった。
「ま、ママママママホセンパイ!」
「ナホ、あの子なんか白いの出してる!」
「イヤアアアアアアアアア!(×2)」



ジャイアンは完全に取り乱し、必死で頭を巡らせる。
『ヤバい、俺ヤバい!どうすればいい……そうだ、前にインターネットで……』

そう、ポケモン情報を得ようとしてスネ夫のパソコンで調べていた時にこんな文を見たんだ。

『ポケモンが強ければ女抱きたい放題』

そうだ、この世界は強ければなんとかなる世界のはずだ!
ジャイアンはマホとナホに指を突き付ける。
「お、お前達にバトルを申し込む!!」
しかし、ジャイアンが予想したリアクションは返ってこなかった。
「ば、バトルって……アンタ子供のくせに私たちになにしようっていうの……」
「センパイ、あんなネバついた指で私たちを指差してるわ!」
「変態、変態っ!コイツおかしいわ!」
マホとナホは脇目も振らずに逃げていってしまった。

「あ…ああ……」
どうしていいかもわからず、ただ立ち尽くすジャイアン。
もうこんな事はやってはならない。
俺はジャイアン、ガキ大将であって変態ではない。
「男のたしなみなんてやってる場合じゃないよな」

その足元にはマホとナホの旅の荷物。
ジャイアンはここでの特訓を切り上げ、逃げるようにトクサネを後にしたのだった。
大量の荷物を持って……



ルネシティ近郊。
その海上では2体の超巨大ポケモンが壮絶な戦いを繰り広げている。

大陸ポケモン・グラードンと海底ポケモン・カイオーガ。

陸と海を創ったとして神話にも登場する伝説のポケモンだ。
眠りについていたそのポケモン達を呼び覚ましたのはアクア団とマグマ団なのだが……
「くそっ、なぜ制御できんのだ!」
アクア団リーダーのアオギリが悔しそうに事態を見ている。
そんなアオギリにマグマ団リーダーのマツブサが怒鳴る。
「貴様も私も思惑通りにはいかなかったということだ!」
「くそっ、マツブサ……このままでは天変地異でどちらの願いもかなわんぞ」
マツブサは空を見上げる。
雨と日照りが争うようにせめぎあう不安定なこの天候はあの2体のポケモンが呼び起こしたものだ。
アオギリは力のかぎり叫ぶ。
「カイオーガ、なぜ私の言うことを聞かない!」
「あなた方にその器がなかったからですわ」
アオギリの背後から答えが返ってくる。
「い、イズミ……」
アオギリもマツブサも唖然とする中、イズミが言葉を続ける。
「何も知らない無知なあなたが大それた野望を抱くからこのザマ……ピエロね」
「貴様っ、リーダーに対して!」
イズミは鼻で笑う。
「吠えるのはおよしなさいな、私の本当の主人がこの事態を収めてくださるわ」



睨み合いを続ける二人のリーダーとイズミ。
その均衡を裂くように空に影が現れる。
「あれは……カイリューじゃないか!」
マツブサが驚くのも無理はない。
ドラゴンテイマーであるワタルも愛用するカントー最強クラスのポケモンだ。
『しかも、乗っているのは少年……なのか』
その少年はイズミのそばに降り立つ。
「ごくろうさま、イズミさん」
少年がイズミの首筋にキスをし、イズミは顔を赤らめながらなすがままにされている。
「イズミ、お前はてっきり俺の事を好きだと……」
アオギリが動転しながら問う。
「加齢臭ただようひげオヤジより出木杉様のほうが全然いいわ」
出木杉と言われた少年がニコリと笑う。
「アオギリさん、ごめんね。ボク、イズミさん食べちゃったよ」
「貴様ぁぁぁぁっ!大人をなめやがって!」
モンスターボールに手を掛けたアオギリを遮るように出木杉のポケナビが鳴る。
「ああ、ナギさん。どうだった……ん、りょーかい。帰ったらご褒美あげるね」
出木杉が唖然とする二人に語りかける。
「さて、このイベントももうすぐ終わりです。空を見てください」
全員が空を見上げると、雲の裂け目から何かがおりてくる。
「あ、あれは……」
「あれは空の柱の主、天空ポケモン・レックウザですよ」



皆の見守る中、レックウザの叫び声が響き渡る。
その声に呼応したように、グラードンとカイオーガは戦いを止め、その場から立ち去ろうとしている。
「ど、どうなってるんだ」
出木杉が二人のリーダーに説明する。
「グラードンとカイオーガが争うとき、それを鎮められるのはレックウザのみ、ということです」
「なぜそんな事を知っているんだ……何者だ、お前」
アオギリの疑問に出木杉が答える。
「ただの小学生ですよ」
その両手にはモンスターボールが握られている。
「あ、今日からは『たったひとりでアクア団とマグマ団を倒した小学生』になりますがね」
出木杉はモンスターボールを放った。

「あわわわ、なんてこった。出木杉が……」
その様子を岩礁の影から見ていたのはスネ夫。
その戦いは一方的だった。
出木杉のカイリューとイズミのトドゼルガはマツブサやアオギリのポケモンを次々と撃破していく。
「あ、あのカイリューは70レベルはあるぞ…あんなのに勝てるわけがないよ」
5分ほどでその場にいた赤と青の軍団は全員気絶していた。
「に、逃げないと……」
振り向いたスネ夫の目の前にはツツジとアスナが立っていた。
「のぞき見とはよろしくないわね、少年」



「ふう、掃除終わり…と」
一仕事終えた出木杉の前にナギ、ツツジ、アスナ、そしてスネ夫が連れ出された。
「出木杉様、ネズミが一匹いましたけれど……」
「やあ、骨川君。元気だった?」
顔は笑っているが、目は全然笑っていない出木杉にいいようのない恐怖を覚えるスネ夫。
「で、出木杉!お前何やってんだよ!」
「何って、君たちと同じでゲームを楽しんでいるだけさ」
そう言いながらナギの太ももを弄ぶ出木杉。
『こいつ、キレちまったのか……』
優等生である出木杉にこんな一面が隠れていたことにも驚きだが、今はそれよりも聞きたいことがあった。
「おい、出木杉。お前そのカイリューは……」
「ああ、これを使わせてもらったよ」
出木杉はGBAのソフトをひらひらさせる。
「くそ、インチキしやがって!」
「骨川君、卑怯な作戦は君の十八番だろう?他人が使うことに怒る権利があるのかい?」
出木杉に言い負かされて何も返せないスネ夫。
「さて、時間切れだ。骨川君、僕は行くよ」
「ち、ちょっと待てよ!」
引き止めようとするスネ夫を尻目に、出木杉はカイリューに乗り込む。



去りぎわに出木杉が言い捨てる。
「あ、今回の件を見た君をただで帰すつもりはないからね!」
そう言い残すとカイリューは空高く飛び去っていった。
「何をやろうってんだ……」
「あなたが知る必要はありませんわ」
不意に声をかけられ、スネ夫は思わず身構えた。
「あんたは、カナズミジムの……」
「ツツジですわ。お久しぶりですね、今日はコバンザメじゃなかったみたいね」
スネ夫は挑発してくるツツジを睨み付けた。
「出木杉の部下になったってことなのか……なんでアイツの下についたんだよ」
ツツジは体をくねらせながら答える。
「それは出木杉様が私の穴という穴を……と、そんなことはどうでもいいわね。あなたにはしばらくリタイアしてもらうわ」
ツツジがモンスターボールを投げる。
現れたのはアーマルド。
「なんでアーマルドなんか持ってるんだ!」
「出木杉様からのプレゼントよ。じゃあ、さようなら」
スネ夫が出したナマズンはアーマルドの地震を食らって瞬殺された……

出木杉はカイリューを駆り、サイユウを目指す。
「さて、僕がポケモンリーグのチャンピオンになって、アイツらを待つとしようか」
そしてあのしずかを絶望の中で屈伏させ、服従させてやる。
それが出木杉のただひとつの望みなのだ。



《インターミッション》

いままで誰も語らなかったが、実はポケモン世界は多分にトレーナーの腕力、体力が必須となる。
アニメで主人公がピカチュウの電撃を受けるシーンを見たとき
「これはやばいんじゃないか?」
と思ったことはないだろうか?
ロケット団の二人と一匹が空高く吹き飛ばされるのを見て
「普通なら死ぬって!」
と苦笑いを浮かべることはなかっただろうか?

実はポケモントレーナーになる少年少女は下手な大人顔負けのトレーニングを行い、厳しい体力測定を受けた後にようやくトレーナーになることを許される。
「そんな馬鹿な」と思うかもしれない。

だが、よく考えてほしい。
小学生にこれだけの過酷な旅を強いるポケモン世界の異常さを。
人間を超える力を持つポケモン達を使役するトレーナー達を。
全高30cm・体重2.3kgの小さなスバメに掴まって空を飛ぶ人々を。

(民〇書房・怪物使いの謎から抜粋)



124番水道。
ドラえもん一行は洋上をトクサネシティに向かっている。
しずかはミロカロス、ドラえもんはホエルコに、そしてのび太はヒトデマンに乗っている。
ドラえもんとしずかはのび太の様子を心配そうに見ている。
「のび太くん、ボクのホエルコに乗りなよ」
しかしのび太から返事はない。
話し掛けられたのび太の体は水面を出たり入ったりしているのだ。

ミナモシティでの釣りで二人は今後の足であるポケモンを釣り上げた。
ドラえもんのホエルコは洋上の旅で使うのはうってつけ。
だが、のび太が釣り上げたヒトデマンは明らかに長距離の旅に向いていなさそうだった。
心配したドラえもんとしずかは「ホエルコを釣ろう」と提案したのだが、
「こいつにも波乗り使えるし、星型でかっこいい」
というのび太に押し切られ、仕方なく了解してしまった。

最初はヒトデマンの上に乗って波乗りしようとしたが、これは非常に乗り心地が悪かった。
「あ、あ、あ、あ~~~……」
ヒトデマンは高速回転し、まるで「子ガ〇ラに乗った亀仙人」のような状態。
のび太は1分も持たず放り出され、砂浜に嘔吐してしまった。



そして今のような「ヒトデマンにしがみつく」というスタイルに決まったのだ。
しかし、アニメのハナダジム水中ショーみたいに華麗に牽引される、というわけにはいかなかった。
のび太は意固地になってヒトデマンに乗りつづけ、現在に至る。

「やっぱりこのままじゃ無理よ」
ミロカロスの背に立つしずかも心配そうだ。
「仕方ない、無理矢理にでものび太くんをこっちに……ってアレ?」
二人に付いてきているヒトデマンには、のび太はしがみついていなかった。


のび太が気が付いた場所、そこは岩礁だった。
「僕はたしか……」
力尽きてヒトデマンから手を離し、そのまま意識を失ったのだ。
「出てこい、ドククラゲ」
ドククラゲがのび太の頭に触手を乗せ、なぐさめるようなポーズを取る。
「やっぱりキミに波乗りを覚えさせればよかったよ」
それをしなかったのは、ドククラゲがヌメヌメしていて、上に座ると尻が濡れてしまうからだ。
「ドラえもーん、しずかちゃーん!」
のび太の叫びが虚しく消えていく。
何度か叫び、無駄なことが分かるとのび太は仕方なく岩礁に腰を下ろした。



夕日が洋上に隠れていく時間になっても、のび太には助けが来なかった。
膝を抱えるのび太。
「今夜はどうしよう……ん?あれは何だ?」
夕日を背にして何かが近づいてくる。
それが近づくにつれ、のび太の目にもぼんやりとその姿が確認できる。
「あれは確かエアームド……まさかドラえもん?ドラえもーん!」
のび太は必死で大声を上げ、手を振る。
しかしその背に乗る人物はのび太の予想とは違っていた。
「お久しぶりね、ノビタくん」
「あ、あなたは……ナギさん!」
ドラえもんではなかったが、それでも助けには違いない。
のび太が喜びのあまりナギの腰に抱きついた。
「ナギさん、ナギさん、助かった~~」
しかし、ナギはそんなのび太の髪の毛をつかんで無言で引き倒した。
「痛いッ!」
「ふう……ちょうど良かったわ。あなたに会いたかったところなの」
ナギの目に暗い光が漂う。
見たことのないナギの冷たい目に、のび太は声一つあげることができなかった。
「ノビタ君、あなたを切り離すことで私はよりあの方に近づくことができるのよ……」
ナギはのび太とは違う岩礁に飛び移る。
「お前を倒す!」
ナギがモンスターボールを放った。



「やるしかないの、ナギさん?」
のび太の叫びも虚しく、ナギのチルタリスが竜の息吹で足元の岩礁を砕く。
「抵抗しないと海の藻屑になるわよ」
「くそっ!」
のび太はドククラゲを繰り出す。
「れいとうビーム!」
ドククラゲの冷凍ビームがチルタリスを襲い、氷漬けにする。
「そうよ、そうでなくては……」
ナギはチルタリスを戻し、新たなポケモンを繰り出した。
ファンタジー世界のドラゴンを思わせる姿、それはボーマンダだ。
「くそ、こいつにもれいとうビームだ!」
交替直後の隙をつき冷凍ビームが直撃するが、倒すには至らない。
「つ、強い……」
ナギが邪悪な笑みを浮かべる。
「お遊びはここまで。あなたはもう何もできないわ……」
ボーマンダが急降下し、地震攻撃でドククラゲを瞬殺する。
「うわぁっ!」
のび太が地震の余波で倒れ、その岩礁はさらに崩れていく。
「岩礁がなくなるのが先か、ポケモンが全滅するのが先か、楽しみね」
「ナギさん、ナギさんがこんな事を……」
のび太は負けずにトロピウスを繰り出す。
「こうなったらソーラービームで……」
「遅いわね」
ボーマンダが華麗に舞い、そして凄まじい勢いで突進してくる。



竜の舞で強化された捨て身タックルがトロピウスに直撃し、のび太もろとも別の岩礁へ吹き飛ばす。
「うう……う……」
のび太は傷だらけになりながらもまだ立ち上がる。
次のボールを投げようとするが、右腕が折れていて思うように動かない。
「あ……うっ、あああっっ!」
激痛に涙を流しながら、左手でボールを次々と投げる。
現れたのはケッキングとジュペッタ。
「ダブルバトルに変更かしら?」
ナギも新たなポケモンを繰り出した。
「出木杉様からお借りしたリザードンよ」
『出木杉……だって!』
思わぬ名前を聞いたのび太、その目の前でボーマンダの捨て身タックルがケッキングを一撃で撃破する。
そしてリザードンが繰り出すのは……
「最後よ、ブラストバーン……」

戦いは終わり、立っているのはナギだけだ。
足元には少年が倒れている。
「あなたは私の最後の良心、あなたが消えれば私は出木杉様に近付ける……」
ナギはゆっくりとのび太に手を伸ばした。



トクサネシティ。
ドラえもんとしずかは補給をすませ、のび太捜索のために再び来た道を戻ろうとしている。
「もう夜だけど、もし遭難してたら一刻を争うんだ」
ドラえもん達は夜の海を決死の捜索に出るつもりだ。
その時、ポケモンセンターの扉が開く。
入ってきたのはデボン社長の息子ダイゴと、抱えられているのは……
「きゃあああああっ!のび太さん!」
しずかが悲鳴を上げる。
ダイゴに抱えられたのび太は全身血塗れ、右腕があらぬ方向に曲がっている。
「のび太さん、のび太さぁぁん!いゃぁぁぁ……」
「触るな!今は一刻を争うんだ!」
号泣するしずかをダイゴが一喝し、センターの奥に駆け込んでいく。
ドラえもんは床に点々と落ちている血痕を見て膝を落とす。
「ボクが、ボクがのび太くんをちゃんと見ていなかったから……」
泣き崩れるしずかをなぐさめることもできず、ドラえもんはただ後悔の言葉を呟いていた。

ナギは出木杉の後を追い、サイユウに向かう。
ナギの手にはのび太の血がこびりついていた。
「甘いわね、私も……」
結局ナギは瀕死ののび太をトクサネの海岸まで運んだ。
手に付いた血を拭き取り、そのハンカチを二の腕に縛る。
「もう、前に進むしかない」
ナギの目からは涙が溢れていた。



ルネシティ。
後ろめたい思いをしつつ、ジャイアンはこの町に来ていた。
ここのジムを抜ければ、後はポケモンリーグに向かうだけだ。
しかし、今のルネシティはぴりぴりと緊迫した空気に包まれている。
「いったいどうしたってんだよ……」

ポケモンセンターに着くと、そこは戦場のような有様だった。
「あ、アクア団にマグマ団……」
アクア団員とマグマ団員が傷を負い、センターで介抱されているのだ。
見覚えのある顔がいた。
天気研究所で戦ったことのある下っぱだ。
「おい、いったいどうしたんだよ」
「お前は……ふっ、不様だろ」
アクア団員が唇を震わせる。
「アクア団とマグマ団はたった二人のトレーナーに壊滅させられたのさ」
そんな事ができるトレーナーがいるのだろうか。
心当たりがあるとすれば出木杉とスネ夫なのだが……
「おい、マツブサやアオギリはどうしたんだ?」
「ああ、二階にいるよ」
ジャイアンは事の真相を確かめるために二階に駆け上がる。

「勝手に入らないでください!」
制止するジョーイを振り切ろうとするジャイアン。
「マツブサ!アオギリ!お前達を倒したのは出木杉やスネ夫なのか!答えやがれっ!」
力のかぎり叫ぶと、奥から松葉杖を付いたアオギリが現れた。



アオギリは詰め寄ると、ジャイアンの胸ぐらをつかみ上げた。
「貴様っ!あのデキスギというトレーナーを知っているのかっ!」
「アイツは俺たちの仲間だよ!」
アオギリの剣幕にも負けず言い返すジャイアン。
アオギリは通路の椅子に腰を下ろし、ジャイアンを睨み付ける。
「ということは我々を裏切り、出木杉についたイズミもお前達の仲間か……」
「イ、イズミが出木杉の仲間だって!」
どういうことだ。
『イズミが出木杉と仲間だということは、イズミが俺を襲ってきたのは……』
ジャイアンはひとつの結論に辿り着く。
「まさか俺を足止めして、ポケモンリーグを制覇するつもりじゃないだろうな」
アオギリが呟く。
「いや、デキスギがその気になれば簡単にポケモンリーグのチャンピオンになれるはずだ」
そう言うとアオギリはガクガクと肩を震わせる。
「アイツの強さは半端じゃない……一人のガキに怯えて震えてやがる、このアオギリ様が」
「アオギリ……さん」
ジャイアンはかける言葉が見つからない。
アオギリは病院の天井を見上げてため息を吐いた。
「マツブサも意識が戻らん……これで俺たちはおしまいさ」



ジャイアンがセンターの一階に降りると、そこには白マントの男が立っていた。
「私はミクリ、元ルネのジムリーダーだ」
「俺はタケシ、ジャイアンって呼ばれてる」
二人は待合室のソファーに腰を下ろした。
「君は今回の事件の首謀者を知っているようだね」
ジャイアンは拳を握り締める。
「アオギリの言うことが本当なら、同じ日に旅立った仲間……なんだ」
ミクリはコーヒーを片手に、ジャイアンにもコーヒーを勧める。
「アクア団もマグマ団も悪い奴らだが、君の仲間はトレーナーにまで攻撃するという非道を行なっている」
「あいつは……出木杉は優等生だった。そんな事をするやつじゃねえんだよ!」
ジャイアンは机に両拳を叩きつける。
「何が出木杉を変えちまったんだ……」
その時、ミクリのポケナビが鳴る。
ミクリは席を外すと、なにやら険しい顔をして話をしている。
しばらくして帰ってきたミクリはまたジャイアンの前に座る。
「どうやら、ポケモンリーグに挑戦者がやってきたようだ。かなり強引な事をしているらしい」
「まさか、出木杉か!」
ミクリは無言で頷き、懐から出したものをジャイアンの前に置く。



「こ、これは?」
「秘伝マシン「たきのぼり」だ。君が持っていてくれたまえ」
わけがわからないままジャイアンは秘伝マシンを手に取る。
「ど、どうして俺に……」
ミクリが笑う。
「彼を救うことができるのは友達の君だけだと思ったのさ」
そう言うとミクリは立ち上がり、ジャイアンに「がんばれよ」と声をかけた。
「そうか、あんたチャンピオンだったな……行くのか?」
ジャイアンの言葉にミクリが目を見開いた。
「ほう……ほとんど知られてないはずなんだがな」
「ああ、ちょっとな。奴も、出木杉もアンタの事は知っているはずだ」
おそらくミクリは勝てない。
そう声をかけようとするジャイアンに、ミクリは背を向けると無言で手を振る。
「チャンピオンは誰の挑戦でも受けるものさ」

ジャイアンは立ち上がると、ミクリの後を追うようにセンターを出る。
いよいよ最後のジムだ。

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